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(o^v^o) ぱにぽに de 学級崩壊 (*゚∀゚*)7日目

1 :マロン名無しさん:2006/12/17(日) 21:31:00 ID:a6w0umXk
このスレはいじめやエログロなど、ぱにぽに及び関連作品のダークな話をするスレッドです。
不快感を覚えたり、キャラクターのイメージを損なう表現がある可能性がありますが、ご了解の上でご覧下さい。

【書き手の方へ】
ぱにぽにのダークな話であれば必ずしも学級崩壊にこだわらなくても結構です。
ただし露骨な性描写はまとめサイト収録時に修正されることがあります。
内容によってはエロパロスレへの投稿を検討してみて下さい。
なお、最初に「人死に・グロ・エロ」の有無を書いておくと喜ばれます。

【まとめサイト】
ttp://www.pphoukai-matome.com/

【前スレ】
(o^v^o) ぱにぽに de 学級崩壊 (*゚∀゚*)6日目
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1161481906/

【関連スレ】(21禁です)
ぱにぽにエロパロスレッド6時間目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1161175457/

2 :ミケランジョロ:2006/12/17(日) 21:33:48 ID:???
二次会

3 :マロン名無しさん:2006/12/17(日) 21:34:06 ID:???
ぱにぽにコピペXXX
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1164115805/

ジョジョの奇妙なぱにぽに
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1161372936/

ぱにぽに黙示録カイジ
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1150091764/

ぱにぽにサッカー
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1138623205/

ぱにぽにで1番かわいいの決めちまおうぜ
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1145874599/

ぱにぽにを百合的視点で語る
http://sakura02.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1122638947/

4 :マロン名無しさん:2006/12/17(日) 21:38:48 ID:???
>>1乙ー

5 :マロン名無しさん:2006/12/17(日) 21:44:43 ID:???
おっつー

ペースはえぇー

6 :マロン名無しさん:2006/12/17(日) 22:31:50 ID:6y/ek3bX
>>1
乙かれ様カモ〜☆

7 :マロン名無しさん:2006/12/18(月) 00:20:27 ID:???
>1乙。

8 :マロン名無しさん:2006/12/18(月) 00:52:10 ID:???
>1
早乙女乙女

9 :560:2006/12/18(月) 00:59:20 ID:???
>>1
新スレ祝いに投下
本題に入ります

「いきなり夜ーーーーーー!!!」

1年A組桃瀬修は黄昏ていた・・
静かなバーの店内、自分たち以外にもちろん客はいない、いるのは
若きバーテンダーと隣でなにやら服の事について語り合っている柏木姉妹、それに
もはや教師としての燐片すら残さないほど泥酔した担任の五十嵐美由紀、彼女はすでに
恐ろしい量の酒を飲んでいた。そもそもこんな場所に生徒を連れてくるのも問題なのだが。
人のいい修はそこまで咎めなかった。夏休みなんだから少しぐらいハメを外したって良いだろう
そんな気持ちがあった。柏木姉妹はヒマだったからくっついてきただけだった。

「あ〜〜ここの酒最高ねぇ〜マスターもう一杯ぃ〜」
「飲みすぎですよ先生・・少し外で風に当ってきたらどうです?」
「そうねえ・・じゃあ少し行ってくるかな・・」
バーテンの言葉に従い五十嵐は千鳥足で外に出て行った。

「ねえ、先生まだ帰ってこないの?もう1時間ぐらいたつよ?」
優麻が不安そうに修に告げた。確かにやけに帰ってくるのが遅い、もしかして
その辺で酔いつぶれて寝てしまっているのではないか、あながち否定は出来なかった。
「俺、外に探しに行ってくるよ、もしかしたらその辺で寝てるかもしれないからな」
「気、気をつけてね桃瀬君・・このへん暗いから・・」
「ああ、ちょっと行ってくる」

「ホントに暗いな・・」
店の外は本当に真っ暗だった。バーテンに借りた懐中電灯のスイッチを入れると
修は歩き始めた。周りの状態は一言で言うなら森だった。いわゆるこの店は「隠れ家」的な
店であり、人が集まる所からは少し離れていた。懐中電灯の光を頼りに夜道を歩いていく

10 :560:2006/12/18(月) 00:59:56 ID:???
3分ほど歩いただろうか、修は少し目の前の先にある茂みを見た。
ガサガサと茂みが激しくざわめいていた。普段なら何か小動物でもいるのだろうと
そこまで気に留めはしないが、今回は違っていた。ヤバイ、何かがヤバイ、頭の中の何かが
修にそう告げていた。修はおそるおそる音を立てないように茂みに近づいていった。
近づくに連れて修の不安は増大して行った。音が聞こえる、人間の発する音ではない、そう
獣の類が発する音だ。臭いがする、日常生活では嗅ぐことなど無い臭い、そう、むせかえるような
血の臭い、汗が止まらない、動悸がどんどん早くなってくる、しかし修は確かめねばならなかった。
少し震える手で修は一度ためらった後、茂みの草を静かに掻き分け、それを見た。

そこには人が横たわっていた。いや、かろうじて人だと判別できた。そしてそれの周りでは
よく知っている獣、そう、犬が口を真っ赤に染めながらそれを一心不乱に貪っていた。
修は今すぐこの場から逃げ出したかった。信じがたい光景だった。
横たわっているのは修がよく知っている人物、1年A組担任、五十嵐美由紀。その無残な姿は生前の姿を
留めていない。首はあの強靭な顎と牙で喉を切り裂かれ血がまだわずかに噴出していた。
体は無残に食い散らかされ内蔵が散乱していた。

修は一刻も早く逃げ出したかった、五十嵐先生が死んだ。普段のらりくらりしていた修もこんな状況に
なってしまったからには迅速な判断をした。しかしここで音を立ててはいけない、修はゆっくりと茂みから
離れていった、ゆっくりと、しかし確実に、そして茂みから充分に離れたことを確認すると一目散に走り出した。
自分はこんなに早く走れるのかと少し感心した。早くあの店に戻らなくては、このことを早く伝えなくては。

桃瀬修、このとき彼はまだ知らなかった。自分がこれから、さらなる恐怖に出会うことを。


11 :彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:42:50 ID:???

このスレに来ると色々な作品が読めて嬉しくなります。
私も『彼女と誰かの物語』を投下させていただきます。

12 :彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:43:32 ID:???

「レベッカさん」
急に後ろから呼び止められたレベッカは、反射的にそちらの方を振り向いた。
そこにいたのは、見たこともない成人男性だった。
「桃瀬くるみが言っていた、彼女の仲間です。こちらへ来て下さい」
レベッカはその男の姿を眺めてみた。
濃いグレーのスーツに水色のネクタイという、特にあげつらう所のない服装をしている。
ごつくはないが結構がっちりした体型で、レベッカよりも遥かに背が高い。
顔を見上げてみる。見た感じ30歳ぐらいと思われるが、雰囲気だけならかなり老けて見える男だった。
「はやく、時間がありません」
その男は足早に路地の奥へと進んでいった。
レベッカは退き返そうかと一瞬だけ迷ったものの、乗りかかった船だと考え直し男の後を追った。

男は先ほど出てきた扉を開け、レベッカに言う。
「こちらです。どうぞ」
男よりも先に入ることに若干の恐怖は感じたが、レベッカは言われるままに建物に入った。
彼女のすぐ後から男も中に入り、扉を閉めた。
「お前は何者だ? くるみとどういう関係にある?」
レベッカは鋭い顔で男を睨めつけた。
男はレベッカの脇をすり抜け、次の扉を開けている。そこには地下へと続く階段があった。
「事情はすぐにお話いたします。ついてきてください」
男はそう言ったきり、階段を急ぎ足で下りていく。レベッカも男に合わせて階段を下ることにした。

13 :彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:44:15 ID:???

建物の中は思っていたよりも複雑だった。数えてはいないが、地下何階分も潜っているようだ。
一つ階段を下りるとそこには幾つかの部屋と廊下があり、そこを進むとまた下への階段がある。
地層の巨大な質量が、周りから何となく感じ取れる。
周囲から押し潰されるかのような恐怖を、レベッカは肌に覚えた。
それでも男は地下へ進み続けている。もちろんレベッカも。
蛍光灯の孤独な白さが、眼に痛かった。
部屋にも廊下にも、見るからに重そうな段ボール箱が山のように積んである。
ここはどういった施設なのかとレベッカはいぶかしんだ。
自分は売り飛ばされるんじゃないか、いかがわしいことをさせられるんじゃないか。
とめどなく生まれてくる不安が、レベッカの心の中で渦を巻く。
元より説明を全く受けていないんだから、のこのこと付いて来るべきではなかったのだ。
レベッカは後悔していた。
だけど、くるみが大丈夫って言ってるんだから大丈夫。それだけが命綱だ。
くるみが信頼できるのかどうかは、考え出すと身体が震えてくるから考えない。

「ここで、お話しましょう」
物理的時間では数分だろうが主観時間では何時間もたった頃、男は一つのドアの前で足を止めた。
変哲もない金属製のドアだった。
男がそれを開けるのに従い、レベッカは中へ入っていった。
これまたシンプルな部屋だ。
折畳み式のテーブルが二つに、椅子が四つ。壁際には小さな棚とテレビデオが鎮座していた。
バタンと後ろのドアが閉まる音がした。男も中に入ったのだ。
「お掛け下さい」
男は椅子の一つをテーブルから引き出した。レベッカは大人しくそこに座る。
男の方はというと、彼女の向かい側の椅子に腰掛けていた。
「ここまでお付き合い頂き、ありがとうございます」
「挨拶はいい。用件は何だ」
勇気を振り絞り強気の態度を保つレベッカを見て、男は僅かに微笑んだ。
レベッカにはそれが妙に腹立たしかった。

14 :彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:44:51 ID:???

「私もそうしたいと思っていた所です。ではお話致しましょう。
 レベッカさん。あなたは監視――いや観察されています。かなり前から、常にね」
レベッカは黙っていた。それはもう知っていることなのだ。男は更に続けた。
「そしてあなたの日常生活の映像は記録され、広く人の目に晒されています」
……これも想像の範囲内ではあった。
盗撮された画像や映像が裏で取引されるということは、レベッカも知っている。
自分がその被害にあっているかもしれないというのは、覚悟していたことであった。
「やっぱりな……。だがお前の言うことには具体性・信憑性が欠けている。
 お前は妄言を吐くために私をこんな所へ連れ込んだ訳ではないだろう。
 お前たちの目的は? くるみはどう関わっているんだ」
レベッカの尋問を受けた男は、手を組み、肉体を前へと傾けた。
その顔は今までにも増して真剣で、精気に乏しかった。
「私たちの目的は、レベッカさんを自由にすることです。
 事態はあなたが思っているほど小さいものではない。
 あまり詳しくはできないのですが、証拠とともに説明します」

男は立ち上がると、一本のビデオテープを棚から取り出した。ラベルは貼っていない。
そのテープを手で持ち上げながら、男は言った。
「これは私たちが入手した、初期のレベッカさんの記録です。
 撮影したのは私たちではありません。それを証明することはできませんが……。
 とにかくご覧になって下さい」
男はテレビの画面をつけるとテープをテレビデオに差込み、再生のスイッチを押した。
今時VTRかよと、レベッカは心の中で毒づく。
「諸事情によりビデオテープでしかお見せできません。画質もいまいちで……。申し訳ありません」
どうやら男の方も自覚しているようだった。

15 :彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:46:39 ID:???

かすかな機械音を立ててビデオは廻り始めた。
青一色だった画面が、よく見知った風景に変化した。
画質は非常に悪いが、はっきりとわかった。学校の廊下だ。
画面の枠外から、スーツを着た男性と一人の少女が現れた。
あれは……間違いない、早乙女とレベッカだった。
『まず僕が行きますから、宮本先生は僕が呼んだら中に入ってきてください』
『あ、あぁ……』
『大丈夫ですか? 緊張してるみたいですが――』
『ヘ、平気だ よ……』
この会話には覚えがあった。レベッカが桃月学園に赴任した最初の日の会話だ。
箱の中の二人を見てみても、どうやらあの日の服装をしている。
この映像は確実に、レベッカの「始まりの日」を切り取ってきたものだった。
「これは……」
「私たちが入手した記録の中で最も古いものです。
 レベッカさんは、この頃から観察されていたんですよ」
レベッカはテレビを食い入るように見つめ続けていた。
映像の視点は廊下から教室内に移動している。
今は、早乙女がC組の教壇に立ちこんなことを言っている。
『今回からこのクラスは新しい先生が受け持つことになった。
 少し若いがコロンビア大学で博士号を取得した天才先生だ』

この続きは、もう知っている。
『宮本先生どうぞ!』
目を瞑って思い描くことも出来る。
教室の扉がちょっとだけ開き、小さな女の子が中を覗く光景を。
『……』
そしてすぐに扉を閉めてしまうのだ。
『ピシャッ』
ほら、言った通りだ。
――あの時は私もウブだったなあ。学校の物、人、全てが自分の敵のような気がして。
   正直、何でこんな道を選んでしまったのか、過去の自分を怨んだぐらいだった。

16 :彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:47:26 ID:???

『先生! 宮本先生!』
『ちびっこだ!』
『しかも金髪!? 外人か!』
――今じゃもう皆と仲良くなっている。…と思う。
   あの時の心配が杞憂に終わって、本当に良かった。

だけど最初は、生徒とどう接していいのかわからなくて。
ハーフであることや子供であることのせいで奇異な目で見られるんじゃないかと怖かった。
そして初めて生徒たちの前に立った時の反応は、恐れていた正にそれだった。
『外人だ』『ちびっこだ』
教室中が騒がしい。
私が話し出そうとしても、自分たちでぺちゃくちゃ喋るばかりで聞いてくれない。
おいお前ら、私のことがそんなにおかしいか。
不相応にも、教師として前で突っ立っている私のことが。
この色素の薄い髪が、眼が。
130cm代の身長が。この小さな肉体が。

10年間の人生が。

もう我慢がならない。
抑えようとしてももう駄目だ。
叫ぶ。
叫べばいいんだ。
そうだ、叫ぶしかない。
叫ぶしか……。

「ガキだからってバカにすんなー! ムシケラどもが!!」


17 :彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:48:02 ID:???

「レベッカさん」
「ひっ……」
ぽんと肩に手が置かれるのを感じ、レベッカは体を震わせた。
振り返ると、レベッカをここまで連れてきた男が困ったような顔をして立っていた。
「すまん、取り乱した……」
「いえ……」
男はテレビの元へと行き、停止ボタンを押して画面を消した。
箱の中のレベッカはちょうど出席を取っているところだったが、それは三十人目で終了させられた。
ここにいるレベッカはというと深呼吸を二、三回していた。
彼女の前の椅子に男が座る。取調べの体勢だ。
「見ていただいたものは再現でも加工されたものでもありません。
 レベッカさんが桃月にいらしてからずっと、あなたは記録されていたのです」
「……私を撮影する人間の目的は何なんだ?」
男のことを上目遣いで睨みつけながら、レベッカは低く鋭い声で尋ねた。
誰が自分の周囲にカメラを仕掛けていたのかは、彼女は全く知らない。
だがこの男は、どういう立場にあるのか事情をかなり把握しているようだ。
掴みかかって無理にでも吐かせたいところだが、理性でその衝動を抑える。
いずれにせよ、この男だけが現時点では真相へ近づく手がかりなのだから。

男はレベッカの目を真正面から見据え、答えた。
「一言で言えば、娯楽です」
「……ごらく?」
「はい。レベッカさんの映像はあなたの知らない世界で、人々を楽しませているのです。
 卑猥な目的ではありませんよ。子供から大人まで、多くの人があなたを見ています。
 彼らは純粋に、レベッカさんの生活を観察しているのです」


18 :彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:49:19 ID:???

どういうことだ? とレベッカが聞こうとした時だった。

ガン! ガン!

突然、部屋の扉の一つが強く叩かれる音が響いた。
驚いてドアの方をとっさに振り向く。
「警察だ! ここを開けなさい!」
扉の向こうから、くぐもった声がわめき散らしているのが聞こえた。
虚を突かれたレベッカは落胆し、その一方で安堵もしていた。
こいつは警察のお世話になるような奴なのか?
男を見てみると、顔を顰めて呟いている。
「ちっ、奴ら……。ここまで対応が速いとは――」
「そこにいるのはわかっている!」
顔に手をあて絶望している様子の男だったが、すぐに立ち上がるとレベッカに迫った。
「レベッカさん、ここからすぐに逃げてください。こっちの非常口は、彼らも知らないはずです。
 上へ上へと進めば外に出られます。さあ、速く!」
「待て。なぜ警察を怯える。やはりお前――」
「警察の命令です! 今すぐ開けないと、実力行使に出る!」
「違います! 彼らは操られているんです! あなたの敵なんです!」
「何だと……?」
扉の鍵がガチャガチャと動いている。無理矢理にも開けようとしているのか。
「速く! 彼らを信じてはいけない! いいか、誰も信じるな!
 私の仲間がいずれそうとわかるように会いに行きますから!」

19 :彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:50:04 ID:???

凄い剣幕だった。
男に逆らうほどの大胆さは、レベッカにはなかった。
彼女は部屋の向こう側にある小さな扉へと小走りで向かい、そこを開けた。
上に向かう急な階段が、薄闇の中に浮き上がった。
部屋を振り返ってみると、男が今にも押し入られようとしているドアの前に家具を移していた。
彼にはこちらを気にする余裕はないみたいだ。
レベッカは前に向き直り、狭い階段を上り始めた。

男の言った通り、上へ向かう階段はどこまで行っても一本道だった。
時折行き当たるどの踊り場も、下への階段は幾つかあっても上行きのは一つしかない。
この天上への道を、レベッカは早歩きで進んでいった。
本当はこんな建物は一刻も早く立ち去りたいのだが、非常灯しか明かりのない
暗がりの中ではあまり速く走れない。
それにここで走ってしまうと、男の言うことに大人しく従うことになってしまう。
レベッカにとって、それは屈辱的なことだった。

しばらく登っていると、小さなドアに行き着いた。
隙間から糸のような光が中に差し込んでいた。
ドアを捻って押してみる。
その向こうは、やはり薄汚れた路地だった。
だがよく見てみると、入った所とは違う空間のようだ。

20 :彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:50:36 ID:???

通りに出て建物を見上げてみる。
するとそれは、男に連れ込まれたはずの建物とは別のビルだった。
レベッカは驚き、不思議に思ってあたりを見回してみる。
数百メートルほど離れたところに数台のパトカーが止まっていた。
何かあったのかなと思ったが、すぐに気付いた。
そこが、最初に入った建物だった。

ぞっとした。
恐怖が胸から爪先へと、全身に広がっていく。
今まで溜め込んできた感情が、決壊を遂に破ったのだ。
結局、知りたいことは何もわからなかった。
ただ漠然と、自分が巻き込まれている事態に対する恐れが膨らむだけだった。
長い間、ぬくぬくと続けていた教師生活。
その全ては、自分の知らない所で記録されていた。
不合理な不審。
気付いたら、駆け出していた。
とにかくこの場を離れたい。
大衆の中の孤独でなく、孤独の中の温もりが欲しかった。

レベッカは走っていた。
決して辿り着けない桃源郷を探して。
言葉通りどこにも存在しないユートピアを目指して。
幻だとわかっている快楽の園を求めて。


21 :彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:51:21 ID:???

今回は以上です。

22 :マロン名無しさん:2006/12/18(月) 21:41:05 ID:???
乙です。

もしかしてこれトゥルーマンショー系の展開?
なんか『だっしゅ!』に通じるメタフィクション的な展開も
ありえそうでwktkです。
続き楽しみにしてますぜ。

23 :PP×C:2006/12/19(火) 00:28:51 ID:???
<パート17>

 神原はレベッカに向き合い、彼女の推理を訊ねた。
彼女は手にした手帳の切れ端を並べ直しながら一息つくと、説明を始めた。
「つまるところ、これはルービックキューブの積み木に過ぎなかったのさ」
「どういうことです?」
「発想の転換だよ。17576室の個室を一つのマクロ座標で示そうとしたことが間違いだったんだ。基本単位はルービックキューブにあったのさ」
「ルービックキューブってあの、オモチャの?」
「ああ、そうさ。建造物自体を大きなルービックキューブだとする。それぞれの一辺を三等分すれば9×9×9の個室を持った中キューブ27ユニットに分割できる。
さらにその中キューブのそれぞれの辺を三等分すれば、3×3×3の小キューブ27ユニットに分割できる。
そして、小キューブ自体は27のエレメンタリー・ユニット(個室)によって構成される。
この三段階の区分けを以ってしてアルファベットの割り振りが行われるんだ」
「どのように?」
「アルファベットは三桁目から順に繰り上がるんじゃない、むしろ、一桁目から決定されていくんだ。
つまり、三桁のアルファベットはそれぞれ順に中ユニット座標、小ユニット座標、エレメンタリー・ユニット座標を独立して指定しているんだ。
(1,1,1)を"A"、(1,1,2)を"B"、(1,1,3)を"C"、(1,2,1)を"D"、(1,2,2)を"E"、(1,2,3)を"F"、(1,3,2)を"G"・・・
・・・(3,2,1)を"U"、(3,2,2)を"V"、(3,2,3)を"W"、(3,3,1)を"X"、(3,3,2)を"Y"、(3,3,3)を"Z"で代数し、
たとえば、【ABC】なら中ユニットは大キューブ上(1,1,1)の位置、その中ユニット上(1,2,2)の座標にある小ユニット内の、(1,2,3)の位置にある個室であるといった具合だ。
要するに、【A>B>C】という形で三段階の座標をディレクトリ方式に表示しているというわけなんだ」
「すると、差分の2107の空間はどう解釈できるんですか?」

24 :PP×C:2006/12/19(火) 00:31:35 ID:???
「その配置は驚くほど簡単だった。つまり、その三段階の規模でそれぞれのユニットの中核部分、つまり座標数値の上では(2,2,2)の空間が肉抜きだったんだ。
従って(2,2,1)は"M"、(2,2,3)は"N"と続く。
(2,2,2)座標は立方体ユニット単位で肉抜きされるから、大キューブでは9^3個室、中ユニットでは3^3個室、小ユニットでは1個室ずつ丸ごと抜けるんだ。
中核部を差し引いた結果、中ユニットは全部で26、小ユニットは全部で26^2個存在することになるから、即ち、(9^3×1+3^3×26+1×26^2)=2107、となる。
こういった法則性があったから、単純に2107を素因数分解しただけでは求まらなかったんだ」
「では、部屋の動き方もわかるんですか?」
「これは苦労したが大方は理解できた。簡単に言ってしまうと、ルービックキューブとは逆のシステムによって動く、ということになる。
つまり、各ユニットごとに同じ要領で移動は起こるわけだが、その第一段階は各正方面の中央に位置する立方体、センターキューブが中核部(2,2,2)に落ち窪むことによってサイクルを開始するんだ。
一回の移動に関与する子ユニットは三つ、一つの親ユニットでは一つのサイクルのみが運用され、それが完了し、再びもとの位置に子ユニットが戻るまでその関連移動のみが続けられる。
さて、移動のシステムだが、原理は非常に単純な回転運動だ。1サイクルあたり3ユニット4スライド機構だ――」
 レベッカは手帳の切れ端を広げ、余白を見つけてそこに図形を描き始めた。

回転の仕組み(但し0は肉抜き空間)

1 0
2 3
↓一回目
2 1
3 0
↓二回目
3 2
0 1
↓三回目
0 3
1 2
↓四回目
1 0
2 3
(元通り)

25 :PP×C:2006/12/19(火) 00:33:54 ID:???
「――つまり、一回の移動では三つのユニットが同時に動き、四回のスライドによってそれぞれが元の位置に戻る。
この間、移動に関わっている三つの部屋の内壁照明は白くなっているということはもう説明したな?
エレメンタリー・ユニットでは個室ごとに色が変化するが、それより大きいユニットではユニット内部の個室全てが白い部屋に変わる。
だから、場所によっては行けども行けども白い部屋しかないようなところも存在するわけだ。
ルービックキューブとは異なり、この移動システムでは各面の真ん中のレイヤーのみが移動に関与し、八角に位置するユニットは不動なんだ。
従って、このサイクルが一つの親ユニットごとに十二回反復される。
サイクルの始動する順番はランダムかと思いきや、どうもこれもアルファベット順に起こるみたいだ。
つまり、一つのサイクルに関わる三つのユニットの代数アルファベットを数値に戻し、その合計数が少ないところからサイクルが発生する仕組みになっている。
回転の向きも、どうやら数値の小さい順に決まるようだ」
「確かに!それなら部屋の動きを予測してエレベーター式に部屋を移動できますね。ここから最上階にある【GGG】まで行くのにも・・・・・・あ、でも、肝心のサイクルが今どこにあるのか分からないと・・・・・・」
「それで起動音と時間をヒントに使えるというわけだ」
「そういえば、さっきも部屋の移動のタイミングをぴったり予測していましたね。しきりに時計を見ていたようですが、あれにはどんな意味が?」
「面倒な理屈は抜きにして、結論から先に言おう。
9^3の中ユニットのサイクルで、一回のスライドは90分ごとに起こる。
3^3の小ユニットでは30分ごと、エレメンタリー・ユニットのスライドは10分おきに起こる。
一条の言っていた、三段階の音はそれぞれの時間周期を持って定期的に発生していたんだ。
白い部屋に行き着いたとき、それがどのユニットのサイクルの只中にあるかを近隣の部屋の白化率から割り出し、アルファベット配列から位置を特定すれば、
今、サイクルがどこにあるのか、次にその部屋がいつ動くのかを計算で求めることが出来る・・・・・・と、いうか、もうやった」

26 :PP×C:2006/12/19(火) 00:35:03 ID:???
 レベッカは手帳の切れ端を差し出した。
神原はそれを受け取ったが、そこには数式とアルファベットがぎっしりと書き連ねてあり、一見何が答えなのか分からなかった。
「エレメンタリー・ユニットは八時間で十二回のサイクル運動を終え、一巡する。
小ユニットは二十四時間、つまり一日で一巡、中ユニットともなると同じサイクルが再び起こるまで三日間待たねばならなくなる。
それぞれの移動をうまく活用しながら部屋間移動をジャンプすれば、安全に、迅速に、かつ確実に出口に辿り着けるんだ。
と、いうわけだから、おい、姫子、いい加減起きろ」
 レベッカはすっかり話についていくことが出来なくなり、その場に眠り込んでしまった姫子のアホ毛を掴み、揺り起こした。
姫子はようやく目を覚まし、気だるげにレベッカと神原の顔を見比べた。
「ん・・・・・・もうわかったの?」
「ええ、姫子さん。やっぱり、宮本先生は天才ですよ」
「ヘヘへ・・・・・・でしょう?私のベッキーはやるときはやる子なんダヨ」
「おい、ちょっと待て・・・・・・いつからお前のものになったんだ?」
「またまたベッキーたら、恥ずかしがって。よし、謎が解けたならば前進あるのみ!行くよ、二人とも!」
 姫子は精一杯胸を張り何処か遠くをぐっと見据え、力強く人差し指を伸ばし立てた。
その後ろでレベッカは少し戸惑いがちに、神原にそっと耳打ちした。
「何か・・・・・・姫子元気になったみたいだな・・・・・・何があったんだ?」
「えっと・・・・・・まぁ、元気が無いよりはあった方がいいんじゃありませんか?」
「何のこっちゃ」
 かくして三人は出口へ向かう移動を開始したのであった。


27 :PP×C:2006/12/19(火) 00:37:09 ID:???
<パート18>

 三人はレベッカの先導の下、部屋の間を移動し続けた。
レベッカはしきりに時計を睨みつけ、次に部屋の移動が起こるタイミングを見計らいつつ、二人を急かした。
「急げ、あと五分で三つの部屋を移動しなくちゃいけないんだぞ!」
「待ってよ、ベッキー・・・・・・ちょっと休憩」
「ダメだ!立て、立つんだ、姫子!ここでチャンスを逃したら予定が狂うんだ!」
「でも、先生。そんなに急ぐ理由が?」
「言っただろう、中ユニットがキューブの中を動くタイミングは90分間隔なんだ。これをうまく利用すれば一気に九階分をエレベーターできる。
そして、そのサイクルを形成する中ユニットに乗って、それが(2,2,2)の位置になったとき、隣の非サイクルのユニットに移動し、その回のサイクルをやり過ごす。
90分か、或いはその倍数分そこで待ち、最上レイヤーが関与するサイクルの起動時にすぐさま下りてくるユニットに飛び乗り、再び九階分上階を目指す。
一見、時間はかかるが、真上の扉を雲梯して攀じ登る労力を考えれば、これが最短のルートになるんだ。
急がば待て、だが待つ場所へは急げ、というわけだ。ほら、わかったら急げ!」
「死ぬぅ〜」と、姫子。
「片桐さん、がんばりましょう」と、神原。
「あーうー」と、またしても姫子。
 レベッカの計画では、ユニットの運動を利用してエレベーターに乗りつつ、建物の外殻まで水平に移動し、その途中途中で具合のいい上下運動サイクルを捕まえて上階へ上がる。
これはタイミングが勝負で、機会を逃したり迷路で迷ったりしたら、途端に全てが台無しになる移動方法であった。
しかし、そこはMITのスクール・オブ・サイエンスでもその名を鳴らした天才少女レベッカ宮本である。
理論の上では決して道を見失うことはなかった。
 問題は実際的なものだった。
全員の体力が激しい移動にもつかどうか、これはレベッカ自身がその幼い体躯に鞭打って直に体感し苦労していたことだから重々承知していた。
レベッカは勿論そうだったし、体力の低い姫子はもっと辛そうな様子だった。


28 :PP×C:2006/12/19(火) 00:39:16 ID:???
 しかし、だからといってそんなことを理由にキューブが運動を休止してくれるわけではない。
無機質な機械は生ある人間に憐みも情けもかけることをせず、ただ、その歯車の回転数、決められたルールにのみ従って何の目的も見出さぬままに動き続ける。
永遠に、その身を消耗し切るまで・・・・・・

 レベッカは次の扉を開き、思わず息をのんだ。
部屋の中に誰かがうつ伏せに倒れている。
その姿は彼女の目にも明らかに見覚えのある姿だった。
「乙女!」
レベッカは叫んだ。橙色の部屋の中で、小さい身体がピクリとも動かない。
レベッカは背筋に悪寒を覚えた。
「乙女・・・・・・?大丈夫か?」
レベッカはそっと声を掛け続けた。やはり彼女は反応がない。
しかしこの部屋は"O"も"A"も含んでいない。
罠に掛ったのだとは思えない。もっとも、それはレベッカと姫子のイニシャル説が正しければ、の前提があればこそである。
 レベッカはうろたえて、扉から中に這入りかねていた。
しかし、意を決して恐る恐る中に足を踏み入れ、梯子を下る。姫子と神原が続く。乙女は何の反応もしない。部屋の罠は動かない。
 レベッカは橙色の床に横たわり、不気味な影の一つとなった乙女をじっと見据えたまま、金縛りにあったようにその場から動けなくなってしまった。
乙女の身体は、生きている人間の体温を感じさせなかった。まるで無機質な部屋の一部として、床と同化してしまったかのような存在感である。
「乙女さん」
 レベッカの狼狽している横で、今度は神原が呼びかけた。勿論答えは返ってこない。
神原は無表情のまま、彼女の元に歩み寄り、その身体を掴んでひっくり返す。
レベッカは彼が乙女を扱う様に一抹の不安を覚えた。
神原のぞんざいな手つきは、明らかに彼女を生きた人間として扱っていなかったのだ。
「うっ・・・・・・これは・・・・・・」
レベッカの不安は神原の悲痛な声で裏づけされた。
「ひっ・・・・・・」
「お、乙女・・・・・・」


29 :PP×C:2006/12/19(火) 00:40:47 ID:???
 神原に抱え上げられた乙女の姿を見て姫子とレベッカは思わず声を上げた。
乙女は既に事切れて、その両目は濁ったまま空宙を見つめている。
その首元がぱっくりと割れ、とめどなく血が噴出したあとが窺える。
よく見ると、橙色の照明の床の上は、黒い、厭な臭いの液溜まりが広がっていた。
 神原はすぐに目を背けた彼女たちを後ろに退がらせ、床の血を手で触れた。
まだ乾ききっていない。乙女の身体はまだ体温が残っているし、抱き上げたときにまだ血は流れた。
赤い血が橙の光を反射し、この世のものとは思えない色艶を見せる。
「宮本先生、見たところまだそう長い時間は経っていないようですね。血の流れ方や死体の状況から見てもついさっきまで生きていたように思えます」
 レベッカは目を逸らしたまま答えた。その隣で姫子は苦しい音を立てながら何かを口から吐き出していた。
「し、死体はどうなっているんだ?どんな罠が作動したんだ?」
「いえ・・・・・・何か妙ですね・・・・・・乙女さんは鋭利なもので首を一突きにされているんですが、どうも罠に引っかかったというよりは何者かの手にかかったような・・・・・・」
「何だと?」



30 :PP×C:2006/12/19(火) 00:43:02 ID:???
「だって、この部屋では乙女さんで罠が起動しないんでしょう?何というのか、この傷跡は手口が非常に粗雑な感じで、これまで見てきた罠とは少し感じが違うんです。
うまくは説明できないんですが、機械的でない、というか・・・・・・もっとも、南条さんのときはライオンが出てきたんで、今回もその類かもしれませんが。
この近辺の部屋で乙女さんを指定する罠のある部屋は?」
「無い。この辺りは"O"と"A"が一緒に出てくる部屋は無いはずだ。移動パターンから考えても、そうした部屋がやって来ているとは思えないし・・・・・・しかし何故?」
「彼女、ここ以外のところで罠に掛ってここまで歩いてきたのかと思ったんですが・・・・・・どうも違うみたいですね。
傷は確かに頚動脈を切っていて致命傷だし、他の扉から血痕が伸びているわけでもなし・・・・・・やはりこの部屋で、この倒れている現場で殺されたに違いありません。
しかし、この部屋では罠が起動するはずがない・・・・・・どうなっているんだ?」
 神原とレベッカは俯いて考え始めた。
「ねぇ、神原君・・・・・・」
姫子が後ろを向いたままか細い声を出す。
「何です、片桐さん?」
「もう、行こうよ・・・・・・私、恐いよ、この部屋に居たくない。ね、ベッキーも、早く移動しようよ。気持ちが悪くなってきたカモ・・・・・・」
姫子の肩が震えていた。
「そうだな・・・・・・乙女の死因は気になるが、これまで私たちはちゃんと罠を避けてきている。
それに、もう道筋だってわかっているんだ。ここで悩むより、先に進むのが賢明だな」
レベッカも向こうを向いたまま答えた。
「わかりました」
 神原は乙女の身体を再び床の上に下し、その両目の瞼を手の平でそっと閉ざさせた。
彼は手についた血をシャツの裾で拭い、立ち上がって元に戻った。
「行きましょう、先生。次はどちらに進むんですか?」


31 :PP×C:2006/12/19(火) 00:47:08 ID:???
ここまで。

>>誰か氏

相変わらず惹き付けられる展開が素晴らしいです。
正直、次回が待ち遠しい。

バイオの方も物語が始動してきた感じで期待しています。


32 :マロン名無しさん:2006/12/19(火) 01:32:27 ID:???
つまり罠にかかった奴らは生きてるけど疑心暗鬼でベホイミが乙女を殺っちゃったと

33 :PP×C:2006/12/19(火) 01:58:52 ID:???
補足

・建造物自体は中央部がくりぬかれた27×27×27の立方体。
・同じスタイルの三段階の立方体単位によって構成される。
・三文字のアルファベットは大きい順に三段階の単位の座標空間上に位置を指定する。
・アルファベットに一人のイニシャルが二つともに入っていれば、その人物が罠を起動させる。
・二人のイニシャルが一つずつ入っていればその二人が揃うことで罠は起動する。
・部屋は三段階の規模で、同じ規則によって移動する。
・各単位における立方体の八角は不動。
・いずれの規模の移動でも、部屋は四回の移動で元の位置に戻る。
・六時間ごとに大キューブは完全に復元される(これは劇中では未言及)。
・唯一分かっている出口は【GGG】で、これは最上階の端っこの一つに存在する完全不動の部屋。

一応上記のことだけわかればいいかな・・・と。

そして投稿後にまたとんでもない凡ミスに気がつくという罠。
【ABC】は(1,1,1)>(1,1,2)>(1,1,3)ですね。
gdgdっぷりに自分でもイヤになる・・・

34 :マロン名無しさん:2006/12/19(火) 14:37:01 ID:???
>>33
GJ!gdgdではないと思うぜ
気にすることないと思うぜ

35 :マロン名無しさん:2006/12/19(火) 17:43:32 ID:???
>>33
いつもながらGJ!
そこに書いてあるのは確定と見なしていいのだろうか。

36 :Pani PoniHAZARD:2006/12/19(火) 21:48:52 ID:???
>>33 GJ
正直そこまで出来るのが羨ましい、俺にはさっぱりわからん。
ですので自分のは途中でグダグダになるかも知れません。
そうならないように努力しますが。
そろそろ題名付けようと思いましたが思いつかなかったので無難につなげてみました。
次行きます




37 :Pani PoniHAZARD:2006/12/19(火) 22:19:08 ID:???
柏木姉妹は驚いた。当然だろう、いきなり修が血相変えて
飛び込んできたのだから。

「ハァ・・ハァ・・ハァ・・」
「何よ!?どうしたの!?ちょっと修!」
「も、桃瀬君!?大丈夫しっかりして!」
「まあ待て、さあ、とりあえず水でも飲んで落ち着きなさい、ホラ」
バーテンは冷静にドアを閉めミネラルウォーターをグラスに注ぎ修に差し出した。
修は水の入ったグラスをひったくると一気に飲み干した。
「どうだ?落ち着いたか?」
「ハァ・・はい、大丈夫・・です」
「どうしたのよ?何かあったの?オバケでも出たの?」
「へ・・オ、オバケ・・」
姉妹は困惑の色を隠せなかった。

「(言わなきゃ・・大変なことが・・五十嵐先生が・・)」
修は恐ろしく鼓動が早い心臓を手で押さえつつさきほど見てきた
惨劇の状況を伝えようとした。しかしあまりにショックだったのか
上手く言葉が出てこない、喋ろうと思えば思うほど言葉が詰まった。
「ねえ・・ちょっと、ホントに大丈夫?何があったの?五十嵐先生は?」
「・・!!そうだよ!大変なんだよ!五十嵐先生が・・・」
やっとのことで修の口が開いた。このことを伝えなくてはならない、五十嵐先生が死んだ。
そう、それもよりによって修学旅行でのリゾート地という世間から離れて骨休めをするような場所で
獣の手にかかって死んでしまったこと。しかし修の言葉は最後まで伝わることは無かった。


38 :Pani PoniHAZARD:2006/12/19(火) 22:19:45 ID:???
カランカラン、ドアの開けられたとき鳴るベルの音、それはドアが開けられ客がやってきたことを示す。
その「客」はそこに立っていた。頭を下に下げうなだれた格好でその場に立ち尽くしていた。
その姿は山に生えている枯れ木を連想させた。

「・・?どうしたんだ。あんた?どこか具合でも悪いのか?」
バーテンはその店に入ってきた「客」に近づいていった。それを優麻は怪訝そうに見つめ
優奈はおそるおそる見つめていた。修は動けなかった。声も出なかった。
同じだ
修は「客」を見てそう思った。五十嵐先生を食っていた獣、いや、犬と。
なぜかはわからない、ただ修はそう思っていた。いけない、近づくな。
心の中で何度も叫ぶが声にならない、体も動かない。
「おい・・あんた・・」
バーテンが客の近くまで近寄って行った刹那、「客」はバーテンの首筋に
狙いを定め、恐るべき力でバーテンを捕らえ、噛み付いた。

39 :Pani PoniHAZARD:2006/12/19(火) 22:50:50 ID:???
「うっうわあああああ!!!」
「きゃああああ!!」
「いやああああああああ!!!」

山の中の小さなバーに三人の叫び声がこだました。
「うあああああああああ!!!」
バーテンは首筋に噛み付いてきた「客」いや「化け物」を必死に振りほどこうとした。
しかし離れない、それどころかどんどん化け物の歯はバーテンの首筋に食い込んでいく。
「い、いや・・嫌ぁぁ・・ッ」
優麻は完全に腰を抜かしてしまっていた。
「あ、あああああ・・」
優奈にいたっては状況を全く理解できていないようだった。
そうこうしているうちに化け物はバーテンに体重を掛け、そのまま押し倒し
首筋を思い切り噛み千切った。
「ギャああああああああッッ!!!」
バーテンの首から瞬く間に鮮血がほとばしった、その吹き出した血が床を紅色に染めていく。
そのまま化け物はもう一度バーテンの首に噛り付いた。今度は肉を味わうかのように、そして
また勢いよく首の肉を噛み千切った。
「あぁぁあああああぁあああぁぁあぁぁ・・・・」
すでにバーテンの悲鳴は出なくなっていた。そして少し体を動かしたかと思うと、すぐに動かなくなった。


40 :Pani PoniHAZARD:2006/12/19(火) 22:59:36 ID:???
修は動けなかった。やっぱりだ、やっぱりこいつはあの犬たちと一緒なんだ。こいつも、人を食べるんだ。
疑惑が確信に変わった。もっとも今回の場合はその確信こそが修に絶望を与えていた。
殺される
その言葉が頭の中をぐるぐると巡っている、バーテンを食べ終わったらこいつは次にこの三人の誰かを
狙うだろう、それがもし自分だったら、嫌だ。まだ死にたくない、だったらどうする?逃げろ、ここから早く逃げろ
逃げなければ殺される、自分も五十嵐先生やバーテンのように食われてしまう、修は混乱していた。
考えれば考えるほど頭の中がごちゃごちゃになっていった。

そして、化け物が頭を上げた。バーテンの首から下にかけては無残な姿になっていた。
「ア、アアア・・」
化け物はうめき声を上げながらゆっくりと立ち上がった。そしてようやく立ち上がろうとしていた柏木優麻の方を向くと
手を前に突き出し、優麻に向かって歩き始めた。
「優っ・・優麻ちゃん・・」
優奈は涙目になりながらもその場を動かなかった。いや動けなかった。
「嫌っ!来ないでよ、来ないでよ!!」
優麻は化け物に対して叫びながら静止を呼びかけた。しかし止まるはずがない、
そのまま化け物は優麻に向かって倒れこんだ。
そしてその元陸上部だったころの優麻を支えていた足に思い切り噛み付いた。

「イヤァァァァ!、止めて!、離して!痛い!いたいぃぃ!!」
「優麻ちゃああん!!」
優麻はもう片方の足で必死に反撃を試みるが上手くいかない、みるみるうちに優麻の足から
血が出てくる、「離してぇ!!離して!!」優麻の悲痛な叫びが上がった。
そして、それを混乱したままの頭で見た桃瀬修は、先ほどまでが嘘のように素早く立ち上がると、無我夢中で
優麻の足に食らいついている化け物の頭を踏み潰した。

41 :チラ裏:2006/12/19(火) 23:02:03 ID:???
今日はここまでです、何か指摘あったら宜しくお願いします
あと各人の呼び方とか一人称はメチャクチャになると思うので
その辺も指摘してくれると助かります


42 :マロン名無しさん:2006/12/19(火) 23:35:15 ID:???
乙。

ついでに指摘。
たぶん優麻のセリフだと思うが優麻は「修」とは呼ばない。

43 :マロン名無しさん:2006/12/20(水) 01:22:38 ID:???
独白の人です。
続き投下します。

44 :43:2006/12/20(水) 01:27:04 ID:???
<南条操の独白:2>

湯上りに犬神君の入れてくれたレモネードが、私を内側から更に暖めてくれた。
私の心の中の氷も、次第に溶けていくような、そんな気がした。

いつの間にか私は、父の逮捕後に自分の身に起きたことを、犬神君に
話し始めていた。

最初は冷静なつもりだった。
家のために、会社のために、私が犠牲になれば、それで全て収まるのだ。
それだけのことだ…。

でも、私の頬を伝う熱いものは、何なんだろう。
私が叔父に、「はい」と言えば全て丸く収まる、それだけのことなのに…。

犬神君は、黙って、ただ頷きながら、そんな私の話を聞いてくれていた。
時計の針の立てる音が、やたら耳に響いた。

45 :43:2006/12/20(水) 01:27:51 ID:???
<犬神つるぎの独白:2>

南条が、嫁に行く…。
それも、自分の意思ではなく、家のために、顔も知らない相手に。
この、平成の時代に。
私は、それをにわかには信じることができなかった。

普段はクールぶってるくせに、無邪気な笑顔で動物と戯れたり、
突然私に甘えてきたり、それを芹沢にからかわれて赤くなったりする、
あの南条が。
見かけに似合わずスポーツがからっきしダメで、勉強も全然ダメで、
でも意外に料理や裁縫が上手な、そしてそれを褒められて照れたりしている、
あの南条が。

「南条!」

気付いたら、私は南条を抱きしめていた。
南条を、誰にも渡したくなかった。

「お前、それでいいのか!?
 そんなの、叔父貴とやらの権力争いの道具にされてるだけじゃないのか!?
 何でお前が、そんなもの背負わなきゃならないんだ!?
 …お前は、お前という存在は、お前自身のものじゃないのか!?」

私の肩に、熱い滴がじわじわと染み込んでいた。

「…犬神君!」

南条は嗚咽の中、搾り出すように言った。

私たちは、どちらからともなくキスを交わした。
南条のあの甘い匂いと、涙の塩気の混ざった、複雑な味がした。

46 :43:2006/12/20(水) 01:31:43 ID:???
今回は以上です。
なんか独白じゃなくなってきたりギャルゲー風味になってきたりしてますが、
今しばらくお付き合い願います。

…この後の展開、どうしようOTL

>PP×Cさん
希望も見え、サスペンス要素も出てきて、ますます目が離せなくなってきました。
乙女の死の背景、気になります。
WKTKして続き待ってますよ。

>Pani Poni HAZARDさん
いよいよ来ましたね!
荒削りなところも若干目に付きますが、スピード感、臨場感にドキドキでした。
これも目が離せない!

47 :マロン名無しさん:2006/12/20(水) 03:03:57 ID:???
>>43
GJ

ぱにぽにハザードは鬱展開確定で怖いねえ
優麻は生き延びてもかゆうまになっちゃうわけだ

48 :マロン名無しさん:2006/12/20(水) 09:06:19 ID:???
新スレで、たくさん投下されてて驚いた。
(*^ー゚)b グッジョブ!!

49 :マロン名無しさん:2006/12/20(水) 21:51:49 ID:mkjLCPq9
みんなGJ そして保守あげ

50 :PP×C:2006/12/21(木) 02:14:15 ID:???
<パート19>

 レベッカに従い、彼女らはひたすら部屋を進み、時女には何時間も一つの部屋に留まり、最上階を目指した。
三人の疲労は限界点にまで達していた。しかし、それでも先に進むのを諦めなかった。
もし一回チャンスを逃せば、最悪三日間次の周回を待たねばならなくなる。
後三日もこの中にいれば、脱水症状が進行して命の危険もある。
もちろん、何回も上の扉から移動することは各人の疲労面から考えても非常に難しいことだった。
だからこそ、レベッカの言うエレベーターを活用することこそが出口への一本道だった。
走っては待ち、待っては走り、を幾度となく繰り返すしかなかったのだ。
「よし、白い部屋だ。何とか間に合ったな」
「これはどういう動きで?」
「最上レイヤーに移動するための中ユニットサイクルさ。これを逃したら大変なことになっていた・・・・・・」

 次の瞬間、とてつもない大音響を立てて中ユニットが動き出す。
最も大きい起動音を、その内部から聞くのはまさに恐ろしい拷問のようだった。
三人は必死に耳を塞ぎ、音と揺れの静まるのを待った。
 やがて、部屋は止まった。三人は遂に大キューブ最上レイヤーに辿り着いたのだ。
レベッカの計算では、この部屋はもと中層レイヤー16階に存在していたため、今回の移動で一気に25階にまで浮上してきたという。
目指す最上27階まであと二階を登るだけだ。ここまできたら、他に仕方がないから真上の扉を攀じ登るしかない。
元々運動が得意でなかったレベッカと姫子は覚悟を決める必要があった。
 彼女たちは罠を迂回するようにキューブの端まで並行に移動し、遂に【GGJ】にまで到達した。
この後、隣の【GGA】に移動し、いよいよ二階上を目指すために上の扉に攀じ登る。
 これまでも何度か上の扉を利用してきたが、その度に体力の限界から床に落ちそうになって冷や汗をかかされた。
さすがに6メートル下に落ちたら大怪我ではすまない。
 まず、体力のある神原が先頭を行き、うまく梯子を雲梯し、扉のところで梯子に足をかけて宙吊りになる。
そして、逆さまのままゆっくりハンドルを廻して扉を開き、扉が閉まるのを抑えつつ、すぐさま通路の中に潜り込む。
ここが極めて危ない。何度も落ちそうになって、その度に下で見ているレベッカと姫子の肝を潰した。

51 :PP×C:2006/12/21(木) 02:16:47 ID:???
 ようやく通路の中に入った神原は、扉を半開きにして足で抑え、次の登攀者を手招く。
大抵、次はレベッカで、震える腕を必死に天井の梯子に掴まらせ、一杯一杯のところで扉に辿り着き、そこで神原の手を借りて通路の中に引き上げられる。
その後、邪魔にならないようにキャットウォーク(それよりはむしろ煙突のチューブであるというのが妥当だが)の中を両手両足で壁を伝って登っていく。
レベッカが上の部屋へと抜け出たことを確認した神原は、今度は下で待つ姫子を呼んで同じことを繰り返す。
姫子は天井にぶら下がるたびに大声で何かを叫ぶ。
神原は顔を真っ赤にして限界を訴える姫子を励まし、何とか彼女の手を掴んで上へ引き上げる。
全てが非常に危険な、骨の折れる重労働なのである。

 かくして二階分を登りきり、精根尽き果てその場に突っ伏す三人。
しかし、この部屋こそが【GGG】、つまり、ゴールなのだ。
三人は息を切らせながら、残る死力を振り絞り、外向きの扉を開く。
その瞬間、扉の向こうからどっと冷気がなだれ込み、遥か闇の先に向かって伸びる一本の架橋が目に飛び込んできた。
「やった・・・・・・遂にやったぞ!出口だ!」
 レベッカは目に涙を浮かべて喜ぶ。残る二人の口元にも喜びの綻びが浮かぶ。
遂に長い長い道のりを経て、彼女たちは出口に到達したのだ。
生きて、この地獄から生還したのだ。

52 :PP×C:2006/12/21(木) 02:17:41 ID:???
 三人が喜びの声を上げていると、背後の扉のハンドルが廻った。
驚いて様子を窺っていると、そこから現れたのは犬神だった。
「おや、先生・・・・・・また出会いましたね」
「犬神!よかった、無事だったのか!」
レベッカは嬉しそうに微笑みながら犬神の顔を見る。
部屋の中に下り立った犬神は無表情に佇んでいた。
「喜べ、ここが出口だ。出られるんだ、出られるんだぞ!」
レベッカは扉を指差し、我を忘れてはしゃぐ。
「そうですか」
犬神の声は冷静だった。
「犬神さん?」
不審に思った神原が彼の背後に歩み寄る――次の瞬間。
 犬神は鋭い眼光を解き放ち、目にも留まらぬスピードで、ベルトバックルに偽装されたプッシュ・ダガーを引き抜いた。
振り向き様に鋭い一閃が煌き、空を切る音よりも早く神原の喉元を切り裂いた。
赤い血が破裂した水風船のように恐ろしい勢いで吹き出し、神原はみるみる顔色を蒼褪めさせて、何も言うことなくその場に倒れこんだ。
「な・・・・・・!」
 余りに突然のことで、レベッカも姫子も、目の前で起こったことを理解することが出来なかった。
犬神が神原を殺した。
何故?どうして!?
「先生、ゲームオーバーですよ」
 犬神の一言により、レベッカはようやく全てを理解した。


53 :PP×C:2006/12/21(木) 02:19:59 ID:???
<パート20>

 「犬神・・・・・・そうか、お前が裏切り者だったんだな?」
 レベッカは相手を睨みつけ、精一杯の虚勢を張って相対する。
彼女の身体を支える両足は小刻みに震えていた。
「ええ、そうですよ。貴女たちを全員始末するのが私の役割なんです」
 犬神は握りの中のナイフを翻した。そして付け加えるように言った。
「まさに一人残らず、ね」
「犬神、お前・・・・・・」
「犬神君!」
姫子が両者の間に割って入る。
「どうしてこんなことするの!?私、分からない・・・・・・どうして、どうして・・・・・・」
「片桐、本当は分かっているんだろう?私たちはみなそれぞれの役割を演じているに過ぎないって」
「どういう意味さ?」
「我々は全員がそれぞれの役割を果たすためにこの中に放り込まれたんだ。
宮本先生は出口を見つけるために、君はそれを助けるために、そして私は――キューブから脱出した唯一のサバイバーとなるために」
「何を・・・・・・」
茫然とする姫子の後ろでレベッカは低く押し殺した声で訊ねる。
「犬神・・・・・・南条グループに雇われたのか、私たちを追い詰める最後の切り札として」
 憤懣と絶望の色が滲み出るようなレベッカの声色。
しかし犬神は表情一つ変えず、逆に嘲るような口ぶりで返した。
「南条グループ?・・・・・・先生、まさか南条の証言を本気にしているんですか?」
「だったらお前の雇い主は誰だ!」
「雇い主などいませんよ。私を選んだのはキューブです。私も、貴女も全ての人間はキューブの意思によってキューブそのものに同化されるのです」
「デタラメだ。こんなオモチャに意思など存在しない。
犬神、お前は狂っているんだ。お前は自らの意思をキューブの意思だといってその行為を正当化しようとしている狂信的な確信犯だ。全て詭弁に過ぎない!」


54 :PP×C:2006/12/21(木) 02:22:13 ID:???
「何を馬鹿げたことを。笑止千万ですね。貴女だって本当は自ら望んでキューブの一部になろうとしていたんでしょう?
私が唯一の生還者となるのはキューブによって運命付けられた予定調和なのです。
私だけがここから抜け出すことによって、私の存在はキューブに認められ、キューブそのものになることが出来る。
そのためには貴女たちをここから生きて逃すわけにはいかない。
貴女たちは私に殺されることによって同じくキューブの一部になることが出来るんですよ。むしろ感謝していただきたいですね」
「ほざけ!そうか・・・・・・乙女を殺したのはお前だな?
私はお前を許すわけにはいかない。キューブの一部になる?冗談じゃない。
私は何がなんでもここを出るぞ。外へ出て、私はこれに関わる全ての悪を告発してみせる!」
「悪?天才らしからぬ非論理的な発言ですね。ここに悪など存在しない。
悪とは左から見ていた物を右から見直すことに過ぎませんよ。
大体、外って何ですか?外なんて何処にあるんですか?そんなものがあったとして、どうしてそれがこの世界を裁くことが出来るのですか?
貴女はキューブから逃れることは出来ない。全てはキューブの意のままに動くのだから」
「やはりお前は狂っている。ストレスに耐え切れなくなって発狂したか・・・・・・とにかく、これ以上お前の戯言に付き合っていることは出来ない。おい、姫子、外へ出るぞ」
「させるか!」
「キャッ!」

 我を忘れて立ち尽くしていた姫子が次に正気に戻ったとき、その腹に赤い染みが広がっていた。
愕然として頭を上げると、目の前に両手を血に染めた犬神が立っている。
腹の辺りが痺れ始め、震える指をそこに当てると、真っ赤な血が止め処なく溢れ出している。
姫子は次第に意識が遠退き、その場に倒れこんだ。


55 :PP×C:2006/12/21(木) 02:23:48 ID:???
「姫子!」
 レベッカは叫んだ。
しかし姫子は振り向くこともなく倒れ、床にうつ伏せて苦痛の唸り声を上げている。
そしてその向こうから、銀色の暗器を赤く染めた犬神がゆっくり近づいてくる。
「次は貴女の番だ、宮本先生」
「やめろ・・・・・・く、くるな!」
「キューブがそれを望んでいる。重要なのは貴女がここにいることではない。ここにいたという事実だけだ」
 レベッカは後ずさりしながら両手を差し出す。
犬神は獲物を追い詰めた猟犬のような目つきでさらに詰め寄る。
レベッカは遂に部屋の隅にまで追い詰められ、いよいよ逃げ場を失った。
犬神はゆっくり、しかし着実に迫り来る。
「よ、よせ!やめるんだっ!」
「先生、貴女はキューブの一部であり、貴女が死ぬこともキューブの一部に過ぎない。私だって同じだ。何人たりともそれに抗うことは出来ない・・・・・・」
 犬神はナイフを持った手を大きく振り被った。
レベッカは思わず目を瞑り、最期の時を覚悟した。

「待て!」
 その時犬神の背後から、扉の開く音とともに一声が飛び込んだ。


56 :PP×C:2006/12/21(木) 02:30:52 ID:???
ここまで。終わりが見えてきました。

>>35

>>33が確定の設定です。
と、いうよりもこの設定を元に作ったはずなのですが・・・色々と綻びが出てきて大変なことに。

バイオ氏、独白氏ともに乙です。激しくなってきましたね・・・

57 :マロン名無しさん:2006/12/21(木) 02:35:03 ID:???
乙です

そろそろクライッマクスですね

58 :マロン名無しさん:2006/12/21(木) 07:41:01 ID:???
>>56
GJ!
誰だよ…。ベタながらやはりこの終り方が一番気になるな

59 :マロン名無しさん:2006/12/21(木) 20:43:29 ID:???
独白の人です。
今度は南条。
ラブシーンは今回オミットですが、リクエストが多ければ後で書きますw

60 :マロン名無しさん:2006/12/21(木) 20:44:14 ID:???
<南条操の独白:3>

夜が、白々と明け始めていた。
桃月の雪景色も、次第にブルーから紫、オレンジへと色を変えつつあった。

東京にこんなに雪が降ったのは、いつ以来だろう。
…南国生まれのゾウの介やキリン子たちが凍えていないといいけれど。
今日は都内の交通も大混乱だろうから、ペットたちの体調に異変があれば
ちょっとまずいことになるかもしれない。

冷静にペットたちのことを考えようと思う一方、昨夜のことを思うと
顔が赤くなるのが自分でもわかった。

犬神君…犬神君が、初めて私を「操」と呼んでくれた。
私を受け止めてくれた。
私を見つめてくれた。

私を、「南条家の操」ではなく、ただの「操」として扱ってくれた。
本当の私を見てくれた。

嬉しかった。
私を、普通の女の子として扱ってくれたことが、本当に嬉しかった。

61 :マロン名無しさん:2006/12/21(木) 20:45:14 ID:???
「…でも、ちょっと痛かったですわよ。」

そう言いながら私は、さっきまで自分が寝ていた隣で寝息を立てる
犬神君の頬に、そっと口付けた。
そして、もう一言呟いた。

「…ありがとう、犬神君。」

私は居間のテーブルの上に置手紙を残し、犬神君の家をあとにした。

早朝の冷えた空気が肺に染み込んでくる。
昨日に続いて、今日も本当に寒くなりそうだ。

もう私は迷わなかった。
決して軽い足取りではないが、かと言って重くもなかった。
薄青い空に、雀が飛んでいった。

62 :マロン名無しさん:2006/12/21(木) 20:46:28 ID:???
今回は以上です。
前スレで初期学級崩壊スレ風味のSSのリクエストがありましたが、
これが完結するまで、もう少し待っててくださいね。
あとちょっとで終わりますから。

63 :マロン名無しさん:2006/12/21(木) 20:51:10 ID:???
あと皆さん、レスありがとうございます。

>PP×Cさん
姫子!
神原!
今回もGJですね。
ずっとドキドキさせられっぱなしです。
続き楽しみにしてますよ。

64 :Pani PoniHAZARD :2006/12/22(金) 15:20:24 ID:???
次行きます、そろそろ他のキャラにスポット当てていきたいと
思うので、次からは別キャラの話にします

自分でも驚いた。さっきまで自分たちを恐怖のどん底
に突き落とした化け物を、自分は思い切り踏み潰したのだ。
虫を踏むみたいに、全く動かなかった体が嘘の様な速さで動いた。
そしてとっさに優麻の肩をつかんで揺さぶる。
「柏木、大丈夫か!?怪我は!?歩けるか!?」
またさっきまで出そうとしても出なかった声が出る、それも思ったことが
すらすらと口からすべるように出て行く、修は不思議だった。しかし、そんなこと
について今考えている暇はない、この化け物は殺した。しかしまだ同じような奴が
いるかもしれない、とにかくここにいるのは危険だ。修はそう判断した。先ほどまで
恐怖におののいていた人間とは思えなかった。

「桃瀬くん・・?」
優麻は驚いた。いつものらりくらりしているあの桃瀬が別人のようになっている
確かに生徒会の役員だったり運動神経も良く成績も悪くない
だけどここまで頼もしさを感じるのは初めてだった。
「おい、柏木!聞こえるか!?大丈夫か!?」
「えっ・・あっ!う、うん、大丈夫よ大丈夫!!血は出てるけど歩けないわけじゃ・・よいしょ」
優麻は痛そうにしながら体を上げた。確かに歩けるようだがその顔は明らかに痛みに耐えていた。
「ふえ〜ん、優麻ちゃあああん〜怖かったよ〜」
優奈は泣きながら優麻に抱きついた。
「ちょっと優奈ちゃん〜そんなに泣かなくてもいいじゃないのよ!」
「だって〜優麻ちゃんが食べられちゃうかもって・・」
「大丈夫よ優奈ちゃん、私があんな奴に食べられたりするわけないでしょ?」
「ぐす・・うん・・」
「だから泣かないで、ホラ、泣き止んでよ」
さっきまで化け物に襲われて殺されそうだったというのに、優麻は優奈を
慰めている、なんだかんだ言ってるけど、やっぱりお姉ちゃんなんだな
と、抱きしめあう柏木姉妹を見て修はそんなことを考えていた。

65 :Pani PoniHAZARD :2006/12/22(金) 15:21:30 ID:???
ふと気付いた。自分にもいるではないか、C組の連中からは地味だのなんだのと言われ
いつも自分の自己アピールに必死なわが愚妹、くるみ・・その刹那いろいろなことが頭を巡った。
まさかあの化け物はこのあたりだけじゃなく、この島全域にいるのではないか、この島はかなり広い上に
色々な施設がある、他の生徒たちはそれぞれの行きたい所に行ってしまった。つまり誰が何処にいるか
全くわからない勿論、くるみも、もうとうに日は沈んでいる、これから待つのは漆黒の闇が訪れる夜、みんな
が危ない―――――しかし、どうするのか、皆と合流するにしてもちりぢりになってしまっている、もう皆を当てに
することは望まない方がいいのかもしれない、とすると行き着く結論は一つ、とにかくここから離れ、他の生徒を
探す、そして万が一の事を考えこの島から出る方法を考える。これだった。優麻の怪我の具合も心配だ。
本人はああ言っているがかなり痛そうだ。それにあんな化け物に齧られたのだから早く治療してやりたい。
しかし道中何が現れるかわからない・・身を守るものがいる、そう考えた
修はカウンターの中を覗いてみた。果物ナイフが一本、余りにも頼りないが今はそんなことも言ってられない。
ナイフをポケットに入れると裏口のドアが開くことを確認した。

66 :Pani PoniHAZARD :2006/12/22(金) 15:22:59 ID:???
「柏木、歩けるか?」
「うん、ちょっと痛いけど、歩けるわ・・・・・・それより聞きたいんだけど、なんなの、これ!!!」
優麻はいきなり声を張り上げた。
「五十嵐先生がいなくなったと思ったら桃瀬君はいきなり店に飛び込んでくるし変なオバケは出てくるし
バーテンの人は殺されちゃうし!!なんなのよ!!せっかくの旅行なのに!!どういうことなのよ!説明してよ!!」
凄い剣幕だった。とてもさっき腰を抜かしていた人間とは思えない、しかし当然だろう、こんな目に遭っているのだから。
「優麻ちゃん・・」
優奈はいつもの顔で心配そうに修と優麻の顔を交互に見ていた。
「俺にもわからねぇよ・・ただ、一つ言っておくよ、五十嵐先生は・・・死んだ」
「えっ・・・・何それ、どういうこと?説明してよ、嘘でしょ!?ねえ!」
「嘘じゃない・・俺が探しに言ったときにはもう・・死んでたんだ。」
「嫌・・イヤ・・いや・・なんで・・嘘よ・・なんで、なんでこんなことに・・・」
そのまま優麻は泣き崩れた。優奈は優麻に駆け寄っていった。優奈も泣いていた。

「(なんでこんなことに か ―――俺が一番聞きたいよ)」


67 :Pani PoniHAZARD :2006/12/22(金) 15:23:56 ID:???
「ねえ、桃瀬君・・これからどうするの?」
ようやく泣き止んだのか優麻が顔を上げ修に尋ねた。
「・・とにかくここから離れて、人がいる所に行こう、大変なことが起きたことを、皆に知らせなくちゃいけない」
――――正直自分でも矛盾していることに気付いた。皆を頼りにしてはいけないと思いつつ、ついこのことを皆に
知らせよう、などと言ってしまう、けど、仕方ない、優麻は普段明るいしはきはきした性格だが、こんな状況では
暗くなってしまう、それに怪我もしている、優奈はいつも優麻の影に隠れているような存在だ、姉と比べて気も弱い
そうだ、だからせめて自分がしっかりしなければならない、自分がこの姉妹を無事に安全な所まで送り届けてやらなければ
ならない、自分は今、試練の真っ只中にいる、なら、その試練を乗り越えてやる、そう強く誓った。
「桃瀬君・・?」
優奈も泣きはらして真っ赤になった目をこすりつつ顔を上げた。
「さあ、行こう、ここを出るんだ。皆がいるところを探そう、大丈夫、俺がついてる」
そう行って修は二人に両手を伸ばした。姉妹はそれぞれの手をしっかり掴むと立ち上がった。
「桃瀬君・・ごめんね、怒鳴ったりして、桃瀬君も・・私たちと同じなのに・・」
優麻が申し訳なさそうに言った。こんなにしょぼくれた優麻は始めて見る。
修はにこりと笑うと言った。
「大丈夫だよ、さあ、行こう!!」
そうだ、少しネガティブになりすぎていた。確かにこの状況は危険だ、だけど皆が全員
こんな状況なわけではないだろう、もしかしたら化け物の様な物が出るのはこのあたりだけなのかもしれない
だったら自分たちがここを出て皆や先生に報告すれば全て解決だ。あとは任せていればいい、そう、なるようになるさ
修にいつものポジティブさが蘇ってきた。しかし誓いを忘れたわけではない、こいつらは絶対俺が守る、再び硬く決意した。
静かに裏口のノブを回し、ドアを開ける、目の前には暗黒が広がっていた。懐中電灯の灯りをつけると。
三人は静かに漆黒の闇へと消えていった。

68 :Pani PoniHAZARD :2006/12/22(金) 15:24:27 ID:???
ロックフォート島ホテルのロビー、もはや通常利用客のいないこの場所で来栖柚子は
天井を見上げたまま倒れていた。体はグチャグチャでその目は生きている生物の目ではなく
すでに来栖が絶命していることを示していた。その来栖の体を心ゆくまで味わった化け物―――芹沢茜は
強烈な飢餓感を解消するために、すでに食べ終わった来栖の体には目もくれず。
新しい「肉」を捜し求めて、ゆっくりと歩き出した。

69 :チラ裏:2006/12/22(金) 15:27:12 ID:???
以上です、少し長くなった・・

>独白氏
南条さん( *´Д`)ハアハア
いやあ続きが気になります
>PP×Cさん
もうすぐ終わりと思うと口惜しいですが
次があったらまた投下してください

70 :マロン名無しさん:2006/12/22(金) 19:37:45 ID:???
>Pani Poni HAZARDさん
GJ!
こっそり仕事中に、むさぼり読んでしまったw

芹沢…(TдT)
地獄が死者で溢れちゃったんですね。
どっちに転んでも鬱エンドになりそうだなぁ…。
でも脳を破壊したら倒せる分、まだ勝ち目がある!

…もしかして、半分食われた来栖、ゾンビになって再登場?

71 :PP×C:2006/12/23(土) 02:15:48 ID:???
<パート21>

 「ベホイミ!?」
 レベッカがその姿を認めるよりも早く、ベホイミは部屋の中に飛び込んできた。
すばやい手つきでナイフを引き抜くと、犬神を相手に身構える。
「ベホイミ・・・・・・先に君の始末をつけておくべきでしたね」
犬神は振り返り、ダガーの刃を水平に構え直した。
ベホイミはナイフを順手に持ち、一定の間隔を詰めながら相手の動きを牽制した。
「もしやと思って宮本先生たちの後をつけていたら、貴方の姿を見つけたっス。迂闊でしたね、先生たちをつけているつもりでいながら自分がつけられていることに気がつかないだなんて」
「ほぅ・・・・・・ベホイミ、流石は探偵というだけある。しかしこれで私は君を探し出す手間が省けましたよ。まさに飛んで火に入る・・・・・・」
犬神は正拳突きを繰り出すようにしてダガーを振付ける。
ベホイミは身体を傾けてその突きをかわし、相手の喉元に目掛けてナイフを差し向ける。
間一髪のところで首を逸らせた犬神は下がり際に相手の腕を目掛けて刃を振り下ろす。
ベホイミの手首に切創が入り、俄かに血が滲み出す。
しかし彼女は全くそれを意に介さず、続けて刃を振るう。
ナイフは犬神の胸元をかすめ、その白いワイシャツの上に一文字模様が赤い色に染まり始める。
両者は目にも留まらぬ早業でナイフを繰り出しあったが、やがてどちらも歩を一足下げて、構えたまま睨み合った。
二人とも息遣い荒く、体中に無数の切り傷が出来ている。
 レベッカは二人の驚異的な白兵戦を目の当たりにし、興奮に目を瞠った。
しかし、すぐに気がつくと、隙を見計らって腹を刺された姫子の元に走り寄り、その身体を抱き上げた。
姫子の顔は蒼白で、その呼吸はまさに風前の灯であった。
「犬神君・・・・・・アンタって人は!」
ベホイミはナイフを振りながら相手を牽制しつつ、苦しげな声で喚いた。
「ベホイミ・・・・・・哀れな女め」
「正体が分かった時点でアンタを殺しておくべきだった」
「そうしなかったのは君のミスだな」
「キューブはお前の味方なんかじゃない。お前が生き残ろうが死のうが、キューブは何も関知しない。自惚れるなっス!」

72 :PP×C:2006/12/23(土) 02:17:57 ID:???
「私は私のやるべきことをやるまでだ。
ベホイミ、君こそ自暴自棄になるのはやめたまえ。自分の名前が登録されていないからって、キューブからその存在を認められなかったからって、嫉妬して世界に反抗するのはいかにも醜く浅ましいことだ」
「うるさい!キューブは人間のことなどどうでもいいんだ。人間などいなくても、キューブは動き続ける!それに身を任せた時点で、お前は人間ではなく機械の歯車に成り下がったんだ!恥を知れ!」
「歯車にもなれない不良品が何をほざく!」
 犬神の一閃がベホイミの目前をかすめる。
ベホイミは反動で突き上げるようにナイフを繰り出す。
が、わずかに体制を崩して勢いが足らず、その手は犬神の左腕に捕捉された。
「くっ!」
「終わりだ、ベホイミ!」
 ベホイミの顔を目掛けて犬神のダガーが飛んでくる。
咄嗟にベホイミは犬神の腕を捻り返し、ナイフを捨てて飛びかかる。
相手に抱きつくようにして身体ごと寄りかかったが、そのために均衡を失った二人の身体はその場に倒れこんだ。
一瞬の隙を突いてベホイミは相手の右腕を捕捉し、その両手の力を目一杯に発揮して捻りつけ、相手の手が痺れたところを床に叩きつけてダガーを叩き落とさせる。
床の上にナイフが転がり落ち、揉み合いとなった二人は床の上を転がり回った。
「宮本先生!床の扉を!」
ベホイミが相手の顔面を殴りながら叫んだ。
その直後、犬神の反撃の一打によって形勢が反転する。
掴み合い殴り合いはより激しさを増す。
 レベッカは慌てて床の扉に駆け寄ると、訳も分からず、言うとおりにハンドルを廻して扉を開けた。
すぐ目の前で二人の激しい格闘が行われており、彼女は恐怖の余りその場から動けなくなった。
「このぉっ!」
ベホイミは力任せに立ち上がり、犬神の足を掴んで相手を思い切り押し込んだ。
その先にあったのは奈落の底、扉を手で押さえるレベッカの目前で、猛烈な勢いをつけた二人は下向きの通路の中に転落した。
「だ、大丈夫か!?」
レベッカは中を覗き込んで二人の様子を確認した。
頭から血を流した犬神とベホイミが、なおもそこで決死の格闘を演じている。
「先生!はやく、はやく扉を閉めるっス!」
「でも、そんなことしたらお前が!」
「私のことはいいから、はやく!」
「でも!」

73 :PP×C:2006/12/23(土) 02:19:18 ID:???
「先生!お願いするっス!先生は生き残るんです!先生なら、キューブを超越することができるっス!だから――」
「何のことだ!?わからない!」
「とにかく閉めるっス!」
 ベホイミは犬神の頭に一撃を食らわせ、相手が怯んだところを隙と見てその場にしゃがみ込んだ。
そうして、床のハンドルに手をかけて強烈な勢いでそれを廻した。
犬神がすぐにその背後から彼女に飛び掛ったが、ベホイミは手を止めることがなかった。
そして――
「ベホイミ!」
 扉が開け放たれ、二人は揉み合いになりながらその下の部屋に転落した。
柔らかいものが硬い床に叩きつけられるような厭な音が聞こえたかと思ったが、二人の手を離れた扉は自動的に閉まり始めており、レベッカには下の部屋の二人の様子について、最早知るべく術はなかった。
彼女は苦悶に表情を歪めながら、彼女の手に掴まれた扉も放した。
扉はゆっくりと、自動的に閉まり、やがて何事もなかったかのように静止した。

 レベッカは茫然自失としたまましばらく硬直していたが、やがて突っ伏した姫子のもとに歩み寄った。
姫子はもう息をしていなかった。
レベッカは神原と姫子の身体から溢れ出した血の海を渡って扉のほうに歩いて行った。
 横たわる二人の亡骸を横目に見つつ、神々しいほどの静寂の空間を突き進んだ。

 梯子を上り、ハンドルに手をかける。
扉が開かれ、その先には外世界へとつながる一本道。
レベッカはそのずっと先を見つめ、しばらく考え込んでいたが、やがて首を振ると――どうしたわけか――扉を再び閉めてしまった。


74 :PP×C:2006/12/23(土) 02:21:29 ID:???
<エピローグ>

 ――背後でまた扉のハンドルが廻り始めた。今度は誰だ?
「誰?」
扉が開き始める前に尋ねた。相手に聞こえるかどうかは定かではないが、不安から先に声を出さずにはいられなかった。
「あ!」
「あれ、先生・・・・・・?」
「・・・・・・何だ、お前たちか。脅かすなよ・・・・・・」
 扉から頭を出したレベッカは不安げに中を覗き込んで辺りを見回した。
「先生、これは一体・・・・・・?ここはどこなんです?」
 怯えきった、震えるような声で訊ねてくるのは朝比奈英理子だった。
レベッカは部屋の中の他の面々を眺めた。
朝比奈の背後で背を丸めて泣き顔なのは宮田晶、彼女はどういう役割を背負っているのか・・・・・・その隣で芹沢茜に縋りつく来栖柚子。あの二人が一緒のパーティになったのは皮肉であるとしか言いようがない。
背後でしきりに壁を弄っているのは模型部の岡本か。彼は既に危ない。
そして奥の方に佇んでいるのは6号・・・・・・今回は一見すると、割りとソフトなメンツだが、今後どうなっていくかは分からない。
生と死を分かつ極限状態に置かれた人間が、狂う、或いはその本性を露呈するのは確かなことであるのだから。
 そして、この中には、必ずや"世界を動かす者"が内包されていることだろう。
いや、全員が既にその一員なのである。
レベッカとこの新たなる六人が、それぞれ役割を果たし、世界の流れに同調し、その動きに参加し、一部始終を目撃せねばならない。
世界とは彼女たち自身なのであり、彼女たちはキューブという世界の一部であり、キューブそのものなのである。
「先生、服に血が・・・・・・!」
 朝比奈がレベッカの服を指差して声を上げた。
彼女の服は赤黒い染みが前面に一杯に広がっていた。レベッカは表情を暗く落とし、狼狽した様子で答えた。
「これは・・・・・・クソッ!聞いてくれ、この建物はとても危険だ。ところどころに罠があって・・・・・・」
「罠?何ですか、それは?」
「私にもよくわからないんだ・・・・・・ただ、ここに来るまで一緒だった姫子が・・・・・・」
「姫子さんが!?」
叫んだのは6号だった。

75 :PP×C:2006/12/23(土) 02:24:25 ID:???
 レベッカはため息をつきながら、泣き出しそうな表情をつくると、嗚咽らしき湿らせた声を演じた。
その場にいた誰もが、レベッカと姫子が渡ってきた危険な道中の創作話に戦慄した。
話の終わり頃には、レベッカは泣き出していた。
いかにも真に迫った嘘と演技だった。


 ――そうだ。デタラメだ。全てはデタラメだったのだ。
犬神が本当にキューブの側からの工作員だったのかはわからない。
ベホイミが最後に言った言葉の意味も分からない。
これが南条の檻かどうかも断言は出来ないし、神原という男が何者だったかも定かではない。
彼ら、彼女らが何だったのか、何もかもが謎のままだった。
そして、そんなことはレベッカにとって、キューブにとってはどうでもいいことだったのだ。
 レベッカ宮本。どうして彼らに打ち明けることが出来ようか、キューブの移動システムの設計者が彼女であったなどということが。
彼女にははじめから部屋の移動システムが理解できていた。当たり前だ。
三段階の座標指定の方式も、それぞれの親ユニット内で十八個の子ユニットしか動かないことも、移動時間の規則性も、全ては彼女自身が決めたことだからだ。
知っていることを知らない振りして突き通すのは色々と耐えがたい。
時計を盗み見て、いい頃合と見計らっては彼女は小出しに自分の知識を彼らに提供していたのだ。
まるで今、その瞬間に思いついたとでもいわんばかりに。
 勿論この建物自体は彼女のほかにも数え切れない設計者、製作者、施工者が存在する。彼女は無数の設計者の一人に過ぎない。
彼女はその他の誰をも知らないし、彼らだってレベッカのことは知るまい。
ひょっとしたら前のパーティの中に、或いはこの新たな六人の中に、レベッカと同じく、この建物の建築に携わった者がいるかもしれない。
それと同時に、レベッカにはほかの人間が手がけたキューブのことについては何も分からない。
殊に、アルファベットの部屋番号と罠の発動条件、工作員の存在やこのキューブを製作したもの、運営しているもの――そんな連中が存在していればの話だが――の正体・・・・・・そんなことは全く知る由も無かった。


76 :PP×C:2006/12/23(土) 02:26:25 ID:???
 レベッカはいつか前に、この設計を何処かから引き受け、わけもわからず才能に任せて描いた移動システムの覚書を引き渡した。
まるで『レクイエム』を手がけたかのモーツァルトのように、全く正体の分からぬ相手に、言われるがまま・・・・・・そして彼女は実際に出来上がったキューブの一部となった。
自分で計算し、建物の青写真以前の構想を打ち立てた自分自身が、その迷宮の中に囚われ、迷宮と一体化してしまった。
 彼女にはもう行くべきところは無い。キューブは彼女自身だ。キューブこそが彼女の世界の限界点だ。
抜け出すことなど出来ないし、抜け出そうなどという気も起こらない。
そもそも、抜け出すって、何処へだ?
その点では犬神と意見が一致している。
もっとも、彼とレベッカとの違いは、外に何もないことを知っていながら、それでもキューブから脱出しようとしたことと、その内に留まろうとしたこととの差だ。
そして彼は何もない外世界の空虚な強迫と神がかり的なキューブの意思なるものの概念との板ばさみから発狂し、殺戮に走った。
それとも計画的だったのか、本当は外に誰かいたのか、この期に及んでは結局何も分からない。何も、何一つ分からないのだ!
 ただ、この中で、キューブの一部として死者の肉を啄ばみ、遭難者たちを出口にまで連れて行く――それがキューブの一部としてのレベッカの存在意義だった。
レベッカはそこまで彼らを連れて行く。スマートなやり方ではなく、時に欺くことすらも厭わずに。
そしてそこに辿り着くまでの遭難者たちを見守る。
 そこから先――実際にあの闇へと続く橋を渡るために扉から外に踏み出すか、それともレベッカと同じように扉を閉め、再び誰かと出会うまで、またもキューブの中を彷徨するか――はその当事たる人物の選ぶべき道である。
彼らが如何なる選択をしようとも、レベッカは何も関せずに踵を返すのみだし、もとよりキューブは何も言わない。
 世界はその扉によって断絶される。
得体の知れない外の闇に飛び込むのか、それともキューブの歯車として動き続けることを選ぶのか・・・・・・


 レベッカは不安げに表情を曇らせる全員の顔を一通り見つめ直し、機械油の如き涙を拭って、言った。
「とにかくここを出よう。きっと出口は見つかるさ・・・・・・」

<FIN>


77 :PP×C:2006/12/23(土) 02:30:28 ID:???
終わりです。今度こそ本当に終わりです。
いろいろ問題があった作品ですが、何とかここまでやってこられました。

ひと段落ついたことだし、これから腰を据えて他の職人さんの作品群をじっくり読み直していきたいと思います。
それでは、長編続き、失礼しました。


78 :マロン名無しさん:2006/12/23(土) 02:32:59 ID:???
Gj!!

最高でした。すごく燃えた。

79 :マロン名無しさん:2006/12/23(土) 04:20:14 ID:???
すげー…文を読んでこんなにも興奮するなんて…
オメガGJ!!!!!!!!!111

80 :マロン名無しさん:2006/12/23(土) 09:37:54 ID:???
Ω面白かったです。こりゃすげーわ。またあとでまとめて読みます。

81 :マロン名無しさん:2006/12/23(土) 13:55:23 ID:???
独白の人です。
なんか旧スレは微妙なことになっているみたいですが、
こちらで続けさせていただきます。

今回は犬神の独白です。
これで南条・犬神の連作は最後になりますが、よかったら
読んでやってください。

82 :81:2006/12/23(土) 13:56:46 ID:???
<犬神つるぎの独白:3>

あれから南条は、学校に来なくなった。
ケータイも、圏外か電源が入っていない、を繰り返すばかりだった。

私は、南条の家の前まで幾度となく足を運んだ。
しかしその度に、フェンスと門の高さに足を阻まれた。
一介の高校生には、どうすることもできなかった。

でもあれは、間違いなく真実だった。
私のセーターの肩のマスカラの染みと、シーツにできた血の汚れが、
あれが現実だったことを確実に示していた。

あの日の南条の香りに似た匂いに街で気付く度、私は南条の姿を
目を凝らして探した。
あれは、"Samourai Woman"という香水らしい。
ともかく、その香りを嗅ぐ度に、私は南条を思った。

私は今日も、学校帰りに南条の家の前に足を運んだ。
相変わらず門は高く、フェンスの奥の生垣に阻まれて中の様子は
望めなかった。

ふと、あの"Samourai Woman"のほのかな香りが漂ってきた。
南条か?
今度こそ南条なのか?

83 :81:2006/12/23(土) 13:57:47 ID:???
と、重い音とともに門が開いた。
敷地からは、エンジンの音が次第に大きくなってくるのが聞こえた。

ほどなくして、白いCTSが奥から出てくるのが見えてきた。
南条がよく学校に運転手付きで乗り付けていた、あの車だ。

ナンバープレートには"・3 30"の文字が見えた。
間違いない、南条だ。
車内はよく見えないが、きっと中にあいつがいる。

車は段々近づいてきて敷地を抜け、ついに門をくぐった。
私は後部座席を凝視した。

そこには、ウエディングドレスに身を包んだ南条の姿があった。
一瞬、車の中の南条がこちらを見た。
何か言いたげな表情で、こちらを見た。

だが車は停まらなかった。
車は表通りに出ると、スピードを上げて走り去った。
そして、みるみるうちに見えなくなってしまった。

それが、私が南条の姿を直に見た最後だった。

南条、お前は幸せになれたのか?
後悔はしていないか?

あの日、私の家で泣いたお前のことを、私は決して忘れない。
最後に見た、お前の憂いを帯びた顔も。

記憶の中の南条は、それに答えなかった。
ただ弱弱しく、笑うだけだった。

84 :81:2006/12/23(土) 13:59:27 ID:???
以上です。
お付き合いありがとうございました。

今度からまた単発に戻ります。
旧スレでご要望のあった学級崩壊ネタで何か考えておきますね。

>PP×Cさん
そんなオチだったとは!
いやー、楽しませていただきました。
次回作にも期待していますよ。

85 :マロン名無しさん:2006/12/23(土) 14:10:23 ID:???
密かに南条が叔父に反抗して犬神と・・・
とゆう結末を望んでいたのに・・・

86 :81:2006/12/23(土) 14:50:01 ID:???
>85
実は、そういうエンディングも用意はしてましたw
でもあまりに平凡にすぎる気がして、書き直したのが今回のモノです。
ご要望があればそちらも晒しますが、ご覧になりたいですか?

87 :マロン名無しさん:2006/12/23(土) 20:39:21 ID:???
自分も>>85みたいなEDを予想していたので、よろしければお願いします。


でも一度完結した物だし・・・なんか作者さんにたいしてちょっと失礼かなぁ・・・

88 :マロン名無しさん:2006/12/23(土) 22:38:03 ID:???
>>86
見たいです・・・
お願いします。あと、できたら
ラブシーンも・・・

89 :マロン名無しさん:2006/12/23(土) 23:05:09 ID:???
独白の人です。
それでは、もう一つのエンディングの方を。
…って、ますますギャルゲーになってきたかもしれませんね?w

90 :マロン名無しさん:2006/12/23(土) 23:12:30 ID:???
<もうひとつの犬神つるぎの独白:3>

あれから南条は、学校に来なくなった。
ケータイも、圏外か電源が入っていない、を繰り返すばかりだった。

私は、南条の家の前まで幾度となく足を運んだ。
しかしその度に、フェンスと門の高さに足を阻まれた。
一介の高校生には、どうすることもできなかった。

でもあれは、間違いなく真実だった。
私のセーターの肩のマスカラの染みと、シーツにできた血の汚れが、
あれが現実だったことを確実に示していた。

あの日の南条の香りに似た匂いに街で気付く度、私は南条の姿を
目を凝らして探した。
あれは、"Samourai Woman"という香水らしい。
ともかく、その香りを嗅ぐ度に、私は南条を思った。

私は今日も、学校帰りに南条の家の前に足を運んだ。
相変わらず門は高く、フェンスの奥の生垣に阻まれて中の様子は
望めなかった。

ふと、あの"Samourai Woman"のほのかな香りが漂ってきた。
南条か?
今度こそ南条なのか?

と、重い音とともに門が開いた。
敷地からは、エンジンの音が次第に大きくなってくるのが聞こえた。

91 :マロン名無しさん:2006/12/23(土) 23:13:14 ID:???
ほどなくして、白いCTSが奥から出てくるのが見えてきた。
南条がよく学校に運転手付きで乗り付けていた、あの車だ。

ナンバープレートには"・3 30"の文字が見えた。
間違いない、南条だ。
車内はよく見えないが、きっと中にあいつがいる。

車は段々近づいてきて敷地を抜け、ついに門をくぐった。
私は後部座席を凝視した。

そこには…モンクレールのダウンにスキニージーンズを履いた南条がいた。
気のせいか、少し痩せたようだ。
南条は私に気付くと、運転手に命じて車を止めさせた。
そして、ドアを空け、私のところへ走り寄ってきた。

「南条…。お前…。」

「犬神君、待たせましたわね。」

南条は、息をはずませながら笑顔で言った。
私に、どんな思いをさせたか、こいつは気付いているんだろうか?

「…どこへ行っていた?
 私は、ずっとお前を待っていたんだぞ。」

「ハワイの、叔父の別荘へ行っていましたの。
 …例の、結婚の話でね。」

「…受けたのか、あの話?」

92 :マロン名無しさん:2006/12/23(土) 23:14:14 ID:???
「叔父を、説得しに行っていたんですわ。
 私には、心に決めた人がいます、ってね。
 もちろん、あの叔父ですもの、手こずりましたわ。
 丸1日座りこんでやったら、ついに認めましたけれど。」

「…操!」

私は、涙で曇る目で南条を抱きしめた。
きつく、きつく抱きしめた。
涙が、止まらなかった。

空は青く、どこまでも澄んでいた。
全てを包み込む、そんな青さだった。

93 :マロン名無しさん:2006/12/23(土) 23:18:02 ID:???
以上です。
こちらはちょっと平凡な気がしましたし、学級崩壊スレの趣旨から
段々ズレて来ているように思ったのであちらのエンディングを選びましたが、
こちらはこちらでよかったかな、とも思っています。

なんだか、ギャルゲーでフラグが足りなかった場合と足りた場合のシナリオを
見比べているような気がしますねw

ラブシーン、やっぱり見たいですか?
恋愛経験の少ない私の書いたものをお見せするのは、すごく恥ずかしいのですが…。

94 :マロン名無しさん:2006/12/23(土) 23:19:40 ID:???
>>)93
見たいです。
お願いします。犬南大好き
なんです

95 :93:2006/12/23(土) 23:27:00 ID:???
ちょっと待ってくださいね。
少し加筆修正してから晒します。

96 :マロン名無しさん:2006/12/23(土) 23:27:43 ID:???
wktkwktk

97 :マロン名無しさん:2006/12/24(日) 00:04:02 ID:???
下尅上を予測していたけどこれはこれでGJ
そしてWKTK

98 :マロン名無しさん:2006/12/24(日) 00:37:41 ID:???
真面目に感動したわ。

99 :一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 00:54:44 ID:???
犬南に激しい期待が高まりつつある中で空気を読まずに一本。

100 :一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 00:56:36 ID:???
 「いらっしゃいませ……て、玲?珍しいね、どうしたの?」
 玲は学校の制服姿のまま店の中に入ってきたが、くるみに呼び止められてハッと顔を上げた。
「あれ、くるみ?お前、今日、バイトだったの?」
 玲はカウンター席に腰を下し、卓の上に手をついた。くるみはメニューを手渡しながら、自分もその隣に腰掛けた。
玲は店の中を見渡してみたが、いつも通り他に客はいなかった。
「それがさぁ」
 くるみは横目でカウンターの中を見遣る。中では、この店の店主である若い男が一人、静かに食器を拭いていた。
彼はくるみの凝視を知らぬ振りして押し黙ったまま、手を動かし続けていた。
くるみは、彼のそんな態度を非難するような目つきでしばらく眺め、苦笑いしながら皮肉がましく言った。
「何処かの誰かさんが急にシフトを入れちゃってさ……まったく、こっちの都合も考えろっつーの」
「都合って?お前、何か用事あったのか?」
 玲はテーブルの上に頬杖を突きながら、気だるげな表情でくるみを眺めた。
窓から入る夕焼けの光を浴びて、くるみの顔はほんのりと赤みを帯びていた。
くるみはスツールを廻し、カウンターテーブルを背に凭れ掛かると、変わらぬ乾いた調子の声で応えた。
「私だって色々と忙しいのよ」
「この時間帯はいつも暇を持て余していただろう?」
「そういえばそうだったかもね。家にいてもヒマだろうしさ、同じヒマなら金もらえる方がいいもんね、そうでしょ、店長?」
 くるみは首を廻して男の方を再度見遣る。笑顔の瞳に赤い光が差し込んでいる。
「え……?あ、ああ……くるみちゃん……それは非道いよ。しっかり働いてよねぇ、ほら、玲ちゃんからも何とか言ってやってよ」
 店長はうわの空のところに急に話し掛けられたので動揺したのか、始めの方でしどろもどろしながらも、最後は呆れ顔で怠慢ウェイトレスの顔を見返した。
玲はそんな二人の様子を傍から見ていて、少し滑稽で、それが愉快に思えて、その口元に笑みを溢した。
「店長さん、これがくるみって奴ですよ」
玲は笑いながら、穏やかな声で言った。彼女の笑顔をもまた、夕日の光は優しく撫でていた。
「ちょっと、玲!それじゃ私がまるで……」


101 :一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 00:58:58 ID:???
 くるみが頬を膨らませて突っかかったが、玲の方はそんな彼女の目前にすっと手を差し上げ、相手が息巻いて反論しようとするのを制した。
「店員さん、そろそろ注文いいかしら?」
「こらぁ!人の話は最後まで……」
くるみは意気込んだ先の出鼻を挫かれたことに憤慨して顔を真っ赤にして見せたが、今度はカウンターの奥からくるみの裾を掴む手が伸びた。
「くるみちゃん、仕事、仕事」
「ちぇ……はぁい、お客様、ご注文はお決まりでしょうか?」
いささかふてくされたように立ち上がり、大仰な素振りで注文表を書き留める真似をする。
玲はくるみの顔を見上げたまま、メニューすら開かずに注文をつけた。
「コーヒー、いつものブレンドで」
「て、いうかさぁ」
くるみは怪訝な表情で首を傾げた。
深い緋色の差し込める静かな店内に、彼女のひときわかん高い声が響き渡る。
「店長がすぐそこにいるんだから直接言えばいいじゃん。何で私を間に挟むわけ?他に客もいないのに」
 くるみの言い分を聞いた玲は、苦笑いをしながら姿勢を崩し、その背後で同じ表情を湛えている店長に目配せした。
店長の呆れ顔は困惑めいたものにまでなり、玲をじっと見つめ返した。
「あのさ、くるみちゃん……一応、働かなきゃいけないでしょ、体裁としては。そこを譲っちゃったらウェイトレスとしてダメだと思うよ」
「確かに。くるみ、ヒマなんだろう?このくらいのことを億劫がっているようじゃねぇ……」
玲はため息をつきながら静かに笑った。

 ふと時計を見上げると時間は六時をとうに過ぎていた。
外の方で誰かの声がした。
都会カラスの鳴き声、工事現場の騒音、車の走る音も聞こえてくる。
静かな夕暮れ、穏やかな黄昏を過ぎ、街は夜に向かって蠢き始める。
しかし店内の静けさは完全に外の世界とは隔絶されていた。
店内の空気は赤く染まりきり、深閑としたまま、まるで動かなかった。
流れもしないが澱みもしない空気と時間が、ひっそりと息を潜めていた。
窓辺に差し込む眩い夕日の光ばかりは、ゆっくりではあるが、確実に黒ずみ始めていた。深く、落ち沈んでいくように。
「何さ!玲こそ今日はバイトないの?こんなダメな喫茶店で油売っていていいの?」
 くるみは眉を吊り上げて悪態をつく。
玲は首を振って今日がオフの日であることを伝えた。

102 :一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 01:01:38 ID:???
 くるみの言葉の中に棘を見つけた店長は湯を沸かしながら悲しげな表情を見せた。
「ダメな喫茶店って……もう少しお手柔らかに頼むよ、ねぇ?」
「だって事実じゃん」
「事実だからこそ余計辛いこともあるんだよ……」
 店長はがっくり肩を落とした。
くるみは言いたい放題言って少し気が晴れたのか、ご機嫌に鼻歌を歌っていた。
玲は意味ありげな笑みを浮かべたまま、じっと黙ってその様子を見ていた。
「何よ、玲?ニヤニヤと気持ちが悪い」
くるみは吐き捨てるように言った。
玲は何の反応も示さなかった。
くるみは不審に思って考え込んでいたが、やがてかぶりを振って呻き声を上げた。
「あぁ、もう!わかったわよ!それで、何が言いたいのよ、玲!?」
玲は冷ややかな目つきはそのままに、静かに言った。
「何も言いたいわけじゃないよ。ただ、くるみは元気だなぁ、てね」
「何よ、それ?意味わかんない。ひょっとしたら私をバカにしているの?」
「かもな」
玲は再び笑った。くるみはへそを曲げてスツールの上に腰を落とした。
腕を組んでそっぽを向き、怒っている仕草をして見せた。
その背後で店長は慣れた手つきでペーパードリップにお湯を注いでいた。
カウンターの中からコーヒーを淹れる芳ばしい香りがしてきた。
一瞬だけ部屋の中の空気が混ざり合う。ほのかなるコーヒー色の煙は、店内の不動の空気を瞬く間にかき乱し、やがて細く立ち上り、虚空へと消え入った。
緋色はますます黒味を帯び、夜の訪れを思わせる一時的な静けさと肌寒さを運び入れた。

 ある種の沈黙に満たされた永い永い時間を経て、店内の空気は再び落ち着きを取り戻し、また身動きをしなくなった。
コーヒー色の煙に攪拌された空気は、どんよりと沈み、足元の辺りを這い蹲っていた。
三人は黙ったまま、時のなすがままに身を任せていた。
「そろそろいいかな?……くるみちゃん、できたからこれ持って行ってよ」
 店長が白い陶器のカップをソーサーの上に乗せ、カウンターの上に置いた。
窓外の陽はすっかり落ちたと見え、既に緋色の面影はなかった。
カップの白い艶のある肌に映るのは煌々と輝く室内照明の光点のみだった。

103 :一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 01:04:12 ID:???
「えぇーっ!?玲がそのままとりにいけば済むことじゃん。何でそこまで私を働かせたいわけ?」
「お給料もらっている身分でそういうこと言わないの」
 くるみは渋々カウンターの中に回り込み、カップを銀盆に受け取った。
それをすぐ目と鼻の先で玲が見ている。
くるみは余りにもバカバカしくなってきて、毒づくように玲の方に言葉を投げかけた。
「あぁーあ、転職しちゃおうかな……ね、玲の中華料理屋って人手足りてる?」
「働かないウェイトレスはお断りだ」
「あぁ、そうですかい」
その二人のやり取りを見て、今度は店長の方が微笑ましげに口元を緩めた。
しかし、すぐにくるみの刺々しい睨みが彼を見据えたために、慌てて姿勢を正し、窓の外に視線を逸らした。
硝子一枚隔てた向こう側は、既に大きな暗幕が一杯に下され、その暗幕に開いた穴から光が零れ落ちるように、街の灯が、星のきらめきが、それぞれ好き勝手に輝きを放っていた。
「はい、どうぞ」
カウンターを出て、玲のところにカップを置いたくるみはまたその隣に腰を下した。
 湯気立つカップを覗き込み、その香りを一杯に吸い込んで、玲は一口だけそれを飲んだ。
熱さで舌が痺れ、ほろ苦い風味が、喉の奥の方で際立つ。
口の中を一杯に満たす温かさと、鼻を通じて入ってくる空気のひんやりと心地いいのとがそこで一緒になり、喉を流れ落ちるコーヒーのエキスは刻一刻とその顔色を変える。
「熱くないの?」
くるみが訊ねる。
玲は声を出さずに首を振っただけだった。
店長はまた洗い物をしている。

 何も無い、何も言わない時間が世界を席巻した。
それはただ漂うだけの時間だった。何処かへ走り去ることも無く、その場に沈殿してしまうことも無い、ふわふわと正体の掴めない時間だった。
三人は相変わらず、その時間の中を同じように漂った。まるで夢心地のような、不思議な世界だった。

 壁掛け時計が鳴った。七時だった。
ひっそりと漂っていた時間と空気はかき乱され、三人は意識を取り戻した。
結局、時間は過ぎ行くものだったのだ。誰にもそれを止めることなどできやしない。そんなものは儚い妄想に過ぎない。
時間は目にも止まらぬ速度で走り過ぎ、時間の残りカスだけがそこに沈殿する。そうだ、思い出というのは時間の残りカスに過ぎない。そして、これも――


104 :一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 01:06:15 ID:???
 玲はため息をついた。それが伝染ったように、店長も小さくため息をついた。
くるみは大きく背伸びした。
「おっしゃ、七時。店長、お先に上がらせてもらいますね」
「あ、え……もう?何か用事でもあるの?」
 くるみは笑った。店長は居た堪れない顔つきだった。
「いやぁ、これから兄貴とちょっと約束があるんで。今日は早く帰らなくちゃいけないんですよ。玲はどうする?一緒に帰ろうっか?」
玲は無表情に首を振った。
「いや、私はもうしばらくここにいるよ。まだコーヒーが温かいままだからね」
「そう?じゃ、私は失礼しますね」
くるみは黒いエプロンを脱いだ。下は学校の制服のままだった。
 くるみは控え室に入っていき、そこから革の通学鞄を持ち出してくると、二人に頭を下げた。
晴れやかな笑顔だった。
「じゃあ、そういうことなんで……」
 くるみは扉に向かって歩き始めた。
後姿を見ていた玲はやがて気がついたように大声を張り上げた。
「くるみ、あのな!」
くるみは振り返った。笑顔だったが、何処か悲しげだった。
「なぁに、玲?」
「今度は……今度はいつ来るんだ?」
「え?エトワールに?」
「ああ、そうだ」
「……次の出勤日?やぁねぇ、そういうのは店長に聞いてよね」
「……そうか。すまん」
「何で謝るのさ?」
「いや、何となく」
「おかしな玲。あ、ヤベ、時間に遅れると兄貴に怒られるわ!ゴメン、それじゃあ、またね……玲、それから店長」
 くるみは慌てて扉から出て行った。カラン、コロンと鐘の音が静かに鳴り響き、くるみの姿は夜の闇の中に消えていった。
どこからともなくすぅっと冷たい風が入ってきたような気がして、玲は思わず身震いした。
そして、向き直るとコーヒーをゆっくりと口に運んだ。


105 :一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 01:08:30 ID:???
「……行っちゃったね」

 店長が呟くように言った。
玲は黒い液体にゆらゆらと写る自分の顔を見つめながら答えた。
「ええ。今日もあの日と同じでしたね」
「あれからどれくらい経ったんだろう?」
「今日で丁度一ヶ月ですよ」
「一ヶ月か……早いものだね」
「思えば」
玲はコーヒーをもう一度啜った。
「つい昨日のことのようにも思えるし、でも遥か昔のことのようにも思えてきます」
「くるみちゃん、今頃どこで何しているんだろうね」

 店長の洗い物をする手が止まった。
玲は空ろな瞳で宙を見つめていた。が、やがて顔を上げると、店長の方に向き直って答えた。
「くるみは……きっと天国でも幸せに暮らしていますよ」
「そうかなぁ」
「ええ、きっと。だけど、まだこの世にやり残したことがいくらかあるから、ああして時々この店に戻ってくるんですよ。一ヶ月前のあの事故は、余りにも突然のことだったし……」
「そうだよね……だけど、くるみちゃんは自分がもうこっちの世界の人間じゃないってことに気がついていないのかな?」
「いえ……それは本人が一番よくわかっていると思いますよ。それでも敢えてこっちに戻ってくるということは、まだ何か理由があるんでしょう……それは本人にしか分からないことでしょうが」
 玲はもう一度コーヒーを啜った。
コーヒーは既に氷水のように冷え切っていた。
ただ刺々しい、ざらざらとした苦味だけが、舌の上で心地の悪い後味を残していた。
「くるみちゃんは……」
 店長はそこまで言いかけて、そのまままた黙り込んでしまった。
そして、何事も無かったかのように洗い物を再開した。
玲も何も訊ねなかった。二人はいっそうの沈黙の中に居た。

 白いカップの中の黒いコーヒーはゆらゆらと波立っていたが、しばらくするとまた元の水鏡に戻った。
やがて、零れ落ちた一滴の涙がその鏡面を再び震わせるまで。

――完――

106 :一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 01:11:32 ID:???
とりあえずこれまでで幻想モノでやりたいことは全部やれたんで満足です。

もし来年も機会があれば、要望のあった「学級崩壊」にフィーチャーした作品を折り見て書いていけたらいいなぁ…と。
それでは失礼。

107 :マロン名無しさん:2006/12/24(日) 01:13:36 ID:???
GJGJ!
くるみ〜w

108 :Pani Poni HAZARD:2006/12/24(日) 01:23:43 ID:???
次行きます、独白氏が降臨するまでの暇つぶしにどうぞ

ロックフォート島
観光地としての記念すべきデビュー戦であるこの日、桃月学園の生徒がここに
降り立ってからというもの、ここはすでに観光地ではなくなっていた。
物が焼ける臭い、肉が焼ける臭い、人が焼ける臭い
人間の叫び声、人間の断末魔、怪物のうなり声
銃声、悲鳴、泣き声
こんな観光地が何処にあろうか。
この島は既に死で溢れ返っていた。
観光地というのは本来なら笑い声が聞こえる楽しい所である、ここもそうなるはずであった。
しかし、ここは違う、ここにでは楽しそうな笑顔など見ることは出来ない、あるのはただただ化け物と
絶望と死人だけである、こんなところで何を見て笑えというのか、もっとも、死人も時が経てば歩き出す、そんなふざけた世界なのだ。

「ハァ・・ハァ・・ハァ・・」
そんな死の島で、美しい黒髪を振り乱して建物の壁にもたれかかっている
人影があった。
1年C組、橘玲、彼女もまたこの信じがたい事実に戸惑っていた。
「クソッ・・何なんだ一体、何がどうなってるんだ・・アレは・・確かに早乙女だった・・」
そう、玲は見たのだ。化け物から逃げる最中に、他の化け物に混ざってB組の担任である早乙女が
必死に道に倒れている死体を貪っていたのを。信じたくなかった。だが確かに見たという確信があった。
玲はそのままずるずると地べたに腰を下ろした。手にはオートマチックのハンドガンが握られている。
道端の死体の近くに落ちていた物を拾ったものだ。弾はマガジン一つ分は入っているようだった
もっとも逃げることに夢中で撃つことなど考えなかったが、こんな事態だ、何か身を守れるものがないと
安心できない。
「あいつら・・食っていたぞ、人間を、人の、肉を・・」
玲は参っていた。精神的にだ。いくら「C組の魔女」の異名をとる彼女も、同じ学校の教師が
人を食らう化け物に変わっている姿を見るのは、とても辛かった。


109 :Pani Poni HAZARD:2006/12/24(日) 01:24:22 ID:???
コツッ
「!!」
なにやら物音がした。玲は慌てて立ち上がり銃を構えた。もちろん撃ったことは無い
そのままの状態で音がしたほうに銃口を向ける、玲は落ち着いていた。来るなら来い
私を食おうなんて100年早い、その口に鉛弾をくれてやる、そんなことを考えながらも
玲はじっと一点を見つめた。その時、何かが動いた。間違い無い、音の主は奴だ、
主はそのままゆっくりと玲の方に近づいてきた。暗くてよく見えないが、人の形をしていることはわかる
「(落ち着け・・落ち着くんだ・・)」
銃を握る手にさらに力が篭る、額にはじっとりと汗をかいていた、さらに近づいてくる、玲は静かに
引き金に指を掛けた。あともう少し、もう少し近づいてくれば・・そして、その主がゆっくりと・・ゆっくりと姿を現した。

「マホーーーーー!!!玲っちゃああぁぁん!!」
主はそのまま玲に向かってダイブしてきた。
「どわあぁあぁぁ!!ぐえっ!」
玲はたまらずその主に押し倒されてしまった。少し重い。
「玲ちゃああああん、久しぶりだねぇー!元気だったカナーー?」
「おっ、お前、姫子か!?」
そう、音の主は玲にとってはもはやお馴染みの人物、片桐姫子だった。
「そうだよーー♪私だよーー♪もしかして玲ちゃん私のこと忘れちゃったの?マホホ・・だとしたらショックだよ・・」
「馬鹿・・とりあえずどいてくれ、少し重いぞ」
「あ、ごめんね」

110 :Pani Poni HAZARD:2006/12/24(日) 01:26:09 ID:???
「そうか・・お前も見たか・・」
「うん・・みんなスタッフの人が・・おかしくなってたんだヨ・・それで私怖くなって・・とにかく走ってたんだ、そしたら玲ちゃんに遭えたんだヨ」
姫子もあまり元気が無い、人の死を目の当たりにした人間は皆こうなる、姫子も例外ではない。
「・・ねえ玲ちゃん、みんなどうしてるかな?ベッキーは大丈夫カナ?6号さんも、都ちゃんも、一条さんも、あとくるみちゃんも・・」
さらに姫子の気分が沈んでいく、いつもの姫子からは考えられない消沈ぶりだった。
「姫子・・・・・心配するな、大丈夫さ、皆こんな事でくたばるような奴らじゃない、皆どこかで生きているさ」
「玲ちゃん・・そうカナ?皆大丈夫カナ?」
「ああ、そうさ!!だからそんな顔するな・・笑ってくれよ、いつもみたいにさ、お前までそんな顔してたら、私は・・」
「玲ちゃん・・ごめんね、私・・うん、わかったよ、皆。無事だよね、そうだよね!」
姫子にいつもの笑顔が戻ってきた。いつも馬鹿みたいなことを言っているときの、あの微笑み
「ああ、そうだよ・・お前はやっぱり、笑顔でいるほうがいい」
「そうカナ・・?マホホ・・なんか照れるな」
「フフフ・・相変わらず面白いな、お前は・・」
玲の顔にも笑みが戻っていた。そして勇気が沸いてきた。
「ねえ玲ちゃん!ベッキーたちを探しに行こう!みんなきっとどこかにいるよ!」
「ああ、いいさ、行こう!遅れるなよ姫子!」
「マホッ!!アイアイサー!私、玲ちゃんに一生ついていきますよーー!!」
こうして二人は地獄の島を走り始めた。その先に何が待っているかはわからない、しかし
止まるわけにはいかない、再びあいつらと、笑い合える日のために。


>>100
GJ!! くるみぃぃぃぃぃ!!



111 :マロン名無しさん:2006/12/24(日) 01:55:29 ID:???
お待たせしました。
独白の人です。

それでは、南条&犬神の独白2 1/2ということで、ラブシーンを投稿させていただきます。
何分あちらの経験が少ないのでw、お見苦しいものかとは思いますがご容赦ください。

112 :マロン名無しさん:2006/12/24(日) 01:58:11 ID:???
<南条操の独白:2 1/2>

犬神君のキスは、さっきのレモネードとHint Mintが混ざった味がした。
そして、とめどなく流れる私の涙の味も。
その味は、甘酸っぱくて、塩っぱくて、そして切なかった。

次の瞬間、私の唇は、こんなことを口走った。

「犬神君、私を…私を、抱いてください。
 私の体に、消えない…印をつけてください…。」

私は、自分で言ったことが自分でも信じられなかった。
一人ラブコメだの、小学生の恋愛ゴッコだのさんざん言われていた私が
こんなことを言えるなんて、思ってもいなかった。
…声は震えていたけれど。

「南条、お前…ヤケになってないよな?
 本当に、私でいいんだよな?」

犬神君は、戸惑うように訊いた。
私は、黙って犬神君の目を見つめ、頷いた。
私たちは、もう一度口付けを交わした。

息を荒くした犬神君の指が、私を一枚一枚あらわにしていった。
その指はぎこちなく、女の子の扱いには馴れていないような、
そんな感じだった。

113 :マロン名無しさん:2006/12/24(日) 01:58:53 ID:???
「なぁ南条、このホックって…」
「ああ、これはここを一度引っ張って、この爪を…」

もちろん、私もこんな経験は初めてだ。
心臓が、口から出そうだった。

ついに、ブラが取られた。

「…綺麗だよ、南条。」

「…ねぇ、名前で呼んで下さらないかしら。」

「…操。」

犬神君は顔を赤くして、ちょっと照れた様子だった。
私も、顔が赤くなるのを感じた。

犬神君は、私をきつく抱きしめた。

私はお腹に、犬神君の…ボトムスのあの部分の大きな膨らみを感じた。
それが、とても嬉しかった。
普段私にそっけない態度の犬神君が、私を見てこんなに、
…その…、興奮してくれているということが。


114 :マロン名無しさん:2006/12/24(日) 02:00:21 ID:???
<犬神つるぎの独白 2 1/2>

目の前の南条の、操の、スレンダーな体に私は目を奪われていた。
染み一つない白い肌は滑らかで、私のごつごつした指で触れることが
ちょっとためらわれた。

私は意を決して、操の背中から指を滑らせ、2つの胸の膨らみへと
手を伸ばした。

「いぁっ、犬神君…はぁっ!」

操の体は、華奢な見た目に反して、とても柔らかかった。
甘い、恥ずかしそうな声が、私をますます刺激した。
操の顔は、真っ赤に染まっていた。

キスを交わしながら、私は操の体の隅々まで触りつくしたい衝動に駆られた。
私の右手は、胸から脇腹、背中へと滑り出し、ついにあの部分へと辿りついた。

操自身は、すでにしっとりと湿っていた。
小さな突起のようなものに指があたると、操の体は、一瞬びくっと震えた。
突起は、とろとろに濡れ、すっかり固くなっていた。
私のアレも、すっかり固くなっていたのが自分でもわかった。
ビクビクしているのが、自分でもわかった。

指を伸ばすと、ぬるぬるした液体にまみれた襞状のものを感じた。
その奥に、穴らしきものがあった。
ここか…ここが操の…。

115 :マロン名無しさん:2006/12/24(日) 02:01:26 ID:???
私はたまらず、操を横にさせると、下を脱ぎ、自分のアレを操の下の口にあてがった。
暖かく、柔らかい感触が、アレから伝わってきた。
操は、細かく震えていた。

「…怖いか、操?」

「ううん…犬神君になら、私…」

ゆっくりと、操自身が私自身を呑みこんでいった。
熱い肉の壁に押し戻されるような、そんな感触だった。

「痛っ!」

操が叫ぶ。
きつく締め付けられるような、そんな感覚が私自身からも伝わってきた。
一瞬柔らかい壁に当たる感じがしたが、私は自分の腰を止められなかった。

ブチッ、と音がした。
でも、私の腰は止まらなかった。

操が、痛みを必死にこらえながら私の背中に爪を立てる。
でも、苦痛にあえぐ操の声はいつしか、とろんとした甘い声へと変わっていた。
シーツには、次第に赤い染みができ始めていた。

私は、脳から突き抜けるような快感に襲われた。

116 :マロン名無しさん:2006/12/24(日) 02:06:37 ID:???
以上です。
エロパロスレに投稿した方がよかったかな?
皆さんのご期待に沿えたかどうかはわかりませんが、大変お見苦しい文章、
失礼しました。

>コーヒーさん

いや、本当によかったです。
くるみ…。
泣きそうになりました。
次回作も、期待させていただきますね。

>Pani Poni HAZARDさん

GJ!
TVのバイオハザード見た後でしたから、ますますドキドキでした。
息もつかせぬ展開と心揺さぶる描写、本当に見習わせていただきたく思います。
今後も楽しみにしていますよ。

117 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 02:11:16 ID:???
丸一日書き込みがない…。
失望させてしまいましたか?
あ、私独白の人です。

118 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 02:13:15 ID:???
クリスマスなので

119 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 02:23:57 ID:???
このスレの住人の多数はクリスマスに用事があるタイプの人間だと言うのか?

120 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 02:25:36 ID:???
うん

121 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 02:30:12 ID:???
姫子とホテルにいたもので

122 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 04:42:36 ID:???
>>117
遅れながらGJ
有馬記念だったので…

123 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 08:19:51 ID:???
独白の人、GJ!
我儘聞いてくれて有難う御座いました!

124 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 10:42:51 ID:???
遅れながらGJ!
独白の人→そんな事ないですよ!少なくとも自分は楽しめました!

125 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 14:55:49 ID:???
独白氏GJ!!
南条さん最高だ・・
クリスマス?そんなもんうちの暦には有りませんよ( ゚∀゚)HAHAHA!!

126 :Lonely Ichijo Day:2006/12/25(月) 19:49:09 ID:???

クリスマスネタを一つ書いてみましたので、投下させていただきます。

127 :Lonely Ichijo Day:2006/12/25(月) 19:50:27 ID:???

今年も私は、一人きり。ちょっと寂しいクリスマスイヴ……。

聖なる夜といえば一般的には家族や恋人とともに過ごすものですが、
私の側にいるのは幼稚園に入ったばかりの妹だけです。
両親には夫婦水入らずのディナーを外で楽しんでもらっています。
普段は仕事や家事で忙殺されているのですから、この特別な日ぐらい恋人気分を味わって欲しい
というのは、子供として当然の願いでしょう。
望の方はというと、犬神さんの家に遊びに行ってしまいました。
もちろん相手は犬神つるぎさんではありませんよ。その妹の雅さんです。
さっき『このまま雅ちゃんの家に泊めてもらうねー』という電話がありましたから、
今日はもう帰ってくることはありません。
あまり迷惑を掛けることがなければ良いのですが。
あ、別に家族仲が悪い訳ではないんで誤解しないで下さいね。
クリスマスの夜は全員で過ごす予定ですし。

特に外出する予定のなかった私は、今日はずっと妹と遊んでいました。
公園に行ったり、サンタとトナカイごっこをしたり、テレビを見たりと、非常に楽しい一日でした。
妹はM-1グランプリがいたく気に入ったようで、内容がわかっているのかどうかは知りませんが
キャッキャと笑っていました。
一緒にお風呂に入った時に水鉄砲で銃撃戦を繰り広げたのは、はしゃぎ過ぎだったかなあ……。
でも、まだまだ小さいあの子にとっては毎日が冒険なんですよね。
あの子は何でも楽しむことができる、たいした子です。ある意味では無敵といっても良いかもしれません。
何かに出会っては果敢に突撃していって、嬉しそうに私のところに戻ってくるんです。
遊び相手になるのは結構大変なのですが、あの笑顔を見るとついつい私も微笑んでしまいます。
やはり子供は可愛いですね。

128 :Lonely Ichijo Day:2006/12/25(月) 19:51:08 ID:???

今はもうパジャマに着替えて、歯も磨きました。そろそろお眠の時間です。
妹は遊び足りないようでお気に入りのぬいぐるみを弄っていますが、どう見ても眠そうです。
目蓋は半分閉じているし、体もぐたっとなっています。
私は妹を抱きかかえ、両親の寝室に連れて行くことにしました。
いやいやの素振りを見せる妹ですが、本当は寝たくて寝たくて仕方がないのです。
こういうのを、ツンデレって言うんですかね?
案の定、布団に寝かしつけて数秒のうちに妹は眠りに落ちてしまいました。
隣に横になって子守唄でも歌うつもりだったのですが、その必要もありませんでしたね。

幼稚園児は寝なきゃいけない時刻でも、私たち高校生にとってはまだまだ早い時間です。
私はこっそりと部屋を抜け出し、リビングに移動しました。
ソファーに横になり、体を休めます。
普段は騒がしいこの家も、今だけは耳を澄ましても何も聞こえません。
両親も望も出かけているし、妹もぐっすり夢の中です。
こうして一人きりになるのは、久しぶりかもしれません。
「クリスマスかあ……」
おっと、思わず独り言も飛び出してしまいました。
話す相手が誰もいないとかえって声が出てしまうのは、どうしてでしょう。
思っていることを隠す必要がないからでしょうか。
人には明かせないどす黒い感情を。

実はC組の皆で遊ぼうかという話もあったんですけど、結局お流れになってしまいました。
どうやら皆さんお忙しいようで。
玲さんもくるみさんも姫子さんも都さんも鈴木さんも、今日は男の方とお出かけしているらしいのです。


129 :Lonely Ichijo Day:2006/12/25(月) 19:51:53 ID:???

あまり知られていませんが、姫子さんはイベントで出会った大学生の方とお付き合いをしているそうです。
たしか、藤巻さん? というお名前だったと思います。
姫子さんが女らしく頬を赤らめて彼の話をするのを聞いたときには、本当に驚きました。
あの天衣無縫な姫子さんが、こんなにもしおらしい態度をとるのかと。
いやはや、恋心というものは恐ろしいものです。
そう、それで姫子さん、その藤巻さんとクリスマスデートなんですよ!
それはもう嬉しそうに惚気てましたよ!
しかも姫子さん、そのままその方に家に泊まるなんて言ってるんですよ!
相手は一人暮らしの大学生なのに、何を考えているんでしょうか。
私にはわかりません。

そうそう都さんにも彼氏がいるんですよね。何でも海外で知り合ったそうです。
都さんの場合は三人称が「あのバカ」とか「あいつ」とかなので、名前は存じ上げておりません。
どうやら都さんはその方についてかなりの不満を抱いているらしく、
私などはしょっちゅう都さんから愚痴を聞かされてばかりいます。
まったく、嫌になっちゃいますよね。
そのくせ今日は一日中ずっと一緒にいるなんて、昔の都さんからは想像も出来ません。

それにしてもクリスマスが恋人たちのための日になったのは、何が原因なんでしょう。
本当はキリストの誕生日とされる、宗教的な祭日なのに。
さりげなく鈴木さんも彼氏持ちだそうで、やはり二人で遊ぶんだそうです。

130 :Lonely Ichijo Day:2006/12/25(月) 19:52:49 ID:???

くるみさんはというと、「クリスマスなのにバイトがあってうざい」なんて言ってましたね。
本当はあの喫茶店は大好きなんだから、わざと誤魔化さなくてもいいのに。
しかもバイトが終わった後は、修さんと家に二人きりですよ。
あのお兄さんとくるみさんの、二人だけのクリスマスなんです。
仲睦まじい兄妹の団欒なんて思ってはいけません。あの兄妹はそれ以上の関係です。
学校ではあまり絡まないように気を付けているようですけどね。
たまに街中でもくっついて歩いているのを見ることが出来ます。
修さんとくるみさんは、あの関係をいつまで続けるつもりなんでしょう。
いつか家族を巻き込んだ修羅場が待っていると思うんですけどね。
人事ながら心配してしまいます。

さて、ここまで申し上げた方々は、まあ一応ながら愛のあるお付き合いをしています。
だけど玲さんだけは違います。
私がこんなことを言って良いのかわかりませんが、玲さんはお金を貰って大人の方と付き合っています。
いわゆる援助交際です。
皆さんもご存知のように、玲さんの家庭はあまり裕福ではありません。
そのせいで玲さんは週に四日もバイトをしているのです。
でもそれだけでは、彼女の家の家計を支えるには充分ではなかったようです。
私は偶然見てしまったんです。玲さんが、その、あの、いかがわしいホテルから中年の方と出てくるのを。
しかも一度や二度ではありません。いえ言い換えましょう、相手は一人や二人ではありません。
最近では本当に貧窮しているらしく、目撃する頻度はどんどん大きくなっています。
初めは目を瞑っていた私も、そろそろ忠告した方がよいのではないかと考えるようになったぐらいです。
しかし、私にはその勇気がありません。
玲さんは生きて行くためにそういうことをやっているのですから、ある意味では立派な行為なんです。
それを止めるようなことは、私にはできません。
でも、私は泣きたくなってしまいます。
偽りのクリスマスデートがどれだけつらいものか私にはわかりませんが、私なら我慢できそうにありません。
どうしたらいいのか、誰か私に教えてください。

131 :Lonely Ichijo Day:2006/12/25(月) 19:53:53 ID:???


ちらりと時計を見ると、もうすぐイヴからクリスマスへと日が変わる頃でした。
そろそろサンタクロースのおじさんも、子供たちの家を駆けずり回り始める時間でしょうか。
サンタさん、もしも許されるのなら、私にも欲しいものがあります。
もう高校生になった私に資格はないかもしれませんが、願いだけでも聞いてください。


私が今、欲しいのは。
何よりも強く願うのは。
あの人の温もりです。
優しく私を包んでくれる、あの人の暖かさ。
ぽっかりと開いた穴を埋めてくれる、あの人の存在。
全身で感じ取れる、あの人の感触。

現実で叶わないのなら、せめて夢の中だけでも夢を見させてください……。

私はソファーの上で、丸くなり、いつしか眠りに落ちていきました。



Merry Christmas!


この世の全ての人に、幸せが訪れますように……。


132 :Lonely Ichijo Day:2006/12/25(月) 19:58:37 ID:???

以上です。

今年一年、学級崩壊スレには作者として、読者として、非常にお世話になりました。
本当にありがとうございます。
来年一年も、このスレ、そしてここに来る皆様にとって良い年になりますように。

133 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 20:21:41 ID:???
全俺が泣いた。
黒い作品を書くには白い心が無くちゃいけないことがよくわかった。

このスレ最高だ。

134 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 21:14:50 ID:???
一条さん、ささやかながら
Merry Christmas、

135 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 21:49:51 ID:???
今回も、いい作品読ませてもらいました。
皆さんに、メリークリスマス。

で、思ったんですが、この際初期スレ風味の「学級崩壊」に
そんなにこだわらなくともいい気がしません?
今の職人さんたちの持ち味を、あえて変に変えようとしない方が
いい作品が読める気がします。

今の皆さんの作品、初期作品とは、明らかに異質ですよね?
世の中に、旨い寿司を握る寿司職人と美味しいフレンチを作る
シェフがいても、寿司職人に美味しいフレンチを作れってのは
アレじゃないでしょうか。

寿司とフレンチどちらが上か、ということが言いたいわけでは
もちろんありませんよ。
寿司も握れてフレンチも作れる人もいますけど、初代スレみたいな
「学級崩壊」にこだわりすぎるのは、フレンチのシェフに
寿司を握れと言っているようなものなんじゃないかなぁ…。

136 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 22:55:49 ID:???
独白の人、GJ!
クリスマスなんて、ないですよ。
仕事してたもんで・・・。

137 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:41:42 ID:???

独白の人です。
なんかレスを要求したみたいですいませんでした。
皆さん、もったいないお褒めの言葉、ありがとうございます。

さて、今回は新作として6号の独白を用意しています。
単発でやると宣言したので、続きませんがw

138 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:43:06 ID:???
<鈴木さやかの独白:1>

夕暮れの埠頭を渡る海風が、私の黒髪を撫ぜていた。
Pコートの襟が、ぱたぱたと揺れた。

エンジンをかけっ放しのミジェットのテールランプに照らされ、
ブラックストーンの煙が、ふわっと香ってきた。
決して、厭な匂いではなかった。

「どうしたの6号?
 そんな顔しちゃって?
 煙い?」

「いえ先生、ちょっと考え事を…」

「そう?
 ならいいけど。」

五十嵐先生は知らない。
五十嵐先生には見せられない。
かつての、私の素顔を。
私のすべてを。

五十嵐先生を、失望させたくない。

本当の私は、先生の知っている私ではないのだ。
五十嵐先生は、まだ知らない。

8ヶ月前、高校に入りたての私は、クラスに溶け込めない私は、
お昼休みになるといつも一人、校庭のベンチでお弁当を食べていた。

強がってはいたけど、みんなの中に入りたかった。

139 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:44:39 ID:???
楽しそうに笑う玲さん、くるみさんや都さんたちと、私も一緒に
笑いたかった。
でも、できなかった。

「あんた、ホント暗いよね」

「ダッサ、高校生にもなってそんなの好きなの?」

「いつも一人でいて、気持ち悪いんだよ」

「いちいちオドオドしやがって…ウゼエな」

私は、みんなの声で心の中に自動再生されるそんな言葉たちと、
いつも戦っていた。
少なくとも高校に入ってからは誰に言われたわけでもないのに。
私は必死で、外では平静を保っていた。

家に帰ってからの私は、外の私と別人だった。
私の部屋の壁は、アヴリルやエミリーのポスターで目立たないように
してはあるものの、穴だらけだった。
私が開けたのだ。
一人で壁を殴る私の顔は、誰にも見せたくなかった。
それが、私の本当の顔だった。

140 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:45:44 ID:???
週末になると、私は何かから逃げるように、精一杯着飾って出かけた。
原宿、渋谷、下北沢、中野…わざと学校から遠くへ、遠くへ行った。
個人の顔すらわからなくなる、人の海の中での孤独だけが、
私を私たらしめていた。

でも時々、人の中にいるのが無性に怖かった。
学校の誰かに会ったらどうしよう、休日の私を誰かに見られたら
恥ずかしくて死んでしまいたい、そんな思いにかられて仕方がなかった。
そんなとき私は、カーテンも開けず、一日中ベッドの中にいた。
でも、眠れなかった。

実際には何時間かは眠っていたのだろうけれど、意識はいつも
いやに研ぎ澄まされていた。

141 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:49:31 ID:???
そんな私を、自分の心の檻から救ってくれたのは、姫子さんだった。
あのとき、姫子さんに話しかけてもらえなかったら、私はきっと今も
あの頃の私のままだっただろう。
姫子さんはこんな私に、他のお友達と接するように、普通に接してくれた。
決して無理をして合わせてくれているような感じではなく、自然に接してくれた。

姫子さんと初めて話したのは、5月の宿泊研修の班決めのときだった。
例の如く、私はどこの班にも入れず、一人窓の外を見ながら
黙って座っていた。
そこに、姫子さんが現れたのだ。

「鈴木さん…だったカナ?
 私たちの班、1人足りないんだけど、よかったら入らない?」

唐突に現れた姫子さんの無邪気な笑顔に、私は一瞬圧倒された。
こんな地味で目立たない私が、あんな明るい姫子さんに話しかけられるなんて
思ってもみなかったからだ。

142 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:53:01 ID:???
そんな私を、自分の心の檻から救ってくれたのは、姫子さんだった。
あのとき、姫子さんに話しかけてもらえなかったら、私はきっと今も
あの頃の私のままだっただろう。
姫子さんはこんな私に、他のお友達と接するように、普通に接してくれた。
決して無理をして合わせてくれているような感じではなく、自然に接してくれた。

姫子さんと初めて話したのは、5月の宿泊研修の班決めのときだった。
例の如く、私はどこの班にも入れず、一人窓の外を見ながら
黙って座っていた。
そこに、姫子さんが現れたのだ。
「鈴木さん…だったカナ?
 私たちの班、1人足りないんだけど、よかったら入らない?」


143 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:54:02 ID:???
そんな私を、自分の心の檻から救ってくれたのは、姫子さんだった。
あのとき、姫子さんに話しかけてもらえなかったら、私はきっと今も
あの頃の私のままだっただろう。
姫子さんはこんな私に、他のお友達と接するように、普通に接してくれた。
決して無理をして合わせてくれているような感じではなく、自然に接してくれた。

姫子さんと初めて話したのは、5月の宿泊研修の班決めのときだった。
例の如く、私はどこの班にも入れず、一人窓の外を見ながら
黙って座っていた。
そこに、姫子さんが現れたのだ。

144 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:56:04 ID:???
「…いいんですか、私なんかが入れてもらっても。」

「いいに決まってるじゃない!
 そんなところに座ってないで、一緒にやろ!」

最初は、何か裏があるんじゃないかと思っていた。
友達になったふりをして、暗い私を影でバカにしようと思ってるんじゃ
ないかと疑っていた。

でも、姫子さんは違った。
姫子さんは、本当の自分を私にさらけ出してくれた。
周りを気にせずバカをやったり、ときどきシリアスになったり、
姫子さんの表情を見ていると本当に飽きなかった。
私は久しぶりに、心から笑えた気がした。

145 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:57:33 ID:???
そうして、姫子さんのお友達とも、ちょっとづつ打ち解けることが
できるようになった。
五十嵐先生とも。

あるとき、姫子さんは私に1組のリボンをくれた。
白い、ふわふわのリボンだった。
そして、姫子さんはそれを私の髪に結んでくれた。
ツインテールなんて、今までしたこともなかったのに。

「わっ、やっぱり思ったとおり、オメガ似合ってるよ!
 こうやって見ると、6号さんってゴスロリの子みたいだね。」

もう半年前なら、悪意の、からかいの言葉だと思ったかもしれない。
でも私には、その言葉が嬉しかった。
一緒に笑ってくれる、姫子さんの存在が嬉しかった。

…潮風に吹かれながら、私はそんなここ数ヶ月のことを思い出していた。

「寒くなってきたし、そろそろ帰ろうか。
 やっぱりもう年末だね。
 これじゃ凍えちゃうよ。」

「そうですね、先生。」

風が、ぴたりと止んだ。

146 :マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:58:41 ID:???
ミジェットの乾いたエンジン音が、すっかり暗くなった港に響いた。
私はサイドウィンドウから、ただただ、遠ざかる夜の海を眺めていた。
いつまでも、いつまでも眺めていた。

147 :マロン名無しさん:2006/12/26(火) 00:04:12 ID:???
以上です。
学級崩壊な感じにしようと思ったのですが、なかなかうまく行きませんねw

PCが投稿規制を食らっているため今回ケータイからなのですが、コピペ失敗してしまってすみません。
管理人さま、お手数ですが、まとめサイト収録時には修正願います。

>一条さんの人
GJ!
来年の作品にも期待してますよ。
原作一条さんの母性愛が出てますね。

148 :マロン名無しさん:2006/12/26(火) 00:25:53 ID:???
規制解除されるまで待ってから投稿した方が良かったと思う

149 :マロン名無しさん:2006/12/26(火) 12:42:06 ID:???
>>147
GJっス
次は誰か楽しみっス

150 :マロン名無しさん:2006/12/27(水) 05:12:22 ID:???
保守

151 :マロン名無しさん:2006/12/27(水) 22:41:57 ID:???
>>147
GJ!!次も楽しみにしてます!


なんか人いないな。やっぱ年末だからか?

152 :マロン名無しさん:2006/12/28(木) 18:06:11 ID:???
みんな旧スレにいるんと違う?

153 :マロン名無しさん:2006/12/28(木) 18:50:05 ID:???
旧スレも結構粘るな

154 :マロン名無しさん:2006/12/28(木) 19:30:04 ID:???
新作投稿していいでしょうか?
旧スレにした方がいいのかな?

155 :マロン名無しさん:2006/12/28(木) 20:25:51 ID:???
旧スレもあと2KB足らずで終了するから
投下するなら新スレの方が安全だと思うよ

156 :マロン名無しさん:2006/12/28(木) 22:26:00 ID:???
ではこちらに投下します。
今回は来栖柚子の独白です。
今日一日、仕事しながらネタ考えてた罪深い私をお許し下さいw

157 :156:2006/12/28(木) 22:27:12 ID:???
<来栖柚子の独白>

雨が降っていた。
12月の夜明けの空は、雲に覆われ、一面のミルク色だった。
まるで、今の私の心みたいだった。

私は、今も信じられなかった。
芹沢さんが、あの芹沢さんが、ロボ子だったなんて。
あの日の夢が、正夢だったなんて。

思い当たることは、前からいろいろあった。
芹沢さんの肌から、ほんのり香る8×4。
「来栖ちゃん、演劇に興味あるの?」という言葉。
くぐもった機械的なロボ子の声と、優しい芹沢さんの声の
違うようでどこか似た感じ。
芹沢さんがいなかったあの日に舞い込んだ、ロボ子の代役。

そのたびに私は、その可能性を否定してきた。
芹沢さんが、ロボ子のはずはないと。
芹沢さんのことばかり考えているから、誰でも芹沢さんに
見えてしまうのだ、と。

でもその期待は、もろくも崩れ去った。

158 :156:2006/12/28(木) 22:28:09 ID:???
あれは昨日のことだった。
喉が渇いた私は、何か飲もうと1階の自販機へと足を運んだ。
そこに、芹沢さんがいた。

正確に言えば、ロボ子の着ぐるみから顔を出して、
ハルカ先輩と談笑しながらドクターペッパーを飲んでいる
芹沢さんがいた。

「ドジラの奴なんてひと捻りですよ、ハルカ姐さん!
 今後あいつに負けるなんて、絶対ないですって!」

芹沢さんは、確かにそう言った。

私は、目の前の情景が信じられなかった。
芹沢さんを問い詰めたかった。
ハルカ先輩を問い詰めたかった。
でも、できなかった。

私は、信じられない事実を前に、呆然と立ち尽くすだけだった。
私に気づいた芹沢さんが何か言ったようだったが、もう何も、
耳に入らなかった。
気づいたら、私は駆け出していた。

私は、家に帰って泣いた。
シャワーも浴びず、ご飯も食べずにベッドに倒れこみ、
ひたすら泣いた。
そうすることだけが、この現実を受け入れる手段だとばかりに。

冬の冷たい雨は、全くやみそうになかった。
ただただ、全ての音を飲み込みながら、降り続いていた。

159 :156:2006/12/28(木) 22:30:32 ID:???
以上です。
私ばかり投稿してすみませんw

皆さん暖かいコメントくださいますが、私の駄文、全然ヌルいですね、はい。
もっとドロドロした、このスレらしいのを考えますです。

160 :マロン名無しさん:2006/12/28(木) 23:26:51 ID:???
独白氏、GJ!!
次回作もお願いします!!!

161 :マロン名無しさん:2006/12/28(木) 23:36:17 ID:???
独白の人、GJです!


その内自分も投稿してみようかな・・・・・・

162 :マロン名無しさん:2006/12/28(木) 23:46:02 ID:???
>>161
是非

163 :マロン名無しさん:2006/12/29(金) 00:32:13 ID:???
独白氏GJ!! おもしろいよこれー

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