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【2次】漫画SS総合スレへようこそpart40【創作】

1 :作者の都合により名無しです:2006/07/02(日) 22:42:01 ID:PuzMXhXm0
元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1149068946/l50
まとめサイト
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm

2 :作者の都合により名無しです:2006/07/02(日) 22:42:36 ID:PuzMXhXm0
ほぼ連載開始順 ( )内は作者名 リンク先は第一話がほとんど

虹のかなた (ミドリ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/niji/01.htm
オムニバスSSの広場 (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/bare/16.htm
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
上・ドラえもん のび太の超機神大戦 下・ネオ・ヴェネツィアの日々(サマサ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tyo-kisin/00/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/05.htm
上・それゆけフリーザ野球軍 下・オーガが鳴く頃に (しぇき氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/ballgame/01/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/nakukoro/01.htm
フルメタルウルブス! (名無しさん)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
影抜忍者出歯亀ネゴロ (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/negoro/01.htm

3 :作者の都合により名無しです:2006/07/02(日) 22:43:08 ID:PuzMXhXm0
やさぐれ獅子 (サナダムシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/yasagure/1/01.htm
鬼と人とのワルツ (名無しさん)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/zz-extra/22.htm
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (487氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/487/03-01.htm
シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい (一真氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/silver/01.htm
ドラえもん のび太と魔法少女リリカルなのは (全力全開氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/fullpower/00.htm
戦闘神話 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/ginnan/01.htm
DEATH NOTE×地獄少女 (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/jigoku/01-1.htm
パパカノ (41氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/41/01.htm
バーディと導きの神 (17〜さん)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/17/01.htm

4 :作者の都合により名無しです:2006/07/02(日) 23:02:06 ID:jwsAKabY0
新スレお疲れ様です。パート40か。長く続きましたねえ。
これからも職人さんたちがんばって下さい。
特に、消えてる人復活してほしい。

5 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/03(月) 01:44:27 ID:bcAc2Cya0
第十五話「ファンレターを出す際には相手の歳を考えて☆とか使え」

〜前回のあらすじ☆〜

コンニチワ、あたし土方十四郎! 天下無敵の武装警察、真選組の副長をやっているの。
みんなからは鬼の副長だとかマヨネーズ依存症だとか言われてるけど、ホントは内気で引っ込み思案な普通のお兄さんなんだぞ、プンプン。
あ、そうそうあらすじを紹介するんだったね。あのね、なんと真選組の局長が代わっちゃったの! 
前の局長はゴリラみたいなおじさんだったんだけど、今度の局長はチョーイケメン! 
その甘いマスクで魅了した女子は数知れず、厳しい毒舌の裏には心優しい愛が隠れているの!
ときどきあたしだけに見せてくれるあの笑顔といったら……キャッ、恥ずかしい!
こんな局長の部下になれるんだったら私……あ、うっかりしてたけど、まだ名前を紹介してなかったね、てへっ。
新しい局長の名前は、その名も沖田総悟さん! 奇抜ながらも渋さの残る、素敵なオ・ナ・マ・エ。
本当は総悟さんって呼びたいんだけど、勇気がない私は中々言い出せなくて……ションボリ。
でもでも! 今日こそは勇気を出して言うんだ! あの人の肩を後ろからそっと叩いて……振り向いてくれたその笑顔に、
「おはよう、総悟さん」って……キャアー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


6 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/03(月) 01:45:03 ID:bcAc2Cya0
「…………って、アホか俺はァァァ!!!」
机に向かいながら一人筆を動かしていた土方が、突然発狂して悶絶する。
机には一枚の紙が置かれてあり、そこには無理やり書き起こしたかのような丸文字で、可愛く〜前回のあらすじ☆〜と書かれていた。
「なんで俺がこんな恥ずかしい文書かなきゃいけねぇんだ! 羞恥プレイか!? 場合によっちゃ腹切るぞ俺ェェ!?」
「なにいってんだィ土方さん。中々よく出来た文面ですぜィ。これを土方さんが書いたかと思うと吐き気がしてくらァ」
沖田総悟が土方の書いた気持ち悪い文章のあらすじを手に取り、「ぷっ」と苦笑する。
さて、前回真選組の新局長に就任した沖田だが、案の定その絶対的地位を手に入れてからは、無理難題な命令をしてばかりだった。
今回土方に下した局長命令は、『前回のあらすじを局長に恋する女子中学生風に書け』というもの。
激しく土方のキャラにそぐわない命令に不満を覚えながらも、土方は律儀に実行してしまった。そして今は悶絶するほど後悔している。
「いやぁ、土方さんにこんな文才があったとは。こりゃあ全国の土方ファンに見せたら泣きますぜ」
「やめろォォォ!! いっそ殺してくれェェェ!!!」
人間というものは、ふとしたことでとんでもない過ちを犯してしまうものである。土方はこの時、それを心底痛感した。
「局長」
土方が恥ずかしさのあまりのた打ち回る局長室、そこに音もなく現れる影が一つ。
真選組監察(密偵)の山崎が、定時の報告に来たところだった。
「どうしたんでィ山崎」
「はい。実は大江戸信用金庫に銀行強盗が立て込んでるとの情報が」
山崎が持ってきたのは、決して遊んでいられない、重大事件だった。
大江戸信用金庫といえば、江戸でも随一の大きさを誇る銀行である。
江戸なのに銀行?という疑問はこの際どうでもいい。ここは史実の江戸とは百八十度違う舞台なのだから。
「土方さん、自分の若さゆえの過ちに暴走している場合じゃありませんぜ。さっさと仕事しますよ」
「くそォォォ!! なぐりてェェ!! すっげぇなぐりてェェェ!!!」
「よし山崎、とりあえずバズーカ2ダースほど用意してくれィ」
「待てェェェい! 銀行強盗捕まえるのにバズーカはいらんだろうがバズーカはァァァ!!」
赤面しながらツッコミを入れる土方の姿は、それはそれはレアな映像だったという。

7 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/03(月) 01:46:07 ID:bcAc2Cya0

さあところ変わって大江戸信用金庫前。
沖田総悟新局長の束ねる新生真選組初の晴れ舞台である。
「あーあー、マサシ、おまえは完全に包囲されている。無駄な抵抗は止めておとなしく投降しなさいマサシ」
まずは、刑事ドラマなんかでよく見るセオリーどおりに説得から。
「故郷のお袋さんも泣いてるぞー。そんなマサシにするために産んだんじゃないってなー」
「うるせェェェ! 俺の名前はマサシじゃなくてマサヨシだァァ!!」
「それは役所に手続きした際のミスだー。ちょっと手が滑って『サ』と『シ』の間に『ヨ』を入れちゃっただけだー」
「どんなうっかり者の親だァ! 今年で二十五になった俺に今さらマサシとして生きろっていうのかァァァ!!!」
沖田のスピーカー越しの説得に、銀行強盗のマサヨシがツッコミを交えて返答する。
まぁ、ここで素直に投降するようでは銀行強盗としてのおもしろみがない。最後まで粘って粘って、それで捕まるのが真の銀行強盗というものだ。
「おい総悟。こりゃあ奴さん相当頑固だぜ。ここはいっちょ俺らが踏み込んで……」
「いや土方さん、俺の見たところあいつァもうちょっとで落ちますぜ。ここはもう少し俺に任せて下せェ」
ほう、と土方は感心する。
沖田のことだから、新局長となった権限でどんな強硬手段をとることかとヒヤヒヤしていたが、一応は組のトップに立った責任感というものがあるのだろうか。
ここは大人らしく、穏便な解決策に望むようだった。
「とはいっても、このままじゃ埒が明かねェ。ここはやっぱり、お袋さんに直接説得してもらうしかなさそうだ」
「な!? 来てんのかマサシのお袋さん!?」
土方が驚きの表情を見せると、沖田はフフンと鼻を鳴らしてムカツクほどの余裕振りを見せた。
「お袋さん、お願いします!」
「おお!?」
沖田が合図をすると、後ろのパトカーから一人の人物が出てきた。
クセのあるパンチパーマに、白い割烹着をつけた、哀愁漂うその姿。
さらにはBGMに、涙を誘う童謡を流し始める。何人かの隊士がコーラスを勤めているようだった。

8 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/03(月) 01:46:41 ID:bcAc2Cya0
「マサシ……もうこんなことはやめて。ママ悲しい」
そう涙ながらに懇願したお袋さんだったが、どうしても気になることに、白い割烹着には似合わないことこの上ない顎鬚が蓄えられていた。
しかも声がやたら低い。四十過ぎのオバサンでも、ここまで重厚な声色は出せるものではない。
というか、ぶっちゃけ前局長の近藤にしか見えなかった。
「ふざけんなァァァ!!! 俺の母ちゃんは確かにブサイクだったが、どちらかというとゴリラよりカバ似だったわァァァ!!!」
「まぁカバだなんて……カバなんかよりゴリラの方が素敵でしょ? だからママ頑張ってゴリラ顔に整形したの。マサシの好きなゴリラフェイスに」
「人を勝手にゴリラ好きにすんじゃねェェェ!! ってかどう見てもおっさんじゃねェかてめぇはァァァ」
「そうですぜィ近藤さん! あんたのゴリラ顔は天性のもんだ。今さら整形だったなんて夢見ちゃいけねェ」
銀行強盗と沖田の双方から罵倒されるお袋近藤。
というか、沖田は自分からけしかけておきながら酷い言い様である。
「おい総悟、こりゃあさすがに無茶だろ。近藤さんには悪いがここは別の手で……」
「仕方がねェ。ぶっ放しましょう」
「諦め早っ!?」
言うや否や、沖田は銀行強盗目掛けてバズーカ砲をぶっぱなした。
威力はある程度抑えてあるが、相手を無力化するには申し分ない性能である。
まぁ、中に残った人質の方々にはちょっとばかり痛い目を見てもらうことになってしまうが。
ついでにいうと、銀行内部の計器云々の損傷当にも保障は出来ないが、致し方ない。


こうして、沖田新局長による新生真選組の、初の大仕事が幕を閉じた。
その締めくくりは大方の予想通り周囲の被害を気にしない武力制圧であったが、奇跡的なことに犯人以外の人質に大した怪我がなかったのは、いったいどんなマジックか。
そんな真選組の明日はどっちだ。

9 :一真 ◆LoZjWvtxP2 :2006/07/03(月) 01:54:36 ID:bcAc2Cya0
新スレ乙! そして祝パート40!
お久しぶりの一真です。

第二部も残すところあとわずか。
あとわずかなんだから、もうちょっと早く続きかけよとお思いでしょうが、今回はなにげに苦労したんです。
なんといっても1レス目。自分で書いてて寒気がした。不快に思った方がいたら謝罪します。
すいませんすいません、本当にすいません。純粋に土方に惚れている方にもホンットすいません。

さて次は第二部最終回だァァァ! その後に待っている展開はもうホントどうしようか!
とりあえず第三部は絶対やるので数少ないファンの方は待っていてください。

10 :作者の都合により名無しです:2006/07/03(月) 07:52:47 ID:+uvZ8E4l0
>1さん
スレ建て乙です。もうパート40で3年半か。長続きしてますねー

>一真さん
新スレ一番手乙です。
今回は主役陣が全くでない展開ですけど、その分新選組が気合の入った
ボケをかましてますね。個人的に土方と沖田のコンビは好きなんでいいです。

第三部、今までとちょっと変わった展開になるそうなんで期待してます。


11 :作者の都合により名無しです:2006/07/03(月) 12:24:12 ID:k12xmqvd0
1さんスレ縦ご苦労様でした。

一真さんお久しぶりです。今回は神楽とか出なかったですけど、
次回は最終回なので出ますよね?一応主役だし。
なんか第二部は完全に沖田と土方が主役ですね。
第三部はシリアスモードかな?

12 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/03(月) 16:40:20 ID:vk/1smaa0
お前が悪いんだ……! 騎士の行く手を遮った、お前が……!

*  *  *  *  *  *

金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』
第一章 謎

13 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/03(月) 16:41:08 ID:vk/1smaa0
α 身体を引き裂かれる痛み

 ドキドキして、一人で舞い上がっていた。
 長い時間姿見の前に立って、着て行く洋服を吟味していた。
 馬鹿みたいって首を振って、いつも通りの服装で出掛けた。
 それらは確かに、つい数時間前の出来事の筈なのに、遥か昔の記憶を回想しているような錯覚に陥る。
 天国から地獄に突き落とされるって、こんな感じなのかな……?
 出血のせいか、靄がかかったようにぼんやりとした頭で、そんな事を思う。
 少女は、児童公園横に位置する廃倉庫、その壁際に追い詰められていた。
 目の前には、見慣れた彼の顔があった。そして――その手に握られているのは、禍々しい装飾を施された刃物。
 窓から入り込んだ月明かりに照らされて、刃物が鈍い光を放つ。
 気押されるようにして、後退る。背中が壁にぶつかった。破けたフレアスカートの裾から、血が滴り落ちる。
 恐怖心を煽るように、刃物を左右に揺らしながら、彼がゆっくりと近付いてくる。
 絶体絶命だった。
 今までは何とか致命傷を免れていたが、逃げ場を失った今度こそ、その刃が少女を貫くだろう。

14 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/03(月) 16:41:56 ID:vk/1smaa0
「なんで……?」
 少女は喉の奥から声を絞り出した。
「なんで、こんな……」
 この理不尽な死が、不可避だと言うのなら。
 自分が何故、殺されなければならないのか。その理由を聞いておきたかった。
 何もわからないままに殺されるなんて、絶対に嫌だった。
 彼は思案するように視線を下に落とし、口を開いた。
「迷いを断ち切らなければならない――これから始まる、復讐のために」
 迷いを断ち切る? わけがわからない。勿論、彼に復讐されるような覚えだってない。
 納得の行く答えが返ってこないであろう事は、薄々予感していた。
 彼とは長い付き合いなのだから、殺害に足る動機があるかどうかくらいはわかるつもりだ。
 狂人の動機に、正当性など望むべくもない。狂人の論理に、整合性など望むべくもない。
 それでも、少女は彼が完全に狂ってしまったのだとは思いたくなかった。
 彼をこのような凶行に駆り立てたのは、一時の気の迷いなのだと、まだ思い止まれるのだと、そう信じたかった。
 だから、少女は言葉を紡いだ。彼の心に響いてくれるよう祈りながら。
 咄嗟の事で、頭が真っ白になって、何を言えばいいのかわからなかったけれど。
 胸元に迫る凶刃から目を逸らさず、一欠片の希望と精一杯の誠意を込めて――

15 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/03(月) 16:42:57 ID:vk/1smaa0
一 覚醒、そして喪失

 突然の強風が、木々を大きく揺すった。雨のように青葉が宙に舞い、散り、落ちていく。
 その内の一枚が、かさり、と微かな音を立てて、倒れている少年の頬に着地した。
 それに反応するように、閉じられた少年の瞼が、ぴくりと動いた。
「う……」
 声にならない声が喉から漏れ、ゆっくりと目が開かれていく。
 少年が目覚めて最初に感じたものは、湿り気を含んだ、草と土の匂いだった。
 両手両足に力を込めて、立ち上がろうとする。が、失敗。がくりと肘と膝を付き、顎を土に埋めてしまう。
 長い間、妙な姿勢で倒れていたのか、手足が痺れ、感覚を失ってしまっていた。予想以上に、身体に力が入らない。
 暫く、手を開いたり握ったり、足の指に力を入れたりして、身体を慣らす。
 そして、痺れが消えかけた頃を見計らって、今度は慎重に身体を起こした。
 少年はおぼつかない足取りで立ち上がると、眼前にそびえる崖を見上げた。
 崖の上から少年が倒れていた場所まで一直線に、何かが転がったような跡があった。
 その『跡』の部分だけ、膝のあたりまで生い茂っている雑草がくしゃりと潰れており、所々掘り返されたように、土が露出している。
 どうやら、少年はこの崖の上で足を滑らせて転落。頭を強く打ち、気絶してしまっていたらしい。
 ズキン、と頭が痛んだ。反射的にこめかみに触れると、ぬるりとした感触。
 驚いて、手の平を見る。案の定と言うべきか、べっとりと血に染まっていた。
「血……出てる」
 怪我を自覚した瞬間、頭の痛みが激しくなったような気がした。

16 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/03(月) 16:43:59 ID:vk/1smaa0
 頭部の打撲は、打ち所が悪いと命に関わる。できれば、病院で診てもらった方がいいかもしれない。
「こんな山奥に、病院なんてある訳ないよなぁ……」
 一人そう呟いて、少年は、自身の思考に違和感を覚えた。
 ――山奥?
 いかにも『獣道』と言った感じの道なき道。少年を取り囲むようにして繁茂した、大きな照葉樹。
 確かに、ここが山奥であるのは、まず間違いないと見ていいだろう。
 しかし……ここが『何処の』山奥であるのか、と云う情報については、何も思い出す事が出来なかった。
 何処へ向かおうとしていたのか。
 何をしようとしていたのか。
 そもそも、俺は……誰なのか。
 必死になって記憶を探ってみるものの、次から次へと浮かび上がった疑問はすべて、答えを見付け出せずに雲散霧消してしまう。
 そこでようやく、少年は気付いた。記憶がほとんど全て、欠落してしまっている事実に。
 頬を、冷たい汗が伝う。いや、もしかしたら血だったかもしれない。
 全生活史健忘――そんな言葉が、頭を過ぎった。
 日常生活に支障はないものの、自分自身の過去の記憶が一切思い出せなくなってしまう。俗に言うところの、記憶喪失だ。
 その現象の特異性からか、ドラマなどではよく取り上げられるが、実際には極めて稀な症状である。
 頭部外傷による記憶の混乱は珍しい話ではないが、その大半は脳震盪による一時的な健忘であって、中長期に亘る記憶喪失には至らない。
 少年は数分ほど、開かない記憶の引き出しをこじ開けようと苦心していたが、やがて思索を諦め、その場にどさりと座り込んだ。
 と、肩口に食い込む、二つの感触。そこで初めて、少年は自分が大きなリュックを背負っている事に気付いた。
 急いで、背中からリュックを降ろす。何か身元を特定できるような物が入っている事を願いながら、少年はリュックを開けた。

17 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/07/03(月) 17:05:32 ID:vk/1smaa0
新スレお疲れ様です。
こっそり復帰。完結の際は色々どうもでした。
サマサさんの超機神も終盤戦ですか。終わってしまったら寂しくなるな……
ご無沙汰な職人さん方も、帰ってきてくれるといいのですが。
さて。次どんなものを書こうか悩んだ末に、こんな形で落ち着きました。
何気に、前と似たような雰囲気です……でも、今度は後味爽やかにしたい……
まったりスローペースで書いていきますが、また宜しくお願いします。

18 :作者の都合により名無しです:2006/07/03(月) 18:50:51 ID:PjT4Mcqk0
かまいたちさん、お名前を変えてキターーーーーー!
待ってました。復活が意外に早くて嬉しいです。

また、あのドキドキワクワクな感じが楽しめますね。
しかもまた雰囲気がドス黒くて最高だ!

19 :バーディーと導きの神:2006/07/03(月) 22:17:38 ID:OCCFTVzG0
氷牙の歓待は質素ではあったがバーディーはその人柄の暖かさが好ましく感じた。
さらに、この星の情報も少なからず手に入れられたのは幸いだった。
この星にはそれぞれの大陸にいくつかの国があり、その国全てが氷牙のような竜人が貴族と
して統べている。そしてその下に亜竜人と呼ばれる人種、そしてザンのような人種が階層に
分かれて暮らしている。見かけはバーディーが所属する連邦の市民階層制度と似ている。
また、この星はすでに地殻の運動が乏しく、氷牙曰く『滅び行く大地』なのだそうだ。
そして同じ大陸に隣接するザンたちの住むアーマヤーテという国と、ルアイソーテという
国は、大陸の覇権をかけて100年も前から戦争をしているらしい。
氷牙に言わせると、竜人の貴族制度に固執するルアイソーテのゴリ押しと、階級制度の見
直しを図るアーマヤーテの意地が戦争の原因らしい。
そのような情報を手に入れたバーディーは、ザンの隣の部屋をあてがわれ、男物だがゆっ
たりとしたデザインのザンの兄の服まで貸してもらい、ベッドの上に寝そべった。

『バーディー、この星、やっぱりお前も知らない星なのか?』
頭の中のつとむが、バーディーに声をかけてくる。
「そうね。この星は少なくとも連邦にも同盟にも属していない惑星に間違いはないわね」
『あの氷牙って竜人だけど、あの生き物はどちらかというと地球のファンタジー物に出て
くるドラゴンにそっくりだった。羽根はなかったけど』
「そうね。つとむの家で見たテレビゲームに出てきたドラゴンに似てたわね」
『でもあのザンって男の子は僕ら地球人と違うようなところはなかったな』
「黒目、黒髪、日焼けした肌、でも、あの300メートルはあろうかという崖を登れる体力は
つとむとはちょっと違うけどねー」
『うるせーよ体力バカ』
などと、バーディーとつとむがたあいのない議論していたとき、部屋の扉をノックする音が
聞こえた。


20 :バーディーと導きの神:2006/07/03(月) 22:18:35 ID:OCCFTVzG0
「はいはい。開いてますよ」
「バーディーさん、あの子が目を覚ましました」
ザンの声だった。
「あ、すぐ行くわ」
バーディーはベッドから降りて扉に向かいながら言う。
「じゃあ先に行って待ってますから」
ザンはそう言うと、自分の部屋に戻っていった。
バーディーも続けてザンの部屋に向かう。
扉を開けてザンの部屋に続く階段を上り中を覗くと、氷牙が長い首を低い天井に収めるため、
窮屈そうに体を丸めてベッドの隣に座っていた。
「どう、その子の様子」
バーディーは部屋に入りながらザンに尋ねる。
「それが、この子記憶喪失らしいんです。『リュミール』って言葉だけ覚えてるみたいで」
「そう、それは大変ね」
「頭でもぶつけたのかな?」
バーディーの肩に乗ったキデルが首をかしげる。
「まあ素性はともかく自分のことを思い出すまでは好きなだけここにいるといい」
氷牙が少女に優しい言葉をかける。
「でも、ご迷惑をかけるわけには……」
少女は困惑した表情で氷牙を見やる。
「なあに遠慮は無用じゃ。面倒は全部ザンにさせるからの」
氷牙はザンのツンツン頭をわしわしとなでながらやさしく笑った。
「バーディーさんとキデルさんも一緒にここにいていいぞい」
「ありがとうございます」
「お世話になるよ」


21 :バーディーと導きの神:2006/07/03(月) 22:19:12 ID:OCCFTVzG0
「じゃ、わしは自分の部屋に帰るわい。ザンの部屋は天井が低くて窮屈なのでな」
大きな体躯の氷牙は、ドスンドスンと大きな足音を立てながら階段に向かった。
「それからなザン。その娘さんに別の服を出してやれ。目立っていかん」
「うん親方。分かったよ」
少女は素材の知れない全身タイツ風の衣装をまとっていたのだった。
ザンは部屋の衣装ケースの中から少女に合う服を探し出す。
「あったあった。ねえ……。君のこと、リュミールって呼んでいいかな?」
「え?うん」
「やっぱ名前がないと呼びづらいもんね。リュミールは服自分で着替えられる?」
「うん」
「私が手伝うわ」
バーディーがザンから服を受け取り、ベッドの隣に立つ。
「じゃあ僕は着替える間下に降りてるね」
ザンが優しく言うと、リュミールは被りを振った。
「ううん、いいの。私ザンの話が聞きたい」
「そう。じゃあせめて後ろ向いてるね」
「うん」
ザンはくるりとベッドに背を向けた。バーディーはまっすぐでいい少年だと感心する。
「じゃあ着替えましょうか」
「はい」

22 :バーディーと導きの神:2006/07/03(月) 22:20:26 ID:OCCFTVzG0
バーディーは少女の服を脱がせた。やはり自分の知っている素材でできた服ではない。
適度に伸び縮みし、自然と体にフィットする素材でできている。
これはゲートの位相転移の話が現実味を帯びてきたとバーディーは思った。
「じゃあリュミール、なんでも聞いて」
バーディーが物思いにふける間、ザンが快活だが優しさを含んだ声でリュミールに問いかける。
「うん。じゃあこの服は誰のなの?」
「僕のお母さんの小さい頃の服だよ」
「お母さん?」
「うん。僕が小さい頃死んじゃったんだ」
「ごめんなさい。そんな大切な服を」
「いいんだリュミール。とっておくより着てもらうほうが母さんも喜ぶと思うから」
バーディーはそんな風に答えるザンに好印象を覚えた。まったくつとむとは正反対の少年だ。
『なんか僕のこと悪く思ったろ』
頭の中でつとむが悪態をつく。最近になって、バーディーの所作からその思考を読み取る
ことを覚えたらしい。まったく必要のないことだけは覚えるのが早い少年だ。
バーディーはそんなつとむを無視してリュミールの服の袖を脱がす。
すると、その手首の表面に小さなマイクロチップのようなものが埋め込まれていた。
「あ……」
リュミールもそれに気付いて当惑したような声を上げる。
そのリュミールの様子を見たバーディーは、チップのことは見なかったことにして、ザンの
出した服を着せ始めた。

23 :バーディーと導きの神:2006/07/03(月) 22:21:42 ID:OCCFTVzG0
「どうしたの?」
ザンがリュミールの雰囲気に気付いて心配そうな声をかける。
「なんでもないの……。それよりザンのことが聞きたい……」
「僕のこと?いいよ。僕の父さんは僕が生まれる少し前に戦争で死んじゃって、写真でしか
顔を知らないんだ」
「戦争?」
リュミールが問いかける。バーディーもその言葉に反応する。
「うん。100年前から今僕たちのいる国のアーマヤーテと、隣の国のルアイソーテはずっと
戦争をしてるんだ。それで僕の兄さんも戦争に行ってしまってそれっきり連絡なしなんだ。
……だから僕、戦争が嫌いなんだ」
「戦争、か」
バーディーがつぶやく。特捜を主任務とするバーディーとは縁遠い事柄だが、なにやら
不穏な雰囲気が漂ってくるようだった。
「リュミール、もう着替え終わった?」
「うん」
「ええ、もういいわよ」
二人が答えると、ザンが振り向く。
「わーっ!」
リュミールは、薄い黄色の丈の短い貫頭衣に身を包み、貫頭衣と同じ色のズボンを履き、
編み上げのやわらかいブーツ姿といったいでたちだった。長い緑色の髪は両側で結んである。
リュミールの姿を見たザンは、パッと表情が明るくなった。そしてもじもじしながら後を続ける。
「よ、よく似合ってるよ!」
バーディーのほうが恥ずかしくなるくらいの不器用さで、ザンはリュミールを褒めた。
途端にリュミールが顔を赤らめる。


24 :バーディーと導きの神:2006/07/03(月) 22:26:22 ID:OCCFTVzG0
「ザン、ありがとう」
リュミールは両手をほほに当てて恥ずかしがる。
しかしその所作によってザンはリュミールの手首にあるチップを見つけてしまった。
「リュミール、それは?」
何気ない一言だったが、リュミールは敏感に反応した。
「見ないで!これがなんなのか、私……、知らないの!服を脱いだときに見つけたの。
とろうとしても取れないの!」
涙を流してチップを隠すリュミール。そのまま顔を下に向けて泣き始める。
「バカだね君は」
リュミールの服を着替えさせる間、ザンの頭に乗っていたキデルは、そう言ってザンの頭を
ポカリと殴った。
「デリカシーのない奴」
と、もう一発殴る。
「痛っ!ごめんなさいキデルさん。ごめんよリュミール。君を泣かせちゃった……」
ザンは本当に後悔したようで、太い眉毛を八の字にしてリュミールに詫びた。
しかしリュミールはそんなザンの実直な性格に好意を覚えたのか、涙を拭いて笑顔で答える。
「いいの。原因は私の体のことなんだから」
「リュミール……」
ザンはリュミールの笑顔を見てホッと胸をなでおろす。すると唐突にザンの部屋に二個の
リストバンドが投げ入れられた。氷牙の仕業だ。
「普段はそれつけとれや」
氷牙のやさしい気遣いだった。
「ありがとう親方!リュミール、僕は君の手首のことは絶対言わないよ!」
気合をこめた表情で宣言するザン。
リュミールはその優しさに胸を打たれてそっと涙を流した。

25 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/03(月) 22:29:49 ID:OCCFTVzG0
新スレお疲れ様です。

今回はもう一人の重要人物リュミールの登場編です。
世界観はおいおい語っていくので、今はこれくらいでご勘弁を。

26 :作者の都合により名無しです:2006/07/03(月) 22:48:50 ID:qddXvWfj0
>かまいたちさん
お久しぶりです!俺ももっと復帰までかかると思ってたので新連載嬉しいです!
金田一少年ですか。前回のカマイタチテイストもたっぷりで期待してしまいます。
これって長期連載かな?それとも短編連作かな?どっちにしても期待度マックスだ。

>17〜さん
おお、新連載を始めたばかりなのに素晴らしいハイペースですね。お疲れ様です。
今はまだ割合にほのぼのした展開だけど、戦争という言葉から大活劇になりそうですね。
原作知らないから、登場人物のまとめとかちょっと書いて教えてくれると嬉しい。

27 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/03(月) 23:13:55 ID:OCCFTVzG0
>>26
では今まで登場した人物のみで

鉄腕バーディー
・バーディー・シフォン・アルティラ:言わずと知れた連邦の捜査官。現在は不慮の事故で殺してしまった千川つとむと
                      肉体を共有している。

・キデル・フォルテ:連邦の捜査官で階級はバーディーより一つ上。だが陽気な性格が幸いしてか、
            上下関係には無頓着な一面もあり

エルデガイン
・ザン:人間の父と母の間に生まれたアーマヤーテ人。幼い頃両親を亡くしたが、父親の知り合いの竜人
    氷牙の元ですくすくと育つ健康優良児。とにかく体力面には優れた才能を持っているが、
    女の子には免疫がなく、惚れっぽいうえに一途な面も持つ。

・氷牙:王付きの大臣まで勤めたほどの貴族だったが、「貴族が支配する時代は終わった」と、
    貴族の象徴である背中の羽根を自ら切り落として職を辞した人物。
    それ以後、アーマヤーテでは市民階層制度が徐々に開放されつつある。息子が一人いる。

・リュミール:この星には存在しない緑色の髪の毛、碧色の瞳を持つ少女。両腕の手首に謎のチップを埋め込まれている。
       か弱い少女だがこの物語の鍵を握る重要人物。

こんなもんでどうでしょうか?

28 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/04(火) 00:26:40 ID:/uH7ROUI0
【忍】 しのびどう -DEBAGAME-

出歯亀の語源は、明治後期に実在した覗きの常習犯に由来する。
通称を「亀」というその男の歯が出ていたから、転じて覗きをする者を出歯亀と呼ぶように
なったという。

覗きというのは、秘匿された部分がハラリとさらされる瞬間を盗み見る行為である。
いわば、待ちの行為。だが、根来の能力によれば、より深く秘匿されたあらわもなき部分に
易々と踏み込み、好きなだけ眺めるコトが可能!

千歳が久世屋を尋問している頃、彼は能力によって、千歳の体内へと潜入した。
実際にそれらは、亜空間と呼ばれる位相のズレた空間だから、現物に潜り込んだとはいえ
ないが、しかし亜空間の周りには湖底から仰ぎ見る水面のごとく、ゆらゆらと光の網を張る
膜があり、そこから現物の様子を眺めるコトができる。
さて、ここまで描けばお分かりになるだろう。
根来は千歳の体内において、じつと息を潜めつつ、臓器や内膜を眺めていたのだ。
これほど恐るべき出歯亀はいないだろう。
外見からは伺い知るコトのできないサーモンピンクの粘膜がのたうつ様を、まったく知覚さ
れるコトなく至近距離から好きなだけ眺められるのだ。
女性にとり『浸入』というワードは恐るべきモノだから、根来は正しく女性の天敵だ。

さて。現状へと視点を戻そう。

申し訳程度に幾何学模様を施した無反りの忍者刀が、千歳の胸から伸びている。
と見えたのは千歳の目線からであり、厳密には忍者刀を掴んだ細い腕が肘の部分からにょっ
きり生えているというのが正しい。先ほど──

「発動させると思うか?」

と根来の声が掛かった直後こそ、久世屋めがけて猛然と伸びすさった腕ではあるが、今は千
歳の胸の真ん中から虚空に向かってむなしく突き出されているのみ。
ならば果たしてターゲットはどこへ行ったのか?

29 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/04(火) 00:27:35 ID:/uH7ROUI0
疑問は頭上からの声が解消した。
「やはりいらっしゃいましたね根来さん。音の具合からまさかと思っていましたが」
なぜか根来の腕を凝視したまま動かなかった千歳は、声に一拍遅れる形で慌てて頭上を見た。
距離にすれば約4メートルほど上にいたのは、もちろん久世屋。
奇襲を受けたというのに顔色はさほど変わっていない。容貌も人間のまま。
うっそうと空にフタをする枝葉めがけて足を伸ばし、頭を地上に向けている。
すなわち、コウモリが取るごくごく一般的な逆さ吊りの姿勢。
声がした瞬間に上空へと飛びすさり難を逃れたのだろう。
月のない闇夜、それも森の中ゆえ彼の足元は見えないが、足に何らかの変化が生じ、枝を
捉えているのは想像に難くない。
そして面妖なコトに、彼の髪も服も地上へ向かって垂れてはいない。
地上に立った姿を180度反転した姿で、重力というのをまるで無視している。
「しかし人が悪い。発動途中で攻撃というのはショッカーでもしないコトですよ。全く。おかげで
俺の輝かしい武装錬金初発動の瞬間を、お見せするコトができなかった」
ため息交じりに語る久世屋の声に引きずり出されるように、根来の腕は外部めがけて動き始めた。
千歳にとってははなはだ迷惑な話だろう。
肩口。特徴的な髪。マフラーをひっかけた胴体。
それらが体内よりズブズブと現出していく異物感はそぞろに戦慄を禁じえない。
押し広げられた皮膚から、湿った生暖かい質量を引き抜かれる感覚がある。
反面、その奥側、肺腑や心臓の辺りには何の質感もないというのが不気味である。
汗が染み出るような感触といおうか。
気づいた時には皮膚にあり、自身の意思では止めようがない。
さて、根来操る忍者刀の武装錬金、シークレットトレイルの特性は

1.斬りつけたものに亜空間への入り口を構成し
2.亜空間内では現空間において接触している物の間ならば行き来可能

であるから、久世屋尾行の最中に木の幹や枝や根を伝い、千歳の体内より奇襲の機会を
伺っていた──
と察しをつけれぬ千歳ではないし、この夏に起こった一連の再殺部隊の活動において
根来が戦部という戦士の体内に潜んで奇襲を掛けたというのももとより周知の事実ではある。

30 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/04(火) 00:29:34 ID:/uH7ROUI0
悲しいかな。彼は重力に干渉され、緩やかに落ちつつある。
そんな些細な事象に優越感を覚えたのか、
「ええ。発動の瞬間をお見せできなかっただけですからね」
余裕たっぷりの久世屋。
胸の前に持っているのは、斬撃を見事受け止めた物である。
色はルビーレッドで、血を思わせる。
大きさと基本的な形状は、500mlの缶ジュースに似ている。
ただし単なる円筒形ではなく、ほぼ下半分はもう1枚円筒を巻いたように盛り上がっていて、
その部分の側面には半円状の板がついている。
半円状の板と、盛り上がっていない部分(つまり上半分)の中心には穴が一つずつ開いてい
るが、何の用途があるのか。
根来が着地まで観察した事柄は以上だ。
「よもや動物型が武装錬金を発動しようとはな」
千歳も傍らで頷く。
武装錬金という闘争本能を具現化した武器は、人間もしくは人間型ホムンクルスが形成でき
るというのが常識だ。
武器を使うという概念を有するか否か。それが分かれ目。
そして動物にはおおよそ、武器を用いるという概念はない。
「おもちゃというのは、大体が武器の形をしてます。きっとそれで遊んでいるうちに武器を扱う
概念が、俺の中に芽生えたんでしょうね。人間的なようですが、これはなかなか動物的な発
展ではないでしょうか。ネコがネズミの捕まえ方を覚えるように、遊びの中から生存に必要
な術を、俺は見つけていた」
やけに透る声で説明するのは久世屋。
「そしてこの武器の正体は…… ま、実際に体感した方が早いでしょう」
赤い筒は、千歳めがけて無造作に投げられた。
と見るや、根来は彼女の前に立ちはだかり、逆手に持ち替えた忍者刀を斬り上げる。
電光一閃。
両断された筒がそれぞれあらぬ方向に飛んで行き──…爆発した。
音は大きいが、規模は小さい。爆竹を打ち鳴らしたかのごとく、黄色い光を2、3度撒き散ら
すとそれきり音沙汰はない。煙も、辺りに火薬の匂いを立ち込めさせるだけの薄いモノ。
しかし果たして何の武装錬金なのか。

31 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/04(火) 00:30:16 ID:/uH7ROUI0
通常、武装錬金は既存の武器や兵器になぞらえられた形状を取る。
千歳ならレーダー、根来なら忍者刀というように。
ならば久世屋の武装錬金のモチーフは何なのか。
すっかり平常心に戻った千歳はそれを考え、根来は筒が爆発した辺りを手早く見回し、一人
納得を浮かべた。

「ありがとう。助かったわ」
「録音は終了したな」
千歳の礼など無視して、根来は小声で呟いた。視線を上空の久世屋に置いたまま。
「ええ」
千歳の掌中にあるテープレコーダーを戦団に提出すれば、今回の事件のほとんどにケリが
つき、残すは犯人たる久世屋の殺害のみとなる。千歳は無論力添えするつもりだから、
「大戦士長に届け次第すぐこちらに──…」
と答える。が、返答はナイフのように冷たく突き刺さる。
「戻ってくるな」
「え?」
「足手まといを憂うのならば、最初(ハナ)から戦場に立たねばいい」
まったくの正論だろう。
それを人の感情など一切斟酌せず述べるのが根来という男で、千歳が憧憬にも似た信頼を
寄せている部分でもある。
だから千歳は無言のままペンを手に取り、ヘルメスドライブの画面へ当てる。
一抱えもある六角形の筺体から全身へとダークブルーの光が広がり、千歳の色彩をひどく
薄めていき、やがて彼女の姿をこの場から消し去った。
ヘルメスドライブのあった部分に、ほぼ等積の丸い波紋をかすかに残し。
残された久世屋は根来に向かって、大仰に肩をすくめてみせた。
「おや、あなたも非情じゃないようで。例え足手まといでも楯や囮にすれば良かったのに。そ
したら労せずして勝て」
言葉を遮るように、根来はシークレットトレイルを地面に突き立てる。
「どうでもいいコトだ。私は一人で」
数条の稲妻がのたうつ中、無反りの刀身はずぶずぶと土中に沈む。
「十分戦える」
根来も刀と共に沈んでいき、やがて完全に姿を消した。

32 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/04(火) 00:31:18 ID:/uH7ROUI0
「正月は冥土の旅の一里塚 目出度くもあり 目出度くもなし」
そんな一休禅師のお言葉がよぎりますね。
テトリスでブロックがぐだぐだに寸詰まり、はるか上でダブついてる時に、長い棒がやってくる
ような絶望感を、きっと彼女も体感しているコトでしょう。

本日7/4は千歳の誕生日です。

それとは関係なく、干支を二周して3ヶ月ばかり経つと時の流れが急に早くなって本気でメイ
ドインヘブンの存在を疑う傍ら、体にもそろそろガタが見え始めてきたので、これ以上年は
とりたくなく昔は嬉しかった誕生日も来んなボケ億劫じゃあというのが実情ですが、おめでとう。

本日7/4は千歳の誕生日です。

目出度き日にござるのに、本編で根来に追い払われる彼女は一体……

話は変わり、久世屋の武装錬金はかなりマニアックな武器をモチーフにしてます。
それが何かはお楽しみ。

前スレ>>485さん
あの豹変から春川が刺されるまでの流れは、かなりゾワゾワきますよね。変な絵とか犯人の
豹変振りがとりざたされますが、ストーリーラインに関しては結構作りこまれている作品なの
で、興味があれば単行本も。おまけも充実してますよ。渾身のネームとか渾身のネームとか。

前スレ>>486さん
>心理描写や情景描写まで書き込んでいるのに
実は執筆中「う、セリフの量多すぎ」とか苦悶してましたので、こう言っていただけるととても救
われます。ズレはもう、半角スペースを二回連続で入れないようにした上、調整ドット . も加
えて万全の態勢を! 縦書きのあるあたりを範囲指定して頂くと . があるのが見えますよ!

33 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/04(火) 00:31:58 ID:/uH7ROUI0
銀杏丸さん
以前より、キャラの掘り下げには瞠目するコトしきりです。根底にある車田的熱さを損なわな
いのは正に愛のなせる技。習いたい所です。そして脇役が好きなので、ニコルのような実務
一点張りのキャラは、つい戦闘以外の場所で活躍するのを期待してしまいますね。あと、爆爵にも!

前スレ>>495さん
自分でも時々、どういうジャンルを描いているか分からなくw けれども色々描いたおかげで
今後の指針?みたいなのが見えてきたので、これはこれでいいかなぁと。どの要素も楽しく描
けましたし。AAとかサブリミナルとか、楽しんでいただければ幸いです。

ふら〜りさん
>敵キャラにこそ独特かつ奥深い哲学が欲しいところですよね
ですよね。こーいうのを持った親衛騎団とか暗殺チームとか、機界七人衆とかがいてこそ、
話は輝きましょう。あと、奇抜な発想は本能で描き散らかしているだけなので、そこまで言っ
て頂けると、照れます。そして堕天使コードは、是非にでも!

34 :作者の都合により名無しです:2006/07/04(火) 07:55:46 ID:6hzMiSbk0
パート40おめでとう。1さんお疲れです。
カマイタチさん復活おめ。また楽しませて下さいな。

>シルバーソウル
鬼ごっこからずっと新撰組が主役でしたね。俺はこんな土方も大好きですよ。
第三部の構想は既に出来ているという事ですが、全何部構成なのかな?

>バーディ
俺も原作両方とも知りませんけど、キャラの説明は大変参考になりました。
只者でない人達がメインキャストですね。どんな広がりを見せるか楽しみ。

>金田一少年
またいきなり、期待を裏切らぬダークでスリリングな出だしですねー!
前作は文句なしの名作だったんで、今作もあのクロリティを期待してます!

>ネゴロ(千歳誕生日おめ)
根来エロいなあ。ムッツリだ。そうか、タイトルはここにかかってたのか。
しかし恐るべき潜入能力ですね。しかし、能力高いけど千歳より華がないw



35 :作者の都合により名無しです:2006/07/04(火) 12:21:26 ID:j1qLZsYg0
カマイタチさんお帰りなさい。前作の大ファンでしたので本当に嬉しいです。
金田一とはまた嬉しい。原作を上回る謎を期待しております。

スターダストさん、最近更新ペース速くて嬉しいです。千歳誕生日おめでとう。
しかし根来は相変わらず千歳の礼とか無視して無愛想だ。いっそ負けちゃえw

36 :バーディーと導きの神:2006/07/04(火) 18:30:16 ID:IxWve2QP0
リュミールのことが片付いて部屋に戻ったバーディーたちは、今後のことを議論しあった。
「超空間通信が使えず、この星は連邦や同盟の所属ではないとすると、考えられるのは2つ
ありますね」
「と、いうと?」
「1つは、何らかの原因でゲートが開き、私たちのまだ到達していない文明圏に飛ばされた
こと。2つ目はこれも何らかの原因でゲートが開き、開いたゲートの位相が変異して、別の
時空に飛ばされた、ということです」
「宇宙船が言っていた320周期前に飛ばされた事件のことか?」
「はい。おそらくは……」
『ほんとにそういうことがあるのかよ?』
「可能性としてはね。つとむも見たでしょ、あの竜人。あんな種族は私も知らないわ」
『そりゃそうだけど……』
そうやって結論の出ぬまま議論が停滞していると、階下から氷牙の声が聞こえてきた。
「バーディーさん。ザンの奴、リュミールを連れて森に遊びに出たまま帰ってこんのじゃ。
スマンが探してきてくれんかのう」
窓から外を見ると、もう日も沈みかけている時間帯のようだ。子供が外で遊んでいい時間
ではない。
「分かりました。私がつれて帰ります」
バーディーは返事をすると、階段を下りて部屋の外に出て行った。

37 :バーディーと導きの神:2006/07/04(火) 18:30:56 ID:IxWve2QP0
一方こちらは可愛いガールフレンドができて舞い上がっているザン。
リュミールをつれて森の中を縦横無尽に駆け回ったザンは、さすがに帰り支度を始めていた。
「じゃあそろそろ家へ戻ろうよリュミール」
「うん」
リュミールは素直に返事する。
しかし、森の奥まで来すぎたためか、背の高い広葉樹が多い森は、あっという間にとっぷりと
暮れてしまった。
「しまったなあ。こりゃ親方に叱られるぞ」
ザンはリュミールの手を引いて来た道を引き返しながらつぶやいた。
「大丈夫なの、ザン?」
「リュミールは悪くないよ。それに……、しっ!」
言いかけて、ザンはリュミールの肩を抱いて身を低くする。
「クケッ」
下生えの樹木から鳥が一羽飛び立った。
「ふう、タチの悪い奴かと思っちゃった」
ほっと胸をなでおろし、再びリュミールの手をとるザン。
「タチ悪いのって、どんなの?」
周囲が暗くなってきて怖くなったのか、リュミールが聞いてくる。
ザンはわざとらしくアハハと笑うと、突然リュミールを引っ張って走り出した。
「こういうのがタチの悪い奴ってんだよ!」
リュミールはちらりと後ろを振り向く。
「きゃあっ!」
そこにはいつの間にかザンたちの後ろに廻りこんできていた体長3メートルはあろうかと
いう熊竜(ユウリュウ)という獰猛な獣が大きな口を開けていたのだ。
「でもこいつは足が遅いから走れば逃げ切れる!」
ザンは言いつつリュミールと一緒に走る。
しかし、そんなザンたちのことを影から見ている男がいた。

38 :バーディーと導きの神:2006/07/04(火) 18:31:44 ID:IxWve2QP0
ザンたちの様子を見ていた男は、黒髪をオールバックにし、鋭い目つきの顔に3本の引っ
かき傷があった。体躯は優に2メートルは超え、がっしりした巨漢だ。
(ガロウズ准将。服装は違いますが、例の少女と思われる人間を見つけました。念視を送り
ます)
男は念話でガロウズという男にリュミール発見の報を知らせると、自分の見た光景を念視で
ガロウズに送った。
すると男にガロウズから念話が帰ってくる。
(おおっ!間違いない!目覚めていたのか!)
(どうしますか准将。私が捕らえるのは容易いことと思いますが)
(よし、実行せよ。少女を捕らえたらすぐさま飛空挺に引き返せ。アーマヤーテの陸戦隊、
貴族が指揮を執っておるようだ)
(なんと、竜人が?承知しました。すぐさま戻ります)
男は念話で答えると、ザン、いやリュミールを追いかけ始めた。

39 :バーディーと導きの神:2006/07/04(火) 18:32:38 ID:IxWve2QP0
その頃ザンとリュミールは、ユウリュウから逃げることに気を使うあまり、下生えの群生
地帯に入ってしまっていた。
しかもザンの体力はまだ大丈夫だが、リュミールはすでに息があがっていた。
そうこうするうちに、ついにユウリュウに追いつかれてしまう。
「いやっ!」
ユウリュウの牙が生えた大きな口を見たリュミールがザンに体を寄せる。しかしザンには
どうすることもできない。
もう駄目かと思った瞬間、ユウリュウは輝く雷電に包まれて倒れ伏した。
辺りにユウリュウの肉が焼ける匂いが漂う。完全に絶命したようだった。
「……一体なにが起こったんだ?」
状況が理解できず、リュミールをかばった格好のまま立ち尽くすザン。
「驚いてないで礼ぐらい言ってほしいものだな」
倒れたユウリュウの向こう側から声が聞こえ、先ほどの男がゆっくりと歩み出てきた。
「私はお前の命の恩人だぞ、フフフ」
体の前で握った拳から電光をほとばしらせながら男は言う。
しかしザンはユウリュウ以上の警戒心を男に対して抱いた。男の襟のルアイソーテ軍の
紋章を見たからだ。
「あ、ありがとうございました」
さりげなくリュミールを後ろに隠すようにしながらザンは答えた。
男は傲慢な表情を湛えて笑う。
「いい返事だ。ついでにその少女ももらおうか。ん、ボーズ?」
男には圧倒的な自信が満ち溢れているのがザンにも分かった。しかしルアイソーテの飛空
挺から落ちてきた少女、リュミールを黙って渡すわけにはいかない。

40 :バーディーと導きの神:2006/07/04(火) 18:33:17 ID:IxWve2QP0
「貴様になんかリュミールは渡さないぞ!」
ザンはリュミールを庇って前に出る。
だが男は傲慢な笑みを崩さぬまま告げた。
「では無理やりもらおうかね」
男が右手の掌をザンの方向に向けた途端、ザンはユウリュウが食らったのものと同じ
ような雷電に包まれた。バチッと雷光が爆ぜてザンは声もなく倒れる。
リュミールは叫んだ。
「ザンっ!」
そして倒れたザンの体を揺り動かして、しっかりしてと呼びかける。
「ザンになにをしたの!?」
リュミールは涙を流しながら男に向かって叫んだ。
しかしそれでも男の表情は変わらない。
「なにもしてないさ。ただ少しばかり眠ってもらっただけだ」
男はリュミールに近づいてくる。
「いやっ!近寄らないで!ザンを元に戻して!」
リュミールは気丈にもザンの上に覆いかぶさってザンを守ろうとする。
「私の目的はそのボーズではない。お前だ」
「え?」
「お前も少しばかり寝てもらおう…」
そう言って、男が指先をリュミールに向けた瞬間、辺りに力強い声が響いた。
「ちょっと待ちなさい!子供に手を出すなんてこの私が許さないわよ!」
「む!」
男が声のした方向に顔を向ける。
そこには無敵の生体防壁に身を包んだバーディー・シフォンその人がいた。

41 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/04(火) 18:41:15 ID:IxWve2QP0
ようやく敵が出てきました。

エルデガインでは、魔法や超能力を持った人間がたくさん出てきます。
今回の男もその一人で、念を特定の相手に送ったり、自分の見た光景を
他人にも見せたりすることもできます。便利ですね。
今回の男は電撃使いだったりもします。

42 :作者の都合により名無しです:2006/07/04(火) 22:39:13 ID:MV50olXh0
>スターダスト氏
ネゴロは相変わらずしぶいのだか人間的感情が失せてるのかわからんなw
しかし千歳もそんなネゴロにまんざらでもないのか。男と女の不思議。

>17氏
いや、すごいハイペースだな。乙です。SF色の強い作品だけど、
いよいよバトルの方も本格化しそうだ。超能力VS魔法か。王道でいい。


あと、うみにんさんがサイトBBSに現れたね。
他のご無沙汰の人も是非。

43 :ふら〜り:2006/07/04(火) 23:20:53 ID:aiBuoF8B0
>>1さん
おつ華麗様ですっ。いやぁ40ですよ40。20スレ目が全体の半分、とか思うとやはり
長いですよね……時期によってスレ消化ペースの違い、スレ内のSSの量とかに差は
ありますけど。ともあれ各々方、次は50目指して! それまでにはまたSS書けよ私!

>>一真さん
土方さん優秀&健気&ボケ。言われた命令をハイレベルにこなし、その内容の屈辱さにも
耐え抜き、しかし終わってから我に返ると。突っ込んでくれる人どころか追い打ちかける
人しかおらず、冒頭であれだけボケておきながらその後は突っ込み役……拍手しておこう。

>>かまいたちさん
おぉ。予想外の早期復帰、嬉しいですっ。『R』といえばKOFのルガBを思い出します
がさすがにそれはないとして。カイジから金田一とはまた面白い人選ですな。カイジ以上
にハッピーEDに縁遠い彼ですが(犯人死亡とか……)、前回とは違う味を期待してます!

>>スターダストさん(♪誕生日を迎えるたびに 何を祝うのかがずっと謎だった♪)
エ、エグい。エロいようで映像的には全然エロくなく、むしろグロいのでは。でも精神的
にはエラくエロい。むぅ深い。で、ずっと狙ってきた相手を前にして&根来にあんな風に
言われても躊躇せず、テキパキ動く千歳……やっぱりバランス取れてる、良いコンビです。

>>17〜さん
バーディーたちと、ザンたちと、リュミールと。3派それぞれが、自分以外の2派のこと
を知らない。何とも危うい主人公グループですが、とりあえず共通の敵っぽいのが来まし
たね。本人強そうだし、背後も大きそう。後方支援のないバーディーたち、どう戦うか?


44 :作者の都合により名無しです:2006/07/05(水) 06:54:36 ID:4pMwNP2N0
バーディ作者さん、ハイペースで頑張りますねえ。
飛ばし過ぎると途中で息切れしてしまうのではないかと心配してしまう。
物語りも、敵が現れて動き出したから筆が快調に進むのかな?
応援してるので頑張ってください。

45 :作者の都合により名無しです:2006/07/05(水) 12:30:10 ID:bMkCCb/Z0
鉄腕バーティは知らないけど、新人さんが快調なのは嬉しいので頑張ってほしい
あと、遅ばせながら見てた人さん復活おめ!

46 :山本有田:2006/07/05(水) 13:08:01 ID:yG+4ufXF0
超機神大戦を早く執筆&公開して下さい。待ちくたびれです。

47 :バーディーと導きの神:2006/07/05(水) 16:11:56 ID:17EQZxdo0
「なに奴!」
男は怒鳴った。
「悪党に名乗る名はない!」
前髪だけピンク、残りのロングストレートヘアは綺麗な銀髪。レオタードにも似たきわどい
格好にも見える連邦特捜課調整アルタ人用特殊生体防壁を纏ったバーディーは、やけに
得意げに答える。
『どこで覚えたんだそんなセリフ』
頭の中でつとむがツッコミを入れるが、気分のいいバーディーは取り合わない。実は
つとむのやっていたテレビゲームの中で一番気に入っていたセリフであったりしたのだ。
「バーディーさん!」
リュミールが歓喜の声を上げる。
「もう大丈夫よ」
バーディーは優しい笑顔をリュミールに向けた。
「あなた、その子を取り戻しに来たところを見ると、ザン君の言っていたルアイソーテと
いう軍隊ね」
胸を張ったまま、傲岸不遜とも見られかねない態度でバーディーは男と対峙した。
「なんとも奇妙な格好をした女だが……、だったらどうする?」
男は自分の持つ自信を崩さない。
「だったら、叩き潰すだけよ!」
バーディーは地を蹴った。5メートルの距離を一気に跳躍して男の腹部に蹴りを入れる。
しかし、バーディーは妙な違和感を感じて地面を蹴り返すと、一旦ザンが倒れている場所
まで飛びずさる。
「バーディーさん」
『どうしたんだ、バーディー?』
「この男、私の蹴りを自分で飛んで力を逃がしたわ」
格闘戦には圧倒的な自信を持つバーディーだが、それだけに相手の技量も瞬時に理解できる。


48 :バーディーと導きの神:2006/07/05(水) 16:13:03 ID:17EQZxdo0
「この男、強い」
『それならザンとリュミールを連れて逃げようぜ』
「そうしたいのは山々だけど、相手が許してくれそうにないわね」
バーディーの言うとおり、男はバーディーが格闘戦が得意と見た途端、構えを見るからに
徒手空拳のそれに切り替えている。
「少しは戦いに自信があると見えるが、これはどうかな!」
男は地面を蹴って、低い姿勢でバーディーに迫る。
とっさに判断したバーディーは、いわゆる水面蹴りで対応する。しかし男はその蹴りを交わして
跳躍すると、上部から鋭い突き入れるような蹴りを放って見せた。
「つっ」
男の蹴りがわずかにバーディーの頬を掠める。これは紛れもなく本物だ。
「だあっ!」
バーディーは意識もせず、本能だけで裏拳を放つが、男は跳躍してそれを避ける。
再び両者は元いた位置で対峙した。
「やるな小娘」
「おじさんもね」
両者はにやりと笑いながら再び構えを取る。
「しかし私には時間がないのでな。一気にケリをつけさせてもらう!」
男は再びダッシュをかける。バーディーは戦闘種族の本能でそれを迎え撃つ。
男は一旦横に跳躍してからバーディーのわき腹に狙いを定める。
「甘い!」
その動きを見ていたバーディーは、余裕の表情で肘を打ち下ろす。
しかし甘く見ていたのはバーディーのほうだった。男は勝利を確信すると、掌打と見せかけた
手のひらから最大威力の雷電を放出する。
「ぐあっ!!」
無敵の生体防壁も電撃系には弱い。バーディーは苦悶のうめき声を上げてその場にへたり込む。


49 :バーディーと導きの神:2006/07/05(水) 16:14:01 ID:17EQZxdo0
「ううっ……」
『おいっ!バーディー!大丈夫か?』
つとむが声をかけるが、まともに喋れそうにない。
「ほう、私の最大威力の雷撃を食らってもまだ生きてるとはたいした生命力だ。だが、私は
お前などにかまっている暇はない」
「いやっ!ザン!バーディーさん!」
男は嫌がるリュミールの手をとると、指先から小さな放電を照射した。
リュミールはがくんと膝から崩れ落ちる。
「あなた……、その……子になに……を……」
遠ざかる意識の隅で、バーディーが発したのはそれだけだった。
『おい、バーディー!バーディー!』
つとむが頭の中で怒鳴るが、バーディーは完全に気絶したようだ。
男は気絶したリュミールを抱えると、念話を上官に送った。
(准将。任務完了です。少女を手に入れました)
(そうかご苦労。こちらは敵に発見され攻撃を受けておる)
(なんですと!)
(心配はいらんよ。そのために術者ばかりを連れてきたのだからな。すぐに決着がつく。
しかし他にも敵軍が居るかもしれん。気をつけて戻れ)
(はっ!)
男は念話を終えると、リュミールを連れて森の奥へと姿を消した。
(体が動かない……、誰か、助けて……、ザン、バーディーさん……)
リュミールはかすかに残った意識で助けを求めた。
そのとき、左手の手首に埋め込まれたチップにある文様が浮かび上がる。だが男は何も
気付かず本隊に戻っていった。


50 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/05(水) 16:20:37 ID:17EQZxdo0
バーディーのミスによる敗北です。本編でもちょっとしたヘマはやらかしてるので。

>>42さん
ご期待にそえれば幸いです。
>>ふら〜りさん
今は時効だと思ってますが、パトレイバーを含めた警察物でなにかネタを
と書き込んだのは私でした。オートマティック・レイバー、よかったです。
>>44さん
応援ありがとうございます。ペース落ちないようにがんばります。
>>45さん
とにかくがんばります!

51 :作者の都合により名無しです:2006/07/05(水) 18:37:19 ID:bMkCCb/Z0
毎日更新か。凄いなw
しかしいきなり主人公敗北ですか。
ここから立ち上がっていく過程を書くのかな?
原作知らないけど最後まで読みます。

52 :作者の都合により名無しです:2006/07/05(水) 23:04:02 ID:lR7LCz/B0
新人さん頑張るな。
毎日更新を続けてくれとは言わないけど
出来るだけハイペースで頑張れ

バーディの反撃期待してるよ。

53 :作者の都合により名無しです:2006/07/06(木) 12:26:08 ID:2Elksp5o0
あんまり毎日だと息切れするかもよ。
適当なペースで頑張ってね。

54 :バーディーと導きの神:2006/07/06(木) 16:01:18 ID:AiNe927o0
気絶していたバーディーとザンは、弱い攻撃を受けたザンのほうが先に気がついた。
ザンは頭を振って起き上がると、周囲にリュミールが居ないことに気付く。
「リュミール!」
声を上げて辺りを探すが、当然居ない。
それにすぐ傍に気絶したバーディーもいることから、リュミールはあの男に連れて
行かれたという結論に達する。
しかし追いかけたいが、男がどこに消えたのか分からない。
ザンはとりあえずバーディーを起こしにかかった。
「バーディーさん、バーディーさん!起きて!」
『バーディー、いい加減に起きろ!』
「う……、うん、つとむ、ザン君……」
「バーディーさん。リュミールがルアイソーテ軍の奴に捕まってしまったんだ!」
「リュミール?……はっ!あの男は?」
バーディーはがばっと起き上がる。
「バーディーさんもあの顔に傷がある男に会ったの?」
「ええ、悔しいけど、ものの見事にやられたわ」
『あっさりとね』
つとむの悪態と、自分の失態に歯軋りして答えるバーディー。だがザンは先を急ぐ。
「あの男を追いかけたいんだけど、どっちに行ったか分からないんだ」
するとバーディーは少し考えて、生体防壁を解くと、宇宙船にコンタクトを取る。
「宇宙船、こっちにゲートを開けられる?」
『それは無理ですバーディー・シフォン』
宇宙船の答えは意外なものだった。

55 :バーディーと導きの神:2006/07/06(木) 16:02:15 ID:AiNe927o0
「どうしてよ。朝は開いたじゃない」
『先ほど急に超空間自体が不安定な状態に入りました。ゲージ時が見たこともない値を
示しています。現在の状態でゲートを開くとなにが起こるか見当もつきません』
「具体的に言ってよ」
『このままですと、ゲートを開くとその場で爆発するか、対消滅するか、アクラバル事件
の規模ほどのものにはなるとは思えませんが、私自体が天然のゲートになる可能性が
考えられます』
「『えーっ!!』」
バーディとつとむにとってはこれはかなりのショックだった。
ゲートが使えないと浸透浴もできず、移動もままならず、そしてなによりバーディー自身
のダメージ回復に支障をきたす。
これは由々しき問題だった。
「対策はあるの?」
『私とキデル・フォルテ巡査部長の部下の方たちと全力で検討中です』
「今後通信は続けられる?」
『それも不明です』
それを聞いたバーディーは、大きなため息をつくと、仕方なく宇宙船に指示を出した。
「宇宙船と巡査部長の部下の人たちは続けて対応策の検討を続けてちょうだい。それから
巡査部長には通信ができるうちに全部事態を説明しといてちょうだい」
『了解しました』
宇宙船が答えると、バーディーは携帯端末をポケットに収めた。
そしてザンに謝る
「ゴメン。あたしのほうは策がないみたい」
「えーっ!どうしようどうしよう!困った困った!」
ザンはぐるぐるとその場を回ってなにかを思いつこうとする。
それに対してバーディーは、年長者の所以か、しばらくなにかを頭の中でめぐらすと、
なにかを思いついたようでザンに質問する。

56 :バーディーと導きの神:2006/07/06(木) 16:03:07 ID:AiNe927o0
「連中、朝に会った飛空挺で来たんだと考えられない?」
「あっ!」
盲点だった。ルアイソーテとの国境からは遠く離れたこの森に来れるのは飛空挺しかない。
「それだよバーディーさん!奴ら飛空挺で来たんだ。だとしたら湖しかない!動ける、バー
ディーさん?」
「……うん、いけるわ」
バーディーは体の調子を整えながら返事をする。
「じゃあ急ぎましょう。湖はこっちです」
ザンはいてもたってもいられないのか、いきなり全力で走り出す。ザンより深いダメージを
受けたバーディーが追いつくのがやっとの速度でだ。
(しかしこの子の体力は地球人のそれとはまったく次元が違うようね)
『凄いな、あの子』
つとむも驚嘆しているようだ。
「ええ本当にね」
木を渡り、木の根を跳び越し、ひた走りに走るザンに、バーディーはそう感想を持った。
(待っててくれリュミール。なにがなんでも助けるから!)
森の中で遊んでいたときに、そう約束してリュミールの不安を解消してやったザンは、
それを実行すべく、湖を目指して一直線に向かった。

57 :作者の都合により名無しです:2006/07/06(木) 16:07:59 ID:AiNe927o0
バーディーとザン、リュミール救出作戦開始です。

>>51さん
リターンマッチはありますよ。
>>52さん
エルデガインの世界に迷い込んだバーディーの活躍がどうなるか。
私も予想がつかないですw
>>53さん
忠告ありがとうございます。適度なペースでがんばります。

58 :作者の都合により名無しです:2006/07/06(木) 21:23:32 ID:DlBvLfNV0
今回はすこしほのぼのしてますな。
本当のミッションはこれからですか。楽しみにしてます。

ゆうきまさみはパトレイバーしか知らないけど、
一度読んでみるかあ!

59 :作者の都合により名無しです:2006/07/06(木) 21:26:44 ID:gFugezhp0
バーディはマジ面白い。

60 :戦闘神話:2006/07/06(木) 21:59:50 ID:DlFJNMg10
第二回 薔薇乙女
part.1
教皇シオンが残した膨大な文書、その記録の中でも重要文書であるにもかかわらず、
サガの乱によって紛失してしまったものは多い。
人の死とは、つまりは知識の消滅である。
人間一人が、生涯をかけて抱え込んだ情報をそのまま他人に渡すことはできない。
故に、人は死を恐れ、忌み、嫌い、打倒せんとして技術を積み重ねてきた。
太古の昔、錬金術という名の母から生まれたさまざまな学問たちは、
二十一世紀の現在においては、その存在を存分に輝かしている。

シオンの死、サガの死。
それは、聖域が秘匿していた膨大な情報拡散の始まりであった。
歴代のアテナの記録、神々の情報、勢力図、歴代の聖闘士たちの個人情報、
神話の昔に存在した神聖衣の保管地や、アルゴー船座の聖衣の保管場所、ガマニオンの産地、
オリハルコンなどの文書はかろうじて紛失を免れたものの、
童虎ムウが一枚噛んでいたとはいえ、本来ならば、
グラード財団程度に漏れるはずもない過去の聖闘士たちの戦跡や、
各聖闘士たちの修行地、あまつさえ、聖衣の保管地すらも漏洩してしまったのだ。
さらには、シオンが心血を注いで書き残したと言われる聖衣の製造法という、
聖闘士にとって命とでも言うべき情報は、喪われてしまっていた。
サガが目論んだ三千世界の完全制覇。そのために聖域の外へ持ち出されたらしい。
聖衣の修復技能者たるムウは、消極的に聖域と対立していた事から、
外部の錬金術師を頼り、散逸したのではないか、
というのが調査に当たった人間の見解だという。
同時に、サガ在任中にあった偽造・改竄された記録が発見されたことから、聖域に再び動揺が走った。

61 :戦闘神話:2006/07/06(木) 22:05:29 ID:DlFJNMg10

「ニコルさん…、それは事実なのですか!」

真っ先に反応したのは、瞬だった。
無理もない。
聖戦でもっとも血を流したのは、彼ら五人の青銅の聖闘士なのだから。

「残念ながら、事実だ…」

ニコルのやつれ様がすべてを物語っていた。
ギガースが喚問を受けたことは、最期の確認に過ぎなかったのだ。

「すでに、前教皇シオンさまが書いた聖衣の製造法に関する書の捜索は、
 貴鬼に任せてある。
 だが、もはやそれだけでは手が足りないのだ!」

驚愕に目を見開くアドニスは、そんなバカな!としか言えなかった。
やつれ果てていながらも、ニコルの声色に遜色はない。

「だが、事はそれだけでは収まらなくなっている!
 聖戦終結直後から、俄にオカルトブームとでも言おうか、
 不老不死への憧憬が強まっていることは、君たちも知っているだろう?
 そういった似非オカルティスト連中の手に渡ったら、大変なことになる」

聖闘士とは言え、人間である。
人は人の群れの中でしか生きられない。
聖域外の人間が、欲望に目が眩み、聖闘士の神秘を暴こうと襲い掛かるのならば、
聖闘士たちは無力だ。
己が守るべき者に刃を向けられる、そんな最悪の事態になりかねないのだから。
守るべき者に刃を向けられ、それ退けんと拳を振り上げたとしたら、
その時点で聖闘士ではなくなってしまう。


62 :戦闘神話:2006/07/06(木) 22:07:48 ID:DlFJNMg10

「そこでだ、瞬、アドニス。
 君たちにも捜索に加わってほしいのだ」

最早一刻の猶予もない。そう付け加えて、ニコルは言った。

「瞬、君はアステリオンと共にドイツのオカルト集団・トゥーレ協会を内定してくれ
 アドニス、君はギリシアの錬金術師協会を探査してほしい」

時間が、ないのだ。というニコルの血を吐くような言葉に、二人はただ肯く以外にない。

「魔鈴も捜索に加わってほしいのだが、しばらく前から連絡が付かないのだ…
 彼女の事だから心配はないと思うが、何かあったら事だ。
 瞬、君の弟子のケフェウスのエラキスを捜索に当たらせてくれ」

益々眉間に苦悩皺が深くなるニコル。そんな彼を見る瞬の顔色は険しい。
いくら鍛え抜かれた白銀聖闘士といえども、このニコルは瞬たちほど強くない。
ただ、強くあろうと、強い存在を装っているだけなのだ。
僅か十八の青年の双肩にかかっているものの重さは、想像を絶する。

ハーデスとの決戦から四年。
聖闘士の存在そのものを脅かしたサガの乱は、まだ、終わってはいない。


63 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/07/06(木) 22:25:40 ID:DlFJNMg10
バキスレpart40おめでとうございます
不肖、この銀杏丸。SS投下をもって祝辞とさせていただきます

前スレ>495さん
夢の二十九巻というSSです。
生き残った白銀聖闘士や市や邪武たち以外にも、鋼鉄聖闘士の三人や
アニメ版星矢北欧編登場のキャラクター、劇場版登場の絵梨衣も登場する豪華なSSです
正直、これ読んでなかったら僕のSSにギガースが出てくることはなかったでしょう

前スレ>503さん
エド・ジュリアンチームや、この後でてくるキャラクターのチームなど
結構な大所帯による群像劇になる予定です。

>ふら〜りさん
と、いうわけで魔鈴・シャイナさん以外で唯一生存の可能性がある白銀聖闘士
アステリオンが登場です。序盤で大活躍してもらう予定です
事務方のニコルは小説版・ギガントマキアほどあっさり死なない予定ですので、ご期待ください

>スターダストさん
爆爵の、百年間も延々友人のために錬金術の研究を積んでいたというストイックな点は大好きです
歪んでいても貫き通したその姿勢は、グっとくるものがあります。
ご期待に沿えるようにがんばります

>17〜さん
ゆうきまさみというと、「ゆうきまさみの果てしないものがたり」と「パトレイバー」
しか知らないので、新鮮です

では、またお会いしましょう

64 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/07/06(木) 23:59:15 ID:9CS4oWbR0
第八十三話「戦闘終結、そして・・・」

「ちょうどよかった。お前に言わなきゃならないことが出来たんでな。出向く手間が省けた」
狐面の男はそう前置きして、事も無げに言った。
「俺の負けだ、野比のび太」
「え・・・?」
余りにもあっさりと言われたので、意味が分からなかった。
「何を、言って・・・」
「<何を、言って・・・>ふん。聞いた通りだ、俺の敵。俺とお前たちとの勝負は、俺の負けだと言っている。今回の
戦いで確信した。やはりお前たちは、俺の手には余る存在だったようだ」
そして、言った。
「あともう一つ―――シュウと俺はたった今、袂を分かった」
「た、たもとをわかった・・・?どういう意味?」
「<どういう意味>ふん。言葉の意味ということならば、要するに<もうお前なんて絶交だ>ってことだ。つまり
シュウは、俺の元を離れる。そういうことだ」
やっとのび太にも理解できた。つまりは、仲違い―――しかし、何故?
狐面の男は、それについてもあっさりと答えた。
「意見の相違ってやつだ。もう俺はお前たちからは完全に手を引く―――そのつもりだったんだが、シュウはそれに
反対した」
狐面の男は、シュウの顔をちらり、と見た。
「シュウが言うにはこうだ。お前たちとは幾度にも渡る戦いで禍根を残しすぎている。きっちりした形で決着を付け
なければ、後々面倒なことになりかねない―――とな。まあ、それも一理あるとは思うが―――やはり俺の中では、
もうお前たちのことは済んだことだ。済んだことはさっさと忘れてほったらかす。それが俺の主義だからな。だが
シュウは、それだけは出来ない、それならば<十三階段>からは抜けさせてもらう、とまで言ってきた。で、俺は
こう言った。<じゃあ好きにしろ、あばよ>とな」
「そ・・・そんなんでいいの?」
仮にも世界の終わりを目論む集団を抜けたりなんだりが、そんなあっさりしてていいのか。
「いいんだよ。シュウに関しては、許されるんだ。気に入らないなら俺の命令なんぞ無視していい、あらゆる自由を
許可する―――それが<十三階段>に正式に加入するに当たってシュウが提示した条件だからな」
あらゆる自由を許可する―――すなわち、全てにおいて自分の意思を最優先させる。そういうことか。

65 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/07/06(木) 23:59:53 ID:9CS4oWbR0
狐面の男は、いつも泰然とした彼にしては珍しく落胆した様子だった。
「せっかく集めた<十三階段>も、これで明楽以外は消えた―――そして明楽は、如何に俺の中で生きているといっても、
現実には死んでいる―――すなわち、もはや俺は何もできない」
「何もできないって・・・」
「<何もできない>ふん。その通りの意味さ。俺は人類最悪にして―――人類最弱。自分一人では何一つできない、究極の
弱者さ」
それは、確かにその通りだった。彼は今まで幾度となくのび太たちの前に現れ、その度に会話を交わしたが―――それ以外
には、何もしていない。のび太の町の住人を消したのも、<一時的に消した>だけであって、実害はまるでなかった。
自分では何もしない―――自分では何もできない―――
<人類最悪>にして<人類最弱>。
「だからこそ自分の代わりにあれこれやってくれる手足としての<十三階段>だったのだが―――それも、もはや壊滅した」
狐面の男は、長い永い溜息をついた。
「俺はもう、お前らからは手を引くと決めた―――やはりお前らは、俺の手には余る。敵に回すには強大すぎた。後はもう、
好きにやってくれ。これからは、俺の知ったことではない」
「・・・・・・」
「ふん、<十三階段>―――俺にとって譲れない、絶対とも言える条件を満たしていない奴まで節操なく味方に回して、その
結果がこれだ。これならもっと好き勝手に集めればよかったな」
「絶対とも言える条件・・・?」
やけに力のこもった言い方が気になる。狐面の男はそんなのび太の様子に気付いたのか、鼻を鳴らして答えた。
「眼鏡だ」
「は?」
「あの∞(無限大)に酷似した神秘的なフォルム。実に素晴らしい。だから本当は<十三階段>のメンバーは全員、眼鏡を
かけた奴で揃えたかったのだが―――ふん、上手くいかないものだ。そう言えば野比のび太、お前も眼鏡をかけているな。
しかもよく見ると中々いい眼鏡だ―――どうだ、もうお前は俺の敵ではないのだし、新しく<十三階段>を作った暁には
その一員として迎えたいんだが。言っとくが、割と本気だぜ?」
「ば―――馬鹿言うな!死んだってお断りだ!」
思わず怒鳴りつけた。こいつと話していると、頭が痛くなってきそうだ。何を考えているのか―――さっぱり分からない。
眼鏡云々にしても、どこまで本気か知れたものではない。だがそれを問えば、彼はこう言うだろう。

66 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/07/07(金) 00:00:26 ID:9CS4oWbR0
<そんなもの―――本気だろうとどうだろうと、同じことだ>
真実も虚偽も。本物も偽物も。大切な物もそうでない物も。この世に存在する全てが彼にとっては等価。
だから―――最悪。
永い沈黙が訪れた。それを嫌ったように、それまで黙っていたシュウが口を開いた。
「彼とこのような形で決別することになったのは私にとっても残念です。私は<狐>を、本当に気に入っていた・・・
いや、今でも気に入っている。だからこそ、互いに相容れないのが残念でならない」
シュウはそう言いながら、のび太に向かって歩み寄る。一歩。二歩。三歩・・・。
「今回の一連の出来事を通じて生まれたあなたたちとの因縁・・・それを全て放棄していくなどとは、幾ら何でも正気
ではない―――まあ、彼にそんなものを期待したことなどありませんが―――世の中には捨て置いても問題のないことと、
そうでないことがありますが、あなたたちとの決着は、明らかに後者です。きっちりと清算しなければ、それこそ―――
物語は、成り立たない」
シュウはのび太の目の前で足を止めた。しっかりとのび太を見据えて、宣言する―――
「決着を付けましょう―――野比のび太」
そして彼は懐から小さな機械を取り出した。
「これは私が造った道具―――CPS(クロスゲート・パラダイム・システム)とでも呼びましょうか。これを使えば、
次元断層を通じて無数に存在する平行世界を自在に行き来することが可能になります」
シュウはそれをのび太に手渡した。
「私の分はありますから、差し上げますよ。これがないと元の世界に帰れなくて困る人もいるでしょう」
稟たちのことを言っているのだと、のび太は気付いた。そうだ―――彼らは元々は異世界の人間。こういった道具でも
なければ、帰ることはできない。
「そうだ―――折角ですから土見稟たちの本来いるべき、あの愛すべき混ぜこぜな世界で最後の時を迎えましょうか。
そういう趣向も、因縁めいていて悪くはない」
そこでシュウは一旦言葉を切り、声のトーンを落とした。
「ただ、無理強いはしません。<狐>が負けを認めて自分たちから手を引くと宣言した今となっては、もはや私との決着
に意味などない、無駄な戦いだ―――もしも結論付けるのならば、それもいいでしょう。その時は私も、あなた方の事は
きっぱりと忘れましょう」
「・・・もし、ぼくたちがそれを受けなかったら―――これから、どうするつもりなんだ?」
「さて、ね。私は私の思うが侭、誰の指図も受けずに生きる。それだけですよ」
「他人をどれだけ傷つけようと―――そういうこと?」

67 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/07/07(金) 00:01:00 ID:9CS4oWbR0
その言葉に、シュウは心外とばかりに眉を顰めた。
「言っておきますが、不必要に他人を傷つけた覚えはありませんよ」
しかし、必要ならば―――言外に、そういうニュアンスがあった。
のび太は拳を握り締めた。狐とのことがなくとも、この男は、止めなくてはならない。そうでなければ、彼はきっと―――
完膚なきまでに、己の道を進むだろう。
足元で何を踏み潰そうと、止まることなく―――
「では、私は一足先にあの世界へと行くとしましょう。あなたは仲間たちとじっくり話し合って、結論を出すことですね。
返事は、次に会った時に」
シュウは背を向けて、残る二人に一瞥もせずに歩き出した。その背中に、狐面の男は声をかけた。
「じゃあな、シュウ。縁が<合った>ら、また会おうぜ」
「ククク・・・果たして我々の縁が再び<合う>時がくるのか。まあ、いいでしょう。これまで世話になりましたし、
それなりに楽しかったですよ」
シュウは足を止めてそれに答えた。そして再び歩き出す。その姿が小さくなり、やがて見えなくなった。
そして、その場に残された二人―――のび太と狐面の男。
<主人公>と<敵役>。

68 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/07/07(金) 00:14:15 ID:AsFN/9TJ0
投下完了。前回は前スレ458より。
新スレおめでとうございます。ついに40スレ目。ここまで続いたSSスレもそうそうないんじゃないでしょうか。
しかし今回の話は色々酷い出来です。場合によっては書き直すかもしれません。
ちなみにクロスゲート・パラダイム・システム。某ゲームに出てきたものですが、本来の性能はもっと凶悪です。
完成形は因果律を操作して、世界を自分の思い通りに作り替えることができるという・・・。
やばすぎるもしもボックスみたいなものだと言えば分かりやすいでしょうか。

レス番はだいだい前スレのものです。

>>459 宴会は、最後の最後にもう一度。ジャイアン+αのリサイタル・・・

>>460 女性陣人気が高くて嬉しいですね。

>>461 応援が僕の力です。ガンガン応援してください。

>>邪神?さん
射撃の腕はムサシ辺りと比べても遜色はないと思うので、後は堕ちながら戦うスキルにどう対抗するか・・・
しかし肉人形の話ですか。まさかシコルが・・・

>>ふら〜りさん
ギャルゲで言えば確かに既に個別ルート行ってる時期ですねえ。

>>カマイタチさん
まさかこんなに早く新連載が来るとは・・・神懸り的な面白さだった前作を上回るものを期待しております。
金田一少年ものということは、また推理物ですね。とりあえず一番怪しくない奴を疑ってみます。

69 :作者の都合により名無しです:2006/07/07(金) 08:05:58 ID:lMz58sV00
>銀杏丸氏
そうか。なぜエドがセイントの世界に来て、主役張ってるかと思いきや
クロスとの関わりがあったのか。かなり設定に凝ってますな。
物語が大きく動きそうな気配ですね。出来ればもう少し投稿回数増やしてほしいけど。

>サマサ氏
十三階段ってメガネをかけた人間でほぼ構成されてたのかw
原作知らん作品が多いからキャラのルックス分からないけど、ちょっと笑った。
しかし十三階段崩壊で、いよいよラストも近くなってきたんですねえ・・

70 :作者の都合により名無しです:2006/07/07(金) 12:10:44 ID:gVYtJsM00
453:マジレスさん :2006/05/06(土) 20:33:16 ID:2XgeLYxT

竹石圭佑て野郎の体(特に手)には極力触れない方が良い。高校の時に何回か奴と便所で偶然鉢合わせしたけど、
便所出るとき全く手を洗わなかった。
しかも大から出てきた時も洗わずに便所から逃げるように出て行った。それが軽く衝撃的だったから今でも覚えてる。手を洗う事すら面倒臭がってるなら風呂なんか入らないんじゃね?不潔でゲイだから触れられたら腐っちまうよ。気をつけろ。

71 :作者の都合により名無しです:2006/07/07(金) 12:32:49 ID:bkNBZHXY0
>戦闘神話
タイトルに比べなかなか戦闘に入りませんが、前設定の説明も終わり
本当の本編に移行しそうですね。エドが聖闘士連中に勝てるのか?

>超機神大戦
劇場版のび太は、なんだかんだで多くの人間に認められますね。敵も味方も
そんな感じのシチュが良かったです。いよいよ煮詰まってきましたねー

72 :バーディーと導きの神:2006/07/07(金) 16:06:49 ID:9ReezxmR0
一方その頃、湖の湖畔ではアーマヤーテの陸戦隊とルアイソーテの飛空挺との戦闘はほぼ
決着がついていた。
ガロウズが男に話していたとおり、アーマヤーテ軍はほぼ全滅して撤退していた。
逆立った金髪に、鋭い眼光。両頬には術の威力を増すという名目で耳から目の下まで彫ら
れた黒い刺青を持つ男、ガロウズは、戦闘終結の報告を当然のこととして聞き入れた。
そして副官のボックウェルは、少女をさらった男、オーダ中尉が少女を連れて飛空挺に戻っ
たことも報告した。
それを聞いたガロウズは、初めて満足そうな表情を浮かべた。
「エンジン始動!駐屯地へ帰還する」
ガロウズは副官にそう告げた。

「まずい!もう動き始めてる!」
なんとか飛空挺が湖にいるまでにたどり着いたザンとバーディーだったが、飛空挺の速度は
すでに離水可能な状態に達していた。
「どうしたら……」
ザンはとにかく焦る。しかしバーディーには一計があった。
「ザン君、あの位置だと飛空挺は崖下をとおるわ」
「え?」
「タイミングを合わせれば、飛び移れないこともないわ」
言いつつ、ザンを両手で抱えあげるバーディー。
「わわっ」
突然のことにザンは驚いた声を上げる。
「行くわよ」
「うわあああっ!!」
『やめてくれえええっ!!』
「アンカー!」
二人の叫びは無視して、バーディーが叫ぶ。すると急に落下速度が速まり、見事飛空挺の
尾翼に着地し外板にへばりつくことができた。
「ね、結構いい手だったでしょ」
「す、凄いやバーディーさん。リュミール待っててよ。すぐ助けに行くからね!」
ザンは絶対の決意を込めてそう言った。


73 :バーディーと導きの神:2006/07/07(金) 16:09:15 ID:9ReezxmR0
飛空挺は西へ西へと飛び続け、アーマヤーテの国境を越え、ルアイソーテの駐屯地に近づ
いてきた。飛空挺の外板は凍えるほどの温度だったが、バーディーの生態防壁が変容した
コートが二人を寒さから守ってくれた。
そして駐屯地はもう目の前といった地点に来たとき、二人はその上空がやけに明るいことに
気がついた。
「あっ!奴らの基地が燃えている!」
「アーマヤーテ軍の攻撃?」
「ううん。分からないけど、僕らには好都合だね。どさくさにまぎれてリュミールを助け出せる
かもしれないよ」
「もちろんそのつもりだけどね」
バーディーはウインクしながら答える。
そうこうしているうちに飛空挺は着水し、速度がどんどん落ちていく。
ザンとバーディーは敵に見つからず、かつ安全な速度まで落ちたところで外板を離れ、湖に
着水した。
「さて、いきましょうかザン君」
「うん!」
二人は泳いで燃え盛るルアイソーテ軍の駐屯地に近づいていった。

74 :バーディーと導きの神:2006/07/07(金) 16:12:06 ID:9ReezxmR0
ルアイソーテ軍の駐屯地の有様はひどいものだった。
トーチカは爆砕したように根底から根こそぎえぐられ、戦車はつぶされ、横転され、中に
はなにか鋭利な刃物で斬られたように切断されたものまであった。
「凄まじいな。我が軍の砲だけの破壊ではないな。少女と一緒に連れてきたあの巨人の
仕業に違いあるまい」
飛空挺から降り、リュミールや部下たちを伴って駐屯地に帰ってきたガロウズは、そのあ
まりの惨状に思わず感嘆の声をもらした。
「准将、戻られましたか!」
一人の兵卒がガロウズを見つけ、走り寄ってくる。
「状況を報告せよ」
問うたガロウズに報告した部下の報告内容は惨憺たる有様だった。
ルアイソーテ軍がこの駐屯地に運び入れた謎の巨人は、今から2時間ほど前に収容中だっ
た第5格納庫から外へ出ようと動き始め、発見した兵士たちがワイヤーをかけ、戦車で引き
戻そうとしたところ、爆裂する光線を放ち暴れだし、これだけの破壊をもたらしたのだった。
「爆裂する光線?なんだそれは……」
報告を聞くガロウズの近くで、リュミールは別のなにかの声を聞いていた。
(胸騒ぎがする……。呼んでる。でもこれはザンじゃない……)

その頃、部下の報告にあった暴れる巨人は、爆裂する光線を放ちながら特殊な言語を言い
放っていた.。

『機動開始(リュミール)、エルデガイン・リュミール』

と。


75 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/07(金) 16:23:49 ID:9ReezxmR0
変なところで役に立つバーディー。実際戦闘以外ではこんな感じですしね。

ガロウズは、竜人による階級制度が厳格に守られているルアイソーテにあって、
特にその能力の高さから貴族に認められた特異階級者です。
他の術者と比較しても非凡な才能を持った天才といっていいほどの腕を持っています。

>>銀杏丸さん
今後ともよろしくお願いします。

76 :作者の都合により名無しです:2006/07/07(金) 22:02:45 ID:Dmm6tbcy0
・銀杏丸さん
最初の1レスだけは文体が硬いね。多分、説明レスとキャラが動く時で分けてるんですね。
セイントは詳しくないんで良くわからないけど、オリキャラが出てるのかな?
前回の黄金に比べて、動きが多い作品で楽しいですね。前作の方がまだ好きだけどw

・サマサさん
長きに渡るライバルというか敵役同士だった関係も、いよいよ終焉を迎えますか。
主人公らしい、堂々としたのび太の戦いぶりが見られそうですね。最終戦で。
確変のび太は宇宙一のハンターでもあるから、熱戦が期待できますな

・17さん
原作のバーディは知らないけど、SF物というかファンタジー物というか、
美味しい所取りみたいな感じですね。なんか評判良いみたいだから読んでみよう。
謎の巨人ですか。大事件の始まりですねえ。こりゃ長編確定ですね!

77 :作者の都合により名無しです:2006/07/07(金) 23:55:41 ID:0s4iFisZ0
17さんすげえw
世界氏以来の毎日更新か?

78 :作者の都合により名無しです:2006/07/08(土) 00:57:23 ID:7CDxy4Zd0
俺は面白いけど、読み手を選ぶSSかもしれないな、バーディは。
その漫画における専門用語や設定などが、どうしても多くなるから。
こういうタイプのSSは原作知らないと、頭の中で整理しながら
読まないといけないから、もう少し説明を多くした方がいいかも。

でもそうすると読み辛くなるから難しいね。
俺は原作知ってるから楽しいけどね。

79 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/08(土) 02:05:50 ID:qUqTep1n0
二 喪失、そして徘徊

 少年はリュックを開くと、手当たり次第に中の物を取り出し、その場に並べていった。
 コンビニの明太子おにぎり……チョコレートクッキー……スナック菓子……水筒……絆創膏……
 中身を広げながらも、少年の表情に諦めの色が混じる。どうにも、手がかりになりそうなものはありそうにない。
「はぁ」
 力無く息を漏らして、ふと、少年は食料に目を留めた。そして、自分がひどく空腹だった事に気付く。
 数日の間、何も食べていないような感覚だった。
 それほどに長い時間、意識を失っていたのだろうか……?
 頭に浮かんだ疑問は、一先ず保留しておく。今は本能に従い、食欲を満たす事を優先させようと思った。
 少年はプラスティックのテープを引いて封を開け、おにぎりにかぶりついた。
 勢い良く食べたものだから、御飯粒が渇いた喉に絡みついて、咽せそうになる。
 慌てて水筒を手に取った。口をつけて、一気に胃の中に流し込む。中身はどうやら、烏龍茶のようだった。
 食べ終わった後、少し気になった。もし先程の『長い時間意識を失っていた』と云う推測が的を射ていたならば。
 おにぎりの具である明太子は、もう痛んでしまっていたかもしれない。そもそも、賞味期限すら確認していなかった。
 しかし、今更後悔しても仕方がない。完食してしまった以上、後の祭りである。
 それに賞味期限がわかっても、今日の日付がわからなければ話にならない。
 空腹のまま行動するよりは余程いい。そう割り切って、ポジティブに考える。
 そう。今置かれている状況は、そんな些細な事に拘れるほど余裕のあるものではない。
 記憶を失ってしまっている上に、こんな山奥に一人放り出されて、右も左もわからないのだ。
 あまり考えたくはないのだが、このままあてもなく、何日も山道を彷徨う羽目になる可能性だって否定できない。
 先行きの不安を思えば、食料は僅かといえども、無駄にする訳にはいかなかった。
 人心地ついて、リュックの中身を確認する作業を再開する。
 メモ帳とボールペン……携帯ストラップ……折り畳み傘……タオル……どうやら、これで全部らしい。
 一瞬、メモ帳に何か書かれてはいないかと期待したが、残念ながら白紙だった。

80 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/08(土) 02:06:47 ID:qUqTep1n0
 諦めて、取り出した荷物を戻そうとしたその時、リュックの底に隠れるようにして張り付いている、一枚の封筒が目に入った。
 封は既に切られているようだ。そっと、中に入っている紙を取り出す。

 ○○県△△市……ペンション『ルーウィン』
 ○○県△△市……中村青司の館『鬼面館』
 Good Luck!

 親愛なる名探偵へ 地獄の傀儡師
 
 指先が何か、尖ったものに触れた。移した視線の先に、赤が滲む。
 手紙に添えられていたそれは、指先に浮き出た血と同じ、鮮やかな色をした花――薔薇だった。
 多少不穏な雰囲気こそするものの、手紙の内容は、少年には意味不明な住所の羅列としか思えなかった。
 このメッセージは一体、何を意図して書かれたものなのだろうか。
 首を傾げながら、手紙を封に戻し、封筒を裏返してみる。

 東京都不動山市○×〜 金田一一様

 宛先には、確かにそう記されていた。と、すると。
 俺の名前は『金田一一』なのか……?
 実感はあまりないものの、少年――はじめは、少しばかりの記憶を取り戻した。
 ――はじめちゃん――
 胸の奥で、懐かしい声が囁いた。チクリ、と心が痛む。
 得体の知れない罪悪感を抱えながら、はじめは獣道に沿って歩き出した。

81 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/08(土) 02:07:31 ID:qUqTep1n0
三 徘徊、そして到着

 十分も歩かない内に、雲行きが怪しくなってきた。
 木々の合間から差し込む陽光が、翳りを見せ始める。
 空は次第にどんよりとした灰色の雲で覆われ、周囲の景色が薄闇に呑まれてゆく。
 一雨来そうだ。そう思いながら、天を見上げた。
 目の上にかざした左腕には、簡素なデジタル時計が着けられていた。時刻は十一時三十分。
 ぽつり、ぽつり。手の甲に冷たい雫が落ちた。と同時に、空が白く光った。激しい雷鳴が轟き、大気を揺らす。
 それが合図だったかのように、空の涙腺が決壊した。にわか雨は瞬く間に、豪雨へと変貌する。
 不幸中の幸いにも、リュックの中には折り畳み傘が入っている。全身が塗れてしまう前に、素早く傘を取り出し、差した。
 このあたり一帯は土質が柔らかいのか、雨の影響で地面がかなりぬかるんでいた。一歩踏み出す度に、靴底が数センチ泥中に沈む。
 足を踏み外してしまわないよう、慎重に歩く。もう、崖から転落するのは御免だった。
 はじめは黙々と歩を進めながらも、時折、思い出したように時計を確認する。時刻は十二時十分。
 雨が降り出してから、たっぷり一時間以上は歩き続けているように思えたのだが、実際は四十分程度しか経っていなかった。
 疲労の蓄積するスピードは、時間の経過するスピードよりも、若干早く感じられるらしい。
 それでも、立ち止まる訳にはいかない。のんびり休んでいる時間の余裕など、今は無いのだから。
 こうして動き回っていられるのも、おそらくは、あと数時間。
 起伏の激しい山道に加え、この悪天候である。日没後に行動するのは自殺行為に等しい。
 周囲は見渡す限り、漆黒の闇。自然と敏感になる聴覚に入り込むのは、心細さを煽り立てる環境音。
 雷の咆哮。雨の舞踏。虫の合唱。木立の囁き。
 はじめは一人岩陰に蹲って目を瞑り、傘の柄を握り締めて長い長い夜を明かす……

82 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/08(土) 02:08:10 ID:qUqTep1n0
 ゆっくりと頭を振って、不吉な幻想を振り払った。想像しただけで、背筋に悪寒が走る。
 日が沈んでしまうまでに、人家とは言わないまでも、せめて、雨宿りできる場所ぐらいは見付けなければ――
 そんな切実な願いが、果たして通じたのかどうか。はじめは進行方向遥か前方に、光を見た。
 瞬きをしている間に揺らいで消えてしまいそうな、儚げな光だった。
 しかし今のはじめにとっては、それは正に希望の光に他ならない。
 誘蛾灯に引き寄せられる羽虫のように、無心で光に向かって歩いた。
 上空で瞬いた稲光に照らされ、巨大な建築物のシルエットが浮かび上がる。
 はじめの目にした『光』の正体は、どうやら大きな屋敷のようだった。
 助かった……はじめは安堵する。重かった足取りは、途端に軽くなった。
 心中では、まだ見ぬ屋敷への期待と不安が綯い交ぜになっている。
 途中から駆け足だったせいもあってか、思っていたより早く屋敷にたどり着いた。
 あの『光』を見つけてから、何分も経っていないのではないだろうか。
 乱れた息を整えてから、正面玄関の前に立つ。
 少々威圧感さえ覚えるような、大きな扉である。取っ手には、獅子のレリーフが彫り込まれている。
 チャイムを探して玄関扉付近に視線を巡らせるが、それらしきものは見当たらない。
 仕方がないので、玄関扉を直接ノックする。
「すいませーん!」
 鳴り響く雷と降り頻る雨に掻き消されないよう、はじめは大きな声で叫んだ。
「誰かいませんかー!?」
 暫く待ってみるものの、反応はない。焦れて扉に手をかけたが、やはり鍵がかかっている。
 窓からは明かりが漏れている。住人がいるのは、おそらく間違いない。
 もう一度扉をノックしようと、拳を振り上げたその時。
 カチャリ、と錠前の外れる音がして、扉は開かれた。

83 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/07/08(土) 02:10:34 ID:qUqTep1n0
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>16です。
今回出てきた住所録は原作をご存知の方なら御馴染み(?)例の犯罪ガイドマップです。

・長編or短編
予定は未定ですが、前みたいに長くはならないかと。
長編へ行くか、行かないかくらいで終われるといいなあ……
・『R』
今の所「夜明けの炎刃王」並にサブタイトルが意味不明ですね。
そのあたりは、追々解説できるかと思います。
・原作
そう言えば、金田一少年はキバヤシ氏作のノベル版がありましたね。
勢いで書き始めましたが……題材選びを失敗した予感が。

84 :バーディーと導きの神:2006/07/08(土) 07:24:12 ID:eHzRyETL0
巨人の爆裂する光線はガロウズたちからもはっきり見えた。
「あれか!」
ガロウズはその凄まじいまでの破壊力を見て、おびえるどころか不敵な笑みまで浮かべた。
「ボックウェル!」
「は!」
副官が一歩前に出る。
「あの力が欲しい。術者全員でもってあの巨人を封じよ」
「はっ!」
ボックウェルが応じ、術者全員が現場に飛んだ。
ガロウズ本人は部下にリュミールを連れさせて中央塔へと向かう。
「さあ、来るんだ」
部下に押され、仕方なく歩きだすリュミール。しかし心に感じたざわつきは消えない。
(いや、私ここにいたくない。ザン、バーディーさんに会いたい!)
リュミールは涙を流しながら優しい少年と明るいお姉さんのことを思った。

その頃ザンとバーディーは、基地の外辺に侵入していた。
「ザン君、人が来るわ」
「え?」
バーディーに引っ張られ、外壁へと姿を隠す二人。程なく二人の兵士が雑談をしながら通り
過ぎる。
「そういえば准将が戻ってきてるって聞いたか?」
「ああ、例の少女を取り戻して中央塔へ行ったって聞いたぜ」
「リュミールのことね」
「はい」
二人はひそひそと話しながら確認する。
「中央塔ってことは、当然この基地の真ん中にあるのね?」
「だと思います」
「それじゃ行こうか」
「はい!」
二人は並んで駆け出した。

85 :バーディーと導きの神:2006/07/08(土) 07:24:48 ID:eHzRyETL0
中央塔へ向かっていたガロウズは、ボックウェルからの念話を受ける。
(どうした?)
(申し訳ありません。巨人の力は圧倒的に強く、我々の力では歯の立つ相手ではなく……)
(愚か者!!)
(ではどうしたらよいのでしょうか?ご命令を!)
(私が行く)
(は、はっ!ありがとうございます)
(私が行くまで巨人を逃がすでないぞ)
(ははっ!)
「私は巨人のところへ行く。お前は少女を中央塔の地下牢へ入れておけ」
「はっ!」
「決して逃がすなよ」
そういい残すとガロウズは巨人の方角へ消えていった。

「中央塔はあっちのようね」
「はい」
「でもなにかがおかしいわ」
バーディーはザンに並んで走りながら疑念をもらす。
「なにがですか?」
「うん。なんだか分からないけど、なにか妙な気配がするのよね」
クンクンと犬のように鼻を鳴らしながら言うバーディー。傍から見ると動物そのものだ。
「僕はなにも感じませんけど」
「気のせいかしらね」
バーディーも根っからの明るさからそう判断して忘れることにした。

86 :バーディーと導きの神:2006/07/08(土) 07:25:41 ID:eHzRyETL0
そしてリュミール。
ガロウズの部下に連れられ、中央塔の地下牢へ連れて行かれようとしたリュミールは、部下
が一人になったことを幸いに激しく抵抗した。
さらに巨人が破壊した建物の外壁が崩れ、部下が下敷きになって束縛がなくなったリュミー
ルは、下敷きになった部下を残して一人一目散に逃げ出した。
しかしザンとバーディーは大混乱となっている基地内をうろうろしていたが、基地が広すぎて
中央塔を見つけられずにいた。
「それにしても広いわねー」
「あ、また人が!」
二人は兵の影に身を潜める。
すると二人の兵士が通りがかり、リュミールが逃げ出したことを語って探し始めた。
「彼女、自分で逃げ出せたみたいね」
「はい。連中より先に見つけなくっちゃ!」
「じゃあこれからは手分けして探したほうがよさそうね」
「ええ。それだけ見つかる確率も増えますから」
「じゃあザン君はあっち、私はこっちを探してみるわ」
「はい」
「あ、それから、私はザン君が動きやすいように敵の目をひきつけてあげるわ。つまり陽動ね」
「ありがとうございます」
「いいの、お姫様を助けるのはナイトの役目ってね。じゃあ、気をつけるのよ」
「バーディーさんも!」
二人はそう言い合うと、二手に分かれてリュミールを探すことにした。

87 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/08(土) 07:30:28 ID:eHzRyETL0
バーディー、ザンに協力して作戦展開中です。

>>76さん
私も長くなると思います

>>77さん
ペース次第では毎日は無理でしょう。
無理し内定でにがんばるつもりです。

>>78さん
一番ダメなのは私の説明力不足なんですよね。
なんとか精進してみます。

88 :作者の都合により名無しです:2006/07/08(土) 11:36:14 ID:y1sLZxeF0
カマイタチさんお疲れです!
長編カテゴリに入ってから終了がいいなあ。
連載二回目にして、早くも伏線らしきものがチラホラと。
こんな世界を書けるなんて凄いなあ


89 :やさぐれ獅子 〜十四日目〜:2006/07/08(土) 12:13:36 ID:22AiRTGt0
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/yasagure/2/14-3.htmより。

90 :やさぐれ獅子 〜十四日目〜:2006/07/08(土) 12:14:05 ID:22AiRTGt0
 ジャンケンの性質を宿すカラーファイターたち。グーはチョキに強く、チョキはパーに
強く、パーはグーに強い。彼らを打倒するには、このルールに従わねばならない。
「では、こちらからも攻めますよ」
 『赤』、『青』、『黄』が三種三様の手型で攻める。
 明るい三色が入り乱れ、思考力が乱される。
 拳が、開手が、二本指が、加藤を攻め立てる。
 今また、『黄』が突っ込んできた。
「くっ、てめぇには正拳──」などと考えていると、別方向から打撃が飛んでくる。
 出口のない暗黒に誘われる加藤。せっかく攻略法を見出したというのに、敵がそれを許
さない。グーチョキパーの選択に迷う加藤を、三位一体のコンビネーションが狙い撃ちに
する。
「どうした、どうしたァッ!」
「うむ」
「あなたは我々の術中にはまったのですよ。諦めなさい」
 打たれながら、加藤は考える。
 なぜ、いちいち出す手を吟味しなければならないのか。こんな面倒な戦いは懲り懲りだ。
武神の意図はさっぱり分からないが、わざわざつき合ってやる義務などない。
 ──最初からこうすればよかった。
「オオアァァァッ!」
 獅子、再び吼える。フラストレーションが限界を超えた。

91 :やさぐれ獅子 〜十四日目〜:2006/07/08(土) 12:14:56 ID:22AiRTGt0
 突然の咆哮に驚き、三体が手を止め、間合いを空ける。
「面倒だ……。これから俺は正拳、てめぇらでいうグーで攻める。たしかグーを苦手にす
るのは黄色い奴だったよな?」
 『黄』を指差す加藤。が、当の『黄』はあざけるように笑う。
「バカか、おまえ。いくらおまえが正拳で攻撃しても、他の二人が妨害するぞ」
「行くぜ」
 『黄』の忠告など気にせず、加藤が走り出した。一直線に『黄』を目指す。これには、
標的となった『黄』も呆れてしまう。
「なんだなんだ、ヤケか。おい、二人とも頼む」
 『赤』と『青』が加藤の前に立ち塞がる。が、加藤は完全に二人を無視して突き進む。
むろん、二体はさまざまな打撃で阻止しようとするが、加藤は止まらない。
「いくらでも喰らってやるよ──今はてめぇらをぶっ殺したい気持ちが上だ」
 加藤と『黄』との距離が急速に狭まる。
「う、うわッ! 二人とも、ちゃんと止めてく──!」
 鼻っ柱へ拳がめり込んだ。さらにボディブローが腹筋に刺さり、拳が次々に顔面へと放
り込まれる。
 あっという間だった。
 五秒と経たぬうちに、『黄』は地面に沈み、溶解していった。

92 :やさぐれ獅子 〜十四日目〜:2006/07/08(土) 12:15:42 ID:22AiRTGt0
 『黄』が倒れた箇所を注視し、『赤』と『青』が冷えた汗を浮かべる。
 一説によると、兵士の三分の一が負傷すると、その部隊は「全滅」と見なされるという。
これは負傷兵一人に対し、二人の介護を要するという理由からだが──今回のケースでも、
三分の一を失った両者の動揺は大きかった。
「お、おのれ……よくも『黄』を。ただでは済ませませんよ」
「次は掌底で攻める。パーが苦手なのは、青い奴だったよな?」
 加藤はずいと『青』に歩み寄る。血とアザをまとった空手家が、闘争本能に突出した笑
みを表す。
「うっ……ううっ」
 『青』の血相がさらに青く染まっていく。
「よっ、よしなさいッ!」
「うわあぁぁぁぁぁっ!」
 これまで無口を堅持していた『青』が、恐怖に心を折られた。大した勝算もないまま駆
け出す。
 カウンターの掌底が、顎にクリーンヒット。
 『青』は膝から崩れ落ち、二度と起き上がることはなかった。
 溶ける『青』に唾を吐き捨てながら、加藤は『赤』へ向き直った。
「さて、残るはてめぇだ。てめぇは……二本指でいいんだっけか」
「ぐぬぅ……」
 息を切らしつつ、余裕たっぷりに人差し指と中指をハサミのように開閉させる加藤。も
はや、勝敗は決した。

93 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/07/08(土) 12:19:06 ID:22AiRTGt0
覚えていらっしゃる方はおりますでしょうか。
ようやく一段落つきました。
またよろしくお願いします。

94 :作者の都合により名無しです:2006/07/08(土) 12:38:35 ID:tnU3IMWb0
帰ってキターヾ(*´∀`*)ノキャッキャッ

95 :五十話「六物語〜終〜」:2006/07/08(土) 13:15:18 ID:m57pG5mr0
「真っ暗で何も見えない室内の中、語り手達は壁に沿って電灯のスイッチを探す事にした。
入り口の扉は開けてあったが、教員に見つからない為にも理科室に電気は付けられず、
その日の夜は月も雲に覆われていた、そのせいで室内は闇に閉ざされていた。
しばらく周囲を探していると、新聞委員の話を纏めていた1年が妙な布に触れた。
カーテン式にぶら下がった布を退けると、その奥に通路が現れた。布は通路にまで
張り巡らされていた、それを潜り抜けていくにつれて一人、二人と語り手達が消えてしまった。」

カーテン式の布、暗闇の中の通路、何が霊の仕業か。
人数を分担させる為の人為的な意図を予測させる。
左利の人間ならば左の壁を、右利の者なら右側の壁を頼りに進む。
暗闇で前は見えないこの状況下で、足音のみで相手の位置を確認するのは不可能。
ここで通路が別れたらどうなるか、言うまでも無い。
しかも相手は好奇心に駆られた人間、落ち着きの無い人間ならば
左右へと動き回ってしまい更に人数を減らす事になる。

「そして丁度独りきりになった時に、異変が訪れた。
突然、体が重くなり自由を奪われ、ふらつき始めると共に
強烈な睡魔に襲われて意識を失ってしまった。」

またしても妙である、症状が多すぎる。
霊的な物の仕業ならば眠気を誘うだけで済む筈。
そして、それを最初に見抜いたのはドリアンであった。

「フルニトラゼパム、一定時間で発生する高い睡眠効果に加えて、
副作用にふらつき、倦怠感等がある。アルコールとの併用で
記憶の忘却を起こすベンゾジアゼピン系の睡眠薬だな。」

先程の部長が持ってきた差し入れに入っていた事は言うまでもない。
だが、部長は何故こんな事をしたのだろうか。

96 :五十話「六物語〜終〜」:2006/07/08(土) 13:16:35 ID:m57pG5mr0
「身体に重さを残したまま眼を覚ました聞き手は、
首から下を奇妙な液体に浸した状態になっていた。」

目覚めたら体全体を液体に浸している、そんな小説の様な事があるのか。
一瞬そんな考えが脳裏に過ぎるが、自分達の置かれている状況を考えれば
多分あるのだろう、自分達の居るこの世界も奇怪に満ちた世界なのだから。

朦朧とした意識の中で、部長の嘲笑う声が聞こえた。

「よぉ、目を覚ましたみたいだな。
なんでこんな所に居るのか、って顔だな。
教えてやるよ、さっき俺がお前等に配った『おしるこドリンク』。
あれに睡眠薬を混ぜてやったんだ、結構旨かったろ?
俺も飲んでみたら癖になってな、冷たくても旨いとは思わなかったよ。」

効果の抜け切らない睡眠薬のせいで、意識はハッキリとしないが、
虚ろな瞳の先には、白髪鬼と呼ばれる教師と部長の二人が立っていた。

「さっき俺はここの事は知らないって言っただろ?
あれは嘘だ、実は俺はここで既に『菌』の実験を受けてたんだ。」

少しづつ明らかになっていく二人の目的。
だが謎も増えた、菌とは一体何なのだろうか?

「今、お前が浸かっている液体には様々な『菌』を繁殖させてある。
その菌の全てに抵抗をつければありとあらゆる病原体に対応出来る新人類が誕生するんだ。
見えるか?お前の横に浮んでいる肉の塊、それは『菌』に対応出来なかった奴の成れの果てだ。」

97 :五十話「六物語〜終〜」:2006/07/08(土) 13:18:03 ID:m57pG5mr0
新人類、まさかそんな物を作ろうとしているとは思わなかった。
奇妙な実験の正体は、病気に罹らない人類の開発だったのだ。

「俺はそんな失敗作とは違う、菌に適応して生まれ変わったんだ。
あらゆる病原体を恐れる必要から解放されたのさ。
ただ一つ問題があるんだ、後7日もすれば俺は菌に身体を支配され、
自分の意思を保てなくなる、俺はそれが悔しかった。
だから仲間を増やす事にしたんだ、それでどうせなら
嫌な奴を生まれ変わらせてやろうと思ってな。
調子に乗ってる奴、うるさい奴、なんとなく顔が気に入らない奴。
その中にお前も入ってたんだよ、ラッキーだったな。
俺の御蔭で新たな人類に生まれ変わる事が出来るんだぞ。」

重い体、今にも閉じそうな目蓋、このまま眠りにつこうとした新聞部員。
だがその耳に入ってきた声によって眠りを妨げられる。

「ぎゃあああああああああああああ・・・・!」

語り手の叫び声が周囲に響き渡り、消えてしまった。
そして部長のすぐ側にある液体の中には、ピンク色の肉の塊が浮かび上がり、
その肉からは赤ん坊の泣き声が響いていた。

「お、聞こえただろ?これであいつも俺達の仲間だ。
どうやらお前以上の出来損ないみたいだな、あっという間に肉になっちまった。
でも安心しろよ、お前もあいつも、これからは俺の仲間として面倒をみてやるからな。
見えるか?お前もどんどん肉の塊になっていくぞ?あっちゃ〜、
お前も失敗作だったな、赤ん坊の鳴き声がダブって聞こえるだろ?
それ、片方はお前の声なんだぜ。」

98 :五十話「六物語〜終〜」:2006/07/08(土) 13:19:38 ID:m57pG5mr0
もう声が届く事は無いが、新聞部員だった少年の中では立場は逆転していた。

(部長さん・・・可哀相なのはあなたですよ。この体でいる事の素晴らしさが解らないなんて。
全身が菌に溶け込んでいても、意思を失わない。もう働く必要も、勉強する必要も無い。
それでいて悠久の時を過ごせるんだ。フフフ・・・本当に残念ですよ、部長。)

こうして肉の塊は、今も気づかれる事無く、自分を
目上の者と勘違いしている『新人類』を嘲笑っているのだ。
・・・不気味に木霊し続ける赤ん坊の泣き声と共に。

沈黙が洞窟を支配する、夜の空よりも黒く染まった上空も、
今は音一つ立てる事無く静かに佇んでいる。

「これで俺の話、と言うより何者かの用意した話は終わりだ。」
話の結末に言い表せない空虚感を覚えながらも、
正体不明のストーリテラーの用意する恐怖に身構える。
「何も起こらない・・・?」
突然、柳の刀がガタガタと震え始めた。
「むっ、これは!?」

柳が刀に反応するより速く、空の暗雲は姿を消してしまった。
「一体どうなっているんだ・・・。」
困惑するシコルスキー、ドリアンが洞窟から足を踏み出した。
雷雨は既に消え失せ、豪雨が弾丸となって襲う事は無かった。

「今までの奇怪な現象全てが・・・偶然だったとでも言うのか?」
愕然とするユダ、何故、自分はこの話を思いついたのか。
空に吸い込まれた暗雲の行方はどうなっているのか。

消えた雷雲、重なり続けた偶然、それは偶然ではなくやはり必然。
囚人達と知略の星は踊る、破壊の神の手の上で。

99 :五十話「六物語〜終〜」:2006/07/08(土) 13:21:26 ID:m57pG5mr0
やっと死刑囚終了、怪談の前で止めとくんだった・・・。
一応この話から繋げた話も用意してますけどね。
かなり行き当たりばったりな邪神です。

最近、筋肉痛なのにシャトルランなんてさせられましたよ。
記録は40往復、小学生の頃から12回しか上がってないorz
走る競技はどれも駄目、サッカーでディフェンスなら少々・・・って走らないねorz
跳び箱だったら華麗なムーンサルトが出来るんですが、
我が校では跳び箱をする習慣なんて無いです。
色々な意味で厳しい状態です、それではお礼のお言葉を。

〜感謝の場〜

ふら〜り氏 脱獄の時にはちゃっかり皆殺しにしてから出てますからね。
オリバみたいに刑務所で御仕事すれば・・・そんな実力(ry

サマサ氏 落ちながら戦うのはタケコプターでカバー。
後は陰陽弾と輪郭の歪み具合を・・・。

前スレ521氏 >>もはや小学生の仲良し集団並だな、この連中・・w
確かにそんな感じがしなくもないですねw
最近の小学生が笑いながら「死体が転がってるぅ〜。」
とかいって鳥の死体を踏みつけてるのを目撃しましたよ。

100 :作者の都合により名無しです:2006/07/08(土) 16:27:52 ID:5wawOh2+O
サナダさんキターーーーーーーーーーーーーーーーーー(゚∀゚)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!


101 :作者の都合により名無しです:2006/07/08(土) 19:54:03 ID:Srp/hzgi0
サナダムシさん復活おめ!
かまいたちさんも新連載開始したし、うみにんさんもコメントくれたし、
今、行方不明の方も続々と復活してくれる予感!

>かまいたちさん
なんか、明太子すら怪しく感じる雰囲気作りと文章力がすげえ。
名探偵対怪人と言う、ある意味古典で王道ですがすごいドキドキする。

>バーディさん
謎の巨人相手にミッション開始。いよいよ本編って感じですね。
バーディの能力がどれだけかは分からないけど、困難な仕事ですな。

>サナダムシさん(お帰りです。待ってました)
微妙に、原作バキの看守3人衆とダブって見える。休載効果?w
しかし、加藤強くなったなあ。カラーレンジャーたちを一蹴とは。

>邪神さん
なんか仲良しグループの怪談話から妙な展開になってきたなあw
怪談からいよいよ冒険と決戦に移行していきそうな雰囲気ですな!


102 :作者の都合により名無しです:2006/07/08(土) 21:43:16 ID:j08LcM/x0
・金田一少年
これ、どうやったら爽やかな幕切れになるんだ?wどんどんおぞましくなる。
前作を踏襲したような黒さ。早く惨劇シーンが見たいです!

・バーディ
野球の巨人が弱い分、手強い敵でいてほしいものだw
厳しい作戦になりそうなのに、なんか呑気な2人だなー

・やさぐれ獅子
(やっと帰ってきてくれた。マジで心配してました。)
信号機トリオ、意外と攻められると弱かったですな。
次の敵はどんなのが出てくるのか?トリオの反撃はあり?

・キャプテン
次回から、別のパーティの話に移行かな?死刑囚好きだったけど。
でもこいつら、個性強すぎて主役陣を食っちゃうからなーw


103 :バーディーと導きの神:2006/07/09(日) 08:20:47 ID:HPxyTIv90
バーディーは基地周辺をわざと姿を見え隠れさせながら敵の注意を誘った。
「こっちにいたぞ!」
「野郎!」
散発的に撃ってくる銃弾ではバーディーは傷つかないし、ましてや銃身の先を見切ることで
身をかわすこともできた。
そしてひとしきり基地の中を引っ掻き回したとき、バーディーはとてつもない熱量の雷撃の
柱を目撃する。
「なにあれ?」
バーディーは好奇心に駆られて、雷撃のあった方角へと向かう。
そして建物の隅に隠れると、その光景を目の当たりにした。
一人は人間の男。そしてもう一人はバーディーの代名詞にもなった「狂戦士」よりも二回りは
大きい巨人との対戦だった。
人間はなにやら呪文のようなものを唱えると、バーディーが森で食らったものなど問題に
ならないほどの威力の雷電を巨人に向かって放った。
しかし巨人はそれを受けてもなんらダメージを受けた様子もなく、平然と佇んでいた。
そして巨人の頭部がわずかに開くと、そこに埋め込まれているらしいレンズのようなものから
一種のビームを人間に向かって発した。
だが人間は、またしても呪文のようなものを唱えると、自分の前の空間をねじまげ、その
ビームを拡散する。
「あのビームを受け流すのではでなく、空間をまげて防いだ!連中もゲートのような技術を
持ってるの?」
バーディーは驚くが、それでもかまわず事態は進んでいく。今度は男が手のひらに小さな
雷球を発生させると、巨人に向かってそれを放った。
巨人のビームとは比較にならない熱量とエネルギーが爆裂した。巨人はその光球に包まれ、
左腕を切断されて四散したかのように見えた。
バーディーはとんでもない世界にやってきたと半分後悔した。

104 :バーディーと導きの神:2006/07/09(日) 08:21:50 ID:HPxyTIv90
「やりましたな、准将」
禿げた頭の副官ボックウェルが上官を讃える。
しかし上官は事態を把握できていない部下を愚か者と断罪する。
「奴は逃げたのだ。爆発に紛れ、私より早くな。追う必要はない、腕を回収しておけ」
「はっ」
ボックウェルが答える。
その上官、ガロウズは気づかなかったが、バーディーにとってはこれが最大の敵となる
ガロウズとの初遭遇だった。

一方こちらはバーディーと別れたザン。
「靴跡や瓦礫の影も見逃すな!」
「逃がしたことを准将に知られちゃただじゃおかないからな!」
ザンは兵士たちの脇をすり抜けながらリュミールの痕跡を丹念に探す。
そして幸運の女神はザンに微笑んだのだった。
「小さい靴跡。リュミールのだ!」
自分がリュミール用にと用意した靴の靴跡を見つけたザンは、その跡をたどって瓦礫の山
まで来た。靴跡はここで途絶えている。
しかし残された時間はあまりない。敵とてこの靴跡を見つけていずれはここへやってくるだろう。
ザンは覚悟を決めて、瓦礫の山に向かって叫んだ。
「リュミール!僕だ!ザンだっ!助けに来たよ!!」
敵の兵士に見つかるのは怖かったが、数秒の間をおいて、瓦礫の山からリュミールが姿を現した。
「ザン?……本当にザンなの?」
「本当だよリュミール!」
「ザンッ!」
二人は抱き合って再会を喜んだ。

105 :バーディーと導きの神:2006/07/09(日) 08:23:11 ID:HPxyTIv90
「リュミール、もう安心だからね。さあ行こう。バーディーさんも来てるんだ。走れるかい?」
「うん、ザンとなら……」
リュミールは涙を吹いて笑った。しかし、瓦礫の向こうから兵士の声が上がった。
「こっちから声が聞こえたぞ!!」
「見つかっちゃった!急ごうリュミール!」
「うん」
二人は走り出す。
しかしそちらには西の森の方角であり、そこには天然掘りの発掘場があった。
ザンとリュミールはしばらく走った後、森の木陰に身を潜めた。
リュミールの息がだいぶあがって顔色も良くない。極度の緊張とストレスで体力はもう
限界だった。
ザンはリュミールを座らせると、背中のリュックからお茶を出してリュミールに飲ませた。
リュミールはそんなザンのことを心底優しいと思う。
でも声に出して大好きといってはいけないような気がする。それはこの駐屯地に連れて
こられてから感じていた誰かの呼ぶ声に自分が反応して、心の底の本当の自分が叫んで
るからだと感じるからだった。
そしてそのことを思うとき、リュミールの頭に痛みが走る。
「リュミール!どうしたの?」
「(データ・オープン)いやっ!(データ・オープン)いやっ!」
リュミールは頭を抱えて被りを振る。
「リュミール!」
ザンが声を張り上げると、リュミールはようやくザンの言葉に反応した。

106 :バーディーと導きの神:2006/07/09(日) 08:23:43 ID:HPxyTIv90
「一体どうしたの?」
「……記憶を、思い出しかけてたの……」
「それでなにか思い出した?」
「ううん、ダメみたい」
「そっかー、残念だなー」
ザンが残念がっていると、兵士たちの足音が聞こえてきた。
「連中がきた。急ごう」
「うん」
しかし、ザンたちを追ってきた兵士たちは喜んだ。二人が採掘場に向かってくれたからだ。
「な、なんだこりゃ?」
ザンは思わず叫んだ。直径20メートル、深さは暗くて分からないほどの垂直堀の採掘場が
姿を現したからだった。
しかも周囲を兵士たちに完全に囲まれた。
「お前!その少女を渡せば命だけは助けてやる。さあ、渡すんだ!!」
言った兵士の手には拳銃が握られている。
しかし、
「そうは問屋がおろさないのよね!」
その兵士の銃を蹴り上げながら現れたのは、バーディーだった。

107 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/09(日) 08:28:24 ID:HPxyTIv90
バーディー、人助け失敗の失地回復なるか、です。

ボックウェルはガロウズの副官を務めていることもあり、かなり優秀な術士ですが、
巨人にはかないません。そこがガロウズのような天才との差です。
と、言うことは竜人はもっと凄い力を持っているということです。

>>102さん
言いにくいですが、実は謎の巨人は敵じゃないんです。すいません。

108 :作者の都合により名無しです:2006/07/09(日) 10:45:35 ID:zMZ1TVJp0
サナダムシさん復帰したのか。嬉しい。
見てた人さんも新作書いてくれてるし、
邪神さんやサマサさんも相変わらず好調だし、
17さんハイペースだし。
まだ当分バキスレが廃れる事はないな〜。

109 :作者の都合により名無しです:2006/07/09(日) 14:16:20 ID:TA14/B310
>>108
邪神さんの作品もなんかもう少しで終わりそうな気配がする。寂しいな。
まだ年内くらいは大丈夫だけど、サマサさんの超機神と同じような時期か?

でも、やさぐれ獅子が復活して金田一が始まって、17さんが活躍してるのは良いね。

110 :バーディーと導きの神:2006/07/09(日) 14:50:34 ID:HPxyTIv90
「その子たちは渡さないわよ!」
先ほどの術者ならともかく、一般兵士ではバーディーには対抗できない。兵士たちはあっ
という間にバーディーに蹴散らされていく。
しかし、その人数はバーディーのカバーできる範囲を超えていた。
一人の兵士の銃がザンを狙う。
その銃口を見たリュミールは、緊張の極限状態に達してしまう。
そのとき記憶の回路がリュミールと左手首のチップをつなぎ、チップからまばゆい光線を
放ちだした。
そしてそれを見た兵士は、巨人の爆裂光線だと錯覚し、思わず銃の引き金を引いてしまう。
その銃弾はリュミールのわき腹に命中し、ザンはその反動で思わずリュミールから手を離
してしまう。
(思い出した……。思い出してしまった、私は……)
銃弾の痛みの中、リュミールは完全に自分の記憶を取り戻してしまった。
その結果、リュミールは発掘場の淵で倒れ、ザンは発掘場の中に吸い込まれていった。
「ザン君!」
バーディーは、リュミールのことも気にかかったが、このままではザンが死んでしまうと
判断し、迷わず発掘場に飛び込んだ。
そしてその後には数人の兵士とリュミールだけが取り残されたのだった。

落下するザンを追って発掘場に飛び込んだバーディーは、先に落ちたザンに追いつくため、
その能力を使った。
「アンカー」
瞬間的に自身の体に通常より重い重力をかけるアルタ人特殊捜査官の標準装備だ。
すると、バーディーの落下位置がクンと下がり、ザンと同じ位置まで降下する。
「バーディーさん!」
ザンが驚いたような声を上げる。まさか自分を追って飛び込んでくるとは思ってなかった
からだ。
「いいから、なんとかできる道具ない?」
「あります」
ザンは腰の袋から鉤のついたフックロープを取り出す。


111 :バーディーと導きの神:2006/07/09(日) 14:52:24 ID:HPxyTIv90
「ちょうだい」
「はい」
ザンは素直にバーディーにロープを渡す。
「適当なところは……、あった!」
側溝の足場が組まれた場所を発見したバーディーは、フックを投げつけ、みごと足場に引っ
掛けた。
そして二人分の体重によってロープが切れるのと足場が崩れないよう、ロープの長さ分を
右手の握力による摩擦だけで調整し、落下を完全にとめた。
これは幼少時のスケルツォ教官との訓練の賜物だった。
「どうにかなったわね」
「凄いです、バーディーさん」
「これでも連邦の特捜だからねー」
素直に褒められて嬉しかったのか、バーディーは得意げに語った。
「それにしてもあいつら……。リュミールになにかあったら許さないぞ!」
ザンは拳銃を撃った兵士の姿を思い出して息巻く。
しかし、ここはこの状況を何とかするのが先決だ。
二人はロープを昇り始めた。

「なんだと!少女に発砲しただと?」
眼光鋭いガロウズに睨まれた分隊長は、文字通り縮こまった。
「それで、少女は生きているのであろうな」
「は、はい……」
消え入りそうな声で分隊長。
ガロウズはそんな分隊長を無視して医務室に向かう。
「だが、あの少女が死んでいたら、私はお前たちを殺していただろう。それだけは忘れるな!」
「は、はいっ!」
生きた心地がしない分隊長だった。
それから医務室に到着したガロウズは、リュミールの様子を最優先で尋ねた。
「准将、ちょうどいいところに来てくださいました」
医師が医療用の容器を持って歩み寄ってきた。

112 :バーディーと導きの神:2006/07/09(日) 14:53:30 ID:HPxyTIv90
「なんだ?」
「これを見てください」
その容器には拳銃の弾丸が乗せられていた。
「少女から取り出したのか?」
それがどうしたという感じでガロウズが言う。
しかし医師は被りを振った。
「いいえ、少女が自ら吐き出したのです」
「なに?」
「正確に言えば、少女の体が弾丸を押し出したのですが、とりあえず少女を見てください」
医師はそういってガロウズを案内する。
そしてリュミールの患部を示しながら、ガロウズに説明する。
「弾痕は左のわき腹。肋骨の間でした」
「確かに跡すらないな。……術か?」
「いいえ、誰でも持ってる代謝機能と治癒能力だけです。この少女の場合、常人を遥かに
上回っているようですが……。現在もその能力も加速的に早くなってるようです。刃物で
切りつけても数分で完治してしまうでしょう」
「しかしそれだけの能力を維持する力をこの小さな少女が持っているとは思えぬが……」
「はい。機械的な処置をされていることも考慮して透視を行いましたが、それらしいもの
はなにも……。ただ、両手首に奇妙な金属片があることを除けばの話ですが」
「なんだそれは?」
「よく分かりませんが、この金属片は有機的に肉体とつながっているのです。それに見て
ください。右のほうにはないのですが、左のほうには先ほどの戦闘で見られた巨人の頭部
や胸部の紋章と同じものが浮き出ています。なぜなのかは皆目見当がつきませんが……」
医師はそう言って被りを振る。
ガロウズはしばらく考え、医師に指示を出す。
「少女が目覚めれば判明するだろう。それまでに少女の体を徹底的に調べろ。私は資料室
にいる。少女が目覚めたら知らせろ」
「分かりました」
医師が答え、ガロウズは医務室を後にする。
そして誰もいないことを確認すると、真に邪悪な笑みを浮かべた。
(もうすぐ、もうすぐだ。何者をも破壊する最強の力。手に入れるのはもはや時間の問題だ)

113 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/09(日) 15:11:57 ID:HPxyTIv90
休日なのでもう一つ。

エルデガインを知ってる人にはこの部分と次の部分はつまらないかもしれませんが、
説明しないといけない部分なのでどうか一つよろしくお願いします。

後、人物設定のまとめ2

・ガロウズ:竜人による階級制度が厳格に守られているルアイソーテにあって、
       特にその能力の高さから貴族に認められた特位階級者。
       他の術者と比較しても非凡な才能を持った天。
       術者には竜人や亜竜人のほうが圧倒的に実力者が多いのに、
       なぜか人間だけの術者で部隊を組んでる変わり者でもある。

・ボックウェル:ガロウズの副官を務める強力な術者。
         ガロウズの術者部隊の実質的なまとめ役でもある。
         他人の術を結集して強力な術に変えて敵を倒す特技を持っている。

・オーダ中尉:雷撃使いのガロウズ部隊の術者。格闘戦のエキスパートでもある。

・謎の巨人:リュミールと一緒に発掘された人形。ボックウェルの必殺技をものともしない
       抗術(一種の防壁)を持ち、額のレンズからビームを発射する。
       ガロウズとの対戦で左腕を失うが、転送術で逃走する。
       額と胸部にリュミールの左腕に現れた文様と同じ文様があり、
       リュミールとは密接な関わりがある。

医師:エリイ医術長という名前がある。ガロウズが連れ込んだ少女と、
    巨人の左腕の解析を担当する。

114 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/09(日) 15:27:12 ID:HPxyTIv90
バーディーのほうを忘れてました。連投すいません。

・スケルツォ・ガ=デール:バーディーの幼少時、教官だった人物。
                現在は警察学校の教諭を務めている。
                負傷した箇所を人工筋骨で覆って隠すことなく、
                特捜の勲章とまで言ってのける豪胆な人物。

>>108さん
自分のペースでがんばりますのでよろしくお願いします。
>>109さん
今までバキスレを見てきた者にとっては慣れ親しんだ作品が
終了するのは私も寂しいです。
でも復帰してくれた人もいますし、まだの人もまた帰ってきますよ。
希望を持ちましょう。

115 :ふら〜り:2006/07/09(日) 17:35:07 ID:VwACAXmU0
お、ペース回復のようですね。

>>17〜さん(あの方でしたか。こちらこそ、おかげ様で楽しく書かせて頂きましたよっ)
リュミールは敵方にとっての重要なアイテム扱い、ラピュタにおけるシータかと思って
ましたが、もっと直接的な意味で本当に「アイテム」な模様。しかし可憐なお姫様と凛々
しく戦うお姉さん、両手に華ですなザンは。彼が彼女たちを護って戦える日は来るのか?

>>銀杏丸さん
実は正確には覚えてなかったんですが、白銀ってそこまでひどい末路辿ってましたか。神
と虫ケラだったはずなのに。その虫ケラが今や黄金の師匠をやってるし。思えば聖域の人
にとっては、財団って恩義はあるものの「踏み込んできた部外者」なんでしょうねやはり。

>>サマサさん
サブタイでちょっとびっくりしましたが、なるほどこういうこと。それでいいのか狐っ、
と言いたいとこですが、でも考えてみれば最初からそういう奴でしたね。強い憎しみも
深い欲望もない、だから執着もない。でも眼鏡にだけ執着。……どこぞの教団員かっっ!

>>かまいたちさん
今回の舞台に到着、か。そういえば一もカイジ同様、検死とかはできない。コナンと比べ
たら知識は乏しく特殊装備もない。更に記憶喪失ときてる。そして待ってるのはおそらく
また殺人劇。知識も記憶もない四面楚歌の状況下、頼れるのは自身の「閃き」のみ……と。

>>サナダムシさん(お帰りなさいませっ! 待〜ってましたよっっ!)
本作の加藤はいろいろ考えてここまで戦い抜いてきましたが、今回は彼の本来の持ち味と
いうか……幽助の「まっすぐいってぶっとばす」を彷彿と。見習えよ某囚人ボクサー。まぁ、
勝ちゃいいんですもんね。武神氏がどんな解答を期待してたかは知らねど、見事に快勝!

>>邪神? さん
おぉ……知ってる話なんですけど、改めてこういう風に書かれると、これはこれでゾクり
とくるものがあります。次回から久々に別パーティってことですかね? こういう風に話
が進むと言うことは、やはり最終戦には全員集結か。まだだいぶ先でしょうが、楽しみ。

116 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/09(日) 23:52:52 ID:aviFSm6z0
【根】ねごろにんぽうちょう

「さてこちらも」
久世屋が胸と垂直に肘を曲げ、掌を割り開くと。掌の周りの空気に異変が生じた。
陽炎がたゆたうようにぐにゃりと曲がり、先ほどの赤い筒が次から次へと出現したのだ。
もちろん筒は500mlの缶ジュースほどの大きさだから、全てを掴むのはかなわない。
いずれも女児のように生白い指からこぼれ、地面へと落ちていく。
どさ。どさ。どさ。
10個分ぐらいの重苦しい音を聞き遂げ、久世屋は大きく頷いた。
「真価は」
言葉も終わらぬうちに久世屋の右ひざからやや上が切断された。
やったのは根来だ。亜空間経由でいつのまにか久世屋の足元にいる。
熊手のように頼りなげな黒い足指が枝からほつれ落ちる様が、稲妻に照らされ一瞬見えた。
どうやら久世屋は足首部分だけをコウモリのそれへ変え、枝に捕まっていたようだ。
流石に残る左足のみでは自重を支えられないとみたか、久世屋は足を離し地上へ落ちる。
逃す根来ではない。
放胆にも枝を蹴って中空に躍り出し、久世屋の額めがけて突きを繰り出す。
章印──動物型ホムンクルスの急所──を狙われたと知ってか知らずか、からくも首をね
じり避けた久世屋だが、根来のみに気を取られたのが災いした。
自由落下の空間は終焉を向かえ、彼は先ほどの赤い筒が散乱する地面に体をしこたま打
ち付けた。
ホムンクルスゆえダメージはないが、体勢の崩れは明確にマズい。
奇麗に着地した根来は喘ぐ久世屋の胸倉を掴み、身動きを封じた上で額狙いの一撃を繰り
出した。
だが、久世屋は迫り来る忍者刀をものともせず笑って見せた。
「俺の落とした武装を先に片付けるべきでしたね」
何かを察したのか、根来はバッと胸倉から手を離し、天高く舞い上がった。
と同時に彼めがけて赤い影が飛びすさり、爆発した。
バランスを崩したかに見えた根来だが、後ろめがけてしなやかに宙返りをうち、着地。
距離は久世屋からおおよそ8m。
と認めた瞬間、久世屋の周りから赤い影が飛翔する。
数はおおよそ10個。ロケット花火のような速度で根来を狙っている。

117 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/09(日) 23:53:53 ID:aviFSm6z0
「威力は低いですが、4個あれば根来さんの右足ぐらいは吹き飛ばせます」
親切ながらに軽い怨嗟を含んだ解説に軽く鼻を鳴らし、根来は跳躍。
木の幹を俊敏に蹴り上げ、手近な枝に飛び乗る。
彼は振り向き、影を見た。
不気味なうねりを上げて、もはや正体を視認できるほど近い影を。
「自動人形(オートマトン)か」
自動人形というのは、武装錬金のうち、一定の動物(犬や天使)を模した形状の物を指す。
「ええ。人形じゃないのに自動人形というのは妙ですけど」
コウモリを模した赤い自動人形の群れが、無機質に羽をバタつかせながら迫ってくるという
のはなかなか身の毛もよだつ壮観だが、根来は表情一つ変えずまた跳んだ。
ただし。
上空にではなく地面目がけて顔を突き出し、赤い影の群れの上スレスレを通るように。
要は飛び降りた。しかしそれでは、軌道を変えたコウモリたちに撃たれるのは必定。
羽を持つ者と持たざる者では、どちらが空中戦を制すかは火を見るより明らか。
「逃げるならその忍者刀の能力を使えばいいのでは? ま、俺が勝てればいいんですけど」
呆れたような呟きとともに、コウモリの群れはUターンし。
根来が10cmも落ちぬ間に包囲した。
腹、胸、頭の周りに5個。さらに右ひざ周りにも5個。計10個だ。
それらがいっせいに緋と黒のまだら花火を咲かせようとした瞬間!
根来は再度跳躍した!!
落下中において跳躍というのも奇妙極まる話だが、事実彼は跳躍した!
恐るべきコトに、地面に向かって顔を突き出した姿勢のまま、『上』へ向かって。
この様子はバンジージャンプを想像していただければお分かりになるだろう。
ただし根来の足元には当然ながら紐のようなモノはない。
にもかかわらず、彼はビューと上空へと飛んでいき、先ほどいた所より2mほど上の枝に
着地していた。
「ななななんですかそれ!? あなたの武装錬金の能力ですか!?」
右足の切断面をさすりながら、久世屋はすごく驚いた表情で根来を見上げた。
「違うな」
右の人差し指と中指を顔の前に持っていき、根来はビシィと言ってのけた。
「忍法・枯葉返し」

118 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/09(日) 23:55:27 ID:aviFSm6z0
これはオーストラリアの原住民が使うブーメランのごとく、中空に躍り上がった者が元の位置
へと戻る、重力や物理法則無視の怪異のわざ。と伊賀忍法帖に描いてあったから間違いない。
きっと根来も伊賀忍法帖を読んで覚えたのだろう。それとごめんね風太郎先生。
「その年で忍法ってあなた」
かくいう久世屋自身、いい年超えたおもちゃ好きが高じ、殺人を犯したのだから目くそ鼻くそだ。
「まぁいいや。とにかく身動きとれない俺にできるのはコレぐらい」
久世屋は赤い筒をまた出現させた。
すると筒の表面全体に、あみだくじのような亀裂が生じ、それに添う形で縦半分に割れた。
そして間髪入れず様々な部分がスライドしたり折れ曲がったりとフクザツな手順を繰り返し、
コウモリへと変形した。
「ふざけた男だ。それを自動人形として扱うとはな」
細められた無愛想な目が、嫌というほど久世屋を睨む。
「おや、根来さんはご存知ですか。この筒が何の武器か」
睨まれた方は、カエルの面に小便という態で赤い筒を量産し、20個ほどあるそれら全てを
変形させていく。
「百雷銃だ」
「ひゃくらいづつ?」
コウモリなのにオウム返しに聞きつつ、久世屋は真っ赤な部隊を出撃させた。
無機質な顔のそいつらは、火を噴くような勢いで樹上の敵に殺到する。
「忍具の一種で、主に爆竹が用いられている。逃げ道の反対側に仕掛け、逃走の際に着火
し派手な音をあげて敵を殺到させる。すると本来の逃げ道への警護が手薄となり、安全に
逃走をはかれる。ただし。いま貴様が用いてる形状は本来のモノではない」
「おお。攻撃が迫っている時に解説をやらかすとはさすが忍者マニア」
「だな」
根来は褒められたと解釈したのか、忍者のクセに浪人みたいな相槌を打った。
肯定してどうするという説もあるが、原作者やストーリー協力者ですら「お喋りな面ができた」
「忍者マニア」といっているのだから仕方ない。
「故にこういう芸当も可能」
迫りつつあるコウモリの群れを一顧だにせず、根来は自身の足場、つまり、枝を斬りつけた。
通常ならば根来を乗せたまま枝は落ちるのだが、そこはシークレットトレイル。
主目的は亜空間への入り口形成。
稲光をわずかに散らしたのみで、枝には傷一つない。

119 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/09(日) 23:57:39 ID:aviFSm6z0
そこにサラシが巻かれた腕が潜り込み、ややあって根来は面妖な『束』を取り出した。
扇だ。
たくさんの畳まれた扇を、成人男性が両掌でつくったぐらいの円状に縛りあげている。
根来はすばやく束を解き、無造作に扇を5本ばかり掴むと天に向かって放り投げた。
扇は天にフタする枝葉にこすれながらも、1つまた1つと開いていき降下を開始した。
ただの扇ではない。
一般に扇の下方には、骨組みを留める「要」という部分があるが、いま根来が放った扇には
みな全て、「要」の部分から長く鋭い針が下に向かって生えている。
ある扇はゆるやかに。ある扇はきりもみしつつ。
1本につき1個。コウモリへ銀光りする針を突き刺した。
爆風の中、他のコウモリはまだ根来めがけて飛んでいく。
が、そこへ扇の雨が降り注ぐ。
いかな工夫で根来は扇を投げているのか、いずれも軌道や速度はまちまちだ。
コウモリは散開したがそれも無駄。みないちように降り注ぐ扇の餌食となり爆裂四散した。
「忍法・天扇弓」
根来はシークレットトレイルを横向きにすると、眼前にかざした。
「そのポーズに意味は? というかあなた、そこにわざわざ仕込んでたんですか?」
突っ込む久世屋を根来はちらりと見た。
見て、薄く笑うと亜空間に没した。いったい何を考えてるんだコイツは。
なお、忍法・天扇弓も伊賀忍法帖を読んで覚えたのだろう。ホントごめんね風太郎先生。
そして上の方で稲妻が走ったと思うと、青々した落ち葉とともにおかしなモノが降ってきた。
「番傘?」
番傘である。時代劇とかで浪人が良く作ってるような奴で、これも畳まれた状態だ。
それでも恐ろしく大きい。180cmぐらいある。
足を投げ出す姿勢で座っている久世屋は思った。
(うわ。根来さん絶対あの中にいるな)
と。思っただけで避けようとはせず、ちょっとワクワクした気分で傘を見守った。
さっきはツッコんだが、根はおもちゃが好きな少年っぽい男だから、忍法にも心惹かれる思
いなのだ。一体何が出てくるのか、興味はつきまじ。
傘は久世屋の斜め上、1mほどで所で開いた。
中は銀ピカで鏡を貼ったようだが、根来の姿はなく。
「忍法・かくれ傘」

120 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/09(日) 23:58:27 ID:aviFSm6z0
代わりに傘の上にいて、赤いつぶてをいくつか久世屋めがけて弾いた。
小石ほどの大きさのそれらは、久世家の両手首と、左足首の直前で半紙状になり、まとわ
りついた。
久世屋は振りほどこうともがくが、赤い半紙は恐ろしい粘性を持っておりほどけない。
もとより地面に手足をつけていたから、クサビを打ち込まれたがごとく動けない。
「忍法・月水面」
呟きながら、根来は久世屋に忍び寄る。
「一つ問う」
真一文字にしっかと結ばれた口元を見つつ、久世屋は困ったような微笑を浮かべた。
「ええと。何をですか? 部長殺しについてはもう全部白状したんですけど」
命の危機は当面なさそうだが、風向きの変化は気味悪いらしい。
「一つ。貴様が武装錬金を発動したのは今日が初めてだな」
質問の意味をはかりかね、眉を潜める久世屋に、返答を促す強い声がかかった。
(…………なるほどね。根来さんのいいたいコトは大体分かった。どっちみちこの姿勢でい
る限りは動けないし、つまらない腹の探り合いで時間を稼ぐか。稼ぎさえすれば、逆転でき
るはず……)
いかにも質問の意味を咀嚼して、ようやく分かったという顔を久世屋はした。
「確かに俺の発言からすればそうなりますね」

──「ぶっつけ本番ですが、要は、『変身!』とかやる調子でOKでしょう!」
──「俺の輝かしい武装錬金初発動の瞬間を、お見せするコトができなかった」

「ならばなぜ、貴様は知っている」
「困りますよ根来さん。質問する時は主語をつけないと、相手に伝わらないですよ」
「貴様の操るそれが、武装錬金だとどうして知っている。今日初めて発現したなら、分かる道
理はない」
「あーハイハイ。ご質問ももっともですね。発現は確かに今日が初めてですよ。でも、ピストルを
扱ったコトがなくても、名前はみんな知ってるでしょ? 誰かから聞いたりしてね。俺は一応ホ
ムンクルスの端くれですから。昔あった親切なホムンクルスに教えて貰ったんですよ」
あくまで朗々と澱みなく久世屋は答える。
両手首が拘束されてなければ、おおげさに肩をすくめたところだろう。
「二つ。戦士・千歳に潜んだ私の気配を察したというコトは」

121 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/09(日) 23:59:34 ID:aviFSm6z0

──「やはりいらっしゃいましたね根来さん」

「この数日における私の尾行にももちろん気づいていた筈だ。にもかかわらず、なぜ放置し
ていた」
久世家は、にこやかに笑った。
「戦うよりおもちゃで遊んでるのが好きだし、そもそも手の出しようがなかったので。でもずっ
とヒヤヒヤものでしたよ。いつも誰かに尾行されてるって」
「出勤時も退勤時もか」
「ええ」
「ネジの納入の報せを持って事務所に向かっている時もだな」
「ええ。仕損のフォーマットを作られた日ですね。あの時はメーカーさんに催促の電話かけま
くって大変だったし、生きた心地もしませんでした」
「嘘だな」
「はい?」
声を低くした根来に、久世屋は目をまんまるくしてみた。
「その日のその時間においては、私は貴様を一秒たりとて尾行していない。事務所でデータ
入力をしていた。よって、貴様が尾行の気配を感じられる筈がない」
「おやおや。千歳さんと同じくあなたも名推理。でもご自身のアリバイを崩しているのか証明
しているのか分かりませんねぇ。何というか逆説的。ま、気配を感じたというのは、単なる勘
違いですよ。データ入力が得意なあなたでも、1万回に1度ぐらいは間違えるでしょ? それ
がたまたま訪れただけ」
「私はこう考えている」
根来は久世屋を一切無視し、厳然と口を開いた。

「貴様に尾行者の存在を教え、核鉄を渡し、武装錬金の概念を教えた第三者がいる」

「ご名答」
森の奥深い所で、一人の男が顔に手を当てた。苦笑しているようだが焦りはない。
「少ない言葉から俺に気づこうとはな。錬金の戦士の中でもかなり優秀な部類だ。が、部下
にはしたくないタイプだ」


122 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/10(月) 00:00:43 ID:aviFSm6z0
「そして奴は、事件の黒幕ではない。大方、ニュースで事件を聞きつけ、貴様と接触を謀っ
たのだろう。最初から裏で糸を引いているのならば、目的がどうあれ、事件そのものを表に
出さず、表に出さなかったとしても貴様ぐらいは始末する」
静まり返った森に、錆びた声が淡々と響く。
「貴様は奴に教えられてから、耳をそばだて始めたのだろう。ゆえにそれ以前の尾行につ
いては、『あっただろう』という先入観のみで認識し、正確には把握できていなかった」
「拘りますねぇ。俺の単なる勘違いに。全く、あなたも『第三者がいただろう』っていう先入観に
縛られてませんか? 俺はコウモリですよ。コウモリ。欲望を叶えるために一人で闇を飛ぶ
生物。群れる訳はありません」
久世屋は首を横に振って、指摘の不当性を主張する。
「第一、見たんですか? 根来さん曰くの『第三者』と俺が接触している場面を」
子どもっぽく澄んだ瞳が、悠然と根来を見上げる。
「ないでしょう? あなたは優秀だから、尾行中俺から目を離す時間なんてほんのわずかで
すよ。仕損フォーマット作ってて俺から目を離していたのもごくわずか」
実際には昼食で目を離していた時間もあるが、それを久世屋が持ち出さないのは、口にの
ぼらせて外れていた場合のリスクを考えてのコト。あえて言わない。
「そのわずかな時間に、ええとなんでしたか。そうそう」
耳障りになるよう舌を口の奥で鳴らし、言葉を継ぐ。
「俺に尾行者の存在を教えて、核鉄を渡して、武装錬金の概念を教えるなんて無理ですよね? 
根来さん、あなたなら俺のいってる意味が分かりますよね? あなたが優秀で、俺の行動の
ほぼ全てを把握しているからこそ、『第三者』なんていう存在がいないのを、あなた自身が立
証していると」
勝ち誇ったような久世屋に、根来は別の言葉を投げる。
「貴様は役目柄、他社から郵便物を受け取る立場だ」
「ええまぁ。それが何か?」

123 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/10(月) 00:02:15 ID:aviFSm6z0
「尾行者の存在と武装錬金の概念は手紙にしたためられる。核鉄も小包を使えば発送できる。
それらの宛名を貴様にすれば、受領はさほど困難ではない。手紙を読む姿は通常の業務と
判別できず、小包から核鉄を抜き取り、衣服に忍ばすのは、貴様のいう”わずかな時間”で
可能だ」
「なるほど。確かにできますね。ただし、『できる』というのは『起こった』というコトじゃない。俺
だってその気になれば出世の一つや二つ、簡単にできます。部長だって推薦してきましたし
ね。でも、俺は出世してないし、だからあなたと戦っている」
大きなため息とともに、堂々とした声が漏れる。
「話が逸れましたが、結局変わらないんですよ。『第三者』が実在しないってね」

「ほぅ。どちらもなかなか。観戦しがいがかなり出てきた」
呟く男がいるのは、根来たちから遠く離れた頂上付近。
今は地面を踏みしめているが、普通の人間ならば「観戦しがい」など生まれようもない場所。
いかな手段によって「観戦しがい」を手に入れているのか。
「お互い全力を尽くして、力の総てを見せろ。俺の強さという自信を高めるために」
じゃらりと認識票を握り締めるながら、金髪の男はひとりごちる。
「この、総角主税(あげまきちから)へな」

一方、根来は尋問中。
「第三者について吐けば月水面を解除し、足も戻してやる」
「ほう。それも忍法でですか?」
「忍法・壊れ甕」
というのは切断された体の部位を接着できる忍法だが、考えてみればホムンクルスにはそ
んな機能ぐらいデフォで備わってるからあまり意味はないだろう。
「お断りします。戻してもらっても、どうせ殺しにかかってくるでしょうし」
「吐かぬとあれば」
根来は両手の小指をさらしごと噛み切り、久世屋の右ももの上でいったん重ねると、別々の
方向へ赤い雫を垂らし始めた。
右の小指は右へ7cm。それから上へ14cm。さらに右へ7cm。
左の小指は上へ7cm。それから右へ14cm。さらに上へ7cm。
朱色の雫はスラックスに染み渡って直線と化し、やがて。


124 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/10(月) 00:03:11 ID:fsF2lgc+0


その一文字を描き出した。
根来忍が描いたから、忍の卍。とかいう「忍びの卍」にひっかけた分かりにくい諧謔はさておき。
卍の中心部からメラメラと青い炎が立ち上り、足が焼かれる。
すぐ下の先ほど斬られた部分にも炎はまわり、久世屋は脂汗をどうと流した。
「忍法・火まんじ」
根来の口から冷たい言葉が出る。
「吐けば消してやる。吐かねば貴様は焼かれるのみだ」
「い、いや。探偵が拷問で自白を強要するのってどんなもんでしょーか」
困り果てた声に「私は探偵にあらず。戦士だ」と素っ気ない返答があり、炎はますます燃え
盛る。
そして今回登場の忍法の全ては、伊賀忍法帖の根来法師のモノなので、筆者は風太郎先生
に地下で合わせる顔がないだろう。

125 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/10(月) 00:07:53 ID:fsF2lgc+0
ライダーソングを歌っているRIDER CHIPSは「まじめまして」というアルバムを出してるのです
が、これに収録されてる覚醒のアレンジが格好よすぎ! 正に「飛び込んでく嵐の中!」という
感じに仕上がってるので、覚醒が好きな方は是非に。The people with no nameもありますよ。

>バレさん
すみません。いくつかお願いしたいコトがありますので、まとめサイトのBBSまで。

>>34さん
当初は、根来が覗きをする → 千歳が気配を察し、根来の唾液つきの箸
(弁当喰わした時に回収した)を床に刺して亜空間を確認し、胸元をかき抱くというアイデ
ィアもあったのですが、違和感がありますし、話の展開に合わないのでボツにして、前回の形へ。

>>35さん
頑張りますよ! 覚醒聞きつつ。ひとたびこういう燃え盛るモノに触れた時は調子が出るタ
チなので、もういっそ仕事サボってでもとか思ってます。サボっちゃ後が苦しいですが……
>いっそ負けちゃえw
ひどいw でもそんな根来も千歳に感謝できるようなイベントもきっとある筈。

>>42さん
内面を「こうじゃないか」と指摘するキャラがいれば根来の人物像にも迫れるんですが……
久世屋でそれやると、ハルヒの古泉になってしまう恐れが。いやはやどうも。この1週間で消
失から憤慨までを一気に読んだのが悪かったらしく、ヘタすれば根来が長門になるやも。むむむ。

ふら〜りさん (グルグルですね)
おお! 山風好きなので、エロ&グロといって頂けると光栄です。千歳はもう2〜3言あっても
良かったような気がしたんですが、自分の中では「すぐ退く」のが彼女らしいので…… それ
とこの二人、ネゴロ終了後にもまた組ませるかも。

銀杏丸さん
「あの」十二宮を抜けた先に居ただけあり、やはりサガの存在は大きいですね…… 
エドは聖闘士との戦いは思いっきり避けるかも。頭脳戦よりのキャラなので。
爆爵はやはり5巻が良すぎですね。それと諸事情が合わさって、いまや錬金で一番感情移入できるキャラです。

126 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/10(月) 00:38:54 ID:fsF2lgc+0
またミスorz バレさん、重ね重ねすいません。

根来は両手の小指をさらしごと噛み切り、久世屋の右ももの上でいったん重ねると、別々の
方向へ赤い雫を垂らし始めた。
右の小指は右へ7cm。それから上へ14cm。さらに右へ7cm。
左の小指は上へ7cm。それから右へ14cm。さらに上へ7cm。
朱色の雫はスラックスに染み渡って直線と化し、やがて。

ではなく

根来は両手の小指をさらしごと噛み切り、小指同士が久世屋の右ももの上で15cmの間隔
をおいて並ぶよう、両手をかざした。
掌はめいめい別々の方向へ動き、赤い雫を垂らしていく。
右の小指は左へ7cm。それから上へ14cm。さらに左へ7cm。
左の小指は上へ7cm。それから右へ14cm。さらに上へ7cm。
朱色の雫はスラックスに染み渡って直線と化し、やがて。

でお願いします。最初の文章では卍が描けないので……

127 :作者の都合により名無しです:2006/07/10(月) 07:56:55 ID:n7TuP1ck0
なんとなく忍者ものらしくなってきた!忍法が全快で。
今までは、チェイス物というかアクション物というかうんちく物というかw
無国籍料理みたいな雰囲気でしたけどね。いよいよタイトル通りに?

後書きの卍の書き方にスターダストさんのこだわりを感じる。
正直、誰も気づかないようなところだw

128 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/10(月) 08:05:30 ID:5PU/yYP/0
四 到着、そして疑惑

 姿を見せたのは、ほっそりとした長身の男性だった。年齢は、二十代前半くらいだろうか。
 白いトレーナーに、腰周りにアクセサリの付いたブルージーンズを穿いている。
 男は扉を開けるなり、二、三歩後退し、訝しげな表情ではじめを見た。
「ええと……何の用かな」
 短い言葉の端々に、緊張が籠っているのが感じ取れた。
「ちょっと、道に迷ってしまって。雨宿りさせてもらえないでしょうか。それから、できれば電話を貸して下さい」
 数秒の沈黙があった。男は逡巡するように宙に視線を彷徨わせると、
「詳しい事情は中で聞くよ。とりあえず、入って」
 そう言って、はじめを屋敷に招き入れたのだった。
 扉の大きさに見合い、玄関口もやはり広かった。靴底に泥のついたスニーカーを脱いで、きちんと揃える。
 玄関には、はじめのスニーカーの他に、靴が六組置かれていた。
 はじめは立て掛けられていたスリッパを履き、男に先導されるまま、フローリングの長い廊下を歩いた。
 通されたのは、一見しただけで『豪奢』と云う言葉が頭に浮かぶような、煌びやかな部屋だった。
 天井から吊り下がったシャンデリアには、教会の聖堂を彷彿とさせる細かな意匠が凝らされており、見る者の目を楽しませている。
 床にはゴンバド・デザインのペルシア絨毯が敷かれ、真上に長方形のガラステーブル。
 そのテーブルを挟むような形で、ゆったりとした二人掛けのソファーが二脚、配置されていた。
 部屋の中には、四人の若い男女がいた。
 どこかこの部屋に似合わない印象を受けるのは、全員、はじめと似たようなラフな格好をしているからだろうか。
 ソファーに座り背中を丸めていた男が、鋭い目でこちらを睨んだ。
「何で、入れたんですか。さっきの結論、もう忘れたんですか?」
 面長な顔に、尖った顎。神経質そうなその風貌は、蟷螂を連想させた。
「根拠の無い憶測で、遭難しかけている人間を見殺しにする訳にはいかない」
「しかし――」
「私も、須藤くんの言う通りだと思う」
 反論を口にしかけた蟷螂の言葉を遮り、その正面に位置するソファーに座っていた女性が発言した。
「それに、多分この人は『R』とは無関係。だって、いくらなんでもタイミングが良過ぎるもの。疑ってくれって言っているようなものだよ」
「須藤も日月も、二人とも、呑気にもほどがある! タイミングが良過ぎるのが、そもそもの問題なんです!」
 はじめは呆然と、彼等の会話を聞いていた。さっぱり、状況が把握できない。
 当事者であるはじめを置き去りにして、熱い議論が繰り広げられている。

129 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/10(月) 08:06:42 ID:5PU/yYP/0
「あのー……何か、あったんですか?」
 はじめは気まずそうに挙手すると、場にそぐわない、のんびりとした声で尋ねた。
 自分が原因と思われる諍いに割り込むのは躊躇われたが、このままでは何が何やらわからない。
「『何かあった』所の騒ぎじゃないわ」
 蟷螂の言葉を遮った女――日月と呼ばれていた――の隣にいる女性が、憔悴しきった表情で答えた。
 その言葉を継いで、須藤が語り始める。
「名前くらいは聞いた事があるだろう? あの、悪名高い殺人鬼――『R』が出たんだよ」

 現在この屋敷にいるのは、はじめを除いて五人。
 最初に玄関ではじめを迎えた男――須藤信也。
 須藤に同意して、さりげなくはじめを庇った女――日月由香里。
 日月の隣で意気消沈している女――十文字恋。
 はじめを疑っているらしい、蟷螂のような風貌の男――設楽亮。
 壁に背中を預けたまま、未だ一言も発しない男――高瀬剛。
 
 彼等は大学のサークル仲間で、合宿の為に、この軽井沢の山奥に建てられた別荘を訪れたらしい。
 合宿、と言っても特に目的がある訳ではなく、避暑を兼ねた小旅行のようなものだったそうだ。
 事件が起きたのは、つい先ほど。
 第一発見者は、日月由香里だった。
 昼食が出来た旨を、それぞれの自室に知らせに行った際……
 サークルのリーダーで、この別荘の持ち主でもある葦原一樹が殺されているのを発見する。
 部屋の硝子窓は割られており、死体にはアルファベットの『R』とおぼしき傷が刻み込まれていた。
 その手口は、連日テレビで報道されている、軽井沢の連続殺人鬼『R』のものと完全に一致していた――
 彼等の話を要約すると、以上のような内容だった。

「で、我々は、この付近にまだ『R』が潜んでいるんじゃあないかって、戦々恐々としている……そんな所だ。わかったかな? 少年」
 沈黙していた高瀬が、不意に口を開いた。

130 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/10(月) 08:08:04 ID:5PU/yYP/0
「なるほど。それで、事件があった直後、この別荘を訪ねた俺が疑われているんですか」
「まあ、そうなるかな。俺の個人的な考えとしては、日月と同じように『R』がこんなタイミングで登場するとは、ちょっと思えないんだが」
 と、須藤。彼が玄関ではじめを迎えた時の態度が、どこかぎこちなかったのを思い出す。
 殺人事件の直後に、正体不明の訪問者が玄関をノックしている……そんな状況であれば、警戒するのは当然だった。
 むしろ、恐怖に駆られて篭城と云う選択肢を選ばなかった度胸を評価すべきだろう。
 それにしても運が悪い、とはじめは思う。
 記憶喪失だけでも厄介なのに、それに加えて、殺人事件にまで巻き込まれてしまうとは。
「この前テレビで、どこぞの先生が言っていました。『R』は典型的な無秩序型の犯罪者だと。元々、後先考えて行動するような輩じゃないんです」
「もうよさないか、設楽」
 須藤が、なおも執拗にはじめに疑惑を向けようとする設楽をたしなめた。
「そうだよ。それに、万一彼が『R』だったとしても、全員で監視していれば犯行は不可能なんだから」
 日月も『もっともだ』と言いたそうな表情で首肯する。
「随分と楽観的な見解で、結構ですね」
 設楽は左手を額に添え、小さく肩を竦めた。
「これで、こちらの置かれた状況は概ね分かってもらえたと思う。次は君の番だ。無用な誤解を避ける為にも、詳しい話を聞かせてくれ」
 はじめの方へと向き直り、須藤が纏める。その場に居る全員の視線が、はじめに集中した。
「実は――」
 はじめは、崖の下で目を覚ましてから、この屋敷にたどり着くまでの経緯を説明した。
 名前以外の記憶をすべて失ってしまっている事も含めて、包み隠さず、である。

131 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/10(月) 08:08:59 ID:5PU/yYP/0
 そこまで明かしてしまうのに、迷いがなかったと言えば嘘になる。
 しかし、状況が状況だけに、記憶を失っている事実をひた隠しにすると、後々問題になりかねない。
 余計な部分で疑心暗鬼の切欠を作ってしまうのは、本意ではなかった。
 はじめの話を聞く、各人の反応は様々だった。
 黙って相槌を打つ者。不審を露にする者。好奇心に目を輝かせる者。
 当惑しながらも、話に聞き入る者。上の空で、そもそもちゃんと聞いているのかどうかすら怪しい者。
「記憶喪失かあ……なんだか、ロマンティックだね」
 一通り、話し終わって。ズレた感想を述べたのは、日月だった。
 本気で言っているのだろうか。それとも、彼女なりの慰めだったりするのだろうか。
 どちらにしても、理解に苦しむ発言であった。
 何がロマンティックなものか、と心中ではじめは毒づく。
「記憶喪失とはまた、素性を明かしたくない者にとって、この上なく都合がいい設定ですね。
 どう思いますか、須藤。これでも彼――はじめくんは、怪しくないと?」
 続いて、嫌みったらしい声。勿論、設楽である。
 記憶喪失の話を聞いて、彼の中で、はじめへの疑惑は更に膨らんだようだった。
「うーむ。記憶喪失、なあ……」
 話を振られた須藤はと言えば、腕を組んで唸っていた。
 流石の須藤も、突拍子もないはじめの告白に、面食らったようだった。
 はじめの話をどう受け止めたものかと、思案しているように見える。
「ところで――警察には、もう連絡したんですか?」
 質問責めにあってしまいそうな雰囲気だった為、はじめは意識して話題を変えた。
 記憶に関しては、失った当人であるはじめが一番混乱しているのだ。
 自分の中でも気持ちの整理がつかない内に、根掘り葉掘り追求されたくはなかった。
「勿論だ」
 組んでいた腕を解いて、須藤が答えた。
「しかし、直ぐに駆けつけてくれるかと言うと、そうでもない。
 この別荘に通じる道路で、土砂崩れが起きたみたいでね。少なくとも、今日一杯は手出しできないそうだ。
 到着は早くても、明日の明け方あたりになるらしい。それまでは、現場の物は一切動かさず、全員で一箇所に固まっていてくれ、との御達しだった」

132 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/07/10(月) 08:11:02 ID:5PU/yYP/0
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>82です。
前回の教訓を生かして、今回は登場人物を圧縮。

・長編
そうですね。長編に入ったあたりがキリがいいですよね。
こればっかりは書いてみるまでわかりませんが、そこまで行けるように頑張ります。
・王道シチュエーション
吹雪の山荘の次は、陸の孤島+嵐ですからね。
完全に趣味に走ってます。こういうの好きなんです。
・惨劇シーン
大枠の段階では、ホラー色が濃くなりそうな気配です。
なので、派手な惨劇シーンは確実にあるかと思われます。
誰が最後まで生き残るか、どきどきできる展開になったらいいな。
・検死
登場人物の中にお医者様も医学部生もいませんから、今回もまともに検死は使わなさそうな。
似非推理ですが、お約束の一つなので、ないとちょっと寂しいかなあ……

133 :作者の都合により名無しです:2006/07/10(月) 12:42:56 ID:aVBczdmf0
また、スレの勢いがぐんと増してきたな。嬉しい。

>スターダストさん
今回はネゴロが主役っぽい!風太郎先生の忍法帳宜しく、忍術連発してますな。
少しずつ、事件の核心に近づきつつも、千歳が活躍する方が俺は好きかなあw

>かまいたちさん
なんか、出るキャラ出るキャラがみんな怪しく見えるなあ。雨宿り、も怪しいし。
記憶喪失に殺人鬼。材料はそろった感じで、あとはどんな事態になるのか待つのみ。

134 :やさぐれ獅子 〜十四日目〜:2006/07/10(月) 13:34:19 ID:nQjZ6u4K0
>>92より。

135 :やさぐれ獅子 〜十四日目〜:2006/07/10(月) 13:35:24 ID:nQjZ6u4K0
 井上は嘆息した。
「先輩の勝ちだわ……」
 声に安堵はなかった。こうなることは分かっていた。彼女はまだ会って数日しか経って
いない男を、それほどまでに信頼していた。

 加藤は正面から攻めない。
「どっ、どこへっ!」
 『赤』の左眼は潰れている。つまり、彼にとって左は死角だ。ほぼ勝利が目前という状
況でも、加藤はひとつひとつゆっくりと駒を進める。
「くそっ、出てきなさいっ!」
「ここだぜ」
 いきなり、加藤が視界に現れた。
「シィッ!」『赤』がスクリューを帯びた掌底を放つ。が、すでに眼突きが彼を射抜いて
いた。これで、右眼も機能を失った。
 恐怖と屈辱により、狂ったように砂浜をのた打ち回る『赤』。
「………」
 あえてトドメを刺すことなく、加藤は井上の元へ戻っていった。
 放置された『赤』は、程なくして心身ともに敗北を認め、寂しく溶けていった。

136 :やさぐれ獅子 〜十四日目〜:2006/07/10(月) 13:37:07 ID:nQjZ6u4K0
「さすがですね、先輩」
「けっ、世辞はよせよ。奴らのペースにまんまと乗せられちまった」
 まったく視線を合わせず、井上を冷たくあしらう加藤。彼としては賞賛には値しない、
満足できない内容だったのだろう。
「……先輩」
「なんだ」
「ひとつ、頼みたいことがあるんですが」
 少し考えてから、加藤は答えた。
「いってみろ」
「私に……空手を教えてください!」
「………」
 加藤の口がぽかんと開き、時が止まった。
「おまえ、なにを──」
「もう、嫌なんです。なにもできない身でいるのは」
「だからって……なァ」
「私も戦わせてくれ、とはいいません。せめて、足手まといにならない程度にはなりたい
んです」
 加藤はくるりと井上に背を向けた。
「今日はさっきの奴らで終了だろう。ちょっと島を一周してくっから、待ってろ」

137 :やさぐれ獅子 〜十四日目〜:2006/07/10(月) 13:38:25 ID:nQjZ6u4K0
 ロードワークを開始する加藤。
 浜辺を踏みしめ、砂が素足にくっついたり取れたりする。
 加藤は走りながら悩んだ。井上に空手を教えるべきか──否か。
 たしかに彼女の気持ちも分かる。おそらくは武神の気まぐれでこんな島に飛ばされ、な
おかつ非常識な敵が出現するとあっては不安で仕方ないことだろう。が、なるべくなら井
上は巻き込みたくない。
 夢中になって思考を巡らせていると、程なくして井上が前方に映った。まだ考えがまと
まっていないというのに。
 一周した加藤に、井上が尋ねる。
「先輩、ご決断を」
「………」
 こんがらがった脳みそに、彼女が捧げるまっすぐな瞳は反則だった。
「えぇい、分かった。教えてやるッ!」
「えっ、本当ですか!」
 半ばヤケクソだった。ここに来て、加藤も井上が只者ではないと悟り始めたようだ。
「……本当だ。ただし、俺は甘くねぇぞ。それに俺だって稽古したいから、おまえ一人に
あまり時間は割けねぇ」
「はいっ!」
「じゃあ、さっそく始めるか。善は急げだ」
 人差し指と、中指を、井上に見せつける。
「まずは目潰しからだ」
「えっ?!」
 こうして、夜は更けていった。

138 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/07/10(月) 13:39:56 ID:nQjZ6u4K0
十四日目終了です。
なかなか文章を書く感覚が戻りませんね。

139 :バーディーと導きの神:2006/07/10(月) 16:43:27 ID:ytTknbJH0
ザンとバーディーは側溝の淵に立っていた。
「上の見張りがいなけりゃ登っていくんだけどなあ」
「それよりこっちのほうが安全かもよ」
バーディーが側溝の横穴を示す。そこからはかすかに風が流れてきていた。
「もしかして地上のどこかに繋がってる?」
「そう考えたほうが妥当ね。それより見つかるの覚悟で200メートル登ってみる?」
「めーとる?確かに200レブは落ちたと思うけど」
「レブ?ああ、単位の名称が違うのね。感覚で数字が同じなら単位そのものは似てる感じ
だけど。まあ、それはおいといて、こっちに行きましょ」
「はい」
ザンとバーディーはそうやって側溝を登っていくことになった。
しかしそれは多忙を極めた。迷路のような横穴。考えられないような角度の傾斜。バー
ディーのお尻が詰まってしまうほどの狭さの穴もあった。
そして極めつけは吸血ネズミの出現だった。
「あっち行け!この野郎っ!」
「巡査部長助けてー!」
そういった難所(?)を潜り抜けて、ようやく明るい場所に出たのは、ゆうに2時間ほど経っ
てからのことだった。
倉庫か保管庫のような天井の高い地下室のようで、出入り口には鍵がかかっていて、バー
ディーの怪力でも開きそうになかった。
しかし、天井には通風孔があり、そこからどうにかできそうだった。
「もしかして建物の中なのかな?でもこれで何とかなりそうだ」
ザンはもう一度フックロープを取り出す。しかしバーディーはそれをしまうように告げる。

140 :バーディーと導きの神:2006/07/10(月) 16:44:58 ID:ytTknbJH0
「なんで?」
いぶかしげなザンに、バーディーは得意げに言った。
「まあ見てなさい」
バーディーはぽかんとしているザンを抱えあげると、壁を蹴って一気に高さ10メートル
はあろうかという通風孔に取り付いた。
「す、凄い!凄いよバーディーさん!」
また素直に褒められ、えへへへーとだらしなく笑うバーディー。
『リュミール守れなかったくせに得意げに笑ってんじゃないよ』
「うっ」
「どうしたの?バーディーさん」
「え?いえ、なんでもないのよ、なんにも」
つとむに一番の傷をえぐられ、少し傷ついたバーディーだった。

ガロウズは資料室に設置してある過去の記憶媒体に接触していた。
念を使い、記憶媒体に残った情報を読み取っているのだ。
(発掘した電脳に残っていた情報でも少女に関する記述はわずかか……)
記憶媒体から手を離し、物思いにふけるガロウズ。
「准将」
しかし不意に後ろから声をかけられ、思わず身構えた。
ガロウズの後ろには、若い女が立っていた。
「少女が目を覚ましました」
「気配を消して背後に立つとはあまり良い趣味ではないな、サーラ術次長」
「つい隙だらけだったので。以後気をつけます」
腰まで届く長いくせっ毛に白い毛が一筋の線となってアクセントとなっているサーラは、
その勝気な瞳と、術式服を押し上げるほどにひたすら豊満な胸を隠そうともせず、腕を
組んでガロウズが資料室から出るのを待った。
「私が巨人の相手をしてその片腕を切り落とし、くだんの少女を失いかけていたときにな
にをやっていたのだ?」
「負傷兵の救出と被害状況を調べてました。明日には報告書を提出できると思います」
「まあいい。例の少女を調べる。お前も来い」

141 :バーディーと導きの神:2006/07/10(月) 16:46:51 ID:ytTknbJH0
ガロウズは先頭に立って地下牢に向かい始める。サーラは黙ってついていく。
地下牢のリュミールは、牢の隅に置かれた丸椅子の上に所在なげに座ってうつむいていた。
ガロウズは牢番に鍵を開けさせると、自ら扉を開いて部屋の中へと入った。サーラも後に続く。
「お目覚めかね、リュミール、さん」
冷たい、ザンとは正反対の冷酷さをたたえた瞳だった。
リュミールには、そんなガロウズにでも聞かなければならないことがあった。
「ザンは、ザンとバーディーさんはどこなの?会わせて……」
両手を祈るように合わせて、か細い声で訴える。
しかしガロウズは表情一つ変えずに言ってのける。
「ザン?それにバーディーだと?ああ、君を連れ出した侵入者たちのことだね?」
そこでガロウズは冷酷な笑みを浮かべる。
「二人とも死んだよ。深さ400レブの穴に落ちたのだからね」
その返答を聞いたリュミールはその場にへたり込んだ。
(そんな……、ザンが、バーディーさんが死んじゃったなんて)
リュミールの脳裏に、君を守って見せるよと言ってくれたザンの快活な表情と、優しく包み
込んでくるように笑いかけるバーディーの表情が浮かんでくる。
自然と涙がこぼれてきた。
しかしガロウズは待ってくれない。リュミールの肩をつかんで、無理やり引き起こし、なおかつ
そのままリュミールの体を持ち上げた。
「ああっ!」
腕がちぎれるような感触に悲鳴を上げるリュミール。
だがガロウズはそんなリュミール表情を見て笑う。
「不死身とはいえ痛みは感じるらしいな」
ザンとバーディーを殺しておいてクククと笑い声をもらすガロウズを見ていると、リュミールの
心の中に激しい怒りがこみ上げてきた。
「あ、あなたたちの言うことなんか聞くもんですか!人殺しっ!!」
「そういう君も人殺しではなかったかな?」
ガロウズは一見意味不明な言葉を吐いた。しかしその言葉を聞いた途端、リュミールの
顔が青ざめる。
「私は知ってるのだよ。君があの巨人や『アレ』に関わっていることをね……。言いたまえ!
君の役割や『アレ』のある場所を!」

142 :バーディーと導きの神:2006/07/10(月) 16:48:37 ID:ytTknbJH0
ガロウズはリュミールの肩をつかんだ手に力をこめるが、リュミールはそれでもガロウズ
の親指を噛んではかない抵抗を見せた。
いうことを聞かないと知ったガロウズは、リュミールを無造作に投げつけた。
「まあいい。時間はある。じっくりと聞き出してくれよう。楽しみにしていろ!」
ガロウズはそう言うと、後のことをサーラに任せて地下牢を出て行った。
それを見てサーラはにやりと笑った。

「さあ、暗くて狭いけど、当分の間、ここがあなたの部屋になるわ」
簡素なベッドとトイレ付きの小さな部屋にリュミールを連れ込んだサーラは、牢の扉を
閉めた。
そしてにっこりと笑うと、意外に優しい声でリュミールに話を持ちかける。
「あなたの心がけ次第ではもっと待遇が良くなるわよ」
しかしリュミールは両拳をぐっと握って気丈に答える。
「いやです!協力なんて絶対しませんっ!!」
するといきなりリュミールの意識が一瞬だが飛んだ。サーラの容赦ない平手打ちが炸裂
したのだ。
「あなたは自分の立場が分かってないようね。あなたには選ぶ権利などないのよ!」
そこまで言って、サーラの瞳に冷たいものが走る。
「それがいやなら、ザンとか言う男の子とバーディーとか言う女の後を追って死ぬことね。
もっとも、『死ねれば』……、の話だけどね、フフフ……」
腫れた頬をさすっていたリュミールの手の動きが止まる。
サーラはリュミールの耳元に口を寄せてつぶやいた。
「まるで『バケモノ』ね、あなた」
その後、大声を上げて笑うサーラ。リュミールは完全な敗北感を味わった。
ひとしきり笑ったサーラは、リュミールをベッドに座らせた。
「今度は素直で可愛いわねえ。ついいじめたくなっちゃうわ」
なんとも楽しげな表情を浮かべたサーラだったが、次の瞬間には真顔になる。
「さてお嬢ちゃん。今から少しお話をしましょうね」
リュミールはわけが分からず、じっとサーラを見つめるしかなかった。
「ガロウズが言ってた『アレ』ってなんのこと?教えてくれない?」
リュミールは下を向く。

143 :バーディーと導きの神:2006/07/10(月) 16:49:42 ID:ytTknbJH0
「あらあらだんまり?正直に答えなきゃダメじゃない」
サーラは言うと、手のひらをリュミールの左肩に押し当てた。
ジュッと肌の焼ける臭いが立ち込める。
「どお?熱いでしょ?あたしは熱を操るのが特技なの」
リュミールの肩に手を押し当てたままサーラは言う。
しかしリュミールは文字通り焼けるような痛みに耐えて、こう答えた。
「どんなことされたって……、私、話さないもん」
それを聞いたサーラの表情が怒りの形相へと変貌する。
「あらそう?じゃあその可愛い顔をグシャグシャにしてあげましょうか!」
だがリュミールも不退転の決意だった。
「どうぞご自由に!!」
涙こそ流れているものの、その決意は彼女の表情から読み取れた。
サーラはカッと熱くなる。
「言ったわね!」
右手に炎をまとわせて、リュミールの顔に打ちつけようとする。
リュミールは覚悟を決めて目を瞑った。
しかし一向に炎はやってこない。リュミールは薄目を開ける。目の前にサーラの手はなかった。
「こうまで覚悟を決められちゃなにをしても無駄ね。肩の傷口も治りかけてるし……」
そう言うと、サーラは元の笑顔に戻る。
「まあいいわ。今日は許してあげる」
その表情には、先ほどまでの苛烈さは影も残ってなかった。
あっけにとられたリュミールを後にして、サーラは牢を出て行きかけたが、その足が止まって
振り返った。
「あ、そうそう。これくらいは教えてくれてもいいでしょ?『アレ』を使って幸福になれ
る人っているのかしら?」
リュミールは暗い表情で床を見つめて答える。
「……いないわ」
「……ありがと」
その言葉だけを残してサーラは出て行った。
すると、そこで張り詰めていた糸が切れて、リュミールはベッドに伏せて泣いた。
「ザン……、バーディーさん……」

144 :作者の都合により名無しです:2006/07/10(月) 16:54:53 ID:qq9C4juv0
>かまいたちさん
久しぶりに来たら復帰されていて嬉しい限り。
冒頭ではじめ(一って書くと分かり辛いから平仮名?)の記憶喪失、
プロローグでの最初の殺人、この二つで逆転裁判2の1話を思い出したのは
---俺だけでいい(ぉ

また、時間のある時にでも簡単なキャラ一覧(大まかな風貌、この時点で
触れても構わない簡単な紹介)を作ってくれると嬉しいです。

では、この先も期待しております。

145 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/10(月) 16:59:03 ID:ytTknbJH0
リュミールの秘密の巻でした。

登場人物解説その3

・サーラ:ガロウズの部隊の術次長という役職をこなしている火の扱いに長けた女性。
      腰まで届くボリュームのある長い黒髪にも圧倒されるが、彼女の一番の
      セールスポイントはその素晴らしい体だ。バストはゆうに100センチを超えるが、
      腰は細く、そこからのヒップラインもまた格別だと上官部下を問わず話題と
      なっている。しかし本人はその体型を逆にコンプレックスとして受け取っており、
      二十歳を過ぎても男に水着姿さえ見せたことのない堅物でもある。

146 :作者の都合により名無しです:2006/07/10(月) 18:53:26 ID:ceSykr3d0
なんか作品の来方が凄いな。特に17さん、毎日更新を心掛けていなさるか?

・金田一少年の事件簿
かまいたちさんの作品の一番凄いところは「油断が出来ない」ところだと思う。
急にショッキングなシーンが出てくるのもそうだけど、実際はその前に何気なく
伏線がばら撒かれていたり。今回も何箇所か気になるところが。油断出来ねえw

・やさぐれ獅子
間をおかず復帰2回目となると、本当に帰って来てくれたって気分になるな。
井上さんと加藤が急接近モードですね。次の敵の前に、どれだけ強くなれるか。
でも井上さんが金的蹴りの名手とかになると嫌だなあ。蛸ならともかく。

・バーディと導きの神
超更新乙です。このペース出続けてほしいような、息切れしないか心配なような。
リュミールも、只者ではなかったのか。バーディーが超人なのは分かっていたけど。
敵役・囚われの人質・それを救出しようとするヒーローと、役者は揃いましたな。

147 :作者の都合により名無しです:2006/07/10(月) 20:55:27 ID:qxQKUT5C0
>スターダスト氏
根来が終にキバを剥いた感じ。今まで千歳の前に影が薄かったけど
やはり実践では遥かに格上だな。戦闘能力も諜報能力も。

>かまいたち氏
一癖も二癖もありそうな五人だな。全員殺しそうだし、全員殺されそうだ。
この中にRはいるのかな?そして生贄になるのは?

>サナダムシ氏
井上が敵を倒す事とかあるのか?また、加藤とたっぐを組んで戦ったりとか?
意外と加藤のピンチを救ったりとかもしそうだね。

>17氏
すげえw史上最速で長編行くのは間違いなさそうだなw
原作知らんけど、超能力者が囚われた味方を取り返しに行くのは燃える。


ちょっと前まで調子が悪かったとは思えん連投振りだね。

148 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/07/10(月) 21:48:29 ID:g6q1JliW0
勝負の決め手   ※食事中の方は<絶対に!>読まないでください。

「くっ・・・ワイの負けや・・・!陽一、お前はなんちゅうとんでもないカレーを作りおったんじゃ・・・!」
関西弁の少年―――堺一馬はがっくりと膝を付いた。
この日、共に天才少年料理人と呼ばれる味吉陽一と堺一馬とのカレー対決が満を持して行われた。
特に一馬は、この対決に己の全てを賭けて挑んだ。それもそのはず、彼が料理勝負で初めて敗北を
喫したのは、まさに陽一とのカレー勝負だったのだ。
今度こそは―――そう思い、勝負の日まで一馬はほとんど不眠不休で究極のカレーを追求した。
そして、これで絶対に負けるはずがない―――そう確信するほどのカレーをついに作り上げた。
だが、それを持ってしても、陽一のカレーはその更に上を行っていたのだ。
絶妙な辛さの中に顔をしかめるような苦味が僅かに混じった、奥深い味わい。
香ばしく、そしてどこか不思議な匂いのする素晴らしい香り。
まさしく、カレーという料理の神髄を極めた一品。
今回の勝負において審査を行った料理界の天皇とも呼ばれる男、味王ですらも、これほどのカレーは
見たことも聞いたこともなかった。
「一馬くんの<プエルトリコ風シーフード山菜インドカツカレー風ハヤシライス>も素晴らしかったが、
陽一君のこれは、もはやそんな次元ではない。あらゆる要素がカレーとして最高の調和を為している。
具は少し崩れかけたグリンピースにとうもろこしと、やや奇抜だが、これがまた美味い!」
イタリア料理部門主任、丸井も陽一を褒め称える。
「全くだ。あまりの美味さに、涙が出ちまいそうだぜ・・・陽一、一体どうやってこんなカレーを作ったんだ!?」
「へへ・・・俺も今回のカレーを作れたのは、ほんの偶然なんだ。ほんのちょっとしたことでさ・・・」
みんなから賞賛を浴びて、陽一はちょっと照れながら説明を開始した―――


149 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/07/10(月) 21:49:02 ID:g6q1JliW0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うーん・・・」
陽一はトイレの中で唸っていた。
明日は一馬とのカレー対決。陽一もまた己の経験と知識、勘、全てを持って最高のカレーを作るため奮闘していた。
そして、ついにこれまでで最高と言えるカレーが出来た。
だが―――
「だけど・・・足りない!あともう一押し・・・何かが足りないんだ!」
このままでは一馬には勝てない。焦る気持ちと疲れ、さらにこの数日というもの試作したカレーしか食ってないことも
あって、陽一は腹を壊してしまったのだ。
ようやく一息ついて、なんとなく便器を見た。
液状に近い下痢便。自分の出したものとはいえ、あまりマジマジと見たいものではない。
さっさと流そうとして、あることに気付いた。
「この質感・・・なんとなく、アレに似てる・・・!」
そう。その下痢便は、そこはかとなくカレーに似ていた。色といい、ツヤといい、質感といい、クリソツだ。
崩れかけたグリンピースととうもろこしが入っているのも、何だかいい感じじゃないか?
おまけにカレーばっかり食っていたこともあって、この便からはほのかにカレーの匂いがする・・・ような気がする。
カレーとの親和性は抜群に違いない。
陽一の脳裏に危険な考えが閃光のように走った。陽一の中の常識はそれを否定したが、一度浮かんだ直感は
消えない。
「・・・・・・・・・・・・試してみるか・・・・・・・・・・・・」
これまでの料理勝負でも、陽一は一見突拍子もないアイデアによって強敵たちを打ち破ってきた。
ならば―――信じよう。自分の直感を!
陽一は便器からスプーン大匙一杯分の下痢便を掬い上げ、それを―――

150 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/07/10(月) 21:58:07 ID:g6q1JliW0
投下完了。サマサ的うんこSS第二弾。
注意はしましたので、食事中に読んで気分が悪くなったという方、謝罪はしません。

>>69 原作では確か、十三人中九人くらいが眼鏡でした。

>>71 煮詰まった・・・かな?ラストまで、なんとか突っ走りたいものです。

>>76 大長編補正のかかったのび太の強さは異常ですからねw

>>邪神?さん
最後は肉人形の話でしたか。そういや岩下さんの話って、6話目と7話目が全く関連してないな・・・。
GUN道については、タケコプターは肝心なところでプスンプスンと逝くからなあ・・・
デフォで飛行能力持ってる奴には劣るかもしれません。
しかし、如何にドラえもんの道具を使っても、かっこいいかぐや様には勝てないでしょうね。

>>ふら〜りさん
>>どこぞの教団員
<妄想戦士ヤマモト>の眼鏡っ娘教団ですか?あれは強烈ですなw
狐面の男と彼らが出会ったら、一晩中眼鏡について語り明かしそうな・・・

151 :作者の都合により名無しです:2006/07/11(火) 07:52:36 ID:FbwRN1580
サマサさんは汚れには行かない方がw
そういうのはサナダムシさんとかに任せてw

152 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/11(火) 10:28:32 ID:27rPH2z60
五 疑惑、そして推理

「殺人があった現場って、どこなんですか?」
 当面の話題が尽き、部屋に沈黙が降りた頃。唐突に、はじめは切り出した。
「そこだ」
 高瀬が、自身の正面に位置する扉を指差した。
「その部屋で、葦原は殺されていた」
「どんな様子か、中を見ても構いませんか」
「何を言い出すかと思えば」
 設楽が苦笑する。
「証拠隠滅でもするつもりですか」
「死体に『R』の傷なんかを残す時間の余裕があった犯人が、今になって証拠隠滅もないでしょう」
 正論だった。上手い反論が見付からなかったのか、設楽は短く息を吐き出して、拗ねたように視線を逸らす。
 はじめは周囲を見回して、言葉を続けた。
「俺も、こうして容疑者の一人として疑われて、もう十分に巻き込まれています。だから……その、現場を、この目で見ておきたい」
 はじめはあくまで、真剣な眼差しである。
 サークルの面々は一様に、困惑した様子だった。
 何故、急に現場を見たいなどと言い出したのか。実の所、はじめ自身にもよくわからなかった。
 血生臭い殺人現場など、さしたる理由もなく見るべきものではない。それなのに――
 はじめの心の奥底に存在する、深層意識とでも言うべき何かが『現場を見ろ』と、強く促していた。
「わかったよ……何かしら、思う所もあるんだろう」
 数秒の間の後、須藤はそう言って、手を打ち合わせた。
「その代わり、一人では駄目だ。それから、分かっているとは思うけど、現場のものには一切触らない事。いいね?」
「わかりました」
 はじめは力強く返事をした。
「言っておくが」
 高瀬が、扉へと向かうはじめの後ろ姿に声をかけた。

153 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/11(火) 10:29:22 ID:27rPH2z60
「全員で少年を担いでいるとか、間違ってもそんな、悪い冗談ではないぞ。正真正銘、本物の殺人現場だ。覚悟はいいな?」
 はじめは振り向いて、深く頷く。そして再び、扉へと向き直った。
 ごくりと生唾を飲み込んでから、ノブに手をかけ、回す。
 やはり、現場でのはじめの動向が気にかかるのだろう。
 その場にいる全員が、はじめの後に続いて、現場へと足を踏み入れた。
 現場は、七、八畳程度の広さだった。家具はシングルベッドにサイドテーブル、本棚のみ。
 先程の部屋と比較してしまうと、どうしても殺風景さが際立って見える。
 葦原一樹は、部屋の奥――窓際に、仰向けで倒れていた。
 目も口も、堅く閉じられている。意外と、安らかな死に顔だった。
 頭部近くの床には、小さな血溜まりができている。
 床に頭を打ちつけた結果だろうか。それとも、鈍器で頭でも殴られたのだろうか。
 投げ出された右腕の、前上腕部。そこには確かにアルファベットの『R』と思われる傷跡が刻み込まれていた。
 葦原の亡骸に近付き、見下ろすような形で、ひとしきり観察する。
 他殺死体を目の前にして、はじめは自分でも驚くくらいに冷静だった。
 もしかすると、過去に何度も、殺人現場に遭遇した経験があるのかもしれない……そんな、妄想めいた感覚に苛まれるほどに。
「葦原さんを最後に見たのは、何時頃でしたか?」
 はじめは、誰ともなしに尋ねた。
「十一時――四十分か四十五分だった」
 十文字が、俯いたまま言う。
「それで、十二時ちょっと過ぎに私がお昼御飯を呼びに行った時には、もう……」
 と、日月。つまり、葦原が殺された時刻は『十一時四十分〜十二時過ぎくらいの間』と推測される。
「それにしても――」
 そろそろと歩き、はじめの真横に立った日月が、独り言のように零した。
「今にも『冗談だよ』って、起き上がりそうな顔してる」
 長い髪に隠れてしまい、瞳は見えない。けれど、唇を歪ませたその横顔が憂いを帯びているのは、はじめにも分かった。

154 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/11(火) 10:30:08 ID:27rPH2z60
「こんな風に人を殺して……何がしたいんだろう、ね?」
 窓の向こうで、空が青白い光を放った。
 日月の小さな呟きが、静寂に包まれた空間を満たしてゆく。
 誰も、答えるものはいなかった。代わりに、雷が空気を裂く轟音が響いた。
 何故……彼、或いは彼女は、人を殺すのか。
 何故……『R』などと言う文字を、被害者の身体に刻むのか。
 何か、意味があるのかもしれない。何も、意味などないのかもしれない。
 こと『R』の行動原理に関しては、幾つの『何故』を並べたとしても、納得の行く解は出ないだろう。
 人の道を踏み外した殺人鬼の心中など、慮るだけ無駄と言うものだった。
 はじめは改めて、床に横たわり、冷たくなっている男――葦原一樹に目を遣った。
 はじめにとっては、名前しか知らない赤の他人でしかないが、サークルメンバーにとっては、共に時を過ごした親しい仲間である。
 彼等が少なからず受けたであろう精神的ショックは、想像に難くない。
 死体に向けていた目線を上げ、窓を見る。
 両開きの硝子窓が、完膚なきまでに粉砕されていた。
 枠だけになってしまった窓は、外から吹き付ける風雨に弄ばれるように開閉を繰り返している。
 窓の外を見ようと一歩踏み出すと、じゃりっという音と共に、足裏に異物感が伝わった。
 足元に散らばった無数の硝子片が、雨の雫を受けて輝いていた。
 雨に顔と髪を濡らしながら、窓の外を覗く。特に変わった点はない。
「皆さんは、殺人鬼がまだ、この周辺を徘徊しているかもしれないと……それで、警戒していたんですよね?」

155 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/11(火) 10:30:53 ID:27rPH2z60
「ああ、そうだよ。だから、君も疑ってかかった。さっきも説明した通りだ」
 当然だと言いたそうに、憮然とした表情で須藤は頷く。
「これは、残念ながら、外部犯の仕業ではありません」
 はじめは首を振って、そう断定した。
 ざわめきが波紋のように、五人の間に広がってゆく。
「少年。どうしてそう思う?」
 高瀬は、顎に添えた指先を忙しなく動かしながら聞いた。
「窓の外を見てもらえれば、分かると思います」
「窓の外に、何があると!?」
 ぱたぱたとスリッパを鳴らし、設楽が窓際に駆け寄る。
「何ですか。何も、不審な点など見当りませんが?」
「不審な点が見当たらないのが、そもそも不審なんです」
 理解できないのか、設楽は首を傾げる。
「俺は外を歩いていたから、よく覚えているんですが……確か、雨が降り出したのは『十一時三十分』くらいでした。
 そして、皆さんの証言によると、この屋敷で葦原さんが殺害された時刻は『十一時四十分〜十二時過ぎくらいの間』」
「あ……!」
 そこで、設楽もはじめの言わんとしている事に気が付いた。目を大きく見開いて、再び窓の外を見る。
「『足跡』がない……!」
「そうです。このあたりは土質が柔らかく、どんなに慎重に歩いても、靴底が泥の中に沈むのは避けられない。
 もし犯人が窓を割ってこの屋敷に侵入、葦原さんを殺害したのだとしたら、必ず窓の外には痕跡が残っている筈です」
「窓を割ったのが、外部犯の仕業と見せかける為の偽装だとするなら――」
 日月は喉まで出かかった台詞を飲み込み、口許を押さえた。
 腕を突き出し、大きく開いた手の平を中空にかざす。五人をぐるりと見回して、はじめは宣言した。
「そう。殺人鬼『R』は――この中にいます」

156 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/07/11(火) 10:32:56 ID:27rPH2z60
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>131です。
そろそろ、本題に入ってきました。

・逆転裁判2
確か、成歩堂が消火器で殴られるエピソードでしたね。
前回のSSも読んでいてくれたということで、どうもです。またお付き合いくださいませ。
キャラ紹介に関しては、話の中で、極力情報を小出しにしていきたいとの
姑息な思惑がありまして、今回は省略ということでお願いします。すみません。
・油断が出来ない
そう言わずに、遠慮なく油断を……
今回は思考要素薄めで、そのあたり期待に添えるか不安なのですが、頑張ります。

157 :作者の都合により名無しです:2006/07/11(火) 12:44:58 ID:b/9AYVIp0
>サマサさん
カレーと聞いただけでオチはわかったけどw、味っ子が出てきたのが個人的に嬉しかった。
そういえば一時期、うんこネタ流行ったなあ。その家元がしばらく来なかったんで
ちょっと廃れていたがw また、うんこだけに限らず読みきりをお願いします。

>かまいたちさん(なんかカタカナでカマイタチ、といつも最初に入れてしまう)
定石どおりの殺人現場検証ですけど、快楽殺人か計画殺人か、それとも何か別の思惑が
あるのかわからないRが不気味ですね。しかも、殺人鬼が息を潜めてその場にいる。
一人、また一人と消えてきそうな悪寒・・

158 :作者の都合により名無しです:2006/07/11(火) 12:54:47 ID:JSav0YgB0
>かまいたちさん
>>144です、あい、前作から楽しませてもらっています。
そういえば名前変わってるんですね。よくカマイタチ氏と間違われていたから?

記憶を失っているのにやってる事はいつもと変わらない一に乾杯。
キャラ紹介の件は作者様の思惑があっての事ならば口を挟むいわれはありません。
その辺も含めて楽しみにしています。それでは。

159 :バーディーと導きの神:2006/07/11(火) 17:54:25 ID:nPBDsqoe0
リュミールが地下牢で泣いてる頃、ザンとバーディーはまだ通風孔の縦穴を登っていた。
「ザン君大丈夫?」
無限の体力を誇るバーディーは、息があがっているザンを気遣う。
「私の背中につかまる?」
「いえ、大丈夫です」
身は小なりとて男は男。こんなときに気張らなくていつ気張るかと、ザンは自分で登ることを
決意していた。
それでなくてもバーディーにはいろいろ助けてもらってるのだ。これ以上彼女に負担を
かけたくはない。
ザンはそう思い、残りの縦穴を一心不乱に登っていった。
そしてようやく横穴に到達する。人一人がやっと這って通れるところを見ると空調関係の
配管らしい。
そこを芋虫のごとく這っていくと、横手に通風孔が見えた。
先頭を這っていたザンは、その通風孔から辺りを見渡した。
ちょうどそのときは、サーラがリュミールの牢番を手隙の兵士に頼んでいるところだった。
それを聞いたザンとバーディーは親指を立てて喜んだ。
二人は兵士が通り過ぎると、通風孔の蓋を開け、通路に下りる。
そして兵士の後をつけると、コの字型に行き止まった地下牢の前で兵士が立ち止まるのが
確認できた。
兵士の一人がごちる
「あーあ、貧乏くじ引いたなあ」
「いいじゃないか、「別に誰かがさらいに来るわけでもないし」
もう一人の兵士がなだめる。だがなだめられた兵士は意外なことを話し出す。
「なんだお前聞いてないのか?」
「なにを?」
「今日のゴタゴタでうやむやになっちまったけど、数日前から何者かが資料室とかを荒ら
してるって噂だぜ」
「敵の密偵か?」
「さてね、どっちにしろこの基地に潜入できたとなると。強力な術者だと思うな」
「ま、朝までここに来ないことを祈るしかないね、我々凡人としては」

160 :バーディーと導きの神:2006/07/11(火) 17:55:30 ID:nPBDsqoe0
そんな会話が聞こえてくるが、その兵士たちがいるコの字型の地下牢は、一番奥の場所に
あった。距離にして約20メートル。
「ザン君待っててね。私がなんとかするから」
バーディーが余裕の表情で言う。だがザンはそれに待ったをかけた。
「僕がやります。これは僕の仕事です」
ザンはゆっくりと精神統一し始める。
といってもバーディーのほうはザンのやろうとしていることが理解できていない。
小さな子供が20メートルも離れた小銃を構える兵士に対してなにができるのか。
しかしザンは本気で自分で全てを片付けようとしてる。
バーディーとしては、ザンのやろうとしてることが成功に終わろうと、失敗に終わろうと、
そのフォローだけは万全にする体勢をとった。
「そこまで言うなら見せてもらうわよ。やってみなさい」
『おいおい、いいのか?』
「つとむは黙ってて」
「行きます!」
ザンはすっと通路に出る。兵士たちは当然ザンを見つけて銃を構える体勢に入る。
「おじさんたち!リュミールは返してもらうよ!!」
次の瞬間、兵士にはザンの姿が消えたように見えたろう。バーディーの目にもその影しか
映らなかった。
瞬動法。
本来は竜人の体術の一つで、精神力と念とで瞬間的に素早く動くという術だ。
それを氷牙がザンの父とザンに教え込んでいたのだった。
一人目の兵士はみぞおちを突かれて悶絶。もう一人の兵士は銃を発射したものの、瞬動法で
交わされて顎に強烈なキックを食らって気絶。
この間わずか3秒ほどの出来事だった。
「す、凄い……」
バーディーはザンのバイタリティ以外に初めて彼の凄さを感心した。
しかしザンの息はかなりあがっている。これまでの道程と、術のせいで体力が相当減って
いるのだろう。
バーディーはすぐさま飛び出して牢の鍵を拾うと、肩で息をするザンに手渡した。

161 :バーディーと導きの神:2006/07/11(火) 17:56:46 ID:nPBDsqoe0
「さあ王子様、お姫様はそこですよ」
にっこりと笑い、ザンの背中を押すバーディー。
ザンはゆっくりと頷くと、鉤を開けて扉を開け放った。
「リュミール!」
ベッドに寝ていたリュミールは、ザンの姿を見つけると、涙で顔をグショグショにしながら
ザンに抱きついた。
「良かったザン。本当に良かった。死んじゃったかと思っちゃった」
まるでザンの体の具合を確かめるように、リュミールはザンの体を撫で回す。
「大丈夫、そう簡単にやられるもんか。それにバーディーさんがいてくれたしね」
「無事でよかったわリュミールちゃん」
「バーディーさん!」
リュミールは今度はバーディーに抱きつく。
「バーディーさんも無事でよかったです」
「これでも体力には自信があるのよ」
可愛いリュミールに抱きつかれてまんざらでもないバーディー。もし妹がいたらこういう
感覚を抱くのだろうかと、少し戸惑いもする。しかしそれを振りきって告げる。
「さあ、敵が来る前に脱出しましょうか」
「はい!」
「はい」
今度はバーディーを先頭にして三人が走り出す。するとザンが手を引くリュミールの足音が
ペタペタと聞こえるのをみて、ザンは初めてリュミールが裸足だということに気付く。

162 :バーディーと導きの神:2006/07/11(火) 17:57:40 ID:nPBDsqoe0
するとザンはリュミールに並ぶと言う。
「腕を上げて」
「えっ?」
リュミールは意味が分からないながらも腕を上げる。
「それっ!」
ザンは勢いをつけるとリュミールを抱きかかえた。
「きゃ!降ろしてザン。私はまだ走れるわ。これ以上迷惑をかけたくないの」
「ダメダメ。裸足で走ったらそれこそ怪我をしちゃって走れなくなっちゃうよ。降ろさない」
「ザン……」
リュミールはザンの優しさをさらに感じて嬉しかった。
「おー、凄いナイトぶりだねー。どこかの誰かさんとは大違い」
『うるせーよ』
つとむがむくれた声を出す。
「へっへーん、言われたくなかったら一度でも早宮さんあたりにそういうことをしてみなさい」
『い、いつかやってやるさ!』
反論はするが実行はできない。つとむは相変わらずつとむのままだった。

163 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/11(火) 18:02:27 ID:nPBDsqoe0
ザン君お姉さんに負けじとがんばってます。

>>146さん
無理はしていませんので、どうかご心配なく。
>>147さん
私の説明不足で分からないところがあったら言ってくださいね。


164 :作者の都合により名無しです:2006/07/11(火) 18:17:23 ID:NOkJNZj60
>勝負の決め手
ある意味、描写力を問われるジャンルかも知れない。
個人的には嫌いだけどw
しかもサナダムシさん復活を祝す様なタイミングだw
でも、以前のサナダさんの雄山のやつとネタ被ってるよ。


>金田一少年の事件簿
いよいよ暗闇に突入した感じで嬉しいです。
いい意味での薄気味悪さが満ち溢れてていい意味でおぞましい。
実はこんな有名な作品なのに原作読んでないですが、
オリジナルとしても十分面白いです。


>バーディと導きの紙
恐るべし17さん。よくぞハイペースで書けるな。
以前、数回で面倒臭くなって投げ出した俺からすると信じられん。
結構あっけなく奪還劇が成功しましたが、ここからですね。
以外と強かったザン君とバーディのコンビが楽しみ。





165 :作者の都合により名無しです:2006/07/11(火) 22:35:41 ID:8RwG/DvL0
17さん頑張るなあ。
今回は少しほのぼのした感じですな
ザンが強さを見せた感じです。
楽しみながら続けて下さい

166 :41 ◆dgps1iMh9k :2006/07/11(火) 22:44:04 ID:vUuJftkW0
17さん、すげーー
カマイタチさん復活おめ

やっぱり、バキスレは凄いですね。

167 :作者の都合により名無しです:2006/07/11(火) 22:53:36 ID:8RwG/DvL0
お久しぶり。復活待ってるよ>41さん

168 :ふら〜り:2006/07/11(火) 23:10:57 ID:IyoP1XLw0
>>スターダストさん
な、何だかなぁ。双方のやってることは凄くハイレベルなはずなのに、どうにも「ごっこ」
してるように見えてしまう。ディスクアニマルと忍法だからか。そんなアクションを挟み、
また火サス空間。こういう「過去発言重箱隅つつき攻防」こそ犯人追い詰めの王道ですね。

>>かまいたちさん
おぉ、記憶を失っててもさすがだはじめ。ゴルゴが反射的に背後の人間を攻撃するが如く、
本人は意識せずとも見事な洞察力と推理力。しかも外部犯の可能性を打ち消しているから、
自分の潔白を確立させて。で犯人は、はじめを警戒? それとも褒めて頼って接近する?

>>サナダムシさん
ようやく自分から接近を始めたお姫様。いいぞいいぞ。加藤も加藤で、一見面倒臭そうに
しながらも的確。相手が(空手の心得有でも)女性である以上、目突きや金的打ちなどの
非力さをカバーできる技を選ぶとは偉い。……でも、この島の「敵」にどれだけ通じるか。

>>17〜さん
>身は小なりとて男は男。こんなときに気張らなくていつ気張るかと、
こちらも、お姫様の為にと頑張ってますな男の子。そうでなくてはいかん。で、瞬動法は
確かに凄いですがそれ抜きにしても、武術の心得あるっぽいではないですか。正直ナメて
ましたよ私は。充分、今後も戦力になれそうな彼は、お姫様だっこをする資格ありとみた。

>>サマサさん
いや〜久しぶりに見ましたねこのネタ。私もまぁ警告文と料理のチョイスからしてオチは
ほぼ読めていましたけど。むしろオチの後が気になる締めでしたね。恐ろしやです。そう
いえば昔の雑誌で、嫁が鬼姑に対する復讐として似たようなことをしてたって記事が……

>>41さん
>やっぱり、バキスレは凄いですね。
41さんを含むそういう「凄い」人たちの作品をたくさん読めて、気軽にファンレターも
書けて、他の方の感想を見ては「そういう見方もあるか……」と唸って。たまに自分でも
SSを書いて、「凄い人たちとの共演」までできるこの場所。41さんも、またご一緒に!

169 :やさぐれ獅子 〜十五日目〜:2006/07/12(水) 01:16:58 ID:C8kL2EKa0
>>137より。

170 :やさぐれ獅子 〜十五日目〜:2006/07/12(水) 01:17:32 ID:C8kL2EKa0
 朝焼けとともに、覚醒する二人。
 黙々と稽古をこなす加藤と、果実の皮を平たい石でむく井上。もう二週間以上ここにい
る加藤はともかく、井上の無人島に対する適応力は目を見張るものがあった。体内時計が
驚くほどに加藤と一致している。
「おい井上、もう少し寝ててもいいんだぞ。別に俺に合わせる必要はねぇ」
「いえ、もう慣れましたから」
 あっさりと返された加藤は、苦笑いする。男として、少し情けない。
「……ま、まぁ、こういう生活は男より女の方が得意だっていうしな」
 根拠の怪しい自説で、自分をなぐさめる加藤。よりいっそうみじめな気分になった。
 もっとも井上とて、決してずば抜けた才能を持っているわけではない。彼女がこうまで
島に適応できた理由は、まぎれもなく加藤にある。が、二人ともその答えには辿り着いて
いない。
 
 やがて、太陽が全身を現す。もう試練が到来してもおかしくない時刻だ。
「井上、そろそろ俺から離れ──」加藤が手で、井上を退けようとする。
「もう離れてます」
「………」
 こいつ、超能力者か。加藤は心の中で脱帽した。
 とにかく、これから先は油断できない。今日もおそらく、一癖も二癖もある使い手が、
武神によって送り込まれるはず。格闘士か、武器使いか、はたまた怪物か。

 海上──小舟がひとつ浮かんでいる。
「そろそろ始めるか……。まずは小手調べだ」
 男は粘土をこねる。滑らかな手つきで、小さな人形が次々に生み出される。
 千体ほど造り上げると、男が人形に念を込め始めた。
「ゆけっ、人形ども!」
 ぼんやりと光り輝く土人形たち。そして、舟の上から飛び立っていく。男は旅立つ作品
を真剣な表情で見送る。
「こいつらにやられるようなら、私が出るまでもない……」

171 :やさぐれ獅子 〜十五日目〜:2006/07/12(水) 01:19:13 ID:C8kL2EKa0
 ほぼ同時刻、砂浜に戦慄が訪れる。
「せ、先輩……」
「どうした」
「あ、あれ……」
 目を大きく見開き、空を指差す井上。加藤も首を動かす。すると、空にはおびただしい
数の黒い影が浮かんでいた。いや、迫っている。影はどんどん大きくなる。
「へっ、面白ぇ……。井上、森の中に隠れろッ!」
「はいッ!」
 まもなく、影は浜辺に上陸した。
 影の正体は、粘土で造られた人型の化物。色はグレー、サイズは加藤とほぼ同等だ。到
着するや否や、一言も発さぬまま襲いかかってくる。
「オラァッ!」
 最初の一体に、正拳をぶつける。あっけなく人形は崩れ去った。予想以上の脆さに、加
藤が呆気に取られる。
 続けざまに、灰色人形は突っかかってくる。が、弱い。
「キョラァッ!」拳で砕け、
「ケリャッ!」足刀で砕け、
「シュッ」頭突きで砕ける。
 戦いながら、加藤は申し訳なさすら感じていた。
 ──こんなに弱い試練でいいのだろうか。
 砕けた塊は地面に落ち、消えていく。もう何十体が消えただろうか。試練というよりは
むしろ作業だった。
 ところが、そんな単純作業にトラブルが発生する。
「──ん?!」
 上段突きを喰らわせたとある人形が、一撃で砕けなかった。崩れかけた人形から放たれ
る弱々しい右ストレート。あっさりと受け流され、トドメのハイキックが決まる。
「ちっ、どんどん丈夫になっていくってワケか!」

172 :やさぐれ獅子 〜十五日目〜:2006/07/12(水) 01:20:04 ID:C8kL2EKa0
 ジャブで牽制し、中段突きを突き刺す。
 ローで体勢を崩し、ハイで仕留める。
 冴え渡る多彩なコンビネーション。だがそれは、加藤が敵を一撃で倒せなくなったこと
を意味していた。加藤は学ぶ。なかなか一撃で倒せなくなったのは、敵が丈夫になったわ
けではなく、自分の技が劣化したからなのだと。
「はぁっ、はぁっ。いつまで出てきやがんだ!」
 そろそろ一時間が経過する。さすがの加藤も、すでに肩で息をしている。動きが鈍くな
り、威力も落ちている。人形から攻撃を喰らうことも多くなった。
「なめんな、コラァッ!」
 自己を発奮させ、打倒ペースを上げる加藤。だが、所詮は一時的なものに過ぎない。数
は嘘をつかない。
 倒しても、倒しても、減らない。
 弱い敵を倒すということが、こんなにも辛いことだったとは。かつてない疲労と倦怠感
が加藤を蝕む。
「くっ……そ!」

 ──腕は下がり、

 ──足は止まり、

 ──呼吸もままならない。

 加藤が数という魔物に食い尽くされようとした時、視界に入ったモノ。それは、彼の勝
利を彼以上に信じ抜く後輩の姿だった。
「井上ぇっ! ったく、てめぇは厳しすぎるぞッ!」
 最後の炎が赤々と燃える。
 そして、加藤の体力がいよいよ底を尽きようとした寸前──人形たちは全滅した。

173 :やさぐれ獅子 〜十五日目〜:2006/07/12(水) 01:23:32 ID:C8kL2EKa0
十五日目終了です。

>>サマサ氏
この対決、結局「ハヤシライスVSうんこ」だったんですねw
……あれ、カレーは?

174 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/07/12(水) 01:26:42 ID:C8kL2EKa0
名前入れ忘れました。

175 :作者の都合により名無しです:2006/07/12(水) 06:55:11 ID:Y5eqVVdi0
加藤と井上の間柄は男と女ではなく信頼のある先輩と後輩ですね。
しかしよくぞ色々変わった試練を考えなさるもんだ。
まるでゲームみたい。執筆ペースが本格的に戻ったみたいで嬉しいです。

176 :パパカノ ◆dgps1iMh9k :2006/07/12(水) 14:10:53 ID:KOaI1U030
「さて今日は作者のネタが尽きてきたことと、日々の生活が忙しいこともあってお勉強SSを開催しようと思う。
先生役はご存知、天才医師の私、眞鍋が担当する」
と言って出て来たのは眞鍋医師、今日は作者のネタ切れ(嘘)のためお勉強SSを開催することになった。
勉強のネタは数学、この科目は作者が唯一できる科目と言っていい。
「真鍋先生、作者のアホが数学しか出来ないからってそれに付き合う必要は無いと思います」
「勇子ちゃん、数学が苦手だからって逃げちゃ駄目だよ。あぁ、あと読者の諸君。
今日のSSは真面目にバリバリの数学をやるからね、ためになると思うよ。きちんと読んでくれたまえ」
「絶対読まないと思う……っていうか、読むな」
そんなわけで、開催されるバキスレ初(未確認)のお勉強SS、本編のほうがダーク路線に入りかけたんでちょっとした繋ぎだ。

177 :パパカノ ◆dgps1iMh9k :2006/07/12(水) 14:11:34 ID:KOaI1U030
「さて、まず第一問目だ。次の計算を行いなさい
1+2+3+4+5+6+7+8+9×0
さぁいくつかな?」
「真鍋先生、SSだからネタばれてます。」
「……では次行こう」
「スルーかよ」
「第二問だ。次の定理のうち実際に存在する定理はどれ。
1. カラテオドリの定理
2. ハム・サンドイッチの定理
さぁ、どっちが実在する定理でしょうか」
「あのさぁ、ここ少年漫画板なんだけど。せめて高校範囲で分かる問題にしようや」
「勇子ちゃん、キャラ変わってるよ……そんなに数学が嫌なのか」
「うん、っていうか正解はどっち?」
「まぁ、正解は読者の心の中ってことで。では、第三問
ttp://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Club/7442/math/triangle.png
ttp://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Club/7442/math/triangle2.png
上の2つの図形の謎を解け」
「だが、断るッ」
「勇子ちゃん、それじゃ勉強にならないよ」
呆れる眞鍋に対して工藤新一が言う。
「っていうか、先生。このスレにいる高校生にも役に立つ受験用の問題を教えてあげたらどうですか」

178 :パパカノ ◆dgps1iMh9k :2006/07/12(水) 14:12:21 ID:KOaI1U030
「ぐっど、あいであ。じゃぁ、受験でも使える数学の問題と言うことで第4問
三つの箱があり、1つの箱には100万円が入っていて他の2つには何も入っていない。
さて、ある人Aが三つの箱の内1つを選んだとする。Aさんはまだ箱を開けてない。
この状態で、別の人が一個の箱を開けた。その開けられた箱には何も入っていなかったとしよう。
では、Aさんは選んだ箱を変えたほうがいいか。それとも、変えないほうがいいか」
「いやさ、それ問題の意味分かんないから」
「うん、大体Aが100万引いたら借金100万かも知れないし」
「……いやね、これモンティ・ホールのj」
「はい、次行こう」

「眞鍋先生が先生としてほとんど役に立ってないんで、まともな数学の問題を考えてみたいと思うわけだけど、工藤くんはどんな問題があるかな?」
「うーん、そうだな……マルムシニテントなんて暗号はどうだ?」
「それ数学の問題じゃないから。
仕方ない、私がとっておきの問題を出すか」

そう言って、勇子が問題を出す。

「二十代後半以降のおっさん、おばさん向け問題。
1+1=田、 1+1=2
正解はどっち?」
「古いって」

179 :41 ◆dgps1iMh9k :2006/07/12(水) 14:22:11 ID:KOaI1U030
バキスレの皆様お久しぶりです。

今回は本編ではなく、あくまで外伝的な繋ぎとして話を作りました。
お勉強SSはこれで終了です。皆さん、数学は得意になったでしょうか。

>>かまいたちさん。
お決まりの台詞がでましたね。この中にいるって、金田一の事件簿で外部犯だった事一度も無いですね……

>>17さん。
バーディーとつとむのやり取りが原作に近くていいですよね。

>>サナダムシさん。
井上との信頼関係がいい感じ。でも、ちょっとは手伝えばいいのにって思ってしまった。

180 :バーディーと導きの神:2006/07/12(水) 15:34:10 ID:mDmXYZ780
地下牢を出、中央塔からも抜け出して基地の外周に向かったバーディーたちだったが、
その途中で突然ザンが膝を折って倒れてしまう。それでもリュミールを落とさずに持ち上
げた根性はたいしたものだったが。
「どうしたの?」
先行するバーディーが戻ってきて、ザンの様子を見る。
「急に足に力が入らなくなったんです」
見るとザンの両股がけいれんを起こしている。
「そうか、疲れているときに瞬動法を使ったから……」
そのとき、いきなり施設中の警報が鳴り始めた。
「しまった!こんなときに!」
ザンは歯噛みする。
「ここは私の出番のようね。テュート、転移モードへ」
肩の凝りをほぐしながら、バーディーは不敵な笑みを浮かべて敵襲に備えた。

その頃。
中央塔から周囲の様子を見ていたサーラは呪文を唱えて小さなバッタに似た虫を召喚すると、
夜空に向かって解き放った。
「さあ思念虫、お行き!」
サーラが唱えると、思念虫と呼ばれた虫はいずこかへ飛び去っていった。

バーディーはザンとリュミールを瓦礫の下に隠れているように諭すと、一人飛び出してい
った。
「連中を逃がすな!」
分隊を組んで出動してくる兵士たちの目の前に現れては、一瞬で部隊員を気絶させる。
その技は当身、テンプルへのデコピン、足払いに銃器をへし曲げての無力化と、一般兵士に
とってはまさにバケモノ並みの強さを誇った。
時折散発的に発射されてくる銃弾もすべて生体防壁で止まり、バーディー自身へのダメージは
少ない。
バーディーはひとしきり兵士たちを混乱させると、ザンたちの待つ瓦礫へと戻っていった。

181 :バーディーと導きの神:2006/07/12(水) 15:35:10 ID:mDmXYZ780
しかしザンは焦っていた。いくらバーディーが付いてるとはいえ、ここは敵地のど真ん中だ。
ザンは少し休んだだけでバーディーとの約束を破って再び逃避行を開始した。
「さあ、リュミール、僕の背中に乗って」
「ザン……、やっぱりバーディーさんの言うとおり休んだほうがいいわ」
「平気!平気!さ、リュミール」
そう言ってザンは背中をリュミールに向けるが、その体はがくがくと小刻みに震えている。
「嫌、私これ以上ザンに迷惑かけたくない!行くのなら今度こそ一緒に走る!」
しかしザンは怒鳴った。
「乗るんだ!」
その剣幕にリュミールは身をビクッとさせる。そして無言でザンの背中にその身を預ける。
「ごめん……、怒鳴ったりして。君を守らなくちゃいけないのに、森で約束したはずなのに、
僕がもう少ししっかりしていたら、こんな目に合わせないで済んだんだもの」
「違うわ、ザン!ザンにはなんの責任もないわ。すべて私の責任なんだもの」
「リュミール……」
そのとき、サーチライトが二人を照らした。
「見つけた!侵入者だ!」
「しまった!」
ザンは自分の失態を恥じ、全力で駆け出した。

一方こちらはザンがいるはすだった場所に帰ってきたバーディー。
「もう!私との約束を破ったわね!!」
『お前が頼りないと思われただけじゃないか?』
つとむがいつもの悪態をつくが、バーディーはもう取り合わない。
クンクンと臭いをたどり、二人が逃げていった方向に全力でダッシュする。
今の二人では到底この包囲網は抜けられない。そう思ったバーディーは、瓦礫と瓦礫の間を
跳躍しながら二人の後を追った。


182 :バーディーと導きの神:2006/07/12(水) 15:36:16 ID:mDmXYZ780
そしてこちらはなんとか飛空挺の発着場間でたどり着いたザンとリュミール。
「やった!誰もいない。みんな僕たちを探してるんだ!」
と、喜んだのもつかの間、ザンの頭上から雷球が振ってきて足元で爆ぜた。
「よおボーズ、また会ったな」
ザンは驚く。ザンが再び出会ったのは、最初にリュミールを拉致した男、オーダ中尉だっ
たからだ。
最悪の組み合わせだった。
これならバーディーさんの言うとおり、隠れていればよかったと後悔する。
しかし時は待ってはくれない。オーダ中尉は瓦礫の上から降りてくると、リュミールを渡すよう
要求した。
だがその要求などザンが呑めるわけない。手近な石ころを蹴飛ばして、最小限の抵抗を見せる。
「無駄なことを……」
オーダ中尉はもはや仕事は終わったとばかりに狙いを定める。少女は不死身だ。最大出力の
雷撃をくれてやればいい。それだけの簡単な仕事だった。
ただし、ここにはそれを許さない人物が一人だけいた。
「ちょっとまったあ!」
瓦礫の影から飛び出したのはバーディー・シフォンその人だった。

さあ、ここでようやくリターンマッチが始まる。

183 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/12(水) 15:44:29 ID:mDmXYZ780
ようやくオーダ中尉へのリベンジにこぎつけましたバーディーです。

>>164さん
次はもっと強いコンビが登場するかもです。
>>165さん
今はとっても充実してます。
>>41 ◆dgps1iMh9kさん
ほかの方の復活もお祈りしつつ……。
>>ふら〜りさん
つとむとの対比が書ければOKと思っています。

184 :作者の都合により名無しです:2006/07/12(水) 21:18:35 ID:NanJpi3E0
>サナダムシさん
井上と加藤が雰囲気よくなってきたと思いきや、またお邪魔虫ですね。
でも加藤が戦い中に女を意識するなんて。意外と井上さんを気に入っている?

>41さん(お久しぶりです)
とりあえずダウンタウンの昔のクイズネタを思い出しました。
このSSは番外編書き易そうだ。ところで、第三問の答えが本気でわからん。

>17〜さん
充実してるそうで何よりです。やはりザンは相当無理してたんですね。
そして因縁のリターンマっちですか。今度はリベンジを果たせるのかな?

185 :作者の都合により名無しです:2006/07/12(水) 22:14:05 ID:Nbv0Gvgp0
お、41さん復帰お目。まず番外編でリハビリですか。
私生活でなんかあったみたいだけど、大変だな。
のんびりと本調子に持っていって下さい。

サナダムシさんが復活されたのに続いてめでたい。
復活ブームが来るといいなー。

17さんみたいに凄いペースで楽しませてくれる人もいるし、
今年一杯は安泰だな。

186 :作者の都合により名無しです:2006/07/13(木) 07:54:45 ID:CeNMMT180
41さん復活したのか。お疲れです。
番外は楽しめましたけど、今度は本編を宜しくね。
暴言と投げ出しは勘弁ね。

187 :作者の都合により名無しです:2006/07/13(木) 12:22:52 ID:VXsBWQ2d0
サマサさんのを見て、サナダムシさんのうんこSS魂に火がつかないか心配だw

41氏復活か。また頑張ってね。

188 :バーディーと導きの神:2006/07/13(木) 15:24:26 ID:15UF/zmU0
「私の最大威力の雷撃を食らって生きていたことには賛辞を送ろう」
「あんたの賛辞なんていらないわ。あの時はちょっと油断しただけよ」
「ほう、たいした自信だな」
「これでも連邦圏内では『狂戦士殺しのバーディ・シフォン』で名が通ってるからね」
「連邦?狂戦士?聞いたこともないな」
「だったらそれがどういう意味か力ずくで教えてあげるわよ!」
バーディーはいきなり跳躍した。体をひねって回転を加えた蹴りを出す。
オーダ中尉はこの攻撃を見切って一歩後退する。しかしそれがバーディーの狙いだった。
バーディーは左手を突いて着地すると、そのままの勢いで左手を軸にもう一度体を回転させ、
威力の倍増した蹴りを叩き込む。
一歩後退して重心が定まっていなかったオーダ中尉は、これをガードしながらもまともに食らって
吹っ飛び、瓦礫に激突する。
「くっ!このアマがあ!」
叫びながらオーダ中尉は雷撃を発するが、バーディーはそれも計算の内。両腕で体をひねって
雷撃の照準から逃れ、両足で着地する。
逸れた雷撃はむなしく瓦礫を貫通しただけだった。
「攻撃の方向が分かってれば、避けることは造作もないのよ」
バーディーは不敵に笑う。逆にオーダ中尉は頭に血が上る。一度は簡単に倒した相手なのだ。
その相手にこうもなめられては逆上するなというほうが無理だろう。
「貴様何者だ!」
「だから言ったでしょ。『狂戦士殺しのバーディ・シフォン』。あんたの命、ここでもらうわよ」
間合いを一気につめ、左のジャブをマシンガンのように繰り出すバーディー。
オーダ中尉はこれを両腕で捌いて凌いでいたがやがて数発の拳が顔面をかすり始めると、
業を煮やして一挙動でジャンプして後退する。
「あらあら、森での自信はどこいっちゃたんでしょうねえ」
バーディーはあくまで挑発する。
「ならばこの攻撃が避けられるかっ!」
オーダ中尉は両手から最大威力の雷撃を発した。近距離からの人間の倍の幅がある大きさの
雷球だ。常人ならば避けられるスピードではない。
しかしバーディーはそれも予期していたのか、倒れこみながら叫んだ。


189 :バーディーと導きの神:2006/07/13(木) 15:25:49 ID:15UF/zmU0
「アンカー!」
一瞬、バーディーの体がとんでもないスピードで地面に激突する。だがそれは計算のうちで、
体全体が地面にめり込む前に術は解いて両手を突いて体を支えてある。
「私の勝ちね!」
バーディーは両手を支えにして地面から跳ね起きると、一瞬でオーダ中尉の懐にもぐりこむ。
そしてその両手を胸に当てて連邦捜査官の必殺技ともいうべき技を繰り出す。
「クラッシュ!」
「ぐはっ!」
オーダ中尉の雷撃にも似た電撃が中尉の胸で爆ぜ、中尉はがくんと膝から落ち、完全に気絶する。
「やった!」
汗まみれのザンが歓喜の声を上げる。
「バーディーさん!」
ザンの背中から降りたリュミールが駆け寄って抱きついてくる。
「バーディーさん、あいつ殺しちゃったんですか?」
ザンも近づきながら聞いてくる。
『僕みたいになったんじゃないだろな?』
つとむもなにかしら不安げに尋ねる。
しかしバーディーはいいえと答える。
「連邦の捜査官には『不殺規定』というものがあってね、人を殺しちゃいけないの。だから殺しては
いないわ。ちょっと気絶させただけ。まあ3日は起きないでしょうけど」
「でもさっきは『命をもらう』って……」
ザンがさらに質問する。するとバーディーは笑って答える。
「ああ、アレはあいつを逆上させるための作戦よ。プライドが高そうだったからね」
「そうだったんですか。それにしてもすごく強いですね、バーディーさん」
「あはは、もう褒めてもなにもでないわよ……って!」
バーディーは驚いた。いきなりザンが倒れたのだ。慌ててその体を受け止める。
「ザン!」
リュミールも傍に寄って様子をうかがう。
「緊張の糸が切れたみたいね。よくここまで頑張ったわ」
「大丈夫なんですか?」
「うん。ただ気絶しただけ。ゆっくり休めば元に戻るわ」

190 :バーディーと導きの神:2006/07/13(木) 15:26:46 ID:15UF/zmU0
心配そうなリュミールに、ことさら優しく言ってやるバーディー。そしてザンの体を抱え
あげると、今度は険しい表情になって告げる。
「と、言うわけよお二人さん。私はこの子達を連れて帰らなければならないの。相手を
する気があるなら受けて立つわよ」
「え?」
リュミールが驚く。まだ敵兵がいるのだろうか。
しかし、バーディーに呼ばれた二人はあっさりとバーディーの前に姿を現す。
一人は黒い長髪の優男。もう一人はオーダ中尉など比較にならないほどのマッチョ野郎だ。
そのうち長髪の男のほうが話しかけてくる
「俺たちはあんたとやる気はないよ。俺はアーマヤーテ軍の者だからな」
「アーマヤーテ軍?じゃあザン君の味方?」
「そういうことになる」
襟の紋章を見せながら言う長髪の男。確かにルアイソーテ軍のものとは意匠が異なる。
ほっと胸をなでおろすバーディー。正直言って、気絶したザンとリュミールを守ってもう
一戦やらかすのはとんでもなく分が悪かったのだ。
「さっきから感じてた妙な気配はあなたたちのものだったのね」
「さあね。でもあんたらが暴れてくれたおかげでこっちは動きやすかったよ」
長髪の男はにこやかに話す。
「おい、敵が近くまで来たぜ」
マッチョ男の方が瓦礫の向こうを見ながら告げる。
「じゃあ撤退するとしようか。あんたたちも送っていくよ」
「ありがとう。じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ」
こうしてバーディーたちの長い長い一夜が終わった。

191 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/13(木) 15:35:13 ID:15UF/zmU0
バーディー圧勝、です。

>>184さん
バーディーは相手の手の内さえ分かっていれば相当強いんです。
>>185さん
楽しくやってます。

登場人物解説その4(鉄腕バーディーより)

・早宮夏美:つとむの幼馴染で実家の歯医者に虫歯を治しに行ったときからのクサレ縁で
         高校も同じクラスになる。
         その縁もあってか幾度か事件に巻き込まれ、現在はつとむとバーディーの間の
         点を線で結びつつある勘の鋭い女の子。

192 :作者の都合により名無しです:2006/07/13(木) 21:51:09 ID:RGlmU6250
凄いな。世界さん以来の毎日更新か。これがいつまで続くか楽しみだ。
ちょっとアクションシーンが淡白な気もするけど、これからもっと強い敵や
怖い事件が起きると思うので、凄いシーンはそれまで楽しみにしておきます。

193 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/13(木) 22:15:50 ID:EL5vdBz+0
六 推理、そして異論

 はじめ達六人は現場を後にし、元いた部屋――どうやら応接間らしい――に、顔を揃えていた。
「まだ、信じられない。葦原くんが殺されたのも、この中にあの殺人鬼『R』がいるっていうのも、全部……」
「あの、そのコトについて、ちょっと意見が」
 十文字の独白めいた台詞に、日月が口を挟んだ。
「さっきの、少年探偵のカッコイイ台詞に水を差すのは気が引けるんだけど……
 この事件が内部犯の仕業だからって『R』が私たちの中にいるって論証にはならないんじゃないのかな」
「どういうことだ?」
 須藤が聞いた。
「ここは別荘だから……持ち主が泊まりに来るまでの長い間、無人のままになっているわけだよね?
 もしかしたら『R』は……ここを根城にして、犯行を繰り返していたのかもしれない、なんて。
 あー、勿論、定期的に掃除とかは入っていたと思うけど、そこらへんはホラ、隠れてやり過ごしたりなんかして。
 うん。きっとそうだよ。皆の中に殺人鬼がいるなんて考えるより、こっちの方が納得できる、と思う」
「なるほど。つまり『R』は、僕たちが訪れる以前から別荘に潜伏していた。
 そして、偶然か故意かは知らないが、葦原と鉢合わせになってしまった……と。
 もし、そうであるならば『R』は何故、窓を割ったりしたんでしょうか?」
 設楽は『考える人』のようなポーズをとりながら、疑問を述べる。
「窓を割った理由は……えーっと……外に注意を向けさせて、別荘の中を捜索させないため!」
 小首を傾げ、少し思案してから、日月は答えた。
「辻褄は合うな」
 高瀬が言う。

194 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/13(木) 22:16:56 ID:EL5vdBz+0
「少年。少年は、どう考える?」
「えっ?」
 床に目線を落として考えに浸っていたはじめは、高瀬の問いに、虚を突かれたように顔を上げた。
「あ、ああ。確かに『R』が屋敷の何処かに潜伏している可能性はあります。屋敷を捜索してみるのもいいかもしれない」
 そう口にしつつも、はじめは脳裏に焼き付いた殺人現場の情景を、事細かに検証していた。
 と言うのも、はじめは現場を一目見て、言い知れぬ『欠落感』を覚えていたのである。
 あの現場には、本来あるべき筈の『何か』が足りない……
 それは推理ではなく、どちらかと言えば直感に近いものだった。
 死体……? 凶器……? 硝子……? 窓枠……? 家具……?
 どれもしっくりこない。どこかに決定的な見落としがあるのだろうが、その正体が掴めず、もどかしい。
「では、決まりだ。全員で固まって、各部屋に『R』が潜んでいないかどうか、探してみよう」
 言って、須藤が立ち上がった。
 どうやら、はじめが思いを巡らせている間に、屋敷内の捜索が決定したらしい。
「いかに人数で勝っているとはいえ、殺人鬼を探すのに丸腰と言うのは落ち着きませんね。
 各自、武器になるようなものを持っておいた方がいいんじゃないですか?」
 設楽が提案した。
「半分賛成、半分反対」 
 と、日月。

195 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/13(木) 22:20:23 ID:EL5vdBz+0
「刃物とか、逆に返り討ちにあいそうな武器は、避けた方が無難じゃないかな?」
「なるべくリーチがあって、相手を近寄らせない武器が理想だな。学校に置かれている、サスマタのような」
 該当する武器を探しているのか、高瀬は室内を見回しながら言う。
「学校にサスマタを常備しなければならないなんて、嫌な時代」
 ソファーに深々と身体を沈め、十文字が嘆息する。武器を探す気力もないようだった。
「恋、これ使って」
 日月はそんな十文字に、小さな殺虫剤のような物を差し出した。
「……これは?」
 ぼうっと、十文字は日月を見上げる。
「護身用の催涙スプレー。バッグの中に入れて、いつも持ち歩いてるんだ」
「由香里は?」
「私はいいよん。他の使うから」
「……ありがとう」
 そう答える十文字の瞳には、少し涙が滲んでいた。
「よしよし。泣かない泣かない」
 日月はその横に座って、手櫛で撫でるようにして、すっかり乱れてしまったセミロングの髪を整えた。

196 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/07/13(木) 22:22:08 ID:EL5vdBz+0
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>155です。

・名前
名前は、前の話が終わって一区切りついたので、なんとなく変更してみました。
・原作読んでない
実の所、それでもあまり問題はないのではないかと。
原作を未読の場合、一部「?」と思う箇所がある位でしょうか。
殆ど予備知識がいらないSSというのも、SSとしては問題なような気もしないでもないですが。
・外部犯
原作では、外部犯だったことは……ないですよね。基本的に反則ですから。
それはともかくとして、41さんも復帰おめです。

197 :作者の都合により名無しです:2006/07/14(金) 01:49:38 ID:6Nks2VljO
かまいたちさん乙。
やっぱりあなたはすごい!
カイジの時はカイジ、はじめの時ははじめが確かに動いてるんだよなぁ。
これは…天性だろうか?
超期待しながら次を待ってます

198 :バーディーと導きの神:2006/07/14(金) 18:09:26 ID:IItk5l5l0
既に夜は明けた。
バーディーにザンとリュミールの保護を頼んだものの、一向に帰ってこない3人を心配して
いた氷牙は、結局徹夜してしまっていた。
「ザンめ、年寄りに心配かけよって」
しょぼしょぼする目をこすりながら愚痴っていると、小屋の入り口の扉が開く音が聞こえた。
「ザンか?自分だけはまだしも、女の子を連れて夜遊びとはおしおきじゃ!」
「バーディーもいい年して夜遊びとはのんきな奴だ」
キデルも氷牙に同調して怒る。
氷牙の部屋に上がってくる足音が聞こえ、その音が大きくなってきた途端、氷牙は怒鳴っ
た。
「くぉらザン!」
しかし、驚いたのは氷牙のほうだった。階段から現れた人物は、ザンなどよりはるかに大
きな人物だったのだ。
「よう親父久しぶり。驚かして悪かったな」
しりもちをついた氷牙に手を差し伸べながらそう言ったのは、氷牙の息子の牙炎だった。
「牙炎」
久しぶりに会った息子に、感慨を禁じえない氷牙。
キデルも若いがっしりした体格の竜人を初めて見て、ぽかんと口を開けている。
だが牙炎は小屋の中をきょろきょろ見回すと、いきなり悪態をついた。
「相変わらず貧乏臭い生活をしてやがんなあ親父」
そんな牙炎の態度に氷牙はむっとする。
「なんじゃい。久しぶりに会ったってのにその言い草は。このドラ息子が」
怒る氷牙にちょっと苦笑する牙炎。
「いや、ちょっと心配になってよ」
「お前のやっかいになるほど貧乏はしとらんわい!」
まだ怒っている氷牙。牙炎は長い犬の吻のように伸びた鼻を押さえて否定する。


199 :バーディーと導きの神:2006/07/14(金) 18:10:02 ID:IItk5l5l0
「そりゃ違うってばよ」
「ん?じゃあ何しに来たんじゃ?」
「ああ、ここにゃこなかったから言うけどよ、連中が裏の森の湖に来てやがったのさ」
「連中?誰じゃ?」
「この村からヨリュウ山脈をはさんで300クルレブ行った国の連中さ」
「ルアイソーテか……」
そのとき、氷牙の脳裏にザンの言っていた言葉が言葉が浮かんでくる。
『ルアイソーテの飛行艇から落ちてきたんだ』
と。
氷牙はいやな予感がして牙炎に尋ねる。
「それで連中の目的はなんだったんじゃ?」
真剣な面持ちで聞いてくる氷牙に少々面食らいながら牙炎は答える。
「ああ、なにか探しているらしいってのを最後に連絡が切れちまったんでよくわからねえ
んだ。でもよ、やつら見つかってやばくなって逃げたんじゃねえかなあ。ユウリュウが一
匹死んでただけで他はなにも……」
そこまで言って、牙炎は思い出したように一個のリストバンドを取り出した。
「ユウリュウが死んでた近くに引っかかってたんだ」
それは氷牙がリュミールに渡したリストバンドだった。
「……どうやら、連中は目的を達して引き上げたようじゃな」
「だね」
キデルも察したようだ。
「なにか知ってんのか親父?」
牙炎が気負いこんで聞いてくる。
氷牙は静かに答えた。
「知っておるさ。そいつはワシがその目的にあげたものじゃからな」
「詳しく話してくれねえか、親父」
「ウム」
氷牙はリュミールの一件を話し出した。

200 :バーディーと導きの神:2006/07/14(金) 18:11:35 ID:IItk5l5l0
その頃ザンは、立派な部屋の大きな寝台で静かに寝ていた。
傍にはリュミールが心配そうな顔でザンの顔を見ている。
少し離れた壁際にはバーディー。外の景色を眺めている。
しばらくしてザンは静かに目を覚ました。
「ザン……」
最初に見えたのはリュミールの顔だった。
「リュミール」
「よかった、ザン」
「目が覚めたようね」
バーディーも歩み寄ってくる。
「バーディーさん……。そうだ、ここは!」
ザンは跳ね起きると辺りをきょろきょろ見回して、リュミールに聞いた。
「ここ、ルアイソーテ?」
しかしなぜかリュミールは顔を赤らめながら答える。
「ううん、アーマヤーテだって」
「へ?」
昨日の戦いの最後の当たりの記憶があやふやなザンは、なぜあの基地から300キロメート
ル以上離れた場所にあるアーマヤーテに居るのか分からず、間抜けな返事をしてしまう。
「フフフ、あの後アーマヤーテ軍の人と会ってね……」
バーディーが言いかけたとき、部屋の扉が開いて、長髪の優男がにっこり笑いながら顔を
出した。
「よお起きたか、ザン」
「あ、あなたは……、誰でしたっけ?」
ザンの言葉に長髪の男は盛大にずっこける。
そして一瞬で立ち直ると、これで思い出せと強力なヘッドバッドをザンに見舞った。
(なんだこの人はー……。でもこの頭突きはどこかで……)
ザンの脳裏に、幼い頃の記憶がよみがえる。
ザンの兄はザンが寝坊するとよく頭突きをして荒っぽい起こし方をしたのだ。
ザンは頭突きの衝撃で回る頭の中で、そのことを思い出し、まさかと思ったが尋ねてみた。


201 :バーディーと導きの神:2006/07/14(金) 18:12:26 ID:IItk5l5l0
「ま、まさかソシュウ兄ちゃん?」
「おう当たりだザン。そんなに分からなかったか?」
ソシュウは苦笑いをしながら答える。
「五年ぶりか、大きくなったな」
「そんな頭をしてるからちっとも分からなかったよ兄ちゃん」
するとソシュウは優しく笑ってこう付け加える。
「ちょっとした願掛けでな、切らないでいるんだ。しかしザン、女の子の前でいつまでそんな
格好をしてんだい」
ザンはトランクス一丁の格好だったのだ。
リュミールの顔が再び赤くなる。
ザンはシーツを引き寄せてその身を隠す。
それを見ていたバーディーは、ぽんと手を叩いて納得したような顔になる。
「ここの住人もつとむたちみたいに服を着ていないことに特別な意味を持たせているのね」
『あのなあ、それって君んとこの倫理観がおかしいんだよ、きっと』
つとむは頭の中で頭を抱えるという難しい芸当をやってのけ、バーディーの常識を嘆いた。

しばらくザンの回復を待った後、バーディーとザン、リュミールは会議室に招待された。
ソシュウが言うには、あのルアイソーテの基地で見たことや会議での質問に答えてくれれば
いいということだった。
バーディーはこれは情報を得るチャンスと見て積極的に参加することにした。


202 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/14(金) 18:22:34 ID:IItk5l5l0
一夜明けて平和が訪れたかのように見えるバーディーたちです。

>>192さん
淡白さは変わらないかも。なにしろ初めてなもんで。

人物設定その5(エルデガインより)

・牙炎:氷牙の一人息子。父を敬愛し、父が貴族の位を降りたとき、一緒に降りるが、
     現場に竜人がいることの威力に目をつけ、常に最前線にて軍の指揮を執る。
     竜人であるため、当然人間以上の力を有する頼れる兄貴。
     ザンとソシュウからは親しみをこめて義伯父(おじき)と呼ばれている。

・ソシュウ:ザンの実兄。父に習い、アーマヤーテ軍にその身を投じて5年以上になる。
       算のことを猫かわいがりしており、知らない人間にザンのことを自慢するのが
       趣味の変わった人物。

203 :作者の都合により名無しです:2006/07/14(金) 20:42:02 ID:De111aGBO
乙です。本当にハイペースですな。
ところで、唐突にでてくる単位がわかりにくいんだけど。クルレブとか
できれば文中に(=キロメートル)とか入れてくれると有り難い

204 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/14(金) 20:58:35 ID:IItk5l5l0
スンマセン。説明不足でした。

レブ=メートル
クルレブ=キロメートルです。

205 :作者の都合により名無しです:2006/07/14(金) 22:01:01 ID:Gr2W0czX0
>かまいたちさん
氏の作品はなんかSS内で刻々と時間が流れているのが実感できるんだよね。
それに伴って恐怖の雰囲気が増幅していくというか。
普通は、静かな展開の時はちょっと退屈になるもんだけど、そういう場面すら
作品の長所に感じるのは凄い筆力だ。尊敬します。

>17さん
多分、至上最速の長編カテゴリ移行おめです。この記録は絶対に破れないだろうな。
キャラが多くなってきましたね。原作未読なんで、後書きでの解説はありがたいです。
今回は大冒険の後の、ちょっとした休息ってところですか。
でも会議の後、また更なる冒険が待ってそうですね。

206 :戦闘神話:2006/07/14(金) 22:41:07 ID:i1hctM5x0
第二回 part.2


「謝るなよ…。
…偽善者!」

それが、蝶野攻爵末期の言葉。
彼に手を下し、かつ彼の最期を看取った武藤カズキの心に消えない疵を残した彼の言葉は、
武藤カズキに、人間は真っ直ぐ生きている者だけではないという事実を悟らせたのだ。
そして、人でもホムンクルスでもない何かであった蝶野攻爵は、風に舞い散る灰の如く消え去る。
はずであった。
一人の、いや、一体のホムンクルスに確保されなければ。
蝶野爆爵、彼、蝶野攻爵の玄祖父にあたる人物であり、超常選民同盟・L.X.E.の盟主であるホムンクルスだ。
資産家としての社会的地位もあり、子孫に恵まれた彼が、なぜホムンクルスに成り果てたのか?

一人の友のためである。

彼の目標とは、凡愚の望むような不老不死への渇望ではなく、一人の友を救う為であった。
彼にその決意を抱かせるほど、その友の存在は鮮烈だったのだ。
爆爵が彼と出会ったのは、今こうして子孫たる攻爵を回収したときと同じ、とても良い月夜の晩であった。


207 :戦闘神話:2006/07/14(金) 22:43:01 ID:i1hctM5x0
彼の印象を一言でいうならば、美しい獣だ。
淡く光る蛍火の髪、熱を帯びた赤銅色の肌、筋肉で固められた二メートル強の体躯。
それは、錬金術の研究に行き詰っていた蝶野爆爵に、新たな可能性と見えたのだ。
見れば体中疵のない処は無い。が、炯々と暗黒に燃え盛る双眸には、いささかの衰えも見えない。
極東へと落ち延びた身の上なのだろうが、それでも彼には捲土重来を志す心の刃が見て取れた。
蝶野爆爵にとって、文明開化の波間に翻弄されるこの国の人間が、ひどく無様に思えた瞬間だった。
自己の向上のために研鑽を積む事は素晴らしいことだ。
だが、彼のこの気高い獣の様な姿に比べたら、他のなんと醜い事か!

得がたき友を得た瞬間だった。
友を、より深く理解したいというのは、自然な感情だ。

「むーん♪
 月夜の晩には、必ず良いことが起こるものだね」

赤銅色の男は、その声に振り返ると同時に身構えた。疵は外見以上に深く、疲労も濃いらしい。

「手負いとみて、オレを殺しに来たか…。
 浅はかな事だ」


208 :戦闘神話:2006/07/14(金) 22:47:06 ID:i1hctM5x0
闇の中から現れたのは、なんと形容していいものか、服装だけみれば洋装の紳士だった。
そう、服装だけみれば。
ひとつ、決定的に他と異なることがあるとすれば、彼の顔は三日月だったのである。
戯画的な三日月そのもの、それが彼の顔であった。
三日月男は、ことさら楽しげに、笑みを濃くして行く。

「バっ…」

蝶野爆爵は、悲鳴を上げかけた。赤銅色の男が彼の口元を押さえなければ、
情けない悲鳴をあげていただろう。
だまっていたまえ。そう目で語った赤銅色の男は、満身創痍。
武術の心得などない爆爵からみても、勝ち目など到底ありそうもない戦いだった。

「オレは、負けぬ。
 貴様ら錬金術に取り付かれた連中全てを殺し尽くすその時まで、退かぬ!」

余りにも濃密な、憎悪だった。
四十路も終わりに差し掛かり、人生の酸いも甘いもかみ分けたと思っていた爆爵は、
それが一瞬で夢想に過ぎないと悟らされた。

「むーん♪
 ヴィクター君、キミは一つ大きな勘違いをしているようだね。
 私は、錬金戦団が用意したホムンクルスではないよ。
 自らの意思で、人道を踏破したホムンクルスだ」

三日月男は、道化を演じながらも、一つの機会を狙っていたのだ。

「それがどうした?
 オレにとっては、倒すべき存在の一つに過ぎん」



209 :戦闘神話:2006/07/14(金) 22:53:22 ID:i1hctM5x0

殊更芝居がかかったジェスチャアで残念がって見せると、赤銅色の男、
ヴィクターというらしい、に、三日月男は幼子に語り聞かせるような調子で、

「手を組まないか?
 この私と」

そう、言ってのけた。

「堕ちたとはいえ、オレは錬金の戦士だ!
 貴様ごときと組む手はない」

満身創痍、されど意気軒昂。ヴィクターは、己が左胸に手を当てると、
彼の戦闘本能は、武器となって具現化する。

「むーん。
 それは残念。なら、そういう気になってほしいものだね」

怜悧な視線を笑顔で覆い、三日月男は戦闘本能を解放した。
三日月男の右手には、三日月の形状をした小ぶりな刃が、魔法のように現れていた。

「武装錬金!」

異口同音に発せられた言葉は、決戦の火蓋に他ならない。
その瞬間、後々思い返してみても爆爵は理解できないのだが、
彼は本能的に二人の間に割って入っていた。

「まってくれ!二人とも!」


210 :戦闘神話:2006/07/14(金) 22:56:22 ID:i1hctM5x0

ルナール・ニコラエフは元々、ヴィクターと錬金戦団の共倒れを狙っていたのだが、
その目論見を実行に移すより遥かに早く、事態は終局に向かっていた。
ならば、出来る限り選択したくなかった手段をとるしかなかった。
ホムンクルスの身の上となったルナール・ニコラエフでも、
ヴィクターをこの場で倒せるなどとは思ってはいない。
そこまで傲慢であったのならば、今の今まで生きてはいない。
ヴィクターを取り込み錬金戦団に対抗する、
そのために彼はこうしてはるばるロシアより来たのである。
彼は、爆爵の乱入を狙っていたのだ。
ヴィクターは、錬金術全てを憎んでいる。
だが、人間そのものまでは憎みきれて居ない。
ここ数ヶ月の戦闘から三日月男こと、ルナール・ニコラエフはそれを知った。
故に、人間を使うことを思い当たったのである。それがいかなる形であろうとも構わなかったが。
博打そのものともいって良い、戦術も戦略も謀略もへったくれもないが、
彼は、そうしなければ他に道はなかった。

こうして、三者三様の思いが交錯し、ひとつの奇妙な同盟が生まれることになる。

そして、今、思えば。
あの青い蒼い碧い月が照らし出した、ホムンクルスと、人間と、人でもホムンクルスでもない何か、
彼ら三人の、百年にわたる超常選民同盟が始まったのは、この瞬間だったのだろう。


211 :戦闘神話:2006/07/14(金) 23:01:42 ID:i1hctM5x0




「生き…てる…?」

蝶野攻爵、いや、パピヨンとなった彼は、
まず自分が生きていることを認識し、
次に下半身が失われていることを認識し、
自分が巨大なフラスコ型水槽の中に居る事を確認した。

「Good モーニング!
 お目覚めだね、攻爵。
 …いや、今はパピヨンか?」

誰だ、と黙考しつつも、パピヨンは状況確認を怠らない。
どうやらこの水槽は、傷ついた身体を修復する代物らしい。
床に、天井に、縦横無尽に張り巡らされたパイプやコードの類は、
すべてこの水槽に繋がっている。

「いやいや、まさか」

暗がりの向こうから姿を現したのは、一人の老紳士だった。

「後進へのヒントにと思い、気まぐれに残した研究の一部を、
 百年後に独力で完成させる者が現れようとは…」

蝶々のような特異な髭を扱きながら、老紳士はパピヨンに、水槽に歩み寄る。
研究の一部、百年…。それらの単語から、老紳士の正体にパピヨンは思い至った。


212 :戦闘神話:2006/07/14(金) 23:04:16 ID:i1hctM5x0

「まさか、ひいひいじいちゃん…。
 蝶野爆爵?」

思わずパピヨンの口からこぼれ出たのは、真実だった。

「その名前はもう、人間をやめた時に捨てたよ…。」

その言葉と同時に、彼の背後には数人の人影が滲むようにして現れていた。

「今は、同胞からドクトル=バタフライと呼ばれている」

蝶野爆爵、いや、ドクトル=バタフライの声は決して大きな声ではない、
だが、不思議とよく通る声だった。

「ようこそパピヨン。
 キミの優れた頭脳と行動力を認め、我ら超常選民同盟は、キミを歓迎する!」

眼光は鋭く、強い、だが、その色は腐り果て、澱みきった色だった。
パピヨンも、バタフライも、同じ目をしていた。

「私たちは活動を開始するが、キミはまず身体を修復しなさい。
 そらからキミには、キミがまだ持っていなかった人型ホムンクルスの真の力を授けよう!
 もう二度と、人間ごときに負けないように!」


213 :戦闘神話:2006/07/14(金) 23:10:49 ID:i1hctM5x0

力強いバタフライの言葉に、
パピヨンは胸のうちにふつふつと湧き上がるものを感じた。

「どうだい?気分は」

陽気ともとれるムーン・フェイスの言葉。
パピヨンの返事は決まりきっている。

「蝶、サイコー!」


だが、このときバタフライも、パピヨンも、ムーン・フェイスも知る由も無かった。
バタフライが研究資料として蒐集した古書の中に、地上最強の戦闘集団が求めてやまぬ文書があった事を。


214 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/07/14(金) 23:18:17 ID:i1hctM5x0
武装錬金・祝!アニメ化!
聖闘士星矢・冥王神話八月三日より少年チャンピオンにて連載開始!
聖闘士星矢PS2ソフトも発表!(でも、声優かわってるっぽい…)
と、なんだか激動しておりますなか、戦闘神話第二回・part2.をお送りしました

>69さん
しばらくは聖衣が主題に話が展開する予定です
更新回数は、すみません、精進します…

>71さん
>タイトルに比べなかなか戦闘に入りませんが
第二回後半は戦闘はじまりますので、もうしばしご容赦を…
エドが戦うのは、聖闘士だけ、とは限りませんのでご期待を

>スターダストさん
先代の巨大さに負けないようにあがくニコルですが、
そのあせりがpart1.では実は重大なミスを呼び込んでいたりします
足掻いてもがいて理不尽相手に戦って、そんな連中が僕は大好きです
私家版爆爵・ヴィクター・ムーンフェイス・パピヨン、如何でしたでしょうか?
忌憚のない意見もらいたいです

>ふら〜りさん
銀河戦争の件といい、射手座の聖衣をかってに弄った事といい、
あんまり良い感情持っていなさそうですよね
そこらへんの軋轢みたいなモンもまた、あったりなかったり…

215 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2006/07/14(金) 23:19:40 ID:i1hctM5x0
忘れるところでした
サナダさん、復活おめでとうございます


216 :やさぐれ獅子 〜十六日目〜:2006/07/15(土) 00:54:53 ID:5jfE62Hf0
銀杏丸さんすいません。
続けて失礼します。
>>172より。

217 :やさぐれ獅子 〜十六日目〜:2006/07/15(土) 00:55:46 ID:5jfE62Hf0
「いてて……」
 筋肉痛(ダメージ)が加藤を蝕む。
 千体を超える土人形との対決。個々の強さこそ素人に毛が生えたレベルだったが、費や
した運動量は過去最高であった。
「大丈夫ですか?」心配そうに、井上が声をかける。
「あァ、これくらいならな」
「でも……」
「心配すんなって、多少痛みがあるくらいのコンディションで丁度いいんだよ」
 強がる加藤だが、不安は尽きない。試練に休みはなく、おそらくは今日も現れるだろう。
果たして今の状態で倒せるか──自信は持てない。
「どちらにせよ、俺にはやるしかねぇ。勝つしかねぇんだ」
 海を見据え、加藤はこう呟いた。
「先輩……」
 そして井上は、どうすることもできない己の無力をただ悔やんだ。

 海上──小舟が昨日と変わらずぽつんと浮かんでいる。
「では、今日は本気を出すとしようか」
 今日、男の手にあるのはハサミと白い紙。紙切り芸を彷彿とさせる手捌きで、ハサミで
紙を刻んでいく。
 できあがったのは、五体が揃った厚みのない紙人形。
 男が念を込めると、まもなく人形は自ら動き始めた。
「のれんに腕押し。いくら叩いても効力がない恐怖、存分に味わわせてやれ……」
 命じられた人形は、潮風に乗ってひらひらと飛んでいった。

218 :やさぐれ獅子 〜十六日目〜:2006/07/15(土) 00:57:11 ID:5jfE62Hf0
 一方、砂浜では加藤による金的蹴りのレクチャーが始まっていた。
「軽くでいい。当てるだけで、効果は絶大だ」
「はい!」
「ただし、やっぱ野郎ってのは本能的に金的を警戒してるからな。むやみやたらに出した
って、当たるもんじゃねぇ。下手すりゃ、蹴り足をキャッチされちまう」
 金的蹴りは一撃必殺。とはいえ万能というわけではないと、加藤は熱弁をふるう。
「基本的には不意打ち技だ。どうにかして相手の意識を逸らして、決める。一発でも入っ
ちまえば、あとはどうとでも料理できんだろ。おまえだって神心会だしな」
「な、なるほど……」
 加藤の講義は乱暴ではあるものの、井上がいつも教わっていた指導員たちを上回る説得
力を持っていた。これぞ実戦を知る者のみが放てる引力なのだろう。
「じゃあ次は──」加藤の眼に殺気が宿る。「いや、続きはまた今度だ」
「先輩?」
「来客だ」
 生命を得た紙人形、風に吹かれながら降臨す。

219 :やさぐれ獅子 〜十六日目〜:2006/07/15(土) 01:02:16 ID:5jfE62Hf0
「今日は一匹だけか!」
 先手必勝。一気に間合いを縮め、加藤が殴りかかる。──が。
 ひらり。
 いともあっさりかわされた。
「くっ」これしきで怯む男ではない。ラッシュは続く。
 ひらり、ひらり、ひらり、ひらり、ひらり、ひらり、ひらり。
 猛攻は約一分に及ぶも、ひとつも当たらない。攻撃が下手だとか、読まれているといっ
た次元ではない。打撃そのものが通用しない。紙人形は、自然の風はおろか、拳から出る
風圧までもを利用している。つまり、絶対に当たらない。
「ふん、避けるのがうめぇってワケか」
 今日の試練が持つテーマを認識し、構える加藤。すると突如、紙人形が反撃に出た。
 ──突風のような一閃。
 まったく動けなかった。気づいた時には、すでに加藤の胸は一文字に切り裂かれていた。
「ぐっ……!」
 対して、ひらひらと緊張感なく漂う紙人形の手は、鮮血で染まっていた。
 新しい紙で手を切る──このよくある現象を日本刀にも匹敵する斬撃にまで昇華させた
技。急所に入れば即死もありえる。だがピンチであるというのに、加藤は思わず笑ってし
まう。
「楽しくなってきたぜ。最近、まともな一対一がなかったからよ……なおさらな!」
 加藤と紙人形、再び交錯する。が、加藤の拳は全てかわされ、かつ体に新たな傷をつけ
られた。血液が飛び散る。
「うおおおおっ!」
 懲りずに加藤は立ち向かう。紙人形もまた迎撃体勢に移る。結果は目に見えている、と
思われたが。
「さすがに攻撃と回避は同時にはできねぇ。……捕えたぜ」
 加藤は紙人形の足を踏んだ。斬撃を繰り出す瞬間を狙ったのだ。
「これじゃ避けられねぇだろ──セイヤァッ!」
 渾身の正拳突きが、紙人形の顔面を直撃した。

220 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/07/15(土) 01:03:22 ID:5jfE62Hf0
十六日目開始です。
次回へ続く。

221 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/15(土) 01:35:02 ID:GMrY6Pkj0
第十六話「部下のミスは上司のミス」

「あーあ、やっちゃったよコレ。どうすんの? オジさん知らないよ?」
「や、知らないよって……元はと言えばとっつぁんのせいでしょうが」
場所は真選組屯所、元局長近藤勲の自室。
新聞を広げながら、今日の一面記事に注目する。
そこには、沖田がカメラ目線でピースをする写真と、「お手柄!?やりすぎ真選組がまたやった!」という煽り文字が書かれていた。
「だってよぉ、まさか沖田が局長になるなんて思ってなかったからよぉ」
「そんな子供の言い訳みたいに言わないでよオッサン……」
室内では局長から一転して一般隊士に成り下がった近藤と、今回の騒動の根本的原因である松平片栗虎が会談していた。
話題はもちろん新聞のトップ記事を飾っている困った新局長についてで、「いや、もうほんとどうしようか」と二人揃って困り果てていた。
「おまえ、あそこは意地でも局長のメンツを保とうとするだろ普通。それをなによ、なに一人も捕まえないで負けちゃってるわけ?」
「真選組局長が必死こいて鬼ごっこに精を出せって? もうあんた一体なにやらせたいの? 真選組どうしたいの?」
当初はやりすぎの現真選組に対する処置をどうしようかという対策会議であったはずだが、それは次第に、大人気ない罪のなすり合いと化していった。
「だいたいよぉ、おじさんも辛いのよ。最近娘がま〜た変な男に引っかかったみたいでさぁ……」
「あんたの娘の恋バナには興味ねぇーよ! もういいかげん巣立ちさせてやれよ娘!」
「バカおまえ近藤……親バカはいつまで経っても親バカだぞ? 俺は娘が何歳になろうと男なんて認めねぇよ? そんな奴現れたら即座にしゃさ……ぶっ飛ばしてやるよ」
「しゃさ!? あんた今なに言いかけた!? 射殺!? 警察のクセして娘の彼氏を射殺ゥゥ!?」
「ちげーよ、しゃさ……しゃさ……シャサUつえーって言おうとしたんだよ」
「なにそのザクUみたいな名前!? 親バカで変なモビルスーツ作ってんじゃねーよ!!」

222 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/15(土) 01:36:15 ID:GMrY6Pkj0
ついにはただの罵り合いと化し、対策会議は破談となった。
部下が部下なら上司も上司。纏める側がこれでは、部下のやんちゃなど止められるはずもない。
「……近藤よぉ。この際だからハッキリ聞いとくぞ」
と思った途端、松平の口調が明らかなシリアスモードにチェンジした。
「なんだよとっつぁん。改まって」
「おまえ……この先ずっと沖田が隊長でうまくやっていけると思うか?」
それは唐突な質問だった。
真選組新局長沖田総悟。極度のSだが、その実力は誰もが一目置く程である。
局長に就任する以前も一番隊の隊長として数名の隊士を指揮し、何人のもの不逞浪士を捕まえてきた。
「……あいつぁやるときはやる奴だよ。普段ふざけてはいるが、あれでも素質は十分だ」
沖田はまだ若い。これからもどんどん成長するだろう。そして、いつかは自分を追い越す。
敵を葬る剣術の腕、隊を指揮する統率能力。局長として必要な要素を沖田が確かに秘めていることに、近藤は気づいていた。
「今はまだやんちゃざかりだが、そのうち貫禄が出てくると思うぜ。俺が保障する」
自身満々に言い切る近藤。
もちろん局長の地位に未練がないといえば嘘になるが、沖田ならいつか真選組をもっと大きく出来ると信じていた。
だからこそ、今は身を引こう。マサシの母ちゃん役でもなんでもやろうじゃないか。
しかし、そんな近藤に松平は、
「……わかっちゃいねぇな近藤。『普段』とか『そのうち』とか、そんな悠長なこと言ってる場合じゃねぇんだよ、もう」
よりトーンを重くして、告げる。

「……今な、お上が真選組の解散を検討してる」

「……え?」
突然の言葉に、近藤はおもしろくもないリアクションで答えてしまった。

223 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/15(土) 01:37:15 ID:GMrY6Pkj0
「いや、もう解散はほとんど決まってると言っても過言じゃねぇ。ただでさえ今までが酷かったんだ。それを急に鬼ごっこして局長交代って……どんなふざけた警察だよ」
「だからそれはとっつぁんの提案……」
「そんなことはどうでもいいんだよ。誰のせいとかそんなんは。重要なのは、おまえ達がやりすぎたってことだ」
松平の声は、真剣そのものだった。
一片のおふざけもない。警察庁のドンとしての、重圧のある宣告。
近藤は思わず、息をのんだ。
「……もう、決まったことなのか?」
「ほとんどな。幕府の連中はおまえ達を潰して、まったく新たな武装警察を構成するらしい」
「…………」
嘘でも冗談とも取れない衝撃の言葉の連続に、近藤はギャグもツッコミも言えなくなっていた。

真選組が、なくなる。

ただ、突きつけられた事実が信じられない。
「……おまえ達が今後どうなるかは、俺にもわからねぇ。ただ、刀は握れなくなるかもな」
「とっつぁん……」
「安心しろ。職なしにはさせねぇよ。俺がなんとしても取り繕って、おまえらを立たせてやる」
「でもよ、とっつぁん。俺らは剣しか脳のねぇ田舎侍だぜ? そんな俺らにいきなり刀を捨てろだなんて……」
いつしか溜まるほどの冷や汗を流していた近藤を尻目に、松平は無情なとどめをさす。

「……本当は局長である沖田にも言っとくべきなんだが、今のところはまだ検討中ってことなんでな。とにかく、おまえは頭に入れといてくれ」
「真選組が……」
うわ言のように声を発する近藤の顔は、とても見れたものではなかった。
そんな近藤を気遣ってか、松平は別れ際の言葉もかけず、そっと退室する。

誰が悪いとも言えない、今回の事態。
事を起こした沖田なのか、提案した松平なのか、または根性が足りなかった近藤なのか。
誰のせいにすればいいかが、分からない。

近藤勲はその日、ただ呆然と自室で佇んでいた。

224 :一真 ◆LoZjWvtxP2 :2006/07/15(土) 01:39:11 ID:GMrY6Pkj0
これにて第二部、「やんちゃな大人達の取り返しのつかない情事編」は終了です。
ギャグ一本道できて、最後はなんか変なラストになってしまいましたが、全体を見て通せばこれで終わりではないのでご安心を。

さて、次なる第三部は、今までとは少し趣向を変えた番外編みたいな形になる予定です。
どんなお話かは次回までのお楽しみ。

そして、第三部終了後は第四部「完結編」を予定しています。
テーマとしてはギャグよりもシリアス重視……になる予定。あくまで予定。

それでは、また第三部でお会いしましょう。
第二部はやたら筆が遅かったですが、次のシリーズはもっとハイスペースでいけるよう努力します。
一真でした。

225 :作者の都合により名無しです:2006/07/15(土) 07:53:21 ID:gpTd9Sxq0
>戦闘神話
武装連金のラスボスから宿敵まで勢ぞろいですね。役者は揃ったという所ですか。
でも、この連中がセイントたちに対抗しきれるのかな?奴ら光速で動くし。

>やさぐれ獅子
バキですら不良軍団数十名しか倒せなかったのに、加藤は本当に強くなったなあ。
井上さん金的蹴りマスターですか。でも、次の紙ボスは顔面利くのかなあ?

>シルバーソウル
第二部完結お疲れ様です。真選組消えたまま?これが3部への伏線になるのかな?
ドタバタだったのに、最後はしんみりとしてましたね。しかし銀ちゃん影薄いw



226 :バーディーと導きの神:2006/07/15(土) 12:50:47 ID:7Xj7yo4a0
「以上が我々の部隊が入手した機械であります」
ソシュウがアーマヤーテの全てを統べる天帝の前で作戦の成果を披露した。
すると天帝はソシュウに質問する。
「では仮にこれが古代文明の産物だとしたら、修理し、機能させることができるのかね?」
これにはソシュウが答える。
「我々には不可能ですが、ルアイソーテには可能な者がいます」
「何者だね、その者とは?」
「ルアイソーテ軍特位階級者ガロウズです。彼の異常なまでに発達した理解力は実際に超
古代の記録機械と接触し、情報を引き出しております」
ガロウズの写真がスクリーンに映る。その瞬間バーディーはある意味驚嘆、ある意味納得
した。
(あの男。とてつもないプラズマ塊で巨人の左腕をもぎとったあの男がガロウズ……。そして
リュミールちゃんをさらっていった首謀者……)
「するとルアイソーテはそれを使ってわが国を侵略攻撃しようとしているというのかね?」
「そうです!」
ソシュウが力強く答える。
「天帝」
側近の者が不安を天帝に投げかける。
「うむ。所詮は作られしものだ、壊すことも可能であろう……。それで古代文明が存在し
たとしてどのくらい過去のものなのだ?」
「信じられませんが、基層の深さや密度から推定すると、約15億年前です」
「なんと……。過去見の長すら見えぬ遠い過去か……」
「天帝、最後に見ていただきたいスライドがあるのですが」
「うむ」
「これです」
ソシュウがスライドで映し出したのは、ルアイソーテの駐屯地で暴れた巨人の姿だった。
一瞬リュミールが驚いた表情を見せるが、すぐにスライドから視線を外す。
しかしバーディーはその様子を見逃してはいなかった。
それにザンも巨人の頭部と胸部に浮き上がった文様がリュミールの左手のチップと同じ文
様だと気付いてびっくりする。
だがザンもリュミールを気にかけてか、その驚きを顔に出すことはなかった。

227 :バーディーと導きの神:2006/07/15(土) 12:52:14 ID:7Xj7yo4a0
その間も会議は進む。話は巨人が突如起動し、駐屯地を半壊した後逃走したというところ
までで報告は終わった。
すると今度は一緒に列席していたザンとリュミールの話題に話が変わる。
「ザン君、リュミールさんが記憶喪失だというのは本当かね?」
天帝はあくまで優しく慈愛に満ちた表情で話しかける。
「はいっ!」
ザンは緊張しているのか、大きな声で返事をする。
「そうか、それは残念だ。思い出してくれればガロウズの思惑も分かると思ったのでな。
ザン君、リュミールさんを大事にしてやるんだぞ」
「はいっ!!」
今度は元気一杯に答えるザン。天帝はそんなザンの快活さに好意を覚える。
そして今度はバーディーの話だ。
「バーディー・シフォン・アルティラ殿。貴殿は星からやってきたと聞いているのだが、
それは本当の話しかね?」
「はい。私、というか私とその同僚は、『地球』という星で私の所属する組織であるところの
連邦所属のテロリストを追っていたのですが、あるとき超空間に異常が起こり、私の宇宙
船はこの星の衛星軌道上に飛ばされてきました。原因は一切不明です」
「テロリスト?すると君は軍の特殊部隊かなにかかね?」
「いえ、私はテロリストの捕縛を専門とする特捜に属する警察官で、軍人ではありません」
「聞いた話では、ルアイソーテの小銃弾を跳ね返したり、素手で銃器を曲げたり、尋常では
ない動きで敵を翻弄したと聞いたが?」
「はい、私は凶悪犯を殺さず生かして逮捕するために調整され生まれてきたアルタ人という
人種ですので、そのくらいのことはできます」
「なんと、君の世界では人類の発生を調節できるのか?」
「いえ、遺伝子操作は倫理規定で厳しく管理されていますし、おいそれと私たちのような人間を
作るというわけにはいきません」
「むう、理解できない単語がいくつかあるが、それも異星から来た者ゆえのことであろう。
バーディー・シフォン・アルティラ殿、貴殿のわが軍への手助け、この天帝から礼を言い
ますぞ」


228 :バーディーと導きの神:2006/07/15(土) 12:52:57 ID:7Xj7yo4a0
「え?あ、あはは、当然のことをしたまでです」
『やっぱ言うのかそれ』
「シッシッ」
つとむのいつもの突っ込みに頭を払うような仕草で受け流すバーディー。
「ではソシュウ中佐、3人を連れて下がってよろしい」
天帝が告げると、ソシュウは三人を引き連れて退場しようとした。
しかしそこで天帝がザンに声をかける。
「ザン君ちょっと……」
「はい」
「氷牙は元気かい?」
「はい、困るぐらい元気です、王様!」
「ははは、そうか。家に帰ったら、この氷銀天がよろしく言っていたと伝えておくれ」
「はい、きっと伝えます」
ザンはそう答えると、ソシュウの後に従って会議室から退出していった。

229 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/15(土) 13:03:43 ID:7Xj7yo4a0
バーディー、ガロウズを知るの巻です。

人物設定その6(エルデガインより)

・氷銀天:天帝と呼ばれるアーマヤーテを統べる竜人。
      自らの羽根を切り落とした氷牙のことを今でも敬愛しており、
      アーマヤーテでの階級制度を緩やかにしている名君の誉れ高い
      王様。しかし側近はすべて竜人のため、氷牙はまだまだ納得していない。

(鉄腕バーディーより)

・調整アルタ人:生粋のアルタ人とは違い、遺伝子操作により初めから強靭な肉体を以って
          生まれてくるアルタ人のことを指す(イクシオラと呼ぶ)。
          バーディー・シフォン・アルティラとは、学術研究星シフォンで生まれた
          アルタ人のバーディーという意味。

>>205さん
もちろん、この後も大冒険が待っていますよ。

230 :フルメタル・ウルフズ!:2006/07/15(土) 13:05:51 ID:IPOtNCYR0
どうも。バキスレ住人の皆さん。お久しぶりです。
現在書き溜め中なのですが大学が忙しくなるので来年の2月までSS書きを
凍結させて下さい。誠に身勝手な理由で申し訳ありません。
さらに腕を磨いて戻ってきます。
ではでは。


最後に17さんの投稿後暫く待たずに投稿してしまってすみません。
どうしても言いたかったもので。

231 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/15(土) 13:16:43 ID:7Xj7yo4a0
>>230
かまいませんよ。
戻ってくるのを心待ちにしています。

232 :作者の都合により名無しです:2006/07/15(土) 18:38:34 ID:sBBqtufh0
>銀杏丸さん
パピヨンとムーーンフェイスはキャラクターが濃いので活躍するといいなあ
こいつらが聖闘士と向かい合っている絵はそれだけで笑えそうな感じだ

>サナダムイさん
井上の金的なら受けてみたい神心会の人間が続出しそうだ。彼女戦うのかな?
紙軍団との闘いも楽しみだけど、これって何日構成なんだろう?一ヶ月?

>一真さん
なんかちょっとブルー名感じの終わり方ですね。真選組、おいしかったのに。
第三部では土方が真選組復活の為に立ち上がるのかな?シリアスも楽しみ。

>17さん
天帝ですか。なんかこの世界の権力者っぽいのが出てきましたね。裏ボス?
バーディは知らないけど、キャラが多くて賑やかですね。大冒険期待です。

>フルメタルさん
残念です。たまに書きだめしたものを吐き出してくれる程度でいいですので
ちょこちょこっと書いてくれると嬉しいな。


233 :作者の都合により名無しです:2006/07/15(土) 22:35:20 ID:j+U2wzU30
また一気にきたな。
フルメタルウルブスさんの一時リタイヤは惜しいけど、また復活してね。

>サナダムシ氏
サナダさんが活躍されてるとバキスレ安泰な感じがする。井上さんを活躍させてください。

>銀杏丸氏
中々、決戦が始まらんけどキャラは揃った感じ。個人的にムーンフェイスが活躍してほしい。

>一馬氏
第二部おつかれでした。第三部もお待ちしてますよ。でもシリアスの最終部が一番楽しみだ。

>17さん
キャラが多くて名前が中々覚えられんけどw毎日更新は嬉しいな。原作も一度読んでみるよ。


感想ヘタクソですまん。ふらーりはやはり凄いな

234 :バーディーと導きの神:2006/07/16(日) 05:19:46 ID:uknrW7DG0
「じゃあ用事があるからおとなしくこの部屋で待ってるんだぞ」
ソシュウに言われ、部屋の鍵まで閉められたザンは、これじゃまるで監禁じゃないかなどと
ブツクサ言いながら、窓際に佇むリュミールの隣までやってくる。
「見てザン、夕日が沈む…」
はるかヨリュウ山脈に沈み行く夕日を眺めながら、リュミールはなにかを考え込んでいる。
「街の灯りも見えるよ。綺麗だね」
リュミールん並んで、ザンも夕日や夜景を見続ける。
しばらくは無言の状態が続いた。
しかし、リュミールはある決心をする。そしてその決心をしたからにはもう後には引き返せ
ないこともか覚悟する。
「ザン……」
「なんだい?
「私、ザンに言わなくちゃならいことがあるの」
「えっ?」
「本当は私、記憶がもう戻っているの」
窓のガラスに額を押し付けて告白するリュミール。
ザンはその真意を測りかねて質問する。
「じゃあなぜ黙ってたの?」
リュミールは一泊間をおいて答えた
「それは、私が人間じゃないから」
「えっ?」
リュミールの瞳には、もう涙があふれかえっていた。小さな嗚咽とともに話し出す。
「ザンに嫌われたらどうしようかって思って、ずっと言えなかった。でもザンに嘘をつくのは
もっと嫌だったから……」
リュミールの肩は小刻みに揺れていた。よほどの不安だったのだろう。
しかしザンはそんなリュミールの不安をいとも簡単に消し去った。
「よかった。てっきり僕のほうが嫌われてたのかと思ってた」
予想外のザンの言葉に、びっくりしてザンのほうに顔を向けるリュミール。
「そんな、私……」
「僕は君が好きだ!」
リュミールの声をさえぎって、ザンが叫んだ。

235 :バーディーと導きの神:2006/07/16(日) 05:20:33 ID:uknrW7DG0
「その、君が人間じゃなくても、僕は君が……、今のままの君が好きなんだ……。うまく
言えないや、ゴメン」
頭をかきかき苦笑いを浮かべるザン。
リュミールは、そんなザンを心底から好きになった。
「ザン、大好き!」
リュミールは思いっきりザンの胸に飛び込んだ。

そして朝、ザンたちとは違う寝室に案内されたバーディーは、朝食をとるために食堂へと
向かった。
「よう、姉ちゃん。いい朝だな」
おきぬけのバーディーに声をかけてきたのは、ルアイソーテの駐屯地で出会ったマッチョ
男だった。
「俺の名はシアン。どうだい一緒に朝食でも」
シアンはダンディに決めたつもりだったようだが、『そういう時期』ではないバーディーは、
シアンのコナかけにまったく反応しない。
「なにか私に用事でもありましたっけ?」
シアンが盛大にコケる。しかしそれでもめげないのはさすがだ。
「用事はないけどな。俺は姉ちゃんと一緒にメシが食いてえんだ」
「それなら別にかまいませんけど、ここの食堂、お金いるんですか?」
「ああ、そりゃまあな」
まいったなーとバーディーー。
シアンが事情を聞くと、バーディーはこの国の通貨を持ってないときた。
これは俺にも運が向いてきたとシアン。
「任せな。俺がおごるからよ」
「え、でもそんな好意に甘えるわけには」
「いいってことよ。でもおごってやっから、今日一日俺とデートしてくれねえか?」
「デート?」
「そう、デートだ。俺がこの王都を案内してやるよ」
「うん、それは面白そうですね。いいですよ、その話乗ります」
バーディーが両手を叩いて承諾する。
しかしシアンの悲劇はここから始まったといっても過言ではない。

236 :バーディーと導きの神:2006/07/16(日) 05:21:30 ID:uknrW7DG0
「じゃあバリックのフライとマリルスープを追加しますね」
「おーおー、もう好きにしてくれ」
哀れシアンは3か月分の俸給をバーディーの胃袋に献上してしまったのだった。

その頃ザンとリュミールは王城のテラスにいた。
「朝ごはんおいしかったねー」
「うん……」
なんとなくぎこちない二人。
「夕べは…」
ちゃんと眠れたかと聞きたかったのだが、リュミールが夕べのことに反応してポッと顔を
赤らめたため、ザンは続きを言えなくなった。
しばらく小鳥の鳴く声がテラスに響き渡る
「もう少ししたら家まで送ってくれるって。君も、来てくれると凄くうれしい」
ザンがタイミングを計って切り出した。これでうんと言ってくれなければどうしようなど
とは考えなかった。
「行きたい……。行ってザンと一緒に暮らしたい……。でもダメなの、ザン」
そしてリュミールはザンに笑顔でこう告げた。
「私、しなくちゃならないことがあるから」
と。
「リュミール……」
ザンはリュミールにそんな顔をされて言われてはなにも言えない。
「南西のずっと行ったところに人の入れない土地があるの。私そこに行かなければならないの」
「どうして?」
「それは……」
言って、顔を赤らめるリュミール。
「ザンが好きだから」
そして振り向いてこう告げる。
「本当よ」
そういうリュミールの言葉に対するザンの反応は早かった。
「わかった。信じるよ。でも僕も一緒に行くからね」

237 :バーディーと導きの神:2006/07/16(日) 05:22:57 ID:uknrW7DG0
「ザン!来ちゃダメ!危険だもの!死んじゃうかもしれないのよ!!」
しかしザンの笑顔はあくまで今までどおり優しいままだった。
「じゃあなおさら君一人じゃ行かせられないよ。僕だって君に嘘をつきたくないもの。ど
んなことがあっても君を守るって森で約束したよね。だから僕も行く」
「ザン……」
「そうと決まったら準備しなくちゃ!やったるぞーっ!!」
大いに張り切るザンだが、リュミールの表情はあくまで暗いままだった。

「あーあ、お前さんがあれほどの大食漢だとは思わなかったぜ」
財布がほとんど空っぽになったシアンが泣いている。
「ご馳走様ですシアンさん」
それと比較してバーディーのほうは上機嫌だ。
「それじゃこれから街の案内をお願いしますね」
「へいへい」
バーディーの外見と内面のギャップに辟易したシアンはすでにデートに乗り気でないよう
だ。
そこにリュミールを連れたザンが通りかかる。
「あ、ザン君にリュミールちゃん」
「こらガキども、廊下を走るんじゃねえ!怪我するぜ」
「ごめんなさーい」
ザンが素直に謝る。
「どこ行くの?」
バーディーは呑気に尋ねる。
「街でーす」
ザンは答えるだけ答えると、リュミールの手を引いて階段を駆け下りていった。
「もうせっかちね。街なら私たちと一緒に行けばよかったのに」
バーディーはちょっと不満げにごちた。そこにソシュウが通りがかる。
「よお」
「お、ソシュウ。なんか用か?」
「いや、弟を見なかったか?」
「ん?ああ、さっきここを通ってたぜ。街へ行くって言ってたな」

238 :バーディーと導きの神:2006/07/16(日) 05:23:44 ID:uknrW7DG0
「そいつはまずいな……」
「なにかあったんですか、ソシュウさん」
「いや、別にそういうわけじゃないんだが、この街の結界を管理してる守りの長が、なにやら
街のほうで妙な気配がするって言ってるんだ。で、街に出ないように言いに来たんだが……」
「それは連れ戻したほうがいいんですか?」
「ああ。できれば俺が行きたいんだが、今から作戦会議に出なけりゃならないんだよな」
「じゃあ私とシアンさんで行ってきますよ」
バーディーは気安く買って出る。
「えー、俺も?」
シアンが嫌そうな顔で言う。
「あら、シアンさんはこれから私と街でデートのはずだったじゃない。それに私一人じゃ
不案内じゃないですか」
バーディーが意地悪そうに言う。
ソシュウも抜け駆けしたシアンに対して意地悪になる。
「なに、俺が作戦会議だというのにデートだと?よし、お前行って女の子だけでもいいから
連れ戻して来い。これは命令だ。反論は許さん!」
「……承知……」
シアンは観念した。どうやら今日は厄日らしい。
「じゃあ私たちはすぐ行きます。少しでも早いほうがいいでしょ?」
「すまん。じゃあシアン。お前しっかり探してこいよ」
「へいへい」
シアンがいかにもめんどくさそうに答えると、バーディーはシアンの太い腕を引っ張って
階段を下りていった。


239 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/16(日) 06:19:07 ID:uknrW7DG0
ザンとバーディー、新たなる冒険への序章への巻です。
ついでにシアンの受難の巻きでもあります。

人物設定その7(エルデガインより)

・シアン:マッチョ体型の内的念動魔術士。とにかく体の頑丈さは天下一品。
     女性好きな面があり、これと思った女性には片っ端から声をかけるが、いつも撃沈している。
     義理堅く熱血漢な頼りになる男だ。
     作者円氏お気に入りのキャラクターであり、初出は同作者の作品「ロマンシア」。

>>232さん
こっからが本番といっていいです。
>>233さん
原作は私はかなりの秀作と思ってます。一読をお勧めします。
この原作にどうバーディーを絡めるかが本作の課題です。

240 :作者の都合により名無しです:2006/07/16(日) 10:14:19 ID:cENizu7l0
バーディにエルデガインが絡んでいるんでなく、エルデガインにバーディが絡んでいるのか。
両方知らないけど、ゆうきまさみは好きなんでバーディは一度読んでみよう。

痴話話から冒険の幕開きですか。どのくらいの長編になるか想像はつきませんが応援してます。

241 :ふら〜り:2006/07/16(日) 12:04:00 ID:Wlt1aq6i0
ここんとこ絢爛賑やかですねぇ。私も早く書きたいなぁ……ネタはあるんですがなかなか。

>>サナダムシさん
捕らわれのお姫様は通過済みの井上ですが、なかなか特異な立ち位置ですね。リュミール
みたいな可憐路線でもなく、今はまだ加藤と共に戦えるほどではなく。でも何だかんだで
加藤の支えになっていることは疑いようもなく。お姫様としても戦友としても、有望有望。

>>41さん
こーゆーのを出されると、答えが気になるではないですかっっ。いや、一問目はマジメに
計算しようとして途中で気がつき己の迂闊さに地団駄したので結構ですが。で本編、舞台
も人物関係も思いきり広がりかけたところで止まったので気になってますよ〜。続き乞う!

>>17〜さん
ザンの能力、思いのほか制限がキツかった模様。まぁあまり彼が役立ちすぎるのも、バー
ディーの立場見せ場に関わりますしね。あと、なかなかの好漢っぷりを見せてくれたシアン
ですけど、こういう展開だとアーマヤーテの上層部も怪しく、場合によると……さてはて。

>>かまいたちさん
お、「かまいたちの夜」にもあったお約束展開の一つ、探索がきましたね。ここでの集団
行動の中に、犯人の証拠隠滅活動があるか不用意な一言があるか。二人一組にでもなれば
その場で襲われる可能性もあるし、次回次々回辺りは重要になりそう。しかと見極めねば。

242 :ふら〜り:2006/07/16(日) 12:04:47 ID:Wlt1aq6i0
>>銀杏丸さん
最初気づきませんでしたが「むーん」て……笑うべきなのか不気味さを怖がるべきなのか。
>第二回後半は戦闘はじまりますので、
お、楽しみにしてますぞ。銀杏丸さんの場合は戦闘そのものもさることながら、その背景・
信念や葛藤がカッコ良いので、その辺りをじっくり描いて頂きたいところ。待ってますっ。

>>一真さん
ほほう。なかなか男らしいというか、上に立つものらしく(いい意味で)偉そうなことを
言ってるではないですか近藤。ちょっと、いやかなり見直しましたぞ。とか思ってたら、
何だか一気に急転直下……なるほど、これでシリアスに向かう? でも番外編って一体? 

>>ウルフズさん
いやいや本当に、大学で真面目に勉強するって偉いです。我が身が恥ずかしいったらありゃ
しない。留年こそしなかったけど、教授とケンカ別れして講義蹴ったことなら一度……
と、とにかく、勉学にお励み下され。当方はいつまでもお待ちしております故っ。


243 :AnotherAttraction BC:2006/07/16(日) 16:44:45 ID:IpwdZS4R0
パート39から
濡れ手拭で満配の木箱を叩く様な音と、時折短い悲鳴が断続的に響き渡る。しかし鉄の猛獣達は意に介さず唸りを上げて
スヴェンに向かって殺到した。
トラックは、スヴェンを囲む形で衝突して停まった。初めから轢き殺す心算なのは誰が見ても明らかだ。
そして停まるや降りた男達は、手に手に過剰火力の銃器を握っていた。
「な……なん…でだよ………誘うだけって…言ったじゃ……」
先刻のマフィアが、這い蹲りながら吐血と共に男達に異を唱える。だが男達の返答は沈黙と一発の銃声だけだった。
「…野郎……居ねえぞ」
「車体の下をくぐって逃げたんだ。捜せ!」
轢き殺した連中など気にも留めず、男達は銃口と視線を周囲に配った。

一瞬早く逃げおおせたスヴェンは、廃材の陰から男達を見やる。
動きから察して全員がその手の訓練を受けており、しかも持っている銃器の質は抗争レベルの代物ばかり。
その上退路も完全に封じられていた。
―――こいつら…田舎モンのマフィアじゃない。
更に良く見れば、幾人は見知った顔が居たではないか。
「聞こえるかァ! スヴェン=ボルフィードォ!!!」
大きな機関銃を抱えたスキンヘッドの巨漢が、彼の予想を完全に裏付けた。その男には見覚えどころか面識がある。
彼は………副長官の友人にしてブライアン一家の重鎮、ヴァシリのボディガードだった。
「お前はやり過ぎたんだよ! トーシロが分不相応に色々するから、こうするしか無くなっちまったんだ!
 悪く思うんじゃねえぞ!!!」
―――あの馬鹿爺ィに嫉妬豚、此処までとち狂いやがったか。


244 :AnotherAttraction BC:2006/07/16(日) 16:45:58 ID:IpwdZS4R0
「副長官はな、前後が見えなくなるほど怒っていたのさ。俺を知ってれば、暗殺への対策を立ててるだろう事は判った
 筈だが、それを考えようともせず真っ向から俺を殺しに来たんだ。
 ……間抜けた話だ、俺はとっくにあの副長官室でのやり取りを録音してブライアンに送ってたんだからな」
或いは自嘲とも取れる微笑を浮かべ、スヴェンは力無く紫煙を吐いた。
彼の最大のミスは、権謀術数の経歴が保険となって副長官への抑止力になると思っていた事だ。
幾ら欲しか能の無い木っ端悪党でも、我が身は可愛いものだ。であればスヴェンが去り際に言った台詞の真贋を
見極めるまでも無い。副長官自身が身を以って知る真実だからだ。
だが、彼の無意味に高過ぎるプライドがその目を曇らせた。
スヴェンに傷付けられた痛みは、恐らくヴァシリにも伝染し、挙句この暴挙に走らせたのだ。
「……ある心理学者が『この世で最高の危険物は、無知と無垢である』とか言ったが、全くその通りだ。
 行動理念はどうあれ、俺を襲うのは俺と心中するのと同義だ」
だからこそスヴェンは、副長官を完全に押さえ込んだと思っていたのだ。

…ざっと見て一対三十。分が悪いのは承知の上だが、手間を惜しんで襲われる事前提の策を考えなかったスヴェンが悪い。
その状態でも何人かを返り討ちにし、銃器を奪ったものの、やはりこれだけの物量差は覆せなかった。
―――クソッタレ。
奪った自動式ショットガンを杖に、スヴェンは足を引き摺って毒づいた。
左の太股に受けたライフル弾が運悪く足の中に残り、彼の行動を激痛と出血で制約し続ける。
右肩にも、散弾が二発食い込んでいた。お陰で先刻このショットガンを撃った際には、ストックが其処に押し込まれて気を失う所だった。
―――ふざけるな、絶対生き残ってやる。俺には馬鹿共を管理統一して、支配する権利が有るんだ。
   あんな暴力しか能の無い豚以下共に、断じて殺されてたまるか。
無声の悪罵を吐き続ける彼に、足音が近付く。気付き物陰に隠れると、苛立った男達がどやどやと周囲に銃口を巡らせながら
現れた。
「……あの野郎……どこに行きやがった?」
「逃げたんじゃ……」
「それは無えよ、全部の出口にトラップ仕掛けたんだ。迂闊に出てきゃ爆死だし、外してる最中なら狙い撃ちだぜ」
―――クソッタレ。
この廃工場に入ってずいぶん言い募った言葉を心で吐きながら、スヴェンは物陰越しにショットガンを向けた。

245 :AnotherAttraction BC:2006/07/16(日) 16:47:20 ID:IpwdZS4R0
「これで八人目か………ハリキリやがって」
スキンヘッドの男は、散弾を浴びた死体達を前に苦々しく呟いた。
「見て下さい、あいつの血です。それに……」
部下が指し示した物陰には、反撃の為か成る程少なくない血痕が有る。しかもそれは地面ばかりではない、壁にもだ。
「ドテッ腹か、そりゃいい」
男が血痕から着弾箇所を予測してほくそ笑んでいる頃、スヴェンはそれを遠く背中で聞きながら、脇腹と胸の貫通銃創を押さえつつ
体を無理矢理出口へと押し遣る。
―――クソッタレ。
ここを出るには銃撃戦は避けられない。なので、死体から奪った弾倉を幾つか抱えている訳だが、これがまた重い。
しかも、これだけ有ってもまだまだ残りを相手にするのは役不足だし、何より負傷が重過ぎる。
「!」
突然彼は身を折った。その場に蹲りながら必死に口を押さえ込む。そして、喀血する筈の血を全て飲み込むと、また歩き出す。
血にむせるのは、この状況では好ましくない。居場所を悟られる上に行動が出来なくなってしまうからだ。
―――何処かの臓器……やったか。
彼等の銃弾は、明らかに一般グレードの貫通力を超えていた。でなければこうも防弾ジャケットを撃ち抜かれはしない。
即死ではないにしても、その事実は彼を確実に死へと誘う。おまけに血も足りない。
最悪、狙われるのを覚悟でトラップを外すしかないが、それでもこの負傷で彼等の追撃を凌げるかどうか。
……結論して、彼の頭脳を持ってしても、この八方塞がりを瞬時に好転させる手立てなど無かった。

246 :AnotherAttraction BC:2006/07/16(日) 16:48:00 ID:IpwdZS4R0
一計を案じ、トラックが突き破った壁の穴に向かったが………ご丁寧にも其処にはクレイモア(指向性地雷)が置いてある。
しかも、専用の信号送信機が無い限りどう近寄っても弄っても爆発する最新型だ。
この手の地雷は後方が死角になっているのだが、勿論それを工場の外側にする様な馬鹿はしていない。
「…いよいよ以って、手詰まりか……」
珍しく洩れた弱音に、諦念の苦笑が重なる。
思えば今まで、随分人を貶めて来た。スヴェンの眼と手が届く誰もが気付かずに失敗し、破滅し、死に、その上で生まれた益を
彼に奪われて来た。何故か? 彼が奪う為だ。
別に今更その事を詫びる気も無いし、彼等が非難した所で気にも留めないが、しかし今彼は、彼が貶めた全てに復讐でもされている
様に策に溺れ、こうして命を危うくしている。
これは罰なのだろうか。それとも、神や悪魔とやらが実在するのだろうか。
だが、彼はその思考を馬鹿馬鹿しいと振り捨てた。
―――ンな訳有るか、誰だろうが地獄に落ちたって気付くかよ。
ここまで絶対の自負を持って言える――――――完璧だった、と。従ってこれは、単なる不確定要素によるアクシデントに過ぎない。
勝てる筈だ、切り抜けられる筈だ、今までそうして来た様に。
と、思案に耽っていたその時だった。

目の前のクレイモアが電子音と共に爆ぜたのは。

衝撃波に、スヴェンの体は紙人形の様に工場内部へと吹き飛ばされた。
そして次に味わったのは、顔面に叩き付けられた巨大な壁。それが地面と気付いた時、眼窩が折れる音と、有り得ない激痛が
右目の辺りから爆ぜた。眼球に骨折した眼窩が突き刺さったのだ。
「ぐ……があああぁぁぁァアァァッッ!!!」
転げ回りながら激痛に悶絶する彼の額に、機関銃の銃口が垂直にぴたりと向けられた。
「…ようスヴェン、お前の為に外してやったぜ。嬉しいか?」
ようやく落ち着いたスヴェンの隻眼に映ったのは、あのスキンヘッドとその部下達だ。どうやら先刻の爆発は彼等の操作と見える。
「……おま…けに……破……片抜きか……」
「そうさ、男らしく弾喰らって死んだ方が良いと思ってな」
わざわざ殺傷用の破片やベアリングを除いたのは、スヴェンを自分達の手で殺す為だ。断じて彼を気遣った訳ではない。
正に絶対絶命だった。

247 :AnotherAttraction BC:2006/07/16(日) 16:48:35 ID:IpwdZS4R0
「……その眼で何か見えるか? スヴェン」
機関銃の銃口越しに、男は満身創痍の彼を嘲笑った。
誰がどう見ても、彼は銃口を睨むので限界だ。仰臥するその貌には、これ以上の闘志が見られない。しかし、
「………チャンスをやる。今すぐ俺を…病院に連れて行け、それでお前達はブライアンに…殺されずに済む」
「…あ?」
死を前に、不遜や虚勢ではなく苦しみつつもただただ上から淡々と告げた。
男は勿論、聞いた誰もが首を捻るほど、それは即答且つ明瞭この上ない。
「馬鹿かお前は。捜査の不手際でくたばるお前を、何で俺達が助けなきゃァならねえ?
 それに、ボスに殺されるだと? 有り得ねぇよ、ここまでの足跡はきっちり消してるんだぜ」
言いつつスヴェンの頭を爪先で小突いたが、彼は全く動じなかった。
「…俺は、副長官との不仲の証拠をブライアンに送った…」
「だから何だ?」
「…なら、ブライアンにはこれが副長官の仕込だと判る筈だ…そして、此処までやるのには、あの豚一匹じゃ無理だって事もな。
 ………そうなりゃ、ヴァシリは当然殺される。それどころか、部下のお前等もな。足跡捜す必要なんぞ無い。
 ……判ったら………黙っててやるから、俺を助けた事にして病院に運べ…」
聞くや周囲の有象無象に動揺が伝播していく。幾ら自分達のボスの命令とは言え、仕事を終えても殺されるのは
どう考えても割に合わない。それだったら、窮地の彼を助けると言うカバーストーリーに応じた方が幾分マシなのでは無いか。
そもそもが怒り狂った中年の安い面子が発端だ、ヴァシリの命令で無ければ命を賭けるなど馬鹿馬鹿しい。
しかし、機関銃の男だけは違う。若干自信を失いはしたものの、なおも食い下がる。
「…仮にそうだとしてもよ…助かったお前が俺達に仕返ししねえとは限らねえだろ?
 それに、本気でお前が死んだからブライアンが動くとでも思ってンのか? 調子乗り過ぎだぜ」
「……俺は……一家の財政の三割を運営してる…俺が…死んだら、それは事実上空中分解する………
 そんな穴を空けた奴を……ブライアンが捜さない訳有るか………」
彼の背筋に、今度こそ薄ら寒いものが走った。

248 :AnotherAttraction BC:2006/07/16(日) 17:05:24 ID:IpwdZS4R0
「――――だ……だとしてもだ! お前が……」
「…復讐なんてするか、鬱陶しい。ヴァシリじゃなくて俺の下に付けば、水に流してやる。
 ……それに、俺の手は司法や組織にまで及んでるから……自首しようと何しようと法的に俺は殺せないし、お前達も守ってやる。
 早くしろ……時間が無い………」
―――――――――――震えが、止まらなかった。彼のみならず、全員が。
眼前で死に掛けたボロ雑巾は、彼等の想像を超える爆弾だった。死はそのまま炸裂であり、その威力は敵対した全てを飲み込んで
焦土の果てに消し去る驚異的な代物だ。然るに今彼等は、その爆弾の効果域に佇んでいるのだ。
当然その恐怖も把握していたスヴェンは、いっそ畳み掛けるつもりで更に論撃の牙を突き立てる。
「今…言う事を聞いてくれれば………死ぬのは爺ィ二人だけだ。
 お前達には……まだ先が有る。ここで………あいつ等の使い走りで終わって良いのか?」
正に決め手だった。これに心を動かされた者は少なくないし、幾人かは銃器を捨てた。あのスキンヘッドも、銃口を
疲れた様に力無く垂らす。完全な勝利だ、疑い様も無く。――――――――だが、

「え……?」
スキンヘッドの行動に驚いたのはスヴェンだけではない、部下もだ。
彼はもう一度、スヴェンの額に銃口を据えた。
「な……何やってンスかユーリィさん!? そいつ殺ったら…!!」
「……そうですよ! あの豚と老いぼれなんざ、見捨てたって良いじゃないですか!」
それを聞いて、彼は何かを欠いた貌で笑った。
「……出来ねえんだよ、それは」
見上げるスヴェンの眼には、彼の絶望じみた諦念がはっきりと見て取れる。有ろう事か、死ぬ覚悟を決めているのだ。
「何故だ……何故…?」
「―――俺は、ヴァシリの隠し子だ。子供が、親見捨てる訳にはいかねえだろ」
想像だにしない情報だった。いや、仮に知った所でそれを気に掛ける必要など有る筈も無い。
親子の……情…? そんな物で死ぬのか……俺が!?

彼は、そんな物を一切知らない――――――知る前に、実の親に捨てられたから。
人は全て、利と痛みでしか動かないと思っていた――――――それ以外の想像が付かないから。
だからこそ、それが全てだと思っていた――――――今までそれで上手く行っていたから。


249 :AnotherAttraction BC:2006/07/16(日) 17:06:10 ID:IpwdZS4R0
その不変である筈の世界観をあっという間に否定され、スヴェンは銃口に死神の嘲笑を見た。
「こんな物だよ、お前の世界なんて」
彼の脳裏にだけ、愉しそうな死神の声が木霊す。
―――死ぬ? ………俺が? 何で? 嘘だろ!?
この世の全てを知ったつもりの天才の前に、彼には絶対に理解の出来ない世界が遂に牙を剥いたのだ。
それを全て唾棄し続けて来た彼を、食い尽くす為に。
震えた、恐怖で。だが銃にではない、殺意にでもない…………情≠ニ言う言葉の真の意味に。
生まれて始めて味わう未知の恐怖に、彼はらしからぬ言葉すら吐いていた。
「た……助け………」
「悪ィなあ、俺達もすぐに行くから、まあ先に待っててくれ」
二人以外の誰一人、掛ける言葉が無かった。果たして情義に殉ずる者に、何を言えるというのか?
撃って止めようにもこの状態では絶対にスヴェンは死ぬ。スヴェンにとっても、部下達にとっても、完璧な手詰まりだ。
「………あばよ」
羽よりも軽く告げられた死刑宣告に、スヴェンの目からは絶望の涙が一筋零れ落ちた。

そして廃工場に、一発の銃声が響いた。

―――――その場にいた全員が、突如起こったそれを理解出来なかった。
男も、その部下達も、何とスヴェンも。
先刻の銃声と共に男が引金を引く間も無く跳ね飛ばされ、スヴェンから離れた場所で蹲っている。
「…な……」
『動くな!!!』
割れんばかりに響いた機械を通した音声を合図に、殺し屋達の全身を無数の紅い光点が這い回った。
続いて周囲から現れたのは、完全武装の特殊部隊。装備も人数も彼等を凌いで余りある。
何時の間にやら罠は解除してあるらしく、脱出経路など望めないほどあちこちから廃工場へと入って来た。
「な…何で………ISPOの特殊部隊が…」
そればかりか、地元の警官隊まで居るではないか。
『今のは警告の為ゴム弾だが、次からは全て実弾だ!! 死にたい奴だけ銃を取れ!!!』
酷く物騒な警告に、殺し屋達は完全に戦意を奪われた。一人、また一人と、地面に銃が投げ出される。

250 :AnotherAttraction BC:2006/07/16(日) 17:07:23 ID:IpwdZS4R0
「な……何が起こって………」
重い上体を無理に起こして成り行きを傍観するスヴェンの元に、見知った影が駆け寄った。
「スヴェン!!」
「…ロイド……」
まるで嬉し泣きの様な笑顔で、彼は地を這うスヴェンに肩を貸す。
「良かった………間に合ったよ、スヴェン」
もう答えるのも億劫なほど負傷し過ぎていた。ロイドにやっとやっとの思いで抱きかかえられながら、スヴェンは何故
こうなったのかを考える。
―――視た≠フか……お前にしちゃ機転が利いてるなロイド。やっぱり、もう暫らく置いてやるぞ。
その傲慢な賞賛をほんの僅かも知らず、ロイドは彼を彼を工場の外へと引き摺って行く。
「救急車も呼んだんだ、だから助かる。だからもう大丈夫、心配無いよ」
脱力し切った人体は酷く重い。その重量に四苦八苦しながら、彼はうわ言の様にスヴェンを励まし続ける。
だがそんな献身著しい言葉など聞く事も無く、スヴェンの眼と思考は全く別に向いていた。
―――見てろよ爺ィ共、それに従うアホ共。お前等全員死刑にしてやる。
そしてこの事態を元に、彼はブライアンとの関係を繋げたまま長官派に下るのだ。全てが彼の思い通りだった、今風は
間違い無くスヴェンに向かって吹いている。
―――ザマァ無いな。情なんぞに縋らなきゃ、俺の手下にしてやったのに。
特殊部隊に取り囲まれた無様に伸びるスキンヘッドの男に嘲笑った。
連中は何が何でも死刑にする様働きかけるつもりだ。そうでもしないと、この負傷と怒りが収まらない。
それに、仮にスヴェンに関して何か喋った所で、彼の息の掛かった弁護士並びに検察官、そして裁判官が表に出る前に握り潰す。
先刻からずっと同じ言葉を連呼するロイドを無視し、彼は今度こそ不動の勝利を確信した。

「…スヴェン=ボルフィードオォ――――ッッッツッ!!!」

251 :AnotherAttraction BC:2006/07/16(日) 17:08:26 ID:IpwdZS4R0
兵士達を体格差と武器の質量差で薙ぎ払い、あの男が今一度、射殺を覚悟でスヴェンへと機関銃を向けた。
―――な……んで…其処まで!?
遂に最後の最後まで牙の剛さを理解出来ないまま、逸らした筈の死神が再び彼へと迫る。
またあの絶望が、弾丸より一瞬早く襲来し、そしてその後死が飛来する―――――――よりも速く、ロイドがスヴェンを
銃弾から守る形で抱え込んだ。
「…え?」
その胸の中で、二人の視線がぶつかった。
――――大丈夫。
音は聞こえなかった。しかし、唇は確かにそう紡いでいた。
そして、一拍置いた次の瞬間―――――――――ロイドの額から、血の花が咲いた。

「………そこで、俺は意識を失った。
 そして次に気が付いたら、包帯でグルグル捲きになって病院のベッドの上だった」

252 :AnotherAttraction BC:2006/07/16(日) 17:08:57 ID:IpwdZS4R0
まず始めに感じたのは、手を握る感触だった。
それを手掛かりに意識を覚醒させると、彼が伏せるベッドの横には、憔悴し切ったマリアと心配そうに眺めるシンディが座っていた。
「…マリア」
彼女の名を呼ぶと、一時其処に笑顔が戻る……も、すぐにまた憔悴へと落ち込んだ。
それだけで充分ロイドがどうなったかは判る。だがそれでも、一応演出の為に訊いて置く。
「……ロイド…………ロイドは、どうした?」
痛む体を上半身だけ起こし、口調に狼狽も混ぜてさも彼を心配するように取り繕う。
予想通り、彼女は何も答えない。口を噤んで肩を悲壮に震わせる。
「…そうか」
と、疲れ気味に枕に体を任せた。実際疲れてはいるが、これもそれらしくする演技だ。内心は、今度こそ生き残った我が身の強運
に喝采を送りたい気分だったが。
―――いい厄介払いが出来たぜ。
それを毎度の様に腹から出さず、口はそれらしい言葉を選んで吐き出す。
「………済まない」
マリアの、憔悴の相貌が崩れた。彼女は握ったスヴェンの手に縋りはらはらと涙を零す。
「俺の…所為だ、済まない……」
彼も腕で眼を覆い、偽物の涙をシーツに零して周到に場に合わせた。だが、その時彼が思っていたのは、
―――右目に染みるな。
それだけだった。

253 :AnotherAttraction BC:2006/07/16(日) 17:20:42 ID:IpwdZS4R0
それよりもまず、今後の事だ。
副長官派はもう殺したも同然、そして長官派では事実上全てを掌握している。
外務次官など傀儡同然に操れるし、彼が動かすブライアン一家が上げる利潤も計り知れない物となるだろう。
そして何より、彼が皆の手綱を握る事でクロノスに付け狙われぬ様に調律する事も出来る。
太鼓判を押したくなるほどの大勝利だ。もし病室に彼一人で有るなら大笑している所だ。
それに――――――、
粛々と涙に暮れるマリアと、訳が判らず泣き出した二人を見比べるシンディを視界の端に捕らえる。
―――安心しろロイド、二人の面倒は俺が見てやるさ。
愛人は権力者のステータスシンボルとも言える。それが美しく、有能であるなら何の文句も付け様が無い。
それに、シンディはマリアの娘だ。きっと美しく育つだろう。
これより後の人生は公私共に順風満帆と言って良い、彼が今日まで蒔き続けた種は、鈴生りに甘美なる実を実らせたのだ。

「―――おじたん」
場にそぐわないほど無垢で無邪気なシンディの声が、スヴェンを呼んだ。
見ると彼女は、少し厚みの有る封筒を彼へと差し出していた。
「パパが、おじたんにあげるって」
成る程、表にはロイドの筆跡で「For Dear Myfriend(親愛なる我が友へ捧ぐ)」とある。
……中に入っていたのは、イヤホンマイクとMDプレイヤーだった。

254 :AnotherAttraction BC:2006/07/16(日) 17:21:21 ID:IpwdZS4R0
『……スヴェン、君がこれを聞いていると言う事は、どうやら僕は運命に勝ったらしい。
 御免よ、今まで言えなくて。君に話したら未来が僕や君でもどうにもならなくなる位変わってしまうから、言えなかった。
 判っているかもしれないけど……君は、あの廃工場で死ぬ筈だったんだ」
かくして、録音されていた声も、内容も、概ね予想通りだった。無論驚きはしない、ただ、ああそうかと思っただけだ。
『視えた≠フは、もう随分前からなんだ。君の未来がある日突然見えなくなって、それをずっと視¢アけた結果、君が
 あそこで死ぬって判った。
 苦労したよ、君に防弾チョッキ渡した程度じゃ全然死への未来が消えないんだ。
 撃たれて死ぬ。爆発で死ぬ。失血で死ぬ。臓器不全や治療が遅れて…ってのも有ったよ」
ご苦労な事だ。だが、身を呈して助けてくれた事だけは、聞き終えた後泣いてやる位には感謝しておこうか。
だが同時に、馬鹿めと嘲笑ってやりたかった。死ねば元も子もない、と言う事を知らない、もしくは其処に持っていけない
愚鈍に対して。

『………でも君は、感謝なんかしないだろうね』

唯一残った左目を見開いて、スヴェンは驚愕した。
理解不能だった。言うまでも無く聞き違いでは無い、それ≠ヘロイドの声で、ロイドの言葉で、ロイドの口調だ。
何だ? 何だ今のは? 合成特有の微かなノイズも聞き取れなかった。ならばそれは、彼の意思と言う事になる。
何故こんな言葉が出る!? 有り得ない、ロイドは完全に欺き切った筈だ。
だが続く言葉に、スヴェンは更なる理解不能の霧中へと放り込まれる事となる。
『今だから言わせて貰うよスヴェン。
 君はずっと昔から僕の事を、トモダチだなんて思ってない。判っていたよ、ずっとね』

255 :AnotherAttraction BC:2006/07/16(日) 17:35:15 ID:IpwdZS4R0
映画「サイレントヒル」超怖ェー、でも超面白ェー。
よし、ここは俺もいっちょホラーに挑戦だ! 
なので次回、「恐怖! ハサミ男がやって来る!! 三軒隣のもうチョイ先から!!」
を、お送りします!! 乞う、ご期待!!

…ええ、勿論嘘ですよ。NBです。
いや今回、いつにも増して詰め込んだ詰め込んだ。長過ぎた長過ぎた。
毎度の事ですが、どうにも投稿直後は自身に対する疑問符でいっぱいです。
内なる声には「お前今回ヘボくね?」とかしょっちゅうですね。
流石に連投規制たっぷり入るのは自分としてもどうかと思いますね。

さて、いよいよ次回若スヴェンはある意味ツケを支払う事になります。
それが今と等価交換になるかどうかが次回のキモと言えるでしょう。
鋭意製作中ゆえ、しばしのお待ちを。
なので今回はここまで、ではまた。

256 :作者の都合により名無しです:2006/07/16(日) 21:02:19 ID:6/6remek0
スヴェンは昔の方がかっこいいなー
ハードボイルドで、影を背負ってる感じで
いよいよ次回は過去との決着編ですか。
決着となるのか、十字架となるのかはわからんが・・


しかしまさかこのハードなシリーズが終わったらTO LOVEる編に突入するとは

257 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/16(日) 22:35:27 ID:ekPN4aFz0
運動会の200リレーのトラック。
森にぽっかりあいた広場の外周や形はおおよそそんな感じだ。
その一角に、青い卍が浮かんでいる。
「忍法・火まんじ」なる幻妖の炎であり、地面すれすれから根来たちを青白く照らしている。
しかしこの炎、元をただせば根来の血液より発したものであるから、可燃性に物理的な裏づけ
などはまったくない。ややもすると何らかの幻覚作用の疑いすらあるが、しかし見よ!
確かにスラックスの生地を炭と化し、久世屋の大腿部からもねっとりとした白煙をあげる「忍
法・火まんじ」を!
何という怪異! 端倪すべからざる魔人のわざである。
ただしここは山肌からつらなる森。
「忍法・火まんじ」の炎が実体であるのならば、木々に移り山火事を起こる恐れもあるが──。
幸い炎はいちばん手近な木からすらも5mほど離れており、万が一にも久世屋が立ち上が
れたとしても、地面にとりこぼされた「忍法・火まんじ」の青いきらめきは枯れ葉を焦がす程
度に留まるだろう。
つらつら案ずるに、根来は以上のような思惑のもとに「忍法・火まんじ」を用いたのであろう。

「ところで根来さん。俺とあなたは結構似ていると思うんですよ」
青く輝く炎に足を焼かれながらも、久世屋は唇の端をにんまりと歪めた。
「抽出への希求が非常に強いところがね。会社でのお仕事振りや先ほどの忍法の数々、抽
出を強く欲していなければとてもとても身につかないモノでしょう。俺の持論は既に聞かれてるの
で割愛しますが、修行や鍛錬なんていう苦しい作業をくぐりぬけ、技術を得た自分という物を
抽出するのは、希求あればこそ」
何がおかしいのか。
片足を切断されて、残る両手片足を拘束され、身を焼く炎も徐々に体へ上りつつある危機的
状況でこぼす笑みなど、気が触れた証でしかないだろう。
「ご心配には及ばず。俺は至って平静ですよ。俺と根来さんの明確な違いが分かるぐらい」
根来は無言で刀の切っ先を、久世屋の右眼へ突きつける。
核鉄を渡した第三者の詳細を吐かぬのなら、刺す。
突き刺すような気配が、静かな夜へ主張している。
「そこですよ。根来さんのそういう所が、俺と違う」

258 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/16(日) 22:36:20 ID:ekPN4aFz0
文字通りすぐ目前光る切っ先に怯むコトなく、久世屋は喋る。
「『第三者』などというあやふやな存在が事件に浮かべば、真剣に調べようとする。与えられ
た任務を完璧に遂行するためにね」
たゆとう炎の青が金の刃へ反射して、幻燈じみた光と影を作り出す。
根来の目線は身動き取れない久世屋の全身をしっかと舐めまわし、不審な動きあらば即時
処断に映れるよう、備えている。
その緊張感と炎と、風のない夏の温度があいまって、むせ返るような熱気が立ち込めていく。
「誰も信じないでしょうが、あなたの組織への帰属意識はきっと人一倍。任務を完璧にこな
そうとしているのが証拠です。組織の意思を何より尊重し、誰よりも組織に利益をなそうとし
ているますから。ただ抽出への希求が強いだけなら利己主義ですが、希求に人の都合をフ
ィードバックできるなら……組織人としては充分優秀」
もっとも俺は優秀とみなされたくないので前者で充分です。と久世屋は笑い
「そして後者たるあなたは、組織への斟酌ゆえに勝機を逃した」
何の予兆もなく、爆発が巻き起こる。
箇所は、忍法・月水面にて拘束されている久世屋の両手首と左足首。
そして忍法・火まんじが燃え盛る右もも。
爆発に怯むコトなく突きを繰り出した根来の、揺ぎなき職務精神は賞賛に値するが、しかし
突きは。

.・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ .・
木に刺さっていた!

久世屋がいたのは木から5メートル離れた場所だったにも関わらず、だ。
そして木は爆発した。
威力は軽微。根来は身じろぎ一つせず視線を別の場所に向けた。
前述の通り、広場の広さと形状はリレーのトラックほどである。
そしていま根来が見ているのは、トラックの直線とカーブの境目あたりだ。


259 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/16(日) 22:37:07 ID:ekPN4aFz0
木木木木木木木木木木木木木木木
木木木木木木木木木木木木木木木
木木木木 , ─── 、木木木木木      ○ 根来
木木木 ィ        ヽ木木木木        △ 久世屋
木木木(  木○       )木木木
木木木 ヽ        ィ木木木木
木木木  △ ─── ´木木木木
木木木木木木木木木木木木木木木   

「一個人としての能力は、根来さんの方がはるかに上でしょう。ただしあなたは組織人なので
しがらみに縛られてしまう。さっきのようなつまらない尋問をせざるを得なくなる」
響いた声には相変わらず敵意がない。
かくれんぼで最後まで見つからなかった子どもが、隠れ場所を説明するような調子だ。
「俺は思ったんです。

ああ、反論すれば必ず筋道だった意見で追い詰めてくるな。

って。事実あなたは途中までそうでしたので、時間稼ぎができました。一言一句と同時進行で
俺は一手一手を積み上げて」
久世屋がいる。
両足で地面を踏みしめ、そこにいる。
右足を切断されたにもかかわらず、だ。
履いているスラックスが原型を留めている所を見ると、どうやら接合したようだ。
だが切り飛ばされた足は、いま根来のいるあたりに落ちたはず。
そこからいかにして彼は足を取り戻したのか。
付記すると、彼の足元にはぼっかりとした穴が開いていた。
周りはやや盛り上がっていて、さながら切り株を引っこいたような様子。
土の乾き具合からみてほんの今しがた開いたようだが、はて──いかにして?
抱くべき疑問と
「配置は完了しました」
謎めいた一言などには聞く耳持たず、根来は一足飛びに斬り込んだ。
が。

260 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/16(日) 22:37:42 ID:ekPN4aFz0
久世屋は消え、代わりに木が出現。斜めに斬りつけられ、爆ぜた。
火花は根来の髪から胸元までに注いだが、彼はまばたき一つ取らない。
マフラーについた火花を鬱陶しそうな手つきで一払いすると、踵を軸に180度降り返る。
鍛え抜かれた夜目が6メートル先の真正面に捉えたのは、散乱する扇や番傘。
元いた場所である。
そこから一直線に駆けた後に体をひるがえし、そこをなお真正面に捉えられるというコトは。
根来自身に起こった動きが、「彼が実際にした物」だけだと指し示している。
すなわち。
斬撃を繰り出した根来が何らかの能力により、立ち位置を変更された訳ではない。
位置を変じたのは久世屋だ。
「簡単には終わりませんよ。これから俺の武装錬金が真価を如何なく発揮しますので」
彼は根来の左。おおよそ6mほど離れたところにいる。足元にはまた穴がある。
広場をリレーのトラックになぞらえるなら、カーブの一番盛り上がった所だ。

木木木木木木木木木木木木木木木
木木木木木木木木木木木木木木木
木木木木 , ─── 、木木木木木      ○ 根来
木木木 ィ        ヽ木木木木      △ 久世屋
木木△(   木      )木木木
木木木 ヽ ○       ィ木木木木
木木木木木 ─── ´木木木木
木木木木木木木木木木木木木木木 

「暗剣殺の類か」
ボソリ呟く声が、耳ざとく捉えられた。
「暗剣殺? グルンガストのですか?」
「いや、第4次から第4次Sへの変更の際、命中率が−14%から+20%に補正された暗剣
殺ではない」
「……あなたなんでそんなコト知ってるんですか?」
久世屋は茫然として相手を見まもった。根来は角ばったあごをなでていた。

261 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/16(日) 22:38:30 ID:ekPN4aFz0
「殺気を感知するという意味の暗剣殺。これは尋常の武芸試合ならばともかく、忍者の場合
には大変な能力だな」
ぬけねけと引用した。(※ 一部、忍びの卍の序盤をパロっております)
元を正せば暗剣殺、忍びの卍で根来忍者が使っている忍法だ。
殺気を感知するなりパっと逃げるのがその性質。
「また忍法ですか」
理解と呆れの入り混じった生ぬるい笑みが根来に向く。
これを実際に見たくば、着メロを覚醒にして、職場で「何の曲」と聞かれたら「仮面ライダー剣」
と答えれば良い。そして職場の人間関係を一切断ちたくば、着うたを「恋のミクル伝説」にす
れば良い。素直に好きといえないキミも、勇気を出してヘイアタック。
ところでグルンガストが用いる暗剣殺の方だが、正式名称は、計都羅喉剣・暗剣殺という。
(「喉」は「目候」を一字にしたものであるが、JISの都合上「喉」で代用する)
第4次スーパーロボット大戦が出典の、蝶・強力な技だ。
筆者はかつて最終面にてシュウ=シラカワに喧嘩を売ったのだが、その時大活躍したのが
計都羅喉剣・暗剣殺である。
なお最終面において、筆者が魔装機神の連中を囮にネオグランゾンの1個小隊を分散させ
たおかげでマサキ以下数名が死に追いやられたり、ゴッドボイスの使いすぎでライディーンが
出撃できなかったのはあまりに有名な話である。
余談がすぎた。
根来は無表情にかすかな緊張を浮かべた。
「私ならばいざ知らず、貴様が暗剣殺を用いようとは」
久世屋は困ったように頭をかいた。
「根来さん、まさか本気でいってるんじゃないんでしょうね?」
「違うのか」
「違いますって。いやホント。忍法とかいい加減にして下さい」
さっき番傘を興味深げに眺めていたクセに何をいうか。
「普通に考えたら俺の武装錬金の特性でしょう?」
「ならば大方──…」
根来は木や久世屋の足元を観察して頷いた。
「『百雷銃を仕掛けた物体と貴様自身を入れ替える』といった所か」

262 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/16(日) 22:39:36 ID:Q73v7N1C0
「切り替え早いのもどーかと。でも気づかれましたか」
「考えるまでもない。攻撃に合わせてかき消えた貴様と、その場所に現われた木。そして今の
貴様の足元にある不自然な穴を総合すれば……答えは自ずと導き出される。足元の穴は、
身代わりになるべく移動した木の痕だ。違うか?」
ようやく出てきた推理らしい推理に久世屋は拍手した。
「正解です。他にも戦闘へ支障ない程度にお答えしましょう。何せ俺がこの使い方を思いつ
いたのは、あなたの言葉のおかげ。答える義務は充分あります。思い出してください。あなた
は俺の、ひゃく……ひゃくなんとかいう武器をどう解説されました?」
根来はいったん、「百雷銃(ひゃくらいづつ)だ。”百”の”雷”に火縄銃の”銃”」だと訂正し。
久世屋は「それはおかしい。”銃”とついてるなら読みは”じゅう”では? ”づつ”と読ませたい
なら”筒”にすればいいのに。だいたい、実際に使ってるのも筒ですよ? なのになんで改名
しないんですか。惰性まみれじゃないですか」と反論し。
根来は「一部では筒とも表記するが、それは本題ではない」と会話を打ち切った。
で、本題。百雷銃の解説について。

「忍具の一種で、主に爆竹が用いられている。逃げ道の反対側に仕掛け、逃走の際に着火
し派手な音をあげて敵を殺到させる。すると本来の逃げ道への警護が手薄となり、安全に
逃走をはかれる。ただし。いま貴様が用いてる形状は本来のモノではない」

一言一句間違えずに根来はそらんじ、最後の段ですぅっと目を細めた。
「私の指摘で使い方を変えたか」
「ええ。仕掛けました。元々は逃走を助けるための武器なので、こういう使い方もアリでしょう。
俺の精神にも合ってますしね。厄介ごとをのらくくらりとかわし、時に爆発をおこして変形もで
きて、何よりおもちゃっぽい」
武装錬金は使い手の精神を具現化するというが、これほど精密に体現するのは稀だろう。
「ちなみにこの形態で仕掛けてあります」
久世屋は右手からひょいと武装を発現した。
それは、ワインレッドの縄とルビーレッドの筒が合体したものだ。
地面に端がつく位の縄には、一定間隔ごとに10個の筒をゆわえつけている。
筒は例の、コウモリに変形する物だ。
縄はその側面にある半円状の板の穴をくぐり抜け、結び目を作り、振りかざしによる筒の
ズレを防いでいる。(図にすると↓のような感じ)

263 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/16(日) 22:43:00 ID:Q73v7N1C0
    _ .        _ .        _  
   │・│      │・│      │・│
 ┌┴‐┴┬、   ┌┴‐┴┬、   ┌┴‐┴┬、
 │    なナ〜│    なナ〜│    なナ〜 →
 │    レ   │    レ.  │    レ   以下、同じように連結。
 └┬‐┬┘.   └┬‐┬┘   └┬‐┬┘    (図では筒の裏側に縄が通っている)
     ̄          ̄          ̄ 

「確かにそれだ。百雷銃(ひゃくらいづつ)の本来の姿はな」
根来の声が喜色を帯びたのは、彼自身の趣味や立場から推して知るべし。
「木とかに仕掛ける時は、縄でくくりつけてあります。ただしかさばるので、一ヶ所につき筒一
個ですけどね。で、俺がこうやって説明しているのは」
「破られない自信があるのだろう」
「冷たい言い方ですねぇ。合ってますけどそれは半分だけですよ。残り半分は、使い方を教
えてくれたあなたへの義理だというのに」
大仰に顔をしかめてふるふると首を横に振る。
「ま、手の内の総てを明かしてないから仕方ないですが。拘束中にどうやって仕掛けたとか
足はどうやって取り戻したとか、入れ替わりの合図はどんなのとか。ああそうそう。拘束から
の脱出方法とか、色々伏せてますし」
賢そうに人差し指を立てつつ、無邪気に笑う。
「以上説明終わり。戦いを再開しましょう」

264 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/16(日) 22:46:20 ID:Q73v7N1C0
山田風太郎作品における根来忍者はほとんどろくでもない扱い。
武装錬金風にいうなら、「海鳴り忍法帖」「柳生忍法帖」「魔界転生」あたりでは調整体なみ。
ただし、「忍びの卍」ではグンとグレードアップして、パピヨンぐらいの大活躍!
キャラありきで小説を読まれる方にはおすすめ。山田風太郎作品の入門書としてもおすすめ。
メインが主人公+忍者3人という、甲賀忍法帖からは考えられない少人数でありながら
彼らの能力を活かして活かして活かしまくって、すごく飽きさせない造りになってます。
付記しますと忍者の一人は武蔵の弟子なので、読めばきっと信玄餅が食べたくなるコト受けあい。
「忍法しだれ桜」も根来忍者の活躍もすごいらしいですが、こっちも絶版&品切れで読めず。無念。

>>127さん
卍の描き方ですが、実は伊賀忍法帖で2人の法師がやった描き方をパロってます。といっても
原作は「歩いて」なのでそれを手の動きへトレースするのに忙しく、肝心要の「卍」の文字
構成を忘れてて…… あ、Wikiによると扇の「要」がそのまま、肝心要の「要」になったらしいです。

>>133さん
いや〜、根来が動いていると嬉しいですね。黒崎薫氏の「根来は忍者マニア」発言を見て
「なら別に忍法使ってもいいや!」と「伊賀〜」の根来法師全員の忍法を使わせた甲斐があり
ます。千歳については、前半部の主役だったのでこのままフェードアウトはないとだけ。フフフ。

>>147さん
動きメインの戦闘になると、内面描写をなくした方がスムーズに進行するので、根来も立つ
瀬が出てきて大助かりです。戦闘とかじゃとても主人公向き。山田風太郎作品でいうなら
「忍法忠臣蔵」の無明綱太郎チック。傍観が基本だけどやる時はやる!てスタンスが特に。

265 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/16(日) 22:47:46 ID:Q73v7N1C0
ふら〜りさん
描きながら自分も思ってましたw 「少なくても傘はいらんだろう傘は」って。根来、お前かくれ
傘といいたいだけじゃないかと小一時間(ry 二人とも技術はあるのに心根は子ども。ああ和む。
火サス空間も「ごっこ」の一環だったのですが、真似だけじゃつまらないので対比と逆転の布石へ。

>銀杏丸さん
実はですね。自分の中で描きづらそうな錬金キャラは、ムーンフェイスとヴィクターとさーちゃ
んなのです。自分との共通項がほとんどないので。だから、ムーンフェイスとヴィクターについ
ては「なるほど。こういう描き方もあるのか」と唸った次第であります。
爆爵については、欲をいえばもう後1レスぐらい掘り下げがあった方が。
銀杏丸さんの手腕ならば、爆爵とヴィクターの出会いから発展する『男同士のやり取り』をそ
れはそれは熱いモノに仕上げられる筈ですので……
パピヨンはドロドロした感情よりも、果てしない上昇志向の方が前面に出るとみました。
または、黄金時代のアフロディーテみたいな感じ? あ、彼といえばアルデバランの恋愛相談
を受ける話が好きですよ。どっちもいいキャラです。

それと、「Never―聖闘士星矢のテーマ―」は爆爵とヴィクターに被る部分が結構ありま
すよ。多分お持ちだとは思いますが、↓でも聞けます。
ttp://www.youtube.com/watch?v=bzdfKIQx8aw&search=seiya%20tenkai

「旅路の果て 記憶の影 Your Eyes その瞳に宿る 祈りの尊さを
傷だらけの翼よ もう一度 はばたいておくれよ あの天空(そら)に続くOneWay」
の、「傷だらけの翼」をヴィクターにだぶらせると、爆爵っぽく。

266 :作者の都合により名無しです:2006/07/16(日) 22:56:35 ID:A9w7ds1u0
>NBさん
NBさん、また文章上手くなった気がする。お世辞じゃなくて。
元があんなに安い漫画なのに、ここまでカッコよく出来るのはすげえ。
スヴェンのニヒリストの感じとか、最後のロイドの言葉とかしぶいな。

>スターダスト氏
根来は抜け忍になるべきか?せっかく高い能力が殺されてますか。
すごい忍術・錬金合戦の感じなのに、何故か笑えるのはイラストが挿入されるから?
実力者同士の真剣勝負なのに何故か微笑ましい。

あと、途中サマサさんかとw


267 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/17(月) 01:07:22 ID:dTkbL1w+0
第十七話「3年Z組銀八先生 一時間目」





 世界で一番有能な教師よりも、分別のある平凡な父親によってこそ、子供は立派に教育される。(ルソー)


 ようするに、金八先生よりも野原ひろしの方が偉大ってことだ。(坂田銀八)


 なんか違う。(志村新八)






268 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/17(月) 01:08:24 ID:dTkbL1w+0
 ※このお話は、前回第十六話までの「シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい」とは切り離して解釈していただきたい。


銀魂高校。
そんな名前の高校があった。
3年Z組。
銀魂高校にそんなクラスがあった。
ここで注意していただきたいのは、Zの発音は「ゼット」ではなく「ずぃー」であるということ。何故かって? そっちの方が格好いいからである。
かつて「ドラゴンボールZ」というアニメが存在したが、よく考えてみればあれも「ずぃー」と発音されていたようなそうでもないような。いや、やっぱりそんなことないか。
とにかく「ずぃー」なのである。さんねんずぃーぐみ。

前回までの舞台は江戸であったが、第三部ではここ、銀魂高校3年Z組の教室を舞台に物語が展開していく。
もちろん、舞台が違えば細かな設定も違ってくる。
例えば時代設定。第二部までは一応江戸時代という設定であったが、今回は現代という設定である。
まぁ、あの異星人が跋扈する架空の江戸時代にこの高校があったとしても、なんら違和感はないのだが。とりあえず、ここは原作になぞって現代としておく。

そして、問題なのはキャラクターである。
仮にも第三部、いくら外伝的なお話といっても、出演者が丸ごと変更ということはないので安心していただきたい。
ただ、今作に登場するキャラは皆、やはり二部までの設定とはどこか違う箇所がある。ま、性格なんかは変わりないので特に問題はない。
言ってみればアレだ。「ドラゴンボール」にアラレちゃんが出たり、「ブラックジャック」に白いライオンが出てくるのと同じ原理だ。いや、ちょっと違うか。

つまるところ、パラレルワールドな訳である。
今作のコンセプトは、その一言で全てが許される。ビバパラレル。

と、随分と前置きが長くなってしまった。
飽きられると困るので、そろそろ本編に移行したいと思う。
それではどうぞ↓

269 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/17(月) 01:09:13 ID:dTkbL1w+0
「説明がなげェェェ!! 一話目からだれることすんなよ! もうあと2レス分しか残ってねぇじゃねーか!」
やっと進みだした時間に、銀髪天然パーマ、加えて眼鏡+白衣のオプションを付けた主人公的立場の教師が、怒声を上げる。
この男、坂田銀時ならぬ、坂田銀八。
3年Z組の担任教師であり、若干糖尿気味。常に死んだ魚のような眼をしているが、生徒からはなぜか一目置かれている。
名前はあの有名な坂本金八にあやかっているようだが、いかんせん新八と名前が被っているのがどうにも。

「ったくよぉ……第三部第一話、原作を知らない皆様に俺たちのことを知ってもらうよう自己紹介とか色々しなくちゃいけねぇってのに。この残された文字数でどうしろってんだ」
「はい、先生!」
「なんだ、中国からの留学生、ぐるぐる眼鏡装備の神楽」
「説明的なセリフどうもありがとうございます! そうです、私が神楽です!」
席から立ち上がり挙手をした生徒は、チャイナ服……ではなく、極一般的なセーラー服を着た少女だった。
名前は神楽。宇宙随一の戦闘民族『夜兎』……ではないが、凶暴的な腕力を持つ要注意生徒である。

「……あら、そういえば今日の出席はおまえだけか?」
いい忘れていたが、ここは3年Z組の教室内。そして今は朝のホームルームの時間だった。
というのに、教室内部は空席だらけ。唯一、先ほど紹介した神楽がいるのみだった。
「他のみんなは大人の事情で欠席アルネ」
「なんだ、大人の事情ってのは」
「一話目からキャラを大勢出すと捌き切れなくなるから、小出しにしていくって寸法らしいネ」
「なるほど。作者め……随分とこすい手を使いやがる。まぁ別に反対ってわけじゃあねーけどよ。せめてツッコミ役の新八くらいは出しとかねーとマズイんじゃねーか?」
「酷い! 銀ちゃんはワタシと二人きりじゃやっていけない言うアルか!?」
「ボケ二人じゃ機能しねーだろコレ。あとここじゃ一応先生な。オレ教師でおまえ生徒だから。そういう役だから」
役とか言っちゃうと身もふたもないが、そこはこの作品独自のクオリティということで勘弁していただきたい。
とにもかくにも、今回の登場キャラは銀八と神楽の二人きり。そして残されたページ、もといレス数は一。どうやってこの先の物語を盛り上げようか。

270 :シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい:2006/07/17(月) 01:10:12 ID:dTkbL1w+0
「って言うか冷静に考えれば、こりゃもう学級閉鎖だよな。生徒一人じゃ授業にならねーし。神楽、おまえもう帰っていいぞ」
「先生! 一話目からあまりにも投げやりです! って言うかテキトーすぎます! そんなことじゃあこのスレの厳しい生存競争には生き残れませんよ!?」
「馬鹿おまえここは自由奔放な2ちゃんねるだぞ? 本誌と違って打ち切りとかの心配もないし、テキトーでいいんだよテキトーで」
「じゃあ今回のオチはどうするアルか!?」
「そんなもんテキトーにエンターキー連打して空白作っときゃいいだろ。次から真面目にやるから今日はもうこれで締めようぜ。んじゃ、とっとと下校」

























「本当に空白で埋めやがったよこの人!?」(ツッコミ:志村新八 ※緊急特別出演)

271 :一真 ◆LoZjWvtxP2 :2006/07/17(月) 01:12:40 ID:dTkbL1w+0
そんなこんなで始まりました、第三部「学園編」です。
すいません。どこまでやりすぎていいのか、このスレでの許容範囲がイマイチ掴めていません。どうかそんなに怒んないで。

今回の第三部、前回お知らせしたとおり外伝です。
第三部とか言ってますが外伝なんで、真選組解散の危機とかの伏線は一度切り離して気を緩めてお読みください。

元ネタは、原作のオマケ漫画、そして独立して小説版まで出てる、「銀魂 3年Z組銀八先生」。
さすがは銀魂というか、本当にこんな訴えられそうなタイトルの本を出しているんだからスゴイ。

内容としては第二部以上におふざけ全開。ギャグ一色。真面目な雰囲気を出す気はまったくありません。
小説版では一応真面目な雰囲気がなくもないんですが、これはそんなことお構いなしに突っ走っていく予定なのであしからず。

272 :やさぐれ獅子 〜十六日目〜:2006/07/17(月) 01:38:46 ID:Gn+aRvWp0
続けて失礼します。
>>219より。

273 :やさぐれ獅子 〜十六日目〜:2006/07/17(月) 01:40:06 ID:Gn+aRvWp0
 クリーンヒット。
 ふわりと倒れる紙人形。
 拳に残る感触は、加藤にたしかな手応えを伝えていた。
「長期戦になったら、やばかったな」と独りごちる加藤。
 まさにその時、倒れたはずの紙人形が急速に起き上がり、腕をしならせ斬撃を仕掛けて
きた。とっさにガードし腕を切らせたが、傷は浅くはない。
「チィッ!」紙人形から足を離し、距離を空ける加藤。
 一方、解放された紙人形も、なんのダメージも感じさせない身のこなしでふわふわと姿
勢を正す。
 対決は振り出しに戻された。
 足指で砂の感触を確かめつつ、じりじりと間合いを詰める加藤。対する紙人形は、微風
に体を揺らしながらじっと待っている。
「──シャッ!」
 猛然と駆け出し、加藤が鋭いハイキックを出す。が、これは風の流れに乗った紙人形に
あっさりかわされる。すかさず拳を突き出すが、これもあと一歩届かない。と、体勢が崩
れた加藤を紙人形が左腕で切り裂こうとする。加藤はバックスウェーで難を逃れる。
 再び、両者が距離を置く。
「とにかく当てなきゃな……」
 固定されていない状態では、風を味方につけている紙人形はまず打撃を喰らってくれな
い。現実の格闘技ではありえない超軽量ゆえの絶技だ。
 加藤は深呼吸をし、心を落ち着かせる。
「だったら、俺も風を使うしかねぇか」
 目を瞑り、風を読む。一流ゴルファーのように、いやそれ以上に風を読み切らなければ、
この人形にはたった一発のパンチすら当てられない。
 そして、紙人形が動く。

274 :やさぐれ獅子 〜十六日目〜:2006/07/17(月) 01:41:54 ID:Gn+aRvWp0
 吸い込まれるようにまっすぐ、紙人形が頚動脈を狙う。紙でできた腕が首筋に迫る。
 五メートル。
 四メートル。
 三メートル。
 二メートル。
「キャ」加藤がまぶたを開く。「オラァッ!」
 カウンターで中段突きが炸裂。さらに、正中線めがけて拳を発射する。留まることを知
らぬ、猛連打。
「す、すごい……」凄まじい迫力と速度に、井上も息を呑む。
 風がどう紙人形を動かすかを予測し、予測箇所に拳を放つ。百発百中。これまでの戦い
で培われた洞察力が猛威をふるう。
 締めは強烈な金的蹴り。紙人形なので股間は弱点ではないが、蹴り上げられ空中へ吹き
飛んでいく。
 散々に殴られ、しわくちゃになり、宙を舞う紙人形。ふわふわと風に流され──そのま
ま難なく着地してしまった。
「なんだとッ?!」
 驚愕する加藤に、紙人形の反撃が迫る。急速に肉迫し、鋭利な四肢を駆使した乱れ斬り。
「ぐおォッ!」
 ついに加藤清澄、ダウン。

275 :やさぐれ獅子 〜十六日目〜:2006/07/17(月) 01:42:55 ID:Gn+aRvWp0
 うつ伏せで、加藤がうめく。
「空手が……効かない?」口から疑問符がもれる。
 空手は猛獣だって倒せる。鉄やダイヤでさえ砕ける。だが、あらゆる衝撃を受け流して
しまう「紙」をどう空手技で倒せというのだ。
 よろよろと身を起こす加藤。そこへすかさず、斬撃が襲いかかる。斬られた頬から血が
噴き出す。
「ちっ! スパスパ切りやがって……ん?」ここでふと、加藤がひらめく。
 紙人形が得手とする斬撃技──それは決して彼の専売特許ではない。空手にだって、敵
を切り裂く技はある。
 この無人島へ来る直前、愚地独歩は死刑囚ドリアンが放ったアラミド繊維を「素手」で
両断してみせた。
 そう、両手足は鈍器だけでなく、刃とも化すのだ。
「……やってみるか」
 加藤が右手を手刀に変え、大きく振りかぶった。
 
 彼らの闘気に呼応するように、突風が押し寄せる。これを駆使し、かつてない速力で加
藤に接近する紙人形。全神経を注ぎ、加藤も見切らんとする。
 制するは紙か、はたまた人か。
 鬼の如き形相で、手刀を振り下ろす加藤。
 刃と刃、凶器と凶器がぶつかる。そして、結果はすぐに判明した。
「斬ったぜ……」
 紙人形の右腕が、カッターナイフで切られたかのように切断された。ひらり、ひらりと、
右腕の役割を果たしていた紙が地面に落ちた。

276 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/07/17(月) 01:45:19 ID:Gn+aRvWp0
井上さんは近い将来、戦う予定です。
次回へ続く。

277 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/17(月) 06:09:09 ID:C2kUU27B0
七 異論、そして捜索

 葦原から聞いたと言う須藤の話によると、屋敷は、思いの外複雑な構造をしているようだった。
 玄関ホールからは、北、東、西に長い廊下が伸びている。
 北には、はじめたちのいる応接間。隣接する個室が三つ。
 東には、談話室。北と同じく、隣接する個室が三つ。それから、地下音楽室に向かう階段。
 西には、食堂。ここには厨房と、倉庫として利用されている二つの部屋がある。
 はじめたちは先ず、北廊下から玄関ホールを抜け、食堂へと向かった。
 屋敷内の本格的な捜索を始めるに当たって、倉庫で手頃な武器を物色する為である。
「倉庫に『R』が隠れていた、なんて事がないといいんですが」
 西廊下を歩きながら、設楽が不吉な呟きを漏らす。
 確かに、人目につきにくい場所と聞いて真っ先に思い浮かぶのが倉庫である。
 倉庫を『R』が隠れ場所として選んでいる可能性は、決して低くはないのかもしれない。
 食堂へ出た。縦横共に広い空間の中央には、絵画に出てくるような、数メートルはあろうかという長テーブルが鎮座している。
 その周りを取り囲むように、アームチェアがずらりと並ぶ。
 薄暗い無人の食堂は、あまり見ていて心地のいいものではない。
 テーブルに備え付けられているレトロな金色の燭台も、ホラー映画の小道具のようだ。
「いいか、開けるぞ」
 倉庫へと通じる扉のノブを掴み、高瀬が小声で言った。
 それを受け、後ろにいる面々が緊張に顔を強張らせながら頷く。
 ゆっくりと、扉は開かれた。埃っぽい空気と共に、饐えた臭いが鼻についた。
 倉庫――それも別荘の――と言うだけあって、中は雑然とした雰囲気だった。
 オフィスに置かれているような、くすんだ銀色のロッカーが三台。
 それから、いくつも積み重なったダンボール。

278 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/17(月) 06:09:49 ID:C2kUU27B0
「うう……空気が澱んでるのがわかるね。ここに『R』はいないみたい」
 日月は、口に手を添えながら言う。
「とりあえず、何か役に立ちそうな物を探してみましょう」
 言いながら、設楽は左端のロッカーを開く。
 中には、箒やバケツが所狭しと詰まっていた。まるで小学校の掃除用具入れのようだ。
「この箒なんか、手頃でよさそうだ」
 須藤が、一本の箒を手に取る。その柄はかなり長く、確かに打突武器としても使えそうだった。
 続いて、中央と右端のロッカーも開いてみる。錆びた鉄の香りがするだけで、こちらは空だ。
 埃を被ったダンボールの山には、カンパンや果物の缶詰、ミネラルウォーターなどの非常食が詰められていた。
 武器になるものは期待できそうもないので、少し中身を漁って中断する。
 結局、ここでの収穫は箒のみに終わった。

 いくらか緊張が解れたのか、設楽は躊躇なく、もう一つの倉庫に繋がる扉を開けた。
 こちらの倉庫には、衣装ダンス、事務用のデスク、ガラスケース、傘立て等、比較的嵩張る物が多く置かれていた。
 どうやらここには、主に使わなくなった家具の類が収められているらしい。
「大きなタンスだね」
 日月が、天井に届きそうな、背の高いタンスを見上げながら言う。
 中を確かめようと、須藤はタンスの扉の取っ手部分に手をかけた。
「中に、人だって入れちゃいそう」
「……嫌な事を言わないでくれ」
 顔を顰めながら、観音開きの扉を開く。中には古着が詰まっていた。

279 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/17(月) 06:11:26 ID:C2kUU27B0
 高瀬は、傘立てに、傘と一緒に差し込まれていたバットを手に取った。
「扱い易く、リーチも申し分ない。これを使わせてもらおうか」
 言って、高瀬は倉庫の中央に立ち、素振りをしてみた。ひゅん、と風を切る小気味いい音が響く。

「むー。結局、しっくり来る武器はなかったなあ」
 倉庫から食堂に戻り、日月が残念そうに言う。
 と、十文字が、困ったような表情で日月を見た。
 目が『さっきの催涙スプレー、やっぱり返そうか?』と言外に語っている。
「わわわ、いいよいいよ。そんなつもりで言ったんじゃなくてっ」
 それを見て、日月は慌てたように胸の前で両手を振った。
「まあ、この位で十分じゃないでしょうか。全員が全員武器を持っていたら、それはそれで危険だと思います」
 設楽が言い、
「その通りだ。もし『R』と遭遇した場合、武器を持っている者が前線に立ち、リーチの差を活かして一撃を浴びせる。怯んだ所を、素手の者が押さえ込めばいい」
 高瀬もそれに同意した。

 須藤は柄の長い箒。十文字は催涙スプレー。高瀬は金属バット。
 そして、設楽、日月、はじめの三人は素手。
 頼りになるようなそうでもないような武器を携え、屋敷の捜索は始まった。

280 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/17(月) 06:12:41 ID:C2kUU27B0
八 捜索、そして気配

 捜索の第一歩は、厨房だった。
 ざっと見た所、人の気配はないようだったが、死角となっている場所を調べるまで油断はできない。
 ガステーブルには、小鍋とヤカンが置かれたままになっている。
 はじめは、小鍋の蓋を開けてみる。冷め切って膜が張ったホワイトシチューが入っていた。
 手はつけられていないようだ。昼食にと作ったものの、殺人事件発生でそれどころではなくなったのだろう。
「少年……鍋の中には『R』はいないと思うぞ」
 はじめに突っ込みを入れながら、高瀬はカーテンで隠された、厨房右手のデッドスペースを覗く。
 と、その時。一際大きな雷鳴が轟いた。日月が短い悲鳴をあげる。
 音の大きさからして、もしかすると屋敷の近くに落ちたかもしれない。
 その場にいる誰もが、日月は雷の音に驚いて声をあげたものと思った……が、違った。
 小刻みに震える指先が、厨房の奥、裏口に通じる扉を指す。
「今、あの硝子の向こうに……誰かが……」
「何!?」
 武器を構えた須藤、高瀬が、慌しく裏口の扉に駆け寄る。
 二人は視線を交わして頷きあうと、鍵のツマミを回し、扉を勢いよく開け放った。
「誰もいない」
 箒を左右に振りながら外へと身を乗り出し、須藤が首を振った。
 裏口には狭い道に沿って敷石が置かれている為、足跡の有無では不審者がいたのかどうか判断できない。
「間違いなく、いたのか?」
 高瀬が聞く。
「うん。いた……と、思うんだけど」
 日月も今一つ、確信は持てない様子だった。

281 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/07/17(月) 06:14:53 ID:C2kUU27B0
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>195です。

・期待
どうもです。頑張ります。
どんな形であれ、期待に応えられるといいなあ。
・時間の流れ
順序立てて書いているからでしょうか。
話の性質上、急に数日経過とか一年経過とかはやりにくいですからね。
閉鎖空間特有の息苦しさが、少しでも出ていたなら幸いです。
・お約束
お約束と言えば「殺人鬼と一緒になんかいられるか! 俺は部屋に戻るぞ!」というのもあるのですが
何となく使う機会を逸しております。何故でしょう。殺されても自業自得に見えてしまうからでしょうか。

>バレさん
非常に恐縮ですが、修正依頼です。
番号四の十行目と十一行目の間に、以下の一文を挿入してくださいませ。
“折り畳み傘の柄をしまい、靴箱の横に立てた”というものです。

扉の〜
折り畳み傘の柄をしまい、靴箱の横に立てた。
玄関には〜

このような形でお願いします。こちらの不手際でお手数をおかけして申し訳ないです。

282 :作者の都合により名無しです:2006/07/17(月) 11:05:52 ID:tjBFgmWD0
最近速過ぎだよw
しばらく2ch見てないと読みきれないほど来る
ふらーりさんの感想はシオリ代わりにちょうどいいな

>AnotherAttraction BC:
原作では薄かったスベンとロイドの悲しい過去が見事に浮き彫りにされてますね。
この辺り、SSとはいえNBさんのオリジナル色が見えて面白い。大人な決着がみたいです。

>影抜忍者出歯亀ネゴロ
なんか、根来はしゃべらないのに掛け合い漫才みたいな感じだな。レベル高い戦いのはずなのに。
いつも文章だけでは終わらない氏の工夫が好きです。状況が分かり易くて嬉しいです。

>シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい
異世界の話なのに、いつものノリで、しかもいつも以上にダラダラした感じですなw
今回は説明の方が長かったですけど、まあ次からは銀ちゃんたちが活躍してくれるかとw

>やさぐれ獅子 〜十六日目〜
加藤が超人化してる。独歩は無理でも、克己なら今なら倒せそうだ。井上さん実況してるし。
でも、紙ならその辺の水をぶっ掛ければしおれて、井上さんでも倒せそうかなーとw

>金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』
捜索の間にも、不気味な密閉空間を歩くのは恐怖だろうな。誰も信用は出来ないし。
しかも、なんだか少しずつ敵が近づいてくる足音が聞こえてくるような。第一次接近遭遇?

283 :バーディーと導きの神:2006/07/17(月) 12:09:14 ID:XDjoO3H60
ザンとリュミールはアーマヤーテの王都の街並みを満喫していた。
「さすがに僕の村と違って人も店も多いなあ」
素直にその規模の大きさに感嘆しながら、リュミールと連れ立ってあちこちをめぐって歩く。
珍しい物売り、珍しい食べ物、二人はしばしこれから先のことを忘れて二人の時間を楽しんだ。
しかし、そんな二人にもルアイソーテは安らぎを与えてはくれなかった。
四人組の男たちがリュミールに迫っていたのだ。
「デアマシュウ、あの娘」
フードをで顔を隠した男が、リュミールを見つけて同じくフードを被った傍らの長身の男に
声をかける。
「うむ、間違いない」
デアマシュウと呼ばれた男は、リュミールの姿を確認すると、短く相槌を打った。
「やるか?」
「待て」
いきなり手を出そうとした男を制するデアマシュウ。
「わざわざ向こうから出てきてくれたのだ。強行して騒がれたら面倒なことになる。それに
娘を連れ去った侵入者の二人のうち、子供のほうは瞬動法を使う少年だと聞いた」
「それではあの小僧が……」
男はあんな子供がと驚嘆したように言う。
「たぶんそうだ。あの少年を引き離すだけでいい。娘のほうは無力だ。後は俺がやる」
「分かった」
デアマシュウの提案に乗った男は、一行から離れて単独でザンたちに近づいていった。
(小僧、フフフ……、瞬動法か。お前のそれがどれほどのものか見せてもらうぞ)
フードの下でにやりと笑った男は、後ろからわざとザンにぶつかった。
「わっ」
ザンは簡単にはじかれて地面にしりもちをつく。
「ごめんよ」
男はそのままなにごともなかったかのように歩み去っていく。
「大丈夫、ザン?」
リュミールが心配そうに声をかける。
「ひどいなあ、突き飛ばすなんて……」
ザンはほこりを払って起き上がる。

284 :バーディーと導きの神:2006/07/17(月) 12:10:22 ID:XDjoO3H60
「ザン、行きましょ」
「うん」
といいながらお尻のほこりを払ったときザンはあることに気付く。
「あっ!財布がない!」
「えっ?」
リュミールが驚いた声を上げる。
(やられた、さっきの男にすられたんだ!)
ザンは自分のうかつさを呪った。そしてすぐに行動に移す。今ならばまだ間に合うと思っ
たからだ。
「リュミール、ここで待ってて。財布を取り戻してくる!」
「うん、待ってる」
リュミールは素直に答えた。
ザンはすぐに男を追って駆け出して行った。リュミールは所在無げに立ったままだ。
デアマシュウは好機と見て一行を引き連れ、リュミールに近づいていった。

そしてこちらは男を追ったザン。しばらく走って男を見つけたザンは、迷うことなく叫んだ。
「待てえ!ドロボー!!」
びっくりする通行人たち。男は全速力ではなく、ある程度の余力を残して走り始めた。ザ
ンをひきつけるためにだ。
「こら待てえー!」
頭に血の上ったザンは、自分よりはるかに大きな男につかず離れず追うことができるとい
う事実に疑念を持たなかった。
「絶対逃がさないぞ、お金返せ!」
通行人を避け、荷車をかわし、ザンは男を追い続ける。
「付いてこい付いてこい」
男は自分の誘導がうまく言っていることをほくそ笑んでザンとの距離を測る。
「ええい、早くて追いつけないや。こうなったら瞬動法だ!」
ザンは男の姿は見えるが、決して距離が縮まることがないことに業を煮やし、瞬動法を使
って距離を縮めようと図る。
ザンの気が一瞬ざわつく。
(来る!)

285 :バーディーと導きの神:2006/07/17(月) 12:11:40 ID:XDjoO3H60
男はザンのその気を察して自分も呼吸を整える。ザンの姿が消える。
「捕まえ……」
ザンは男の服をつかむことを確信したが、その瞬間男の姿が消えた。
「なっ!」
先ほどより少し前の位置に男の姿が現れる。
(くそっ!あの男も瞬動法が使えるのか……。でも……)
「負けない!」
ザンは再び瞬動法で男を追う。それに習って男も瞬動法で逃げる。しかし男は思った。
(こいつ……、速い!)
三回目の瞬動法を使ったとき、とうとうザンは男のマントをその手につかんだ。
「捕まえたぞ!」
ザンがそう言って喜んだのもつかの間、男はマントを脱ぎ捨て、目の前の木の上に飛び移った。
「速いなあ君は……。いったい誰に瞬動法を習ったんだ?」
細面で長い金髪を立てた風貌の男は、ある程度の余裕で言ってのけた。それに比べてザン
の息は荒い。体力の差の違いだ。
「そんなことはどうでもいい!僕から取ったものを返せ!」
ザンは未だに男のことをただのスリだと勘違いしている。
男は笑った。
「フ、ずいぶん街から離れてしまったな、君」
「それがどうした!」
「連れの女の子のところに戻るまで少なくとも10分はかかるな。まあこんなものか」
「なに言ってる!このドロボー!財布返せ!」
言いつつもザンは嫌な予感にその身を包まれつつあった。
「ほらよ」
男が気前よくザンの財布を投げてくる。
「おっと」
急に投げられた財布を受け取ろうとするザン。その隙に男はナイフを取り出すとザンの財
布に向かって投げつけた。
「これも受け取れ!」
ナイフは寸分たがわずザンの財布に突き立ち、地面に刺さった。
「ひえー、危ないなあ。刺さったらどうするんだ!」

286 :バーディーと導きの神:2006/07/17(月) 12:12:31 ID:XDjoO3H60
びっくりしたザンは地面にしりもちをついて怒鳴るが、木の上の男の姿は既に消えていた。
「逃げちゃったか…。まあ、財布が戻っただけでもよしとしましょ……う!」
と、ザンが財布に刺さったナイフに手を伸ばしたとき、強烈なおぞ気を感じて一気に体の
血の気が引いた。
ナイフにはルアイソーテの紋章が刻まれていたのだ。
「しまったあっ!!」
初めて男の真の目的に気付いたザンは、自分のうかつさを呪って地面を殴りつけ、自分の
残りの体力のことなど考えず、瞬動法を使って街に戻っていった。

ザンが事態に気づく数分前、デアマシュウとその一行は、リュミールに声をかけていた。
「お嬢ちゃん」
「はいっ」
リュミールはびっくりして上ずった声を上げる。
「そんなとこでなにをしてるんだい?迷子かい?」
デアマシュウは一見優しいおじさんのふりをしてリュミールを心配した風な声をかける。
「いえ、あの、友達を待っているんです」
リュミールもそんなデアマシュウの態度に騙され、素直に受け答えする。
「そうなのかい。でもこんな道の真ん中で立っているとみんなの迷惑だ、道の端のほうへ
行こうね」
「はい、でも……」
ザンにここで待っててといわれていたリュミールは返答に困る。しかしデアマシュウの言
っていることもあながち間違いではないので余計に困る。
「子供は大人の言うことを聞くもんだよ。さあ、行こう」
そう言ってデアマシュウはリュミールの右肩をつかんで連れて行こうとする。
「でも、あの……」
リュミールも一応の抵抗は見せるが、デアマシュウの強引さにはかなわない。
「さあこっちだ」
デアマシュウは建物の間の路地にリュミールを連れて行く。リュミールは逆らえない。
「もう少し行こうね」
そういったデアマシュウのリュミールの肩を持った手の力が強くなる。
「あ……、あの、肩が……」

287 :バーディーと導きの神:2006/07/17(月) 12:13:43 ID:XDjoO3H60
リュミールはその痛みに思わず声が漏れる。
「どうしたの?」
あくまでデアマシュウは知らないふりを決め込む。
そして路地の中ほどまで連れて行く。
「さあ、ここまで来れば誰の邪魔にもならないよ」
未だデアマシュウは親切な大人のふりをする。
「じゃあもう手を離してください……」
リュミールは不審に思いながらもまだデアマシュウのことを信じている。
「ところがそうはいかないのだよお嬢ちゃん」
とうとうデアマシュウはその化けの皮を剥いでリュミールにフードの隙間から残酷な瞳を
向けた。
「君は我々と一緒に来てもらわねばならんのでね」
言いつつ、肩をつかんだ手にさらに力を込める。
「ああっ……」
もはやきしみ始めた骨と裂けそうな肌にかなりの痛みを感じて、リュミールは声にならない
声を上げる。
「ああ……」
ついには皮膚が裂け、血が滴り落ちる。
「不死身と聞いていたがな、違うのか?」
リュミールの肩をグチャグチャとかき混ぜながら冷酷な言葉を発するデアマシュウ。
もうリュミールは声さえ出せない。
すると路地に一行と同じ服装の一人の男が現れた。
「拷問、か?なら、俺に、やらして、くれ、よ……、なあ?」
下卑た声を発する背中が大きく着膨れしたような男は、心底楽しそうにデアマシュウに言う。
「見張りはどうした、ファシモ」
「俺、見張りより、拷問が、いい。ゲハ、ゲハハハ……」
尋常ではない異常性を発散させながら、ファシモと呼ばれた男はデアマシュウにもう一度
言う。断ったらこの場で暴れかねない勢いだ。
「良かろう。この娘不死身らしいのでな、好きなだけ弄り回すがよいわ」


288 :バーディーと導きの神:2006/07/17(月) 12:15:19 ID:XDjoO3H60
デアマシュウもファシモのことを持て余しているのか、リュミールをその膂力でファシモ
に投げ渡す。
「ぐへへへへ」
「きゃあああっ!!」
デアマシュウよりもさらに強烈な気持ちの悪さを発するファシモに抱かれたリュミールは、
身をよじり、精一杯の抵抗を見せる。
「ゲハッ……、もう、いくら、呼んでも。無駄……。この、路地、閉じている。誰も、助
け、こない……。ゲハッ、かわいい、かわいい」
「いやああああっ!!」
顔を寄せてくるファシモを押し返し、その手から逃れようともがくリュミール。
デアマシュウはそのリュミールの様子を冷静に観察している。
(血が出ていない。もう右肩が回復しているのか?なるほど、不死身かもしれん)
ファシモなどにいいようにされるリュミールに同情もしないデアマシュウは、それきりリ
ュミールに興味を示さなくなった。
そのとき。
「てめえら、そこでなにしてやがる!」
野太い男の声が路地に響いた。
「なにっ?」
この路地は結界で封じており、他人は入ってこれないはずだが、その響いた声にデアマシ
ュウは驚いた。
「今すぐその汚い手をその子から離しなさい!」
今度は路地の反対側から女の声が上がった。
「ムッ!」
これはもう間違いない。魔導士がここをかぎつけてきたのだとデアマシュウは判断した。
「誰だか知らねえが、言ったとおりさっさと手を離しやがれ!さもねえと、てめえら死ぬぜ!」
リュミールは歓喜の表情を見せた。
「私たちは本気よ!」
腰に手を当てて、生体防壁に身を包んだバーディー。
「いいか、二度とは言わねえ。娘を放すんだ」
仁王立ちしているのはシアン。

289 :バーディーと導きの神:2006/07/17(月) 12:16:29 ID:XDjoO3H60
「断る……、と言ったら?」
デアマシュウが余裕で答える。
「ぶっ殺す!!」
「ぶん殴る!!」
二人同時に叫ぶバーディーとシアン。デアマシュウ一行との戦闘開始。

シアンはいきなり玉のついたワイヤーロープを投げつけ、デアマシュウの体に巻きつけた。
ワイヤーの根元は彼の手の中だ。
「消し飛べ!!」
念を込め、叫ぶシアン。その瞬間、ワイヤーにからめとられたデアマシュウの体が爆散する。
反対側からはバーディーがファシモに狙いをつけて右ストレートを放つ。
「その子を放しなさいウスノロ!!」
だがファシモは意外に素早く飛び上がってバーディーの攻撃をかわす。
「なにっ!」
一挙動で路地裏のアパートの屋根まで跳躍したファシモの脚力に驚くバーディー。次の瞬
間、ファシモの背中から白色の液体が二条発射され、それがバーディーとシアンに付着する。
すると途端に周囲を巻き込む大爆発を起こした。
「ひどい……」
リュミールはその爆発の規模に驚いて、思わず声をもらした。
「なんてひどいことを!人殺しっ!!」
ファシモに抱かれたまま叫ぶリュミール。しかしそれを否定する者がいた。
「それは違うなお嬢ちゃん。奴らは死んでいない。俺の考えている通りならね」
その声の主にリュミールは再度驚いた。ファシモの後ろ、毛のない頭で長い顔の小さな人
物と一緒に、シアンの術で消し飛んだはずのデアマシュウが立っていたのだ。その顔は凶
悪な面相をした怪物顔だ。
「やられたとでも思っていたようだね、その顔は。だが私の部下には転送術が使える魔導
士がいるのだよ」
「なるほどな、ぬか喜びってわけかよ、てめえ!」
「瞬間移動に特殊爆薬とは恐れ入ったわね」
リュミールが歓喜の表情を浮かべる。バーディーとシアンが爆風の中、なにごともなかっ
たかのように並んで立っていたのだ。

290 :バーディーと導きの神:2006/07/17(月) 12:17:51 ID:XDjoO3H60
「そういうことだ。内的、いや、伝導念術しか使えないエセ魔道士さんと頑丈なだけのバカ
力女さん」
デアマシュウが二人の実力を見抜いて嘲る。瞬間的に沸騰するバーディーとシアン。
「このデカ男ーっ!!」
「なんだとー!」
バーディーとシアンは一緒にデアマシュウ一行がいる崩落しかけたアパートに向かって跳
躍する。再びファシモの爆薬が飛んでくるが、二人はお互いを蹴りあってそれを避け、別々
の建物の屋上へと昇った。
「てめえらボコボコ爆発起こしやがって!なまじっかの術じゃこの街を出られやしねえぞ
タコ助が!」
シアンが怒鳴る。
「今度は本気で行くからね!」
バーディーが猪のように鼻息荒く息巻く。
そんな中デアマシュウ一人だけが冷静に状況を分析していた。
「キラエノア」
「はい。城より強力な抗術が街全体になされています。もう転送はできますまい」
キラエノアと呼ばれた顔長男がデアマシュウの意図に対して的確に答える。
「あたりめえだタコ!いくら隠行術を使おうとな、あれだけの爆発をすりゃバカでも気付
くわアホウ!!」
シアンが再度怒鳴る。
しかしデアマシュウは冷静なものだ。ファシモからリュミールを受け取り、堂々と言って
のける。
「ならば実力で抜けるまでだ」
「ほざけっ!」
「させるかっ!」
シアンがデアマシュウに向かって念を放射し、バーディーがそれを追うようにキラエノア
に向かってアタックをかける。
だがデアマシュウは大きく飛びずさって念動をかわし、バーディーにはファシモが立ち塞
がる。


291 :バーディーと導きの神:2006/07/17(月) 12:18:51 ID:XDjoO3H60
「なんて奴だ!娘を巻き添えにする気か?」
デアマシュウはシアンの容赦ない念放射に驚く。
「ゲハッ、お前、も、かわいい。俺、拷問する」
これまた怪物顔のファシモは、バーディーの顔を見て下卑た笑いを浮かべる。
「心配するな!」
とシアン。
「誰があんたなんかに!それにね…」
とバーディー。
『娘 (その子)には傷一つつけやしねえ (しない)!!』
同時に叫び、シアンはデアマシュウに念放射。バーディーはファシモに低い位置からのア
ッパーカットをかます。
デアマシュウはすんでのところで念放射をかわし、キラエノアに反撃を促す。
キラエノアはシアンと同じ念放射を数発発射し、命中こそしなかったものの、シアンを押
し戻すことに成功する。
バーディーはアッパーカットを決め、続いて回し蹴りを放とうとしたところでファシモの
無差別爆薬放射によってシアンと同じところへ押し戻される。
「けっ!これじゃラチがあかねえな!」
「あの爆薬イボガエルがやっかいね」
「まずはあいつから殺るのがベターだが……」
「キラエノアとかいうやつの念動とかも気をつけないとね」
「俺が出るからお前はキラエノアを抑えろ!」
「な、なにを偉そうに!私があのイボガエルを潰すからあんたがキラエノアを牽制しなさい!」
「なにを!女はすっこんでろ!」
「男だからって偉そうにするんじゃないわよ!」
連携をとるかと思えば、いきなり口喧嘩を始めたバーディーとシアン。しかもバーディー
はすでにシアンに対してタメ口だ。その隙にデアマシュウとキラエノアは遁走を始める。
単純バカなのはバーディーとシアン二人一緒だった。
そこに瞬動法で戻ってきたザンが到着した。
「シアンさん!バーディーさん!」
ザンは二人に声をかける。

292 :バーディーと導きの神:2006/07/17(月) 12:20:37 ID:XDjoO3H60
「その声はザンか?」
「はい!」
「リュミールちゃんはすぐ先よ!私たちはこのイボガエルを倒していくから急いで!」
「はいっ!!」
そう答えるなり瞬動法で文字通り飛んでいくザン。
「これで少しは肩の荷が軽くなったぜ」
「覚悟しなさいよバケモノ!」
先ほどの口喧嘩はどこへやら。今度は背中合わせでファシモに向かってお互い構えるバー
ディーとシアン。
しかしファシモはゲハゲハと笑う。
「覚悟、する、お前たち、のほう、ゲヘヘ。俺、体の中、爆薬いっぱい。俺、殺せば、この都、
半分、ぶっ飛ぶ。お前たち、そんな、度胸、ない。ゲハハ」
「んだと!」
「く!」
シアンは怒り、バーディーはその言葉に動揺する。
一発覚悟を決めて念をぶち込もうかと思うシアンと、なんとかして当身を決めて昏倒させ
たいと思案するバーディー。
だが、援軍は意外なところから現れた。
「おい、その二人を挑発するのはよせ!連中はキレたら街を犠牲にしてでもお前を殺すぞ」
後ろからかかった声にファシモは振り向く。そこには涼しげな表情をしたソシュウが立っ
ていた。
「やっと来やがったか、ソシュウ!遅せえぞ馬鹿野郎!」
「ちょっと!私が街を犠牲にしてでもってどういうことですか!」
シアンとバーディーはそれぞれ悪態をついてソシュウをそしる。
「まあ、それはおいといてだ」
未だ抗議の声を上げる二人を無視して、ソシュウは周囲の壊れた街並みを見渡して言った。
「よくもまあこれだけ派手にやらかしてくれたな」
そしてファシモをキッと見据えて吼える。
「この礼は高くつくぜ!!」
「なん、だと!」
高飛車な態度をとられたファシモは、問答無用で爆薬を飛ばす。

293 :バーディーと導きの神:2006/07/17(月) 12:23:14 ID:XDjoO3H60
しかし、その爆薬はソシュウの右手の先に現れた黒い玉に吸い込まれ、なにも起こさない。
「ば、爆発、しない。吸い、込まれ、ちまった……」
「そういうこった」
ソシュウは余裕の表情で答えた。
「俺は重力使いのソシュウ。街を壊した償いとして、お前も中に入ってもらうぜイボガエル!」
重力塊を大きくするソシュウ。それだけでこの戦いは決着がついた。

一方こちらは逃げるデアマシュウとキラエノア。
「デアマシュウ」
キラエノアがなにかを感じて声をかける。
「なんだ?」
「たった今、ファシモの思念が消えました」
キラエノアは淡々と答える。
「構うな。所詮奴は捨て駒だ。先を急ぐぞ」
デアマシュウは冷酷に言い放ち、二人は隠してあった飛行機にたどり着いた。
「首尾は?」
先にたどり着いていたザンをおびき寄せた男がデアマシュウを飛行機に引き込みながら聞く。
「見てのとおりだゲシル」
デアマシュウはゲシルと呼ばれた男の手を借りて飛行機に乗り込むと、リュミールを乱暴に
機内に転がした。
「ゲシル、すぐにエンジン始動。脱出する!」
「了解!」
キラエノアを機内に引き込みながら答えるゲシル。すぐに扉を閉めロックすると、操縦席
に回る。
一息ついたデアマシュウは、起き上がりかけたリュミールを見下ろして言った。
「さて、ルアイソーテまで同行願いますよ。国王が会いたがっているんでね、お嬢さん」
エンジンを始動させたゲシルは、操縦桿を引き飛行機を発進させる。
「リュミール!」
まさに飛行機が飛び上がったとき、ザンが現場に到着した。
「リュミールーッ!!」
ザンは敵の術中に嵌ってしまった自分を呪いながら叫んだ。

294 :バーディーと導きの神:2006/07/17(月) 12:23:59 ID:XDjoO3H60
「リュミール……。守ってやれなかった……」
地面に膝を落として後悔するザン。もう体力も限界だ。
「ちきしょう!もっと早くに気づいてればこんなことにならなかったのにっ!!」
そう言って右手で地面を殴りつけようとしたザンの腕を取る者がいた。
「あきらめるのはまだ早いわよ、ザン君」
聞きなれたその声に振り向くと、そこにはいつものバーディーの明るい顔があった。
そして二人の頼りになる男たち。
「バーディーさん。兄ちゃん、シアンさん……。でも奴ら飛行機で逃げたんだよ!」
ザンが絶望的ともいえる反論をする。しかしソシュウはにやりと笑うと、弟の頭をポンと叩く。
「それぐらいこっちにだってあるさ」
すると木がざわめき、アーマヤーテ製の飛行機のエンジン音が聞こえてきて、次の瞬間には
その機体がザンの視界一杯に現れる。
「いくぜっ!!」
ソシュウが吼えた。
戦いはまだ終わっていない。

295 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/17(月) 12:39:14 ID:XDjoO3H60
ザンの受難、バーディーとシアンのお馬鹿コンビ結成の巻です。
ソシュウはいいところを持っていきます。ちゃっかり者ですね。

人物設定その9(エルデガインより)

・デアマシュウ:ルアイソーテ王直轄の雇われ兵。長身で体格もよいが、
          顔は怪物そのもの。
          その言動からは確かな実力に裏打ちされた自信が伝わってくる。

・ゲシル;雇われ兵その2。瞬動法と格闘術。また乗り物の操縦もこなす器用さを持つ。

・キラエノア:雇われ兵その3。さまざまな術をこなす寡黙な魔導士。

・ファシモ:雇われ兵その4。背中の体内の袋に大量の爆薬を仕込んでいる歩く弾薬庫。
       しかし性格や言動は最悪で、リーダー格のデアマシュウにも見捨てられる。

以上のようにパーティーとしてはかなり完成度を持った編成です。

>>240さん
バーディーはホント面白いですよ。
>>ふら〜りさん
シアンは見てのとおりの奴です。
バーディーとウマが合うのか合わないのか、微妙なところです。


296 :作者の都合により名無しです:2006/07/17(月) 15:54:45 ID:yv5TShUO0
・一真さん
第三部スタートお疲れです。今回は舞台を学校へ変えての学園ドラマ?ですか。
絶対に爽やかなものにはならないだろうけど楽しそう。いい意味でのナンセンスギャグが大好き。

・サラダムシさん
画用紙の端っこで指を切ったのを思い出すな。確かにあれはよく切れた。
井上はただの驚き役だけど、そのうち戦うのですか。一応戦力的には2倍になったのか?

・かまいたちさん
確かに恐怖が充満してるけど、まだどこかしらみんな余裕がありそうだ。
数を頼りにしてるのか。でも、これからまた死人が出る?と思うと、パニックだろうなー

・17さん
今回は、前章より少し敵がスケールダウンして日常の戦いって感じですね。
でも、相手も少しイカレた連中ですね。バーディたちも結構危ない感じだけどw

297 :作者の都合により名無しです:2006/07/17(月) 16:00:06 ID:ITEC2HZo0
非人間的な中国人は赤ん坊を食べる

http://www.geocities.jp/tyuugokujinno2/tyugokujin.htm


298 :作者の都合により名無しです:2006/07/17(月) 22:28:00 ID:Tx8QGfJ50
かまいたちさんの作品、いつ誰が殺されるんだろうとワクワクしてるw
日常生活じゃこんな感覚ありえんな。

あと17さん、今日は一回の量も多いなー。新エピソード乙です。

299 :作者の都合により名無しです:2006/07/18(火) 07:53:22 ID:QzoRPxsm0
カマイタチ氏の作品はスローテンポなのに、そこが独特の味になっているからね。
急に展開が変わるし。ギアチェンジが激しいからドキドキ感がある。

個人的には一馬さんの第三部が嬉しいな。銀玉好きだから。
シリアス編だともっとよかったけど・・

300 :作者の都合により名無しです:2006/07/18(火) 12:03:02 ID:xQ7AKLz20
17さんの毎日更新がいつまで続くか期待してる。バーディも好きだし。
いきなり今日で記録が終わったら笑うがw

サナダムシさん、完全に復調しましたな。そろそろうんこ物をリクします。

301 :バーディーと導きの神:2006/07/18(火) 15:59:13 ID:82ugPrPv0
一方こちらは一直線に国境目指して飛んでいるデアマシュウ一行の機体。
飛行機本体への抗術(防壁)はキラエノアが担当し、呪文を書いた円陣に鎮座して瞑目して
いる。そして当のデアマシュウはというと、飛行機の貨物室でリュミールを尋問していた。
「ところで嬢ちゃん。あんたいったいなにを知ってるんだい?我が国王はあんたのなにを
知りたがってるんだ?え、言っちまいなよ」
と、ここでデアマシュウは一拍置くとその邪悪な瞳をきらめかせた。
「俺たちは傭兵だ。金さえもらえばなんだってやる。ことと次第によっちゃあ、あんたに
付いてもいいんだがね」
そう言ってリュミールの顎をつかんで顔をこちらに向ける。
「噂じゃ10億年以上前から生きてたとか不死身だとか……。可愛い顔して、そんな年寄り
には見えんがね。……でも傷の直りかただけは異常だ!秘密というのはそれなんだろ?」
デアマシュウに顔を両手で挟みこまれてもなお、リュミールは瞳を閉じたままなにも話さ
なかった。
「ふん、言わぬか……」
デアマシュウはあきらめたようだった。
「傷つくことや死の恐怖を知らぬお前には、拷問など無駄だったな」
腕を組んで、残念そうに告げる。
そのとき、操縦席のほうから扉を叩く音が聞こえた。
「なんだ?」
「敵機だ、デアマシュウ」
ゲシルの声だった。
「今行く」
「おう」
そのままデアマシュウは操縦席のほうへ向かおうとしたが、ふと思い出したように振り返
るとリュミールに告げた。
「あの小僧かもしれんな、小娘!ハハハハ!」
絶対的な自信を持って操縦席に入っていくデアマシュウを見届けたリュミールは、それま
での気丈な態度から一変して床にへたり込み、嗚咽を上げて泣き始めた。
「……うっ……、いやだ……、もういやだよう……」
それは過酷な運命が待っている自分への偽らざる気持ちだった。

302 :バーディーと導きの神:2006/07/18(火) 16:00:04 ID:82ugPrPv0
デアマシュウはコクピットにやってくると、まず敵の数を聞いた。
「城側から4機、国境側から3機です」
キラエノアが静かに答える。
「そのうち国境の3機は大型浮き砲台です」
淡々と述べるキラエノアは、そこまで言うと再び抗術に集中した。
デアマシュウは挟み撃ちか、と唸った。
「ゲシル。本国に連絡したのか?」
「ああ、空中戦艦をよこすそうだ」
「例の試作型のあれか……。位置は?」
「すぐ近くだ。国境付近で試験飛行中だったらしい」
ゲシルが言うと、デアマシュウはにやりと笑った。
(あの娘と巨人を国王に無断で招きいれ、発掘場を瓦礫の山とされた奴の左遷先が俺たちの
助けになるとは……)
「奴にスケープゴートになってもらおうか。ゲシル、国境へ直進だ」
「了解!」
デアマシュウはこの状況を心底楽しみながら深々とコ・パイの席に腰を落ち着けた。

一方、デアマシュウを追い、飛行機に乗り込んだザン、バーディーその他一行は、デアマ
シュウらの乗る飛行機を追いかけて全力で飛行中だった。
「ソシュウ、奴ら加速して国境突破するつもりらしいぞ。どうする?」
千里眼の能力を持つ術者でもある金髪碧眼のシドガーが、遠ざかっていく飛行機をその能
力で視ながら上官に告げた。
「追いつけないのか?」
「ダメだな。発掘した技術をエンジンに使ってるようだ。性能が段違いだ」
シドガーが答えると、ソシュウは渋面となった。
「そうか、奴らとうとう実戦投入しはじめたか、くそっ!」
「発掘したってのは、あの王宮で見たような機械のことね?」
バーディーがなにかを考えるような仕草をしながら口を挟む。
「そうだ。奴、ガロウズの仕業だよ」
ソシュウは自身のイライラを隠せずに答える。

303 :バーディーと導きの神:2006/07/18(火) 16:00:49 ID:82ugPrPv0
「兄ちゃん、僕にできることない?なんでもするよ!」
ザンが責任を感じてソシュウに言う。
「ザン…」
弟のけなげな言い分に感動するソシュウ。
そこでバーディーが提案した。
「敵の飛行機のスピードのほうが速ければ、こちらのスピードをなんとかして上げるしか
方法はないわ」
と、一拍置くバーディー。もちろんみんなの注目を集めるためだ。
「そこでザン君。君の瞬動法、だったっけ?それをこの飛行機にかけることはできない?」
「あ、そうか!」
ソシュウも手を叩いてバーディーと同じことを思いついた。
「ザン、できるか?」
「乗り物では自転車くらいにしかやったことないけど……。それでリュミールが助かるな
らなんだってやるよ!」
ザンは決意をこめて頷いた。
「なら決まりだ!」
言うなりソシュウは階下の魔方陣の部屋へと降りていく。
「シアン、ヨキーウ。抗術はもういい。今からザンがこの飛行機に瞬動法をかけるから、
機体の増術に回ってくれ」
ソシュウが言うと、魔方陣に陣取ったシアンと、亜竜人のヨキーウはそれぞれに答える。
「おう」
「どんとこい」
その答えを聞いたソシュウは、準備は整ったと見てザンに告げる。
「いいぞザン!思いっきりぶっとばせ!!」
「うんっ!!」
ザンは今までで最高の集中力を持って瞬動法を発動する。そして飛行機の機体の強度を上
げる役割を担って術を増幅するシアンとヨキーウ、操縦桿を握るシドガー。それぞれ体を
安定させるソシュウとバーディー。
アーマヤーテ軍の飛行機は、一瞬ザンの気に包まれると、次の瞬間には音速を超えて飛び
出した。シアンとヨキーウの増術がなければ機体がバラバラになるほどのスピードだった。

304 :バーディーと導きの神:2006/07/18(火) 16:02:40 ID:82ugPrPv0
その頃デアマシュウの率いるルアイソーテ軍の飛行機は、国境線に配置されたアーマヤー
テ軍の浮き砲台と戦闘を繰り広げていた。
「浮き砲台。確かに火力は高いが狙いが甘いぜ!」
右に左に華麗に旋回しながら、ゲシルが得意げに言ってのける。確かにこの飛行機は発掘
された技術を使って機械的な機構を増やしただけあって、術者にかかる負担が少ない分、
抗術や増術に使える幅が広がり、防御力も高い。
しかしそれだけに武装は貧弱で、通常の機銃しか装備していないため、浮き砲台にはその
攻撃は効かなかった。
そんな折、ザンが瞬動法を施したバーディーたちの飛行機が到着する。
「やったぜザン!追いついた!」
ソシュウが喜ぶ。しかしザンは飛行機全体に瞬動法をかけるという離れ業をやってのけた
ぶん、疲労も激しいようで、全身に汗をかいてぐったりしていた。
「よくやったわねザン君。あとは私たちに任せなさい」
「はい……」
肩で息をしながら頷くザン。ソシュウがさっそく指示を出す。
「シアン、内圧念動(与圧をかける)!!」
「おう!」
「シドガー、目標確認!」
「ほい」
「つっこめえっ!!」
と、ソシュウが叫んだ瞬間、機体の周囲が閃光に覆われた。
「なんだっ?」
シドガーが動揺する。それもそのはず、堅固な要塞でもある浮き砲台がたった一条の光線
に貫かれて爆散したのだ。
「浮き砲台がやられた……」
目の前で見ても信じられない様子のシドガー。
ソシュウは冷静に先ほどの光源の位置を確かめようと前方を見据える。
すると、もう一台の浮き砲台が閃光に貫かれ爆散した。
「ビーム兵器!」
バーディーが叫ぶ。

305 :バーディーと導きの神:2006/07/18(火) 16:03:16 ID:82ugPrPv0
「いったいなにが攻撃してるんだ!」
ソシュウが怒鳴る。すると千里眼のシドガーがその相手を見つけて叫ぶ。
「空中戦艦!」
残った最後の浮き砲台から全力攻撃が放たれる。
しかしその装甲は浮き砲台の砲弾をも受け付けない。
その船首がバーディーたちの飛行機のほうへ回頭する。
「いかん!狙われてるのは俺たちだ!逃げろ!!」
ソシュウが叫ぶ。
「ちくしょう!間に合わねえ!!」
操縦桿を握るシドガーも叫ぶ。それほどのバッドタイミングな砲撃だったのだ。
そのとき一人だけ冷静な者がいた。バーディーだ。
バーディーは一人飛行機の最先端に陣取ると、最大威力で必殺技を放った。
「クラッシュッ!!」

306 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/18(火) 16:23:17 ID:82ugPrPv0
ザンのがんばり、デアマシュウ一行追撃戦の巻です。

人物設定その10(エルデガインより)

・シドガー:千里眼の能力と飛行機の操縦技術を持つソシュウの部下。
       冷静だが、根は楽天的な性格。

・ヨキーウ:亜竜人の魔導士。抗術、増術に加え、結界を張ることにかけては
       天下一品の腕前を持つサポート要員でソシュウの部下。
       部隊には一人は欲しい重宝する存在の男。

ソシュウらの部隊は友人たちで構成されており、口のきき方などにその友情の一端を見ることができます。
ただ、ソシュウを指揮官としては立てており、その信頼もあってちゃんと命令には従います。

>>296さん
とはいえ、デアマシュウはけっこう強敵ですよ。
>>300さん
まだ大丈夫ですが、いつかは途切れるかもしれません。
ですがそうならないよう楽しんでやってます。

307 :作者の都合により名無しです:2006/07/18(火) 17:00:34 ID:+yRLjvgvO
こいつもオオクワ臭がしてきたな

308 :オオクワ:2006/07/18(火) 17:24:26 ID:vt7SWo7KO
ムシキングのSSってオッケーですか?

309 :作者の都合により名無しです:2006/07/18(火) 17:25:28 ID:vt7SWo7KO
ハイデッカさんマダー?

310 :やさぐれ獅子 〜十六日目〜:2006/07/18(火) 20:38:18 ID:EcSmu/do0
>>275より。

311 :やさぐれ獅子 〜十六日目〜:2006/07/18(火) 20:40:40 ID:EcSmu/do0
 出血もなければ、痛みもない。右腕を失うというハンディを負いながらも、紙人形は平
然としている。
「まだやれる……ってか」
 片腕こそ奪ったが、加藤も何ヶ所か傷を負っている。決して有利とはいえない。だが、
手刀が紙人形を上回る切れ味を持つという事実は大きい。
「今度は真っ二つにしてやるぜ」
 手刀を携え、詰め寄る加藤。ところが──。

 ぶわっ。

 飛んだ。
 紙人形はわずかな上昇気流を利用して、一気に上空へと移動した。
「こ、こいつ……何でもアリかよ」
 これでは手が出せない。頭上十メートルほどの高さで浮かぶ紙人形を、悔しそうに加藤
は見上げる。とうとう試練は地上戦だけでなく空中戦をも想定したものとなった。
 呼吸を整え、いつ紙人形が降りてきてもいいように拳を握る。
「いつでも来やがれッ!」
 しばらくは睨み合いになると加藤は読んだ。

312 :やさぐれ獅子 〜十六日目〜:2006/07/18(火) 20:41:23 ID:EcSmu/do0
 予想通り、紙人形はなかなか降りてこない。
 紙人形にどこまで知能があるのかは不明だが、空中というアドバンテージを何かしらの
アクションで利用することはまちがいない。油断はできない。とはいっても、相手が何を
仕掛けようとも、加藤にできることはただひとつ。
 ──降下してきたところを、潰す。
 これしかない。敵とて飛び道具は持たぬため、地上に戻らなければ攻撃はできない。い
つ攻めるかを決める権利は紙人形にあるが、絶対的優位というわけではないのだ。
 地上と空中、両者動かない。互いに隙をうかがっている。
 殺気に支配された静寂の中、時間だけがただ過ぎていく。

 やがて、雲行きが怪しくなる。どんよりとした暗い雨雲が空を覆い始めた。
「一雨きそうだわ……」と、井上が天を仰ぐ。
 木々がどよめき、風がざわめく。
 緊張感がよりいっそう高まる。
(……雨が降れば、紙は不利だ。ってこたァ、今しかねぇ!)
 決着が近づく。
 上空から紙人形が消えた。

313 :やさぐれ獅子 〜十六日目〜:2006/07/18(火) 20:42:04 ID:EcSmu/do0
 時速二百キロを超える速度で、紙人形が急降下する。
 カウンターで手刀を振り下ろそうとするが、とても間に合わない。
「やっ、やべ──!」
 加藤の脇腹を紙の腕が抉る。紙が入り込んだ傷口から、紅い液体がどばっと吐き出され
た。
「いやぁぁぁぁぁッ!」予想だにしない出血量に、青ざめる井上。
 しかし、彼女とは対照的に加藤は笑っていた。
「今度こそ……捕えたぜッ!」
 両手で紙人形をわし掴みにする加藤。そして──。
「師曰く、空手は五体が凶器──」指に力がこもる。「つまり、こんな技もアリだッ!」
 歯を食い縛り、全力で紙人形を引きちぎる。通常の紙よりはるかに頑丈にできている紙
人形が、いとも簡単に避けてしまった。二枚になった人形を重ね、さらに引きちぎり、四
枚になった紙人形をまた重ね……。
 ぼろぼろになった人形は、哀れ紙吹雪となって大海へ散った。
 勝負あり。
 
 決着した途端、雨がどしゃ降りとなった。スコールだ。
「本格的に降ってきやがったな。井上、いるか?」
「ここに……います」
 茂みの中でうずくまっている井上。
「おい、何で泣いてんだよ」
「えっ……。な、泣いてませんよ!」
「わりぃ、雨で濡れてたのか。とにかくこれじゃ体冷やしちまうから、城で雨宿りしよう
ぜ」
「は、はい……」
 どことなく元気のない井上に、声を掛ける加藤。
「おいおい、体調でも悪いのか? 仕方ねぇ、ついてこい」
 井上の手を掴み、城へと走る加藤。大きい掌からたしかに感じられる体温と脈拍で、井
上はようやく落ち着きを取り戻すことができた。

314 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/07/18(火) 20:43:11 ID:EcSmu/do0
十六日目終了。
うんこSSはまたいずれ書きます。軽いヤツを。

315 :作者の都合により名無しです:2006/07/18(火) 22:18:47 ID:pY3Y8MjD0
・17氏
余りにも早い更新ペースで感想が間に合わないw
10億年とか、スケールが大きくなってきたけど、取りあえずは鬼ごっこかw
登場人物が多くてそろそろ人間関係が把握ができなくなって来たw

・サナダムシ氏
本当はすごい戦いなんだろうけど、相手が紙人形と思うと間抜けだなあ。
今の加藤は試練前に比べてどのくらい強くなっているのだろう?
井上さんとの関係も気になるけど、それ以上にうんこSSが気にかかるw

316 :ふら〜り:2006/07/18(火) 22:52:42 ID:qcG8DlYn0
>>NBさん
二重三重に張り巡らされた悪魔の知略が、親子の情愛で破られる……と。正義の味方不在
の血みどろ戦場で、こんな展開が待っていようとは。それでも動揺と危機感こそあれ全く
動じなかったスヴェンの信念が、いよいよ大破壊ですか次回? 何を吐くのかロイドっっ。

>>スターダストさん
ここまで、長いことかけて築き上げてきた信頼がありますな久世屋には。根来に向かって
どんなに余裕ぶった、どんなに皮肉ったことを言っても、決して挑発や傲慢ではなく素直
天然だと思える。そーいう奴ですよね。後々、追い詰められてシリアス顔……ある、か?

>>一真さん
学級閉鎖、一度もお目にかかれぬまま人生を終えるのか私は。ともあれ外伝とのことです
が、一真さんはやはり軽妙なドツき漫才が面白いので学園ものは良さそう。期待してます。
>そんなことじゃあこのスレの厳しい生存競争には生き残れませんよ?
>ここは自由奔放な2ちゃんねるだぞ?
当スレはいろいろ独特なものがありますから、ね。奔放に真剣に駆けて下さい銀八先生!

>>サナダムシさん
師匠の華麗なる技を思い出し、即興チャレンジで強敵を相手に見事成功。しかしトドメは
自分らしいアレンジを加えて豪快勝利。スマートさも加えつつ、地味に男らしくてカッコ
いい勝ち方でした。あと今回は狂言回しや解説にさえなってなかった井上、次こそ活躍?

>>かまいたちさん
ふふ、いるんですよね犯人が。今この中に。まだ現状では、神の視点でニヤニヤしながら
見ていられます。でも先のことを考えると、シチューも箒も怪しく見えてしまって何とも。
渋川先生の「ニセモノば〜っかり。本物は……これじゃっ!」ができぬ我が身の浅はかさ。

>>17〜さん
えぇい、前回褒めたばっかりなのに、こんな見え見えの手にかかってお姫様を浚われるか
ザンのアホっ! と罵倒してしまいましたが、何とか名誉挽回すべく頑張っている様子。
そういえば敵も味方も、周りは百戦錬磨のプロがひしめいてて……よくやってる、か彼は。


317 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/07/18(火) 22:56:51 ID:DqYsz8iC0
第八十四話「不自由」

「これで―――何度目の失敗になるかな」
狐面の男はぽつりと呟く。のび太に語っているわけでもなく、ただ、独り言のように。
「今度こそ間違いない、これで正解のはずだ―――そう確信して、結局大失敗だった。今までも、そして今回も。
全ての終わり、物語の最終地点・・・すなわち<ディングエピローグ>。それに辿り着くために、俺はありとあらゆる
行為を試みた。それこそ自分にとって大切なもの、どうでもいいもの、何もかもを等しくばっさり切り捨てて―――
それでも俺は、このザマだ」
彼はいつも通りの飄々とした態度の中に、僅かに―――ほんの僅かに寂寥感を漂わせていた。
「俺は何処にも辿り着けない。不自由だなあ・・・本当に、俺は不自由だ」
「不自由・・・?」
その言葉に、のび太は違和感を感じた。狐面の男はその声で、のび太を振り向く。
「うん・・・?ああ、なんだ。まだいたのか、お前。すまん、気付かなかった」
のび太は怒る気にもならなかった。侮蔑でもなんでもなく、彼は本気でそう言っているのだ。
ついこの間まで、自分の<敵>として、あれだけのび太に固執していたというのに―――
いや、違う。
のび太の語彙や国語力では上手く言えなかったが、狐面の男は別に、のび太たちに執着していたわけではないのだ。
彼が執着しているのは、あくまでも己の目的のみ―――それを果たすための要因に成りえないと判断した今となっては、
のび太の存在などもはや<そこらにいる子供>くらいでしかないのかもしれない。
「で?俺が不自由だということに、何か疑問でもあんのか?」
しかしながら、完全に無視を決め込むというわけでもないらしい。狐面の男はのび太に対して聞き返してきた。
「うん。シュウは―――あんたのことを、自由だって言ってたから」
そう。かつてシュウは狐面の男をそう評していた。だが狐面の男自身は、まるで正反対のことを言っている。
「<自由だって言ってた>ふん。シュウの奴―――俺のことを、そんな風に言ってたのかよ」
狐面の男は、犯しそうに笑った。

318 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/07/18(火) 22:57:22 ID:DqYsz8iC0
「くっくっく―――そうか、あいつがそんなことをな。救われる話だ。あのシュウが―――あの途方もない怪物が、
そんなろくでもない勘違いをするとは。奴も意外と抜けたところがあるな」
「どういう意味なの、それ」
「<どういう意味なの、それ>ふん。言ってる通りだ。俺は全く自由などではない。誰かに代わりになってもらわ
なければ何一つ出来ない俺の、どこが自由なものか。くっくっく―――シュウの奴、あんな<何もかもお見通し>
な顔で、そんな大間違いをかましているところを想像すると、実に面白い」
狐面の男は笑う。ちっとも楽しくなさそうに笑う。
「さっきも言った通り、俺はまるで自由ではない。むしろ、雁字搦めに縛りつけられているとすら言えるだろう」
「そうかなあ・・・」
のび太自身の考えは、むしろシュウの見解に近い。これだけ好き勝手にやってる男が<不自由だ><縛られてる>
などと、的外れな気がしたのだ。
「そうだとも。確かに俺は相当好き放題にやっている。他人の迷惑なんぞさっぱり考えず、後先も糞もなく、ただただ
思いついたことを手当たり次第にやりまくり、失敗すれば後始末もせずほったらかし―――ふん、確かに傍から見れば、
自由に見えるかもしれん―――だがな。俺が何故そんなことばかりしていると思う?全ては・・・世界の終わりを見る
ために。そのためだけに、俺は何でもする―――いや、しなければならないんだ」
狐面の男は静かに、だが何かに取り憑かれたかのように語る。
「何をしていようとも、俺の思考はただ一点に集中される―――世界の終わり。四六時中、俺はそればっかりを考えて
いる。それ以外のことなんざ、省みる余裕などない。俺は、俺自身の野望のせいで―――碌に身動きも取れやしない」
だから―――不自由。
のび太は不意に、目の前の男が可哀想になった。
彼は確かに―――縛り付けられている。己自身で己自身を、雁字搦めに縛っている。
そして、狐面の男はそんな自分を可哀想だなどとは、微塵も思っていないに違いない。
彼は自分自身のことすら、心底どうでもいいと思っているのだ。世界の終わりを見るためならば、自分自身すらも
惜しまない。それが―――<狐>。
―――だから余計に、のび太は悲しくなった。

319 :ドラえもん のび太の超機神大戦:2006/07/18(火) 22:57:54 ID:DqYsz8iC0
狐面の男は―――確かに<最悪>だ。
それも並の最悪ではない。正しく<人類最悪>の名に相応しい男だ。
だが、それでも―――それでも、彼は―――
ちっとも、悪くなんてない。
世間一般の常識から言える<悪>という概念からは、彼は大きく外れている。
どうしようもなく、救いようのないくらいに<最悪>ではあっても―――<悪い奴>ではない。
自分で造った迷路から出られなくなった、余りにも可哀想な人―――
少なくとも、のび太はそう思った。
けれど、それが当たっていたとしても、別に物語とは何の関係もなくて―――
狐面の男は、のび太に背を向ける。
「だが俺は、今さらその鎖をどうしようとは思わない。俺の親友だろうが俺の娘だろうが、俺の味方だろうが俺の敵だろう
が、全てを踏みにじって俺はこうして立っている。今さら俺は、この鎖を捨てられるものか―――不自由で、大いに結構だ。
自由だろうと不自由だろうと―――そんなものは、結局同じことだ」
スタスタと歩き去っていく狐面の男。のび太は彼を止められない。
「それじゃあな、野比のび太。縁が<合った>ら、また会おう」
お決まりの台詞と共に、彼は闇の中へと消えていった。
縁が<合った>ら、また会おう。だけれど、その縁が<合う>日は、またいつか訪れるのか。
今が最後の機会だったのかもしれないのに。
狐面の男を止める、最後の機会だったかもしれないのに―――
のび太はただその場に立ち尽くし―――やがて、朝日が昇った。

320 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/07/18(火) 23:08:05 ID:FzmtPngD0
投下完了。前回は>>67より。
久々の機神大戦。最近忙しかったので・・・

>>151 まあ、思いついた上に書き上げたからにはと思って・・・

>>157 機神大戦が終わるまでは、他の話を書く余裕はないかも。書きたいんですけどね・・・

>>164 確かにうんこ味カレーの奴と被りました。もうちょい推敲すべきだったか。

>>ふら〜りさん
オチのあと、ボコボコにされるのか、あるいはその発想力を褒めちぎられるのか・・・
想像はしたくないですねw

>>サナダムシさん
うんこ味カレーと微妙に被ってしまい、申し訳ありません。
>この対決、結局「ハヤシライスVSうんこ」だったんですねw
まあ、カレー対決なのに結局カレーで勝負してないってのが面白い部分・・・にしたかったのですが、
難しいです。
うんこSS、できればきっつい奴を期待します。

>>かまいたちさん
なんとなく勝手な予想をすると、このSSの<はじめ>は、実は金田一少年ではないのでは・・・というもの。
確か地獄の傀儡師は精神&記憶操作っぽいこともできるはずだから、殺人鬼Rを記憶喪失にして、
自分を金田一少年と思い込むように仕向けたとか・・・
まあ素人考えなんで大外れでしょうが。

321 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/07/18(火) 23:11:41 ID:FzmtPngD0
>>邪神?さん
今気付いたけど、死刑囚の怪談って大体岩下さんの話ですね。
彼女の話は精神的にきついものが多かった・・・
タケコプターは肝心なところでプスンプスンだから、いまいち信用できない。
輪郭の歪みを直す秘密道具って何かありましたっけ?

322 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/19(水) 06:07:17 ID:WdxSKIpF0
九 気配、そして予兆

 厨房の捜索を済ませた一行が次に向かったのは、談話室のある、屋敷東側だった。
 三つの個室を粗方探し終えて、地下音楽室に通じる階段を降りる。
「ここは、何気に本命かもしれないな」
 須藤がぼそりと言う。本命、と云うのは勿論『R』の隠れ場所を指しての言葉である。
 階段を降り切ったはじめたちを迎えたのは、厳重な鉄扉だった。
「開けるぞ」
 倉庫の時と同じ台詞を口にしながら、高瀬が扉に手をかけ、引く。
 しかし、扉はどんなに力を込めても、びくともしなかった。
「駄目だ。鍵がかかっている。須藤、葦原から鍵の置き場所は聞いていないか?」
「流石に、そこまでは聞いていない」
 話を振られて、須藤は苦笑した。
「まあ、当然か」
 高瀬も釣られて、気の抜けた笑みを浮かべる。
「此処には、元から鍵が?」
 日月が、開いた手の平を扉に触れながら、やはり須藤に聞く。
「……だと、思う」
 何秒か間を置いてから、須藤は答えた。
 そんなやり取りを横目で見ながら、はじめは考える。
 須藤は被害者の葦原と――少なくとも、この面子の中では――特別親しい関係だったのかもしれない……と。
「ふむ。それならば――」
 と、高瀬は顎に手を当て、
「別荘の持ち主しか置き場所を知らないような鍵を持ち出して『R』がここに籠った、と言うのは少々考え難いか?」
「先程、日月が立てた仮説通りに『R』が長期間ここを根城にしていたのだとしたら……
 地下音楽室の鍵の置き場所くらいは、知っていてもおかしくはないと思いますが」
 設楽は、まるで向こう側を透視でもしようとしているように、じっと目を細めて鉄扉を見つめている。
「もしもの話だけど……この音楽室の中に『R』が身を潜めているんだとしたら、手が出せないね」
 日月が唇を尖らせながら言う。暫く、無言の時間が過ぎた。
「よし!」
 唐突に大きな声を出して、須藤は五人を見回した。

323 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/19(水) 06:07:59 ID:WdxSKIpF0
「不安の芽は、どんなに些細なものでも、摘んでおくに越したことはない。
 仮に『R』が鍵を持っていたとしても、自由に出入り出来ないよう、扉の前に簡単なバリケードを築いておくのはどうだろう」
「それはいいんだけど……こんな場所で堂々と作戦会議なんかして、もう中に聞こえてるんじゃ……」
 十文字は不安そうに視線を流す。
「そのあたりは安心してくれ。地下音楽室は防音仕様だから、例え大声で叫んだとしても、中には聞こえない」
 須藤はそう言ってから、
「俺だって、そこまで馬鹿じゃあない」
 と付け加えた。
「やってみましょう」
 真っ先に言ったのは、設楽である。他のメンバーも、黙って頷いた。
 各々、談話室に置かれている、小さめのテーブルや椅子などを持ち出し、鉄扉の前に積み上げてゆく。
 バリケード、と言っても急ごしらえだ。その有効性には、多分に疑問の余地があった。
 こんな、家具を出鱈目に積み重ねただけの代物など、中にいる人間が本気で部屋から脱出しようと試みたなら、あっけなく破られてしまうだろう。
 更に言ってしまうと、地下音楽室内に『R』が潜んでいるとの仮説すらも『もしもの話』といったレベルである。
 それでも全員が、真剣な表情で、淡々粛々と作業を進めていた。
 じっとしていると、押し寄せる不安に心を握り潰されそうになる。
 じっとしていると、押し寄せる疑惑に心を掻き乱されそうになる。
 バリケードが有効か無効かなど、この際どちらだって構わない。
 何でもいいから、何か前向きな行動を起こしていないと、落ち着かなかった。
 これは、はじめには話していないのだが……実は、屋敷北側の個室はすべて、葦原が殺された直後に調べていた。
 その上でここ、屋敷東側にも誰もいないとなれば、サークルメンバー内に『R』がいるとするはじめの推理を、今度こそ全面的に認める形になる。
 そう言った意味では、この地下音楽室は、彼等が見せかけの協調を維持する為の『最後の砦』でもあるのだ。

 どのくらいの時間が経っただろう。
「こんなものでいいかな」
 須藤が、鉄扉の前に高々と積み上げられた、歪な家具の山を見上げて言った。
 思いの外、立派な出来だった。完全な足止めは土台無理としても、時間稼ぎくらいの役目は十分に果たしてくれそうだ。
 作業を終え、談話室に戻る。例のバリケードに家具の大半を動員したせいで、室内はがらんとしていた。

324 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/19(水) 06:09:18 ID:WdxSKIpF0
「推測されるパターンは、三通りある」
 広くなった室内を、行ったり来たりと歩き回りながら、高瀬が言う。
「一、『R』は、地下音楽室に潜んでいる。
 二、『R』は、我々が屋敷の中を捜索しているのに気付き、一旦外に逃げた」
 そこで高瀬は、一度言葉を切る。
「三、『R』は、我々の中に紛れ込んでいる――」
 第四のパターン『屋敷北側に潜んでいる』が抜け落ちていたが、はじめは特に何を言うでもなかった。
 高瀬が、パターンから除外して考えている……その事実だけで、概ね予想はできたから。
「率直に言って、みな、どのパターンだと考えている? パターン別の対策を立てる意味でも、検討しておくのは悪くないだろう」
 高瀬は、パターン三を疑っている。話を聞いてみて、はじめは直感的にそう思った。
 これはおそらく、この中に潜んでいるかもしれない『R』への、高瀬なりの牽制なのだ。
「パターン、二かな」
 最初に答えたのは、須藤。
「さっき、厨房で日月が見たらしい人影が、どうも気にかかっているんだよ。あれが見間違いでなかったとするなら……或いは」
「私も同じ理由で、パターン二を推すよ」
 日月がその意見に追従する。
「順当に考えて、パターン一か、パターン二でしょうね」
 続いて、設楽が答えた。
「やはり『R』がこの屋敷を拠点にしていたというのが、現時点で最も有力な仮説ではないかと思っています。
 主がいないのをこれ幸いと『R』はここで雨露をしのぎ……時折人里に降りては、殺人を繰り返していた。
 そしてまた、葦原を殴り殺すという凶行に走った……」
 設楽はふう、と息を吐く。
 そうだとしても、屋敷のどこにも侵入した痕跡がないのはおかしな話だ。はじめはそう思っていたが、黙って聞いていた。
 ここで余計な口を挟むと、辛うじて保たれている彼等の結束を砕いてしまうことにもなりかねない。
「それに……この付近に、集中しているんですよ」
「集中とは?」
「いつだったか、どこかの報道番組で、フリップを使って、今までの殺人現場に印をつけて事件のあらましを説明していたんです。
 今『それ』を思い出したんですが……過去に『R』が起こした殺人事件は――丁度、この屋敷を円で囲むようにして発生していました」
 がたん、と音がして、皆一斉にそちらを見た。
 部屋の隅に一脚を残すのみとなってしまった椅子に座っていた十文字が、立ち上がった音だった。
 十文字はそのまま、東廊下に通じる扉に向かって歩く。

325 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/19(水) 06:10:55 ID:WdxSKIpF0
「どうした? 何処へ行くつもりだ?」
 高瀬の質問に、十文字は恥ずかしそうに俯いて、
「……お手洗い」
 とだけ返事をした。
「武器があるとはいえ、一人で行動するのは危険だ」
 須藤が警告すると、
「では、念の為、僕が一緒に行きましょう」
 直ぐに設楽が名乗り出た。二人は並んで、東廊下への扉を開けた。
「これを持って行くか?」
 後ろ姿にそう呼びかけて、高瀬がバットを振った。
「いや、すぐに戻りますから」
 設楽は振り向いて、手で『不要』とのジェスチャーをする。
 トイレは、東廊下を抜けてすぐ、玄関ホールの向かいにある。それほど長い道のりではない。
「恋!」
 突然、日月が十文字を呼び止めた。特に、用事があったわけではない。
 ただ、漠然とした嫌な予感が、心の中で燻っていて……半ば反射的に、声をかけてしまったのだ。
「なあに?」
 何事かと目を丸くして、十文字は日月を見た。視線が交わった。
 自分から声をかけたのだから、何か喋らなくてはいけない。そうは思うのだけど、口が糊付けされたみたいに動かない。
 無理もない。日月の心に影を落としていたのは、とてもじゃないけど、はっきりとは言語化できない感覚――嫌な予感――だったのだから。
 それをそのまま伝えた所で、果たして何の意味があるだろう。悪戯に恋を怖がらせてしまうだけではないのか?
 日月はひとしきり葛藤した末、月並みな言葉を伝えるに留まった。
「あの、えっと、気をつけてね……」
「うん。大丈夫。これがあるから」
 十文字は日月を安心させるように微笑んで、右手に握った催涙スプレーを振ってみせた。

326 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/07/19(水) 06:13:31 ID:WdxSKIpF0
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>280です。
もうそろそろ、事件が起こりそうな気配。

・接近遭遇
人数の少なさから短期決戦が予想されますので、敵が出てきたらそこでクライマックス!になりそう。
ギアチェンジはもうすぐかと思います。
・神の視点
今回は三人称で統一しています。読み易くなっているといいのですが。
・ニセモノば〜っかり
えーっと、確か渋川老がフェイントを見抜いた時の台詞でしたっけか。
私は何気に、フェイントが使えない性質なのですよね。精進しなければ。

>>サマサさん
思えば一部の三話から。長い付き合いだった西東天が撤退。原作ライクな引き際でしたね。
十三階段壊滅で、スパロボに例えるなら、これからオリジナルボスキャラクターとの決戦へ突入と言った所でしょうか。
で、予想なのですが……えー……そのー……ノーコメントとさせてください。
そう言えば、地獄の傀儡師(金田一少年)ケルベロス(探偵学園)などはよく催眠で人を操ったりしていました。
オルフェウスよ、竪琴を奏でよ、とか何とか。ただ、はじめには葦原殺しの際の鉄壁のアリバイが。
(犯行時刻とされる時間、山を彷徨っている描写がある)

327 :作者の都合により名無しです:2006/07/19(水) 11:16:18 ID:HCMT8o2g0
>>十文字
これは間違いなく死ぬな。

328 :バーディーと導きの神:2006/07/19(水) 16:21:46 ID:qkL+1QZf0
同時刻、ルアイソーテ側の国境近辺のある地点では、一人の鳥人がアーマヤーテ国境を目
指して遁走中だった。
身長は約0.8レブ(メートル)、ずんぐりむっくりのふくろうに似た体格の鳥人は、必死にな
って国境を目指すが、運悪く国境では戦闘が起きており、大きな岩塊が身近に落ちてくる。
「オラとんでもないとこさきちまっただよー!どうすべー!」
叫んでみるが、事態は悪化すれこそ好転などしない。
そのうち何か地面を引きずるような音まで聞こえてくる。
「あ?」
鳥人がそちらのほうを見ると、大きな飛行機が地を滑りながらこちらに向かってくるところ「ガロウズ准将」
「なにごとだ、サーラ術次長」
だった。
「キャーーーーーーーーーーーーッ!!!」
生きた心地さえせず、鳥人はなんとか飛行機の滑ってくる射線から外れると、石に頭をぶ
つけてそれきり昏倒してしまった。
上空では未だに戦闘が続いていたが、空中戦艦が最後の浮き砲台を沈めると、それも沈静
化した。
「全滅か、やるな」
デアマシュウは意外な高性能を見せる空中戦艦に感嘆した。
そして、その艦長に対しての嫌がらせを思いつく。
「ゲシル、艦長に電文を送ってやれ」
「おう」
(奴はこの少女にえらく感心を持っているようだからな、フフフ……)
デアマシュウたちの乗った飛行機は、そのままルアイソーテ領内に入っていった。

「司令、高速艇から入電!『作戦協力に感謝する。少女は無事本国へ送還する』以上です。
返答はいかがいたしましょうか?」
通信兵が問いかけるが、司令は語気も荒く返答は必要ない、下がれと命じる。
(下賎な雇われ兵めが、いい気になりおって……。死よりも恐ろしい恐怖を味あわせてくれ
る……。とっくりとな)
空中戦艦司令ガロウズは、不満げな表情も隠さずそう思った。
そんなガロウズにも臆せず話しかける者がいる。

329 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/19(水) 16:24:15 ID:qkL+1QZf0
>>328
ガロウズ准将」
「なにごとだ、サーラ術次長」
を飛ばしてください。間違いです、すいません。

330 :バーディーと導きの神:2006/07/19(水) 16:26:21 ID:qkL+1QZf0
「ガロウズ准将」
「なにごとだ、サーラ術次長」
「光線砲を4発、最大出力で発射したことと、被弾したときの衝撃で放熱機関が故障しました。
このまま行くと蒸し焼きになりますけど、どういたしましょうか?」
「修理できぬのか?」
「複雑で、王都の工場でなければ無理です」
「王都まで持つのか、サーラ?」
「それはご安心を。王都まではわたくしめが熱を艦外へ誘導しますから」
「熱はお前の十八番だったな……。では動力部へ行け!急げよ!」
「はっ」
サーラが答え、その場を後にすると、ガロウズの罵声が聞こえてくる。
「王都に帰還する。もたもたするな!!」
「はっ!帰還します!!」
部下の萎縮した声も聞こえてくる。
サーラはしばらく歩き、ガロウズの後姿が見えなくなる地点まで行くと、くるっとガロウズの
ほうを振り向き、思いっきり舌を出した。
「べーだ!いばりんぼ!!」
いささか子供っぽい仕草だったが、それはそれで彼女のガロウズ評を表していた。

一方、空中戦艦の主砲を受けたアーマヤーテの飛行機は、直撃寸前にバーディーの最大
威力のクラッシュによってある程度威力を相殺され、、爆発四散だけは免れた。
しかし、それ以上の飛行はかなわず、不時着を余儀なくされていた。
「くそったれが!浮き砲台が全滅だ!空中戦艦の野郎!!俺たちもバーディーの術がなけ
りゃ死んでるところだぜ!」
シアンが手近の岩石に拳を入れながら怒鳴る。
「間一髪だったわね。これで内臓電源もほとんど空だけど。宇宙船、ピンホールで電源供給
してくれるかしら?」
バーディーはバーディーで携帯端末を操作するが、宇宙船からの応答はなく、不本意な結
果に終わって落胆している。
「落ち着けみんな」
ソシュウは冷静に状況を見極めようとしているようだった。

331 :バーディーと導きの神:2006/07/19(水) 16:28:22 ID:qkL+1QZf0
「わかってるよ。それで、行くんだろ?娘、助けによ」
シアンが応じ、ソシュウの足元で荒い息をしているザンを見やる。
「ああ、死んでも助けに行こうとしてる奴が身内にいるし、俺も同感だしな」
兄としての身びいきもあってか、ソシュウはザンの頭にポンと手を置くと、笑顔を贈ってみせた。
「場所は王都と見て間違いねえな。奴ら王直轄の兵らしいし……。だがよ、どうやって行く?」
シアンが当然の疑問を口にする。それに対してソシュウのほうは問題に思ってないらしい。
「行くことよりも、問題は行った後のことだ。奴らの都も結界を張っているだろうからな。
俺たちみたいな術者が入ったら一発でバレる。この中で気取られないのは未熟なザンと術
者じゃないバーディーくらいだ。かといって二人だけで行かせるのは、いくらバーディーが
強いとはいえ危険すぎる……」
「大丈夫さ、兄ちゃん。僕とバーディーさんは一度リュミールを助け出したことがあるんだ。
二人だけでも、いや、僕一人だけでも助け出してみせるから」
未だ荒い息のザンは、気丈にも言ってのける。
「私が行くのはかまわない……、というか当然ね。私とシアンの失態で逃がしたようなものだし」
「あんときゃあ……」
バーディーの言葉にシアンが反応しかけるが、ソシュウの目に黙らされる。
「二人の言葉は信じよう。でもな、リュミールの居場所が分からない。道案内でもいれば
いいんだが……」
と、ソシュウが無意識に石を放る。それは放物線を描いてある地点に落下し、音を立てた。
『ゴチッ』っと鈍く。
「バガやろーっ!石さぶっげだら痛えじゃねえがーっ!!」
途端に沸いた怒声に、一同の目が点になる。
声を上げた人物。それは先ほどアーマヤーテ目指して遁走していた鳥人だった。
「あーっ!あんだらはーっ!もしがしでアーマヤーテの人だぢでねえげ?」
一行を見つけた鳥人は、打って変わって大喜びでソシュウの足にすがりつく。
「あーっ!やっぱしそんだーっ!地獄に仏どはごのごどだっぺーっ!」
びっくりするソシュウを尻目に鳥人はオイオイと泣き出す。
「オラをあんだらの国さ連れでっでくれろーっ!」
「おい、おめえ、ルアイソーテか?」
シアンが顔を寄せる。


332 :作者の都合により名無しです:2006/07/19(水) 16:28:24 ID:dAfTbBx7O
はぁ…

333 :バーディーと導きの神:2006/07/19(水) 16:29:31 ID:qkL+1QZf0
「んだ。逃げで来ただ」
鳥人が言うなり、シアンは鳥人の首根っこを引っつかんで持ち上げた。
「てめえらのせいで浮き砲台は全滅!俺たちも死に掛けたんだぜ!」
眉間に皺を寄せて怒鳴るシアンに鳥人はどうすることもできない
「そっだらごど言われでもオラにはわがんねえべよー!オラは城でこぎ使われでだだげだ
ものーっ!」
その言葉にバーディーが反応する。
「ちょっと待ってシアン」
そう言って鳥人の身柄を解放し、地面に下ろす。
「あなた、どこから逃げてきたって言ったの?」
「ああ、俺も聞きたい」
ソシュウも見逃さなかったようだ。
鳥人はシアンにつかまれて伸びた衣服を正すと、二人に向かって言った。
「オラ城がら逃げで来だっぺ」
その途端、ソシュウとザンは手を取り合い、バーディーとシアンは目で確認を取り、シドガーと
ヨキーウはにこやかに笑った。
代表してソシュウが応対する
「君、名前は?」
「オラ、モルプだ」
鳥人は笑顔でそう言った。
今度は全員でモルプと名乗った鳥人を取り囲む。
「アーマヤーテに亡命したいわけ?」
聞くと、あるかないかわからない首を大きく上下させて頷く。
「させてやってもいいんだが……」
ソシュウがにこやかに言いかける。
「本当げ?」
モルプは本当にうれしそうに期待に満ちた目で一同を見渡した。
「でも一つ条件がある」
全員で取り囲んだまま、にこやかに言うソシュウ。

334 :バーディーと導きの神:2006/07/19(水) 16:35:30 ID:qkL+1QZf0
「え?」
モルプはなにごとかと問い返す。
ソシュウは一言、その条件を言った。
城への道案内をしてくれれば亡命を受け入れる、と。
「やだやだ!又城さ戻るなんざやんだーっ!やんだよーっ!めっかったらオラ殺されちま
うべよーっ!!」
簡単な条件だが、モルプは抵抗した。当然だが。
「協力しねえなら亡命させねえ!それにこのことをルアイソーテに知らせてやる!」
モルプをとっ捕まえたシアンが相変わらず過激な発言をする。
「シアン、それはちょっと」
バーディーが割って入る。
「私たちは卑劣な手でルアイソーテに捕まった女の子を助けるために、どうしてもルアイ
ソーテの地理に詳しい人の協力が必要なの。お願い」
「で、でも……」
モルプはそれでも渋る。
「モルプ」
「あ?」
ザンがいきなり土下座をする。
「僕の大切な人が捕まってるんだ。助け出すのにどうしても君の協力が必要なんだ!力を
貸してくれ……、お願いだ……」
頭を下げるザン。モルプはそれを見てからふうと息を吹き出す。
「放してけろ。オラもう逃げねえがら」
「それじゃ!」
ザンががばっと起き上がる。
その目の前に着地しながらモルプは言った。
「協力すっきゃなかっぺよ」
「モルプ」
嬉しそうなザン。
「オラは本気で人さ頼まれっど断れねえんだ……」
モルプはちょっと得意げにそう語る。ザンはモルプの手を取り、ありがとうと告げる。

335 :バーディーと導きの神:2006/07/19(水) 16:41:40 ID:qkL+1QZf0
「これで道案内は確保できたわねー。それでソシュウさん、この先どうします?」
バーディーは既に臨戦態勢で問うが、ソシュウは手馴れたもの、余裕の表情を崩さない。
「次って、そりゃ足を手に入れるさ」
「足?足ったっておめえ……」
シアンは全滅した浮き砲台のことを思い、渋面を作る。
それをシドガーが止め、声をかける。
「シアン、上見ろよ。来たぜ!」
「上?」
シアンがどれどれと見上げると、そこには3機の高速浮き砲台が目に映った。
「あー、後続の奴か」
ソシュウがびっと親指を立てる。
「一機借りて都の付近まで行く。見つからずに都に着いたら夜を待って行動開始だ!」
ソシュウは念話で既に話をつけていたのか、一機の高速浮き砲台が一行の前に下りてくる。
逆円錐形の基部の上にトーチカのようなものが乗ったそれは、念動で制御しているため着
陸脚を出すこともなく、地上すれすれに漂い、搭乗梯子を下ろしてくる。
ソシュウは中からでてきた乗員たちと二、三言葉を交わすと、一行に搭乗の指示を出した。
「さあ、行くわよザン君。今度こそリュミールちゃんを助けるからね!」
バーディーが鼻息も荒く宣言する
『ホントに今度こそにしろよな』
つとむが頭の中でぼやいてくる。
「今度はケリがつくまで降りないわよ」
既にこの星を調べるという当初の目的を忘れた戦闘種族特有の本能を発揮するバーディーだった。

336 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/19(水) 16:46:30 ID:qkL+1QZf0
単純なミスをしてしまいすいません。
罰として今回は感想への返答を自粛します。

人物設定その11(エルデガインより)

・モルプ:ふくろうとペンギンを足して2で割ったような容姿を持つ鳥人。
      ルアイソーテの下層市民でアーマヤーテへの亡命を目指す。

337 :作者の都合により名無しです:2006/07/19(水) 18:51:38 ID:hAF7dWlV0
>サマサさん
狐面の男、いやに哲学的な悩みを抱えているなあ。自分の存在に根付く悩みというか。
だからこそ、彼もエンディングで救われる必要性があるね。勿論、救うのはのびたの役割でしょうけど。

>かまいたちさん
十文字は、確かに第一の生贄になりそうな悪寒があるな・・。もしくはR自身?読めん。
かまいたち産の事だから、もう幾つか伏線や証拠を提示してるのかな?事件が起こるのが楽しみ。

>17さん
ルアイソーテを見て、キン肉マンの与作をなんとなく思い出した。牧歌的な出だしだけど、
超常者ひしめく世界だから油断出来ないね。あと、お話毎に副題かなんか付けた方がわかり易いかも。


338 :作者の都合により名無しです:2006/07/19(水) 21:14:56 ID:HCMT8o2g0
>>十文字
どう見ても死亡フラグ成立です。
本当にありがとうございました。

339 :作者の都合により名無しです:2006/07/19(水) 21:55:51 ID:ql9B8Dr+0
・超機神大戦
最終バトル前?だけあって葛藤してるね、のび太も狐面の男も。
多分、最終回は今度はハッピーエンドだろうけど、終わってほしくないな。

・金田一少年
みんな十文字に死亡フラグ期待してるから、カマイタチさん裏切って殺さないかもw
いや、俺もご冥福をもう祈ってるがw次回あたりに虐殺シーンか?

・鉄腕バーディ
ちょっと展開が急ぎすぎかな?登場人物多いから、少しゴチャゴチャしちゃう。
俺はバーディ知ってるから楽しいけど。



340 :作者の都合により名無しです:2006/07/19(水) 22:09:34 ID:Mj+nrNRkO
http://www.bannch.com/servlet/bbs/94728

341 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/20(木) 06:08:37 ID:DKu4iSbQ0
十 予兆、そして襲撃

 硝子の割れる耳障りな音が、談話室を包んでいた静寂を破った。
 それからすぐに、地獄の底から響いてくるような、男の唸り声が聞こえた。
 十文字と設楽が部屋を出て行ってから、時間にして僅か数分後のことだった。
 その場にいた四人は、びくっと身体を震わせてから、音の出所を探すように、揃って視線をあちらこちらへ移動させた。
 そして、これまた揃って、東廊下への扉に目を遣った。
 十文字と設楽が向かった先――玄関ホール。きっと、そこで何かがあったに違いなかった。
 具体的に『何が』あったのかは……考えたくない。この目で見れば、嫌でもわかる。わかってしまう。
「行くぞ!」
 思い切り扉を開け放って、高瀬は言った。
 開ききった扉が壁に叩きつけられる、バン、という鋭い音がした。それは宛ら、短距離走のスタートを告げる銃声だった。
 急き立てられるようにして、四人は東廊下を全力で疾走した。
 武器を持った須藤、高瀬の二人が先頭に立ち、はじめ、日月がそれに続く。

 玄関ホールに飛び込んで、最初に目に入ったのは、ホールの中央に、仰向けで転がっている十文字恋だった。
「恋……」
 呟いて、日月はふらふらと十文字に近付き、もうぴくりとも動かない彼女の前で膝をついた。
 眼球が、眼窩の外に零れ落ちそうなくらいに飛び出ている。だらしなく開いた口から、舌がだらりと垂れ下がっている。
 愛らしかったその顔は、もう見る影もない。
 首には、はっきりと索条痕が残されていた。何か細長い紐のようなもので首を絞められての窒息死とみられる。

342 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/20(木) 06:09:18 ID:DKu4iSbQ0
 日月は飛び出してしまった十文字の目をそっと閉じて、背中に手を回し、上半身を起こした。
 そのまま、亡骸を抱き締める。肩のあたりに顔を埋めて、日月は声を殺して泣いた。
 十文字の身体は、まだ柔らかかった。まだ暖かかった。薄手の服を通して、温もりが伝わってきた。
 それはそうだ。ほんの少し前まで、元気で……生きていたんだから。
 日月由香里と十文字恋は、中学生の頃からの親友だった。中学、高校、大学と、ずっと一緒に過ごしてきた。
 日月の隣にはいつだって十文字がいて、十文字の隣にはいつだって日月がいた。
 だから、二人が同じサークルに入ったのも、日月が十文字をこの合宿に誘ったのも、至極当然の成り行きと言えた。
「ごめんね、ごめん……」
 それでも――客観的に見れば、勿論そんなことはないのだけれど――日月はこの悲劇に至るまでの全てを、自分の責任のように感じていた。
 故に、謝らずにはいられなかった。自分が親友を死の運命へと導いてしまったみたいで、どうしようもなくやるせなかった。
 十文字が部屋を出た、あの時に、もっとはっきりとした言葉で注意していたら……私も一緒についていっていたら……
 いや。そもそも、私が合宿なんかに誘ったりしなければ……恋はこんな、酷い最期を迎えずに済んだのかもしれない……
 無意識の内に日月の中で、幾つもの『IF』が形を成して、親友の死亡と言う名の最悪を回避し得る選択肢を模索していた。
 もしも日月の人生がゲームだったなら、これはきっとバッドエンディングなのだろう。
 選択を誤った愚に、一つ大きな溜め息でもついてから、リセットボタンをプッシュしてやり直すのだろう。
 しかし悲しいかな、人生にはリセットボタンはない。本人の意思に関係なく、命の灯火が尽きるまで、ゲームは続行されるのだ。
 まあ、それはともかくとして。
 まだ周囲に殺人鬼が息を潜めているかもしれない……
 悔恨一色に染まった日月の思考からは、そんな認識すら、そっくり抜け落ちていたのだった。

「少年、日月を頼む」
 高瀬ははじめに一声かけてから、少し開いたトイレの扉の前に立った。
「気を付けろ……血の臭いがする」
 言って、隣に立った須藤に警戒を促した。須藤は、唇を噛んで頷く。
 確かに、血液特有の生ぐさい臭いが、扉の隙間から漏れ出ていた。

343 :金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』:2006/07/20(木) 06:09:55 ID:DKu4iSbQ0
 須藤は箒を、高瀬はバットを、それぞれぎゅっと握り締めて、扉を開いた。
 トイレの中は、やはりと言うべきか、ひどい惨状だった。
 床、壁、天井にまんべんなく飛び散った血液が、そこかしこで不気味な斑模様を作っている。
 まるで、部屋をキャンバスに見立てた前衛芸術家が、所構わず赤いペンキをぶち撒けたようである。
 そして、そのキャンバスの隅に、設楽はいた。いや、この場合『あった』と表現した方が適切だろうか。
 設楽は――身体中を切り刻まれ、使い古された襤褸雑巾のような姿で、床に打ち捨てられていた。
 最も、その『雑巾』から染み出しているのは、薄茶色の泥水ではなく、真っ赤な鮮血だったが。
 トイレ奥の窓は割れており、泥の付着した靴跡が、そこから設楽の死体まで、点々と続いていた。
 凄惨な光景を目の当たりにして、須藤は左手で口を押さえ、胃の奥から逆流してくるものを必死に堪えた。
 もしきちんと昼食を摂っていたなら、盛大に戻してしまっていただろう。
「パターン、二……か」
 バットが、トイレの壁に叩きつけられる。吐き捨てるように、高瀬が言った。

344 :かまいたち ◆O2kFKFG1MY :2006/07/20(木) 06:11:03 ID:DKu4iSbQ0
毎度ありがとうございます。前回投稿は>>325です。
展開が予め固まっている時は、書くのも早いです。
迷いがあったりなんかするとあっさり止まってしまいますけど。

・死亡フラグ、次回あたりに虐殺シーン
大体、予想通りの展開だったかと思います。
こういった状況下での『予感』は『予言』と同じような意味合いだったり。

345 :作者の都合により名無しです:2006/07/20(木) 06:53:51 ID:Oo9ycYAX0
朝一番で乙です、かまいたちさん
やはり十文字はRへの生贄だったか・・
ここでRを止めて欲しい・・なんて思わないなw
もっとRに活躍して欲しい!

346 :作者の都合により名無しです:2006/07/20(木) 12:15:42 ID:DX8b3Mfa0
今回は何人くらい人死にが出るんだろうか。楽しみだ。
また、前のカマイタチの時みたいに
登場キャラのデータみたいなのがあると嬉しいです。

347 :バーディーと導きの神〜王都潜入行〜:2006/07/20(木) 15:39:34 ID:8oDz6N1T0
「おし、ぼちぼち行こうか」
「ええ」
「はい」
日も落ちて多くの市民が眠りにつくころ、ルアイソーテ王都潜入部隊一行、バーディー、
ザン、シアン、モルプの四人組の活動は始まった。
「あれ、また流れ星だべ。きれいだなやー」
「うるせえ、静かにしろバカ」
のんきに夜空を眺めるモルプに対し、小声で怒るシアン。
「なるべく隠密にね」
こういう潜入捜査に一番慣れているバーディーが一行のまとめ役をする。
「けんどなんでシアンさんがついて来てるんだべ?」
「静かに」
「お前らだけじゃ心配だからに決まってるだろうが」
「しーっ」
しかしまとまらないのがこの一行。この面子で隠密行動を旨とする潜入捜査をさせるほう
がどうかしているかもしれない。
「そういえば、なんとかって結界に見つからないの、シアンさん?」
ザンがふと思った疑問を口にする。
「俺の術は外に出にくいからよ。見つからねえんだよ」
「へえ」
「静かに」
「したっけそれは半人前でねえげ?」
「うるせえ!」
とうとうシアンがキレてモルプを蹴っ飛ばした。
「あんたたちここがどこだか分かってんの?」
ついでにバーディーもキレる。
「でも、シアンさんもついて来てくれてとっても心強いです。ありがとう」
ザンが二人の状態にもかかわらず、間の抜けた声をかける。
シアンは黙ったままだった。
「あれ?なに赤ぐなってんだ?もしかして照れてんのけ?」


348 :バーディーと導きの神〜王都潜入行〜:2006/07/20(木) 15:41:34 ID:8oDz6N1T0
「てめー!鳥目じゃねーのかよ!」
「オラはふくろうみでえに夜目がきぐんだ」
「いーかげんにしてよね!」
このようにして、多々の不安を残しながらルアイソーテ王都への潜入行は始まったのだっ
た。

時を同じくして王城内。
ルアイソーテの全てを統べる国王、黒竜王は、デアマシュウに引き連れられたリュミール
に謁見していた。
「ほう……、ガロウズが懇意にしていたのはこの娘か。確かに不思議な娘だ。ワシからの
精神侵入術がまったく効かぬとはな……」
黒竜王はあくまで威厳を保ったままリュミールを見下ろす。
「娘、ワシはお前をどうこうしようというのではない。ただ教えてほしいだけだ。お前が
どこから来たのか、なんの目的のために地下深くに眠っていたのかをな?」
リュミールは黒竜王を見据えて言う。
「言えば私を自由にしてくださるのですか?」
黒竜王は以外にも寛大だった。
「正直に話してくれれば考えてもよい」
しかし一応の恫喝はやはりしてくる。
「嫌なら言わずともよい。ただし一生外へは出られぬ。それでもいいのかね?」
リュミールは迷った。
(言えない……。誰も巻き込みたくないもの。でも……、このままじゃいつか動き出してし
まう……。どうしたらいいの?ザン、バーディーさん……)
そのとき、なにも浮かび上がってない無地の右手のチップがキンッと小さく鳴った。
リュミールの顔が驚愕の表情へと変わる。
(右腕のチップが共鳴している……。私を呼んでいるのね……。エルデガイン!)
リュミールはこの場を速くどうにかして切り抜ければと思案した。

349 :バーディーと導きの神〜王都潜入行〜:2006/07/20(木) 15:43:10 ID:8oDz6N1T0
一方、独自にリュミールと巨人の謎に迫ろうとしているガロウズは、再び医師の研究室を
訪れていた。
研究室の中央には、ガロウズ自ら切り取った巨人の左腕が生理食塩水に浸して安置してある。
「すると、巨人も少女も我々と同じ組織を持った生物だというのか?」
ガロウズが尋ねると、医師は首を縦に振る。
「少女と巨人の腕から採取した血液、細胞を比較したところ、そう結論がでました」
そして医師は一拍の間を取ると書類を見ながら報告する。
「巨人の場合、肉体にかなりの手を加えられ、元来の姿とは違う形にされていますが、遺
伝情報は一部を除いて少女とまったく同一のものです」
「なんだ?その一部というのは」
「性別を決める部分がないのです。中性ですらない。言うなれば『無性』なのです。巨人
は純粋に一世代生物なのです。もっとも永久生命循環をしているのですから子孫を残す必
要はないのですが、そうなると、なぜ『女性』という個性を持った少女が必要なのか?と
いう問題がでるのです」
「うむ……」
ガロウズは腕組みをして医師の報告に聞き入っている。
「ですから今だ仮説の域をでないのです……」
医師は被りを振って報告を終えた。
「それで不死性についてはどこまで分かったかね?」
次の質問をガロウズがぶつける。医師はまた書類をめくると報告を始めた。
「薬などの化学物質の影響ではないことと、切り離された肉体は不死の力を失うというこ
とが分かっています」
「肉体そのものは不死ではないわけか……。と、いうことは、外部のなんらかの力によっ
て不死の力を得ているわけか……」
一人で得心したようにガロウズ。医師もそうですと追認する。
「どんな力なのかわかるか?」
ガロウズが一番知りたいのはその部分だった。しかし、表面上はきわめて自然に切り出し
た話題という風に装ってある。
「我々の科学力や能力では感知できないので、電気、あるいは念といったものではありま
せん。はっきりとは分かりませんが、なにか生命そのものを受けて力の源としているよう
に思えますね……。しかもその力も肉体の一部分でしか受けることができないのです」

350 :バーディーと導きの神〜王都潜入行〜:2006/07/20(木) 15:43:58 ID:8oDz6N1T0
「だからその一部分から切り離されると細胞は死んでしまう」
ガロウズは巨人の左腕を見ながらつぶやいた。
「例えるならその一部分とは、少女の手首のチップか?」
医師はコクリと頷く。
「ですから両手首を切り落とせば少女は死ぬはずです。もっとも、それを阻止するための
なんらかの処置が施されていると考えられますが……」
「なるほどな……」
深く深呼吸しながら得心するガロウズ。そのとき研究室の扉が騒々しく開く。
「准将、ここでしたか!」
現れたのは、副官のボックウェルだった。
「なんだボックウェル!騒々しい!」
しかしボックウェルはかまわずガロウズの側まで寄ってくる。
「内密な話なのでここではちょっと……」
その深刻な表情からすると、よほどの重要事態のようだ。ガロウズは頷く。
「エリイ医術長。なにか分かったらまた知らせてくれ」
「はい准将」
ガロウズ子飼いのエリイと呼ばれた医師は、姿勢を正して敬礼した。
ガロウズとボックウェルは揃って研究室を出る。
「都に敵が侵入したらしいです。いかがいたしましょう?」
ボックウェルは深刻な表情でガロウズに尋ねる。
「王にはまだ知らせてないだろうな?」
逆に問いただすガロウズ。ボックウェルははいと答える。
「目的はなんだ?」
「例の少女かと」
ボックウェルの答えに迷いはなかった。
ならばとガロウズは考える。
「捕まえますか?」
問うボックウェルにガロウズは被りを振った。
「いや、協力してやれ」
「えっ?」
驚くボックウェル。それもそのはず。敵に協力とは王都を守護する職にあるまじき者の発言だ。

351 :バーディーと導きの神〜王都潜入行〜:2006/07/20(木) 15:44:32 ID:8oDz6N1T0
「王の手中にある限り娘を手に入れることはできぬからな。奴らを利用して娘を取り戻す。
それを王に悟られなければよいのだ」
ガロウズは、笑みさえ浮かべて平然と言ってのける。そしてボックウェルをジロリと見据
えながらこう言った。
「よいか、決して誰にももらすでないぞ。裏切れば……、分かっているだろうな?」
ボックウェルには黙って頷くしか手はなかった。額にじわりと脂汗さえ浮かぶ。恐ろしい
男だとボックウェルは思う。
「では行け」
「はっ」
ガロウズの号令にボックウェルは答え、転送術でその場を去った。
(私を見下げ続けた貴族どもめ、見ているがいい……。利用できるものはすべて使い、貴族
どもを私の前にひれ伏せさせてくれる……)
ガロウズは一人廊下を歩きながら思い、声を上げて笑った。
その瞬間、なにか違和感を感じたのか、ピタリと笑うのをやめてとある部屋の扉を見据え
る。
しかしその場ではなにもせず、ガロウズは黙して再び廊下を歩いていった。
(うひー、やばーい。見つかっちゃったかしら……)
一人、その部屋の暗がりに潜んでいたサーラは、ガロウズの勘のよさに驚きながら、その
大きな胸を上下させた。
そして小さな声で呪文を唱えると、またバッタに似た虫を召喚する。
「ま、バレててもいっか。ホレお行き思念虫」
以前と同様、サーラが唱えると思念虫はいずこかへ飛び去っていった。

352 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/20(木) 15:54:29 ID:8oDz6N1T0
>>337さんの案を入れて、副題などつけてみました。
これでいいのかな?

バーディーたちの潜入とガロウズの暗躍の巻です。

>>339さん
私の説明不足が原因でしょう。不慣れなものですいません。

353 :作者の都合により名無しです:2006/07/20(木) 19:09:00 ID:EaRF7G+UO
かまいたち氏乙!
ええ?内部犯じゃないのか!?
それにしても、Rの目的は何なんだろう
17氏乙!
…ただ正直お腹いっぱい。
せめて一日あけてほしい。

354 :五十一話「旅路」:2006/07/20(木) 20:03:44 ID:nYUH2TdY0
騎士団領、ここには2つの騎士団が存在している。彼等、
騎士達は騎士道に基づいて人々をモンスターの魔の手から守り抜いている。
その騎士団長、「テオドール」「ハインリヒ」に加えて、
強大な魔力を有している、「導師フラーマ」
この3人がそれぞれ統治する街によってこの国は成り立っている。
と、ガイドに言われて遥々やってきた英雄が二人。
ここはオイゲンシュタット、「騎士団の盾ハインリヒ」の治める港町。

「やっと着いたぁ〜!最近は魔物も増えて騎士団も人手不足らしいわ。
船に乗ったせいで財布も空っぽになっちゃったし、
スタン、アンタ魔物退治でもしてきなさい。」
一人の女性が短い黒髪を潮風に揺らめかせながら船から下りると、
大量の荷物を抱えた連れの男に偉そうに言い付けた。

「お〜い、少しは持ってくれよぉ〜。」
大量の荷物を山の様にして抱えながら船から下りる男。
英雄スタン・エルロンであった、そして黒髪の女性は当然、
そのパートナーであるルーティ・カトレットである。
彼等はディムロスを失った今、修練を積む事でそれをカバーするため、
騎士達の聖地、騎士団領へと足を踏み入れたのだった。

「ガイドの人の話によると領主のハインリヒって人は社交的な人らしくて、
怪しい奴じゃなければ来客を門番に追い出させる事なんて無いらしいわ。
まぁ中には騎士がうようよいるんだから問題無いのかもね。」
スタンの声に全く耳を傾けずに話を進めるルーティ。
いつもの事なのだが、毎回被害を受けるのもまたスタンである。

355 :五十一話「旅路」:2006/07/20(木) 20:04:25 ID:nYUH2TdY0
既に夕方になってしまったので、領主ハインリヒへの面会を明日に控え、
2人は宿で休む事にした、資金不足のため借り部屋は一つ。
男女が恋人でも無いのに同室とは不謹慎だと思う者も居るかもしれないが、
冒険者にとっては男女が同室なのは当然である、特に貧乏な場合は。
だが、それはこの世界での話、魔物が居るとはいえ、
文明の進んだ世界の、しかも恋人でも無い二人には始めての事だった。

「あー疲れた、ちょっとアンタは床で寝なさいよ!」
「何が疲れただよ!荷物一式、全部俺に押し付けておいて!」
いつもの様な口喧嘩を繰り広げる二人、これが終わり、
夜がくれば当然いつもの様にすぐ寝付くと思っていたが、
眠りに付いたのはスタンだけであった。

「目の前にこんなに素敵な美人が居るってのに、
何でこんなに速く寝れるのよ・・・本物のバカねこいつ。」
緊張して寝付けなかった自分が馬鹿らしい。
窓から差し込む月の光に照らし出されながら、そんな想いに耽っていた。

アトワイトの治癒能力もあって、その白い肌には良く見ないと
判らない程度の傷しか残っておらず、月光に晒される事で白い肌が
闇と光の調和によって神秘的な色を放っていた。
それは女神と呼ぶに相応しい容姿、だが戦いになれば
癒しの力と巧みな剣技で、戦乙女の如く果敢に敵に立ち向かう。
だがその心根は、年頃の女性のそれと何も変わりは無い。

「ふぅ・・・夜更かしは肌に悪いって言うし、いい加減寝よっと。」
床に転がるスタンから眼を背け、ベッドに横たわり天井へと視線を移す。
そして一息つくと静かに眼を閉じ、眠りについた。

356 :五十一話「旅路」:2006/07/20(木) 20:04:58 ID:nYUH2TdY0
「ルーティ・・・ルーティ・・・」
小鳥の囀りと共に誰かの呼ぶ声が聞こえる。
目蓋をほんの少し開けただけで、窓から差し込む光が寝惚け眼を刺激する。
腕を伸ばし、眼を擦り付けて眠気を覚ますと見知った顔が目の前にあった。
「おはよう、ルーティ。朝飯、もう運び込まれてるよ。」

余りの事態に眠気も吹っ飛び、眼を見開いて思いっきり頬っぺたを抓り始めるルーティ。
スタンが起きている?そんな筈は無い。超が付く程の低血圧で、
例え睡眠中に魔物に襲われても決して目覚めず、
そのまま永遠の眠りについても何も不思議ではない田舎者代表、スタン・エルロン。
そのスタンに、山奥の原住民に、キング・オブ・低血圧に眠りから起こされた?
夢だ、まだ夢の中にいるのだ、でも頬っぺたが痛い。

「何寝惚けてるんだよ、これ食べたらハインリヒさんの所へ行くんだろ?」
そう言って頬っぺたを抓る手を握り、ベッドから引き起こした。
引き起こす際にも優しく身体を支えながら、
そっと抱き寄せる一歩手前で止める紳士的な仕草がまたスタンらしく無い。
床に足が着いた今でも夢の中に居る気分だ、天変地異の前触れだろうか。
そんなルーティの心中に気付く事無く、食事を済ませると、早速ハインリヒの下へと向かう事にした。

階段を登ると、城門を守る屈強な騎士が2人、どちらも槍を携え立ち阻かっている。
話によると剣を持っていても入れるらしいが流石にそこまで不用心では・・・。
「旅の方ですね、どうぞ。」
罠ではないかと疑う程にすんなり通してくれた。
領主が無能なのか、余程の自信家なのか。
背後を十分に警戒しつつ正面にある扉へと進んでいく。
外装は綺麗に装飾されているが、思い鉄の風格が歴史を感じさせる。
騎士達の聖地、その本山の一角へと、遂に足を踏み入れた。

357 :五十一話「旅路」:2006/07/20(木) 20:06:02 ID:nYUH2TdY0
扉を開いた時、これまでの不可解な出来事に納得した。
何故、ガードは易々と通してくれたのか。
何故、剣を持ち歩いても良いのか。
領主は無能でも無ければ自分の持つ兵力に溺れた訳でもない。
余程の化物が通らない限り『必要無い』からだ。

城門の兵士をも上回る、百戦錬磨の風格を身に纏った護衛騎士団。
ガードに臆す事も無くここまで辿り付く者等、まず居ないだろう。
城門の兵士が槍を構えれば、スタンも迷う事無く身を退いた。
悪人で無くともあの威圧に満ちた門を優々と通る事が出来るのは、
極一部の限られた『化物』か『狂人』である。
そして、それを迎え撃つ存在こそが『騎士』なのだ。

彼等はそれに相応しい実力と戦歴を持っている。
数の上では数十名しか居ない、ここで剣を抜いたとしよう。
躊躇いも無く左の騎士が槍で心臓を射抜くだろう。
それを剣で受け流そう、すると右の兵の剣が自分の首に掛かるだろう。
こういった極限のやり取りが騎士の数だけ続くのだ。
魔物の様に何も考えずに殴りかかってくるのとは違う、
人知を持った重く、速く、連続的に襲い来る刃の乱撃。
幾ら頭脳と経験に恵まれた剣の達人であっても、
ここを潜り抜けるのは不可能だ。それこそ不死身で無い限り。

一歩、歩を進める度に仮面に隠された騎士達の眼の色が変わっている事だろう。
一歩、間合いを詰める毎に、騎士達に詰め込まれた戦術が歩幅にまで合わせて千差万別の変化を遂げていよう。
殺された静かな殺意に、思わず剣に手が掛かりそうになるのを耐え抜き、
歩を進め続けると最奥に居る簡素でありながら気品を失わない椅子に腰掛けた老人の下へと辿り着いた。

「ようこそ、旅の人。私がこの城の主、ハインリヒだ。」

358 :五十一話「旅路」:2006/07/20(木) 20:06:42 ID:nYUH2TdY0
最近になってPCのスペック不足でMMOとか出来なくなってきました。邪神です。
いやー、CPU以外の機能は充実してるらしいんですがね・・・。
まぁお金もないので買う気になったら新PCになるでしょう。
それでは久々の講座でございます。

〜Sa・Ga講座〜

騎士団領 ミルザブール、バイゼルハイム、オイゲンシュタットの
三つの街によって成り立っている騎士団の統括する領土。
作中でハインリヒは「騎士団の盾」と呼ばれており、
ミルザブールの領主テオドールは「騎士団の剣」と呼ばれる。

オイゲンシュタット 「騎士団の盾ハインリヒ」の治める港町。
騎士団領という事もあってミルザブールと同じく武具は高級品が並ぶ。

〜感謝〜

ふら〜り氏 やっと別パーティですね。死刑囚軍団が一番漫画SSっぽいPTでしたけど。
でもホークの出番はまだまだ先、このまま鍛針功なんか覚えたりして・・・。

サマサ氏 竹の故障はのび太のお約束ですからねぇ、かぐや様は格闘能力高すぎなので
Gガソダム系に乗せてフォロー、これでコプター問題も解決。

101氏 冒険には突入出来ても決戦は遠い感じが・・・。
ロマサガのイベント全部入れたら確実に100話超えるw

102氏 まぁ死刑囚も終りじゃないのでその内回ってきますよ。
もう二十、三十話くらいかな・・・w

109氏 大丈夫です、自分の中では終わりそうにないですから・・・。
騎士団イベントにアミバの処理にサルーイン、まだまだいっぱいw

359 :作者の都合により名無しです:2006/07/20(木) 21:02:12 ID:8oDz6N1T0
>>353さん
じゃあちょっと間隔あけます。2〜3日に一回くらいで。

360 :作者の都合により名無しです:2006/07/20(木) 21:55:29 ID:F2CBFptN0
ゲーマーだな、邪神さんは。(七英雄をテンプテーション見切り無しで勝つ方法教えて)
死刑囚チームが終わって、サガチームかと思いきや、テイルズチームでしたか。
パーティが変わるとガラリと雰囲気変わるな。ファンタジーぽくなった。
騎士たちの聖地で何が起こるか楽しみにしてます。

>17さん
王都への潜入。過酷なミッション?ですね。思念虫ってアイテム?
>>359 俺は応援してるけど、毎日だと読む方も書く方も大変かもね。
でもこれからも完結目指して頑張って。投げ出しは勘弁ね。


361 :作者の都合により名無しです:2006/07/21(金) 12:49:38 ID:QdeO8cC90
邪神氏お久しぶり。
今回は久しぶりの死刑囚以外のパーティだな
死刑囚たちが濃すぎるメンツなのでスタンやルーチィが普通の人に見えるw

362 :作者の都合により名無しです:2006/07/21(金) 19:50:37 ID:5IUx+Hd80
邪神さん乙。
お笑い死刑囚の時とは違い、スタンとルーティの恋愛事がメインになる感じかな?

17さんも乙。
あくまで真面目な敵方と、なんか能天気なバーディの対比が面白い。
俺は応援してるから、好きなように書けばよいと思うよ

363 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/07/21(金) 22:50:09 ID:F43U0ObY0
 なかなか雨は止まず、結局二人は城で一夜を過ごした。朝焼けが出る頃には、空はすっ
かり晴れ上がっていた。
 時を同じくして、目を覚ます神心会の男と女。
「ようやく止んだみてぇだな」
「えぇ、凄い雨でしたね」
 今、二人がいるのは城の二階。一階は出入り口、三階には窓があるため、雨が入ってく
るからだ。
「ところで先輩、昨日の傷は大丈夫ですか?」
「あァ、これか」脇腹についた傷をなでる加藤。「なにせ得物が紙だったからな、出血は
ひどくねぇ」
「そうですか……」井上が安堵してため息をつく。
「ただ、またここにダメージを受けたら、傷口がぱっくり開く可能性もある」
 冷や汗とともに絶句する井上。
「安心しろ、簡単にやられやしねぇ。俺にはおめぇを元の世界に戻す義務があるし、ドッ
ポに助けられた命でもある」
 傷を刺激しないようにストレッチを開始する加藤。調子は悪くなさそうだ。ただ、それ
でも井上の心配は尽きない。

364 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/07/21(金) 22:51:21 ID:F43U0ObY0
 三階に上がる二人。
 窓からは無人島をほとんど見渡せる。湿気の少ない朝風が二人を包み、雨が上がったば
かりの天空は澄み切っていて美しい。
「わぁ……。キレイですね、先輩」
「あぁ」
 しばらくの間、彼らは会話を交わすこともなく窓の外を見つめていた。それだけで充分
だった。二人の眼には同じ景色が映っているのだから。
 何気なく、視線をずらす加藤。すると、ほんの一瞬、井上の横顔が女神のような神々し
さを放っていた。淡い光に照らされた彼女が、異常なまでに美しく感じられた。美しさに
対して「異常」という表現は相応しくないかもしれないが、これはもう「異常」と表現す
る他なかった。
 どっと汗が噴き出る。まちがいなく頬は紅潮している。悟られまいと、慌てて首の向き
を変える加藤。
 ──俺は何を考えてやがる。
 自戒の念が彼を包み込む。
「先輩、どうしました」
「……え、いや……別に……」
「汗が凄いですけど」
「いや、大丈夫だ。す、少し緊張しちまって」
「でも──」
「いいから放っておいてくれ! 頼むから、話しかけないでくれッ!」
 姿を見ずとも、彼女の声を聞くだけで神経が高揚してしまう。やむをえず、加藤は突き
放すという手段を選んだ。
「オ、オス……。すいませんっ!」
 いきなり怒鳴られたにもかかわらず、井上はさほどへこんではいなかった。先輩は意味
もなく怒る人ではない。きっとなにか理由があったのだろう。だから、気にする必要はな
い──と。

365 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/07/21(金) 22:52:25 ID:F43U0ObY0
 さて、新たに心に芽生えた感覚というものは、一度できてしまうと取り払うのは容易な
ことではない。
 加藤の心にほんのわずかだが芽生えてしまった感覚。
 まともに井上と目を合わせられない。もし、目を合わせてしまったら、即座に先ほどの
「異常」が蘇ってくるだろう。相手は後輩、ましてや今は試練を受けている最中、許され
ることではない。
 すると突如、井上が叫ぶ。
「先輩、来ましたッ!」
 窓の外、空にびっしりと浮かぶ黒い影。一昨日の粘土人形の時とそっくりだ。
「下手に動くより、ここで待ち構えた方が安全かもな。よし、俺は入り口を固める。おま
えはこの階から一歩も出るなよっ!」
「オスッ!」
 加藤は急いで階段を駆け下りていく。彼にしてみれば、今日ほど試練が来てほっとした
ことはなかっただろう。
 城の門番と化す加藤。まもなく土人形軍団との激突が始まった。

366 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/07/21(金) 22:53:14 ID:F43U0ObY0
 一方、三階に残された井上。空手家の勝利を祈りつつ、ふと窓辺に立つ。加藤が倒され
ぬ限り、この階は安全である──はずだった。
「え……?」
 空にひとつ影があった。徐々に近づいてくる。粘土人形ではない。
 正体は、昨日の試練であった紙人形と、それに乗っている正体不明の男。ベレー帽を被
り、右手には絵筆を持ち、スモッグに絵の具まみれの長ズボン。いかにも芸術家かぶれと
いった風貌だ。
「もしかして私を狙ってるんじゃ……」
 すぐに加藤に知らせようとするが、下から聞こえる騒音から判断して、彼には余裕はな
い。ならば、自分ひとりで敵を処理せねばならない。
 覚悟を決めた井上をあざ笑うかのように、悠々と城に到着する男。
「ほう、なかなかの素材だ」
「素材……?」
「おっと、自己紹介が遅れたようだ。私は今君の彼氏が戦っている粘土人形、そして紙人
形(こいつ)の生みの親だよ」
 柔らかな手つきで、空飛ぶ絨毯代わりにした紙人形をなでる男。
「身近な素材から戦闘人形を造り出す……私のことは芸術家(アーティスト)と呼んでく
れたまえ」

367 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/07/21(金) 22:56:21 ID:F43U0ObY0
>>313より。
十七日目開始です。

368 :作者の都合により名無しです:2006/07/22(土) 09:39:33 ID:22KURCHb0
加藤ツンデレか・・w
いよいよ、井上さんが決戦の場に立ちそうな感じですね。
加藤に習った金的は利くのか?

369 :作者の都合により名無しです:2006/07/22(土) 16:50:41 ID:HgDBnCf00
お疲れ様ですサナダムシさん。
加藤と井上、カップルの予兆ですか?
まあ、無人島?に健康な男女が一人ずつですからね。
加藤のイメージからすると女が欲しくなると
すぐ押し倒すようなイメージがありますけど、後輩だから耐えてますね。
加藤には末堂がいるから、操を立ててるのかな?

370 :作者の都合により名無しです:2006/07/22(土) 19:28:13 ID:Kh1atr1jO
>369
ちょwwwww
井上さんは一応、克己さんのお気に入りだからなあ…
現実世界に戻ったら、三角関係にも期待

371 :バーディーと導きの神〜一時の間〜:2006/07/22(土) 20:15:42 ID:MBfgL1Vb0
その頃バーディーたち潜入部隊一行は、王都の城下町で偶然ルアイソーテ最下層の9等市
民にあたるユウとコウという二人の姉弟が8等市民四人組に虐待されているのに遭遇。モ
ルプの制止も聞かず飛び出したザンとバーディー、シアンは瞬く間に8等市民たちを撃沈。
敵の眼前でのその無謀振りにあきれるモルプをよそに二人を助け出した一行は、今はその
姉弟の住む長屋に招待されていた。
ユウが語るに、みんなの力になれるからということだった。
「へえ、ユウさんてルアイソーテの階層制度解放のための地下組織の人なの」
ユウが一行を招待した理由を知ると、ザンは素直に驚いた。
「地下組織っていっても大したことしてるわけじゃないのよ。情報を集めたり、配給品の
横流しぐらいしかしてないんだから」
ザンの感嘆に照れたのか、ユウは自身の活動を控えめに表現する。
しかしシアンは大仰に頷く。
「この国でそれだけできたらたいしたもんだ」
一人うんうんと納得したように言う。
「そうなの?」
事情をまったく知らないバーディーがザンに聞く。
「僕、よくわかんない」
しかしザンも子供ゆえの無知か、恥ずかしそうに頭をかいた。
そのとき、長屋の扉をノックする音が響き、一同が一斉にそちらを見やると、扉の隙間か
ら一枚の畳まれた紙切れが差し込まれた。
それきり、人が入ってくる様子もない。
一番近くにいたバーディーが紙切れをとると、ユウが渡してくれと頼んだ。
バーディーは素直に紙切れをユウに渡す。
「今のは情報屋のラサークさんよ。7等市民なの。色々知ってるのよ」
ユウが紙切れを開きながら説明する。
「で、なんて言ってるんだい?」
シアンが問う。
ユウはちょっと待ってと言いながら、紙切れに書かれた情報を読む。その表情は真剣その
ものだ。
「まあ大変!」
情報を読み終わったユウは少し大きな声を上げた。

372 :バーディーと導きの神〜一時の間〜:2006/07/22(土) 20:16:35 ID:MBfgL1Vb0
「どうしたの?なにか悪いことでも?」
厄介ごとや不当な処遇などには職業柄敏感なバーディーが、心配そうに身を乗り出す。
しかしユウは被りを振った。
「悪いこと……、とは一概には言えないけど、あなたたちの探している彼女、黒竜城の17
区画150階にいるらしいわ。地上900レブ(メートル)はあるわよ」
「900レブ!」
一行はその情報に驚いた。リュミールはよりにもよって王都の心臓部である王城の中の高
階層にいたのだ。驚くなというのが無理な話だ。
「情報の信頼性は?」
幾分冷静なバーディーは、肝心な点を尋ねた。
「確かよ。今まで間違ったことなんてなかったもの」
ユウが答える。
「確度は信頼できそうね……」
バーディーは特捜の顔に戻って思案にふける。ボックウェルの暗躍は彼女は知らない。
「で、どうする大将?」
そんなバーディーをよそにシアンがザンに聞いた。ここはザンがどうするかで一行の次の
行動が決まる場面だ。
「もちろん行く!」
ザンはきっぱりとそう答えた。
「そう来ると思ったわ」
思案にふけっていたかに見えたバーディーも、ザンの答えを予期していたようだ。ふっと
笑顔を見せる。シアンも同様にニッと笑った。
「なら待ってザンさん。あげたいものがあるから」
そう言ってユウが棚から取り出したのは一枚の上着だった。
「上は寒いわ。着ていって」
ユウはその上着をザンに渡すとにっこりと笑った。ソシュウの服を着続けているバーディ
ーと独自の術式服を着ているシアンはともかく、ザンはズボンにシャツ一枚きりの服装だっ
たのだ。
ザンは渡された上着に袖を通す。生地もしっかりしていて着心地も抜群だった。
「いいんですか?こんないいものもらっちゃって」
ザンは服の前後ろを見やって恐縮する。

373 :バーディーと導きの神〜一時の間〜:2006/07/22(土) 20:17:20 ID:MBfgL1Vb0
「気にしないで。死んだ父の服を仕立て直したものだから。着る人いないし」
ユウはあくまでにこやかだ。そしてさらにもう一着服を取り出すとザンに渡す。
「これは女の子の服よ。あなたたちの話のとおりなら大きさもぴったりなはずよ。持ってって」
これまた綺麗に仕立てられた服だった。ザンはまたも恐縮しながら受け取る。
「ありがとう。……でもなぜそんなによくしてくれるんですか?」
ザンは服を持ってきていたリュックに仕舞い込みながら問う。
その問いにもユウはにっこりと笑って答えた。
「アーマヤーテに勝って欲しいから」
はっきりと言うユウの言葉に、ザンはその答えるべき返事を思いつかなかった。
「よっしゃ、じゃあ行くとするか」
「そうね。ありがとうユウさん」
シアンとバーディーが立ち上がる。ザンとモルプもそれに続く。
「ありがとうユウさん。絶対このことは忘れないよ」
「さよなら。がんばって」
ユウは最後まで笑顔だった。

同刻、王城内のガロウズの私室。
ガロウズは左の手のひらに複雑な文様を描いて呪文を唱えていた。
そして右手の人差し指と中指で文様の中心に傷をつけると、最後の呪文を唱えた。
「我が下部『影魂(かげだま)』よ、我が血を肉とし生まれいでよ!」
するとガロウズの左の手のひらから血が湧き出し宙に漂い、やがて四つの直径1センチ程度
の小さな黒い塊となる。
ガロウズはにやりと邪悪な笑みを浮かべると、その塊たちに命じた。
「探れ、影魂!」
途端、影魂は一斉に飛び散り、各々の目的地へと飛来する。
一つ、王城のテラスに佇む黒竜王の頭上。
一つ、王城の廊下を行きゆくボックウェルの頭上。
一つ、王都の近くに隠れているソシュウたちの高速浮き砲台の上方。
一つ、豊満な胸の重さで肩がこっているサーラの頭上。
ガロウズは先ほどの笑みを浮かべたまま一人つぶやく。
「フフフ、きゃつらめ。どんな尻尾をつかませてくれるか……。クク、楽しみだ……」

374 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/22(土) 20:27:48 ID:MBfgL1Vb0
一日おきくらいで行きます。

ガロウズが動き始めました。

人物設定その12(エルデガインより)

黒竜王:ルアイソーテを統べる王。厳格な市民階層制度を頑なに守っている。
     ガロウズの行動をなにかと気にかけている。
     王の名に恥じぬ能力は当然持っているガロウズにとっての壁。

・ユウ&コウ:ルアイソーテでは最下級の9等市民の姉と弟。
        ほとんど奴隷と同じ待遇だが、地下組織に参加して、
        密かに市民階層打倒を目指している人情家の姉と、
        姉のことを慕う素直な少年。ザンたちに貴重な情報を送る。

375 :作者の都合により名無しです:2006/07/22(土) 20:44:27 ID:ivPour0E0
サナダムシさんが快調なのが嬉しい。
ついに井上さんも戦うのか、直伝の金的蹴りがどこまで通用するかな。
17〜さんも快調だな。
ガロウズの術は暗殺人形みたいなモンかな? いよいよ反逆がありそうな予感。
あと階層精度に簡単にでも説明があればアリガタいです。


376 :作者の都合により名無しです:2006/07/22(土) 21:08:50 ID:BK/ZsyNl0
>>369-370
加藤→末堂→克巳→井上→加藤・・・・・・、か。うまくいかんもんだなw

>サナダムシさん
サナダムシさん、最近以前の更新ペースに戻りつつあるね。
ファンとしては嬉しい。これでうんこが復活すれば完璧だな。
井上と加藤の恋の行方の方が敵との戦いより気になるかも。

>17さん
2日に一度でも驚異的なペースだよ。心底凄いと思う。
バーディは読んだ事ないけど、この世界は魔法も一般的なのか。
バーディは力押しタイプみたいだから苦戦しそうだな。

377 :作者の都合により名無しです:2006/07/22(土) 21:19:33 ID:M2dUMvb90
鉄腕バーディーはSFなので、魔法はない。
高度に進んだ科学を持っている宇宙人が出てくるが、
バーディーが戦闘するときは、肉弾のみで、これは本人も認めている。

個人的に、バーディー大好き人間なので>>17さん支援も含めて、全巻嫁

378 :376:2006/07/22(土) 21:27:42 ID:BK/ZsyNl0
なるほど。今度漫画喫茶に言った時に読んでみる。
ただ、ゆうきまさみはふら〜りさんのSS読んで
パトレイバー読んだけど、ちょっと合わなかったんだよね。
でもま、とりあえず1巻は近いうちに読んでみる。
377氏ありがと。

379 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/23(日) 03:51:44 ID:6TgulEca0
根来は亜空間に手を突っ込み、扇の束を取り出した。
「またそれですか」
コウモリの自動人形(オートマトン)を1羽放ちつつ、久世屋は分析する。
(彼はきっとこう考えている。攻撃しても木と入れ替わるから接近戦は無意味。しばらく遠距
離戦をして、入れ替えの弱点を観察する……って。けれど)
久世屋が核鉄と共に仕入れた知識にはこうある。

ホムンクルスは武装錬金でしか倒せない。

(決め手はやはり、あの忍者刀の武装錬金)
猛然と飛びすさるコウモリへ扇が降り注ぐ。忍法・天扇弓だ。
(入れ替えを封じたら必ず接近戦を仕掛けてくるだろうね。俺にも一応、武器はあるけど)
赤いうねりが、何度目かの爆発を起こした。
その真っ赤な光の中でため息をつきつつ、右手の百雷銃(百雷銃)を見る。
本来の百雷銃は逃走用の道具だから、忍者が携帯できるぐらいの小さなサイズだ。
が、筒は遠目だとコカコーラの500ml缶に見えるほどの大きさだ。
それが鈴なりの10個セットで縄──正確には火縄──へ結わえつけられている様は、さな
がら和風チェーンマインといった趣だ。
爆発に一歩遅れて、一本の扇が急降下。
久世屋の背後を狙い撃たんときりもむ扇。常人ならば必殺必定の不意打ちである。
が、扇が標的の圏内約70cmに達した瞬間!
久世屋の姿は陽炎がごとく揺らめき、木へと変貌。
入れ替わりだ。
いわゆる逃げ水のように、彼は4mほど先で難を逃れている。
あわれ扇は木に刺さり、爆炎に呑まれ尽き果てた。
「フム」
関心なさげな根来の声を聞きながら、久世屋は思考に浸り続ける。
(重さは見た目ほどじゃないし、何より今日初めて使うからなぁ…… 経験差から考えると、
近距離戦になれば間違いなく競り負ける。その上)
コウモリを使っているうちに、もっと重大で基本的な、『弱点』が見えてきている。
(気をつけなきゃいけないのは弾切れ。いくら何でも無尽蔵に出てくるワケがないし、既に入
れ替え用に結構な数を使っているから、攻撃用の筒も実は結構少なそう)

380 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/23(日) 03:53:10 ID:6TgulEca0
配分を手早くまとめると、またコウモリを差し向ける。
が、それも撃墜。
(正面からじゃムリだ。ま、そっちの対策は後で考えるとして)
結論を出すと深く息を吸い込み、全身に一種の活力をみなぎらせる。
すると。胸。肩。腹。二の腕。大腿部。
そこかしこから赤い筒がにゅっと飛び出て、コウモリへと形を変えた。
「体のどこからでも出せるんですよ。どこからでもね。入れ替え用の百雷銃を仕掛けたのも
この特性。最初の打ち合いでこっそり足元から出して、森に張り巡らしました」
言葉に合わせるようにコウモリは殺到する。
総勢、5体。
根来は表情一つ変えず、ズボンのポケットに手を突っ込み妙な物を取り出した。
一言でいうと、銀色のくの字。ただし両端は釘のように尖っている。
「忍法・針つばめ」
掌に収まるぐらいのそれが5つビューっと風を切り……当たり前のようにコウモリを撃墜した。
だが、異変はこの時起こった。
突如として、根来の肩口が火を噴いたのだ!
ところどころ焼け焦げた制服に、うっすら血が滲む。
「大したコトは何もしてません。」
久世屋は恐れ多いという顔で説明した。
「仕掛けた百雷銃と体の中身を入れ替えて、そこから透明なコウモリを放っただけです。手足
だと動きに支障が出ますが、内臓ならまぁ何とか」
辺りでは。
腸とおぼしきサーモンピンクの塊が、木の枝にぶらさがったり幹に巻きついたり。
胃が根元に無造作に転がっていたり、膀胱が木の頂上で琥珀色の液体を流したり。
いずれも枯れ枯れとした森に異様な色彩を与えている。
「どの部位であれ、筒との入れ替えが可能か。右足を取り戻したのもその特性。筒を発現で
きる貴様ならば、手繰り寄せるのは容易いだろう。付け加えると、拘束を逃れたのは不可視
のコウモリの仕業。まんまと月水面を燃やしつくし、火まんじを打ち消した」
「ケガしつつの解説、ありがとうございます。では、出所不明、所在不明確なコウモリを」
小バエがたかり始めた内臓どもからコウモリが排出され、闇に溶け込み飛来する。
「下らんな」
根来は、右手に天扇弓、左に針つばめを持ち出した。

381 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/23(日) 03:54:24 ID:6TgulEca0
いずれもどこにしまっていたか不思議なぐらいの数量で、めたらやったら投げられる。
正面はおろか、左右、頭上、果てはノールックで背後へと、
銀の光がビュンビュンと森を飛び盛り、やがて根来の両手はすっからかんになった。
「やけを起こしたんですか?」
「違うな」
声と共に、まったくまちまちの方向で火の手が上がる。
久世屋の顔がひきつった。
「いかに透明といえど、耳をすませば羽ばたく気配は容易くつかめる」
「ならこれはどうです!」
和風チェーンマインを根来めがけて投げつけ、着火した。
バツンバツンと派手な音とミカン粒のような火花を駄々っ子のように撒き散らし、うるさいコト
この上ない。
「音を聞けない上に、今のあなたは無手」
殺到するコウモリに、根来は何ら抗えないのか?
「ひゅるっ…」
口笛のような音が根来の口からほとばしった。
「るるるるるるる」
と同時に、彼からやや離れた木立の景観が、渦状にぐにゃりと捻じ曲がり、爆発した。
(そ、それって何かのマンガの技じゃ。……いやいや違うだろ俺。攻撃が破られてピンチだ!)
根来は適当に体の向きを変える。
口笛のような音を鳴らして空間を捻って爆発させていく。
「忍法・吸息かまいたち。何物を吹きもせず、飛ばしもしない。吐くのではなく、吸うのだ。強烈
な吸息により、ややはなれた虚空に小旋風を作る。この旋風の中心に真空が生ずるのだ。
この真空にふれたが最後、犠牲者の肉は、鎌いたちに覆われたように内部から弾けだすの
だ」
一通り爆破を終えると、根来はとうとうと説明する。それはもう、角川文庫の甲賀忍法帖120
ページ目の6行目から9行目までを引用したかのごとく理路整然と。
「ははは。もう何でもアリですね」
「自動人形(オートマトン)には、犬笛のような操縦を司るモノが必要不可欠。では貴様の場
合はなんだ? 火縄か? それとも筒か?」
「…………!!」

382 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/23(日) 03:54:58 ID:6TgulEca0
「貴様の正体を鑑みればおおよそ察しはつく。声だ。貴様がよく喋るのはそのカモフラージュ。
声に超音波を交えて、コウモリを操っている。音の大小がそのままコウモリの速度の緩急だ。
そして内臓の配置が変わった音は耳に届いてはいない、ゆえに飛来するおおよその方角は
見当がつき、超音波の強弱を聞き分ければ、コウモリの軌道は読める」
「んな無茶苦茶な。確かに声で操ってますけど」
戸惑う久世屋だが、現にコウモリ軍団を撃墜されているのでぐうの音も出ない。
恐るべきは根来の聴覚。
ちなみにコウモリには、超音波を作る特別な器官が存在すると思われがちだが、それは違う。
実際には我々人間が声を発するのと同じ調子で、声帯から超音波を発している。
そもそも「超音波」という言葉は、人間基準で設けられた言葉だから、コウモリにとってはごく
ごく普通の代物だ。
「コレなら」
右手を一振り。赤い筒が3つほど融合し、一回り大きなコウモリが根来へ向かう。
されど正面攻撃の悲しさ。吸息かまいたちの的となり──…
(今だ!)
久世屋が気合を込めると、赤いコウモリが消え去り、代わりに紅色の肉片が宙に現われた。
それは空間湾曲の渦に呑まれ、大きく爆ぜた。
根来の衣服のところどころに付着するぐらいに。
「忍法楽しさに避けるのを考えないからそうなります」
驚くべきに肉片からコウモリが現われた。
「それは俺の肝臓。つまりは俺の一部。零距離からのコウモリの爆発、避けられますか?」
もとより肝臓は、切り裂かれて4分の1になっても半年以内に完全再生する。
そこへホムンクルスの再生能力が上乗せされるから、久世屋はこのような暴挙に及べたの
だろう。
根来は舌打ちをすると、忍者刀を地面に突き立て、潜り込む。
忍者刀の武装錬金、シークレットトレイルの特性は。
亜空間への入り口を切り開き、根来と根来のDNAを含む物以外の浸入を阻む。
よって。
根来に付着した肝臓は、埋没の最中で爆ぜ消えて、コウモリも爆破消滅。
「ああ、折角の切札が」
言葉と裏腹に久世屋の顔は涼やかだ。

383 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/23(日) 03:55:41 ID:6TgulEca0
(やっぱり簡単に浸入させないか。密着状態なら行けると思ったんだけどなぁ。となると、条
件は距離じゃない)
思考力が、かなり深いところに及びつつある。
(根来さんは何かの空間を作っているはず。そこに俺の肝臓は入れないけど、根来さんの
衣服はきちんと出入りできるんだ。条件は何だ? それさえ分かれば、接近戦でも有利にな
れる筈。考えよう。根来さんは俺より強いから、意表を突かなきゃまず勝てない。一体、条件
は──)
「入れ替えの能力、想像以上に応用が効く…… 故に元から断つ」
声で現実に引き戻された久世屋が見たのは。
地面から飛び出す金の刃。
「シークレットトレイル必勝の型。真・鶉隠れ。木に仕掛けてあるという内臓も百雷銃も、まと
めて始末してくれよう」
刀がうねりを上げて飛びすさる!
強烈なバネに弾かれたと見まごう程の勢いで木を斬りつけ、亜空間に埋没。
その二動作を超最短のスパンでやってのけ、剣風乱刃を巻き起こす!
不気味なうねりがびょうびょうと森に響き渡り、木々に肌色の生傷が増えていく──
木が爆ぜた。百雷銃の仕掛けられた木へ命中したのだろう。
だが爆発はそれきりで、後は単調なうねりが繰り返すのみ。
つい今しがたなされた「内臓と百雷銃をまとめて破壊」という宣言の達成率は、著しく低い。
再び木が爆ぜたが、やはり散発的な物。一気呵成の破壊には繋がらない。
(当たり前さ。まとめて仕掛けたりなんかしてないからね。そんなのをしたら、芋づる式に全滅
してしまう。バラして配置してある。もちろん、コウモリでやったように、透明にしてね。内蔵は
もう戻してあるから無事。捜索範囲を広げても、どこも同じような間隔で配置してあるから命
中率は変わらない。仮に)
不意にシークレットトレイルが久世屋に目標を変えたが。
陽炎のゆらめきと共に、彼は木へと入れ替わる。
(こうやって俺を狙っても無駄)
爆炎の中、避けられたシークレットトレイルは亜空間に沈み……
恐らく、久世屋の位置を根来は確認していたのだろう。
木を狙う時よりわずかに長い(それでも0.8秒ほど)の待機時間の後。
再びまた久世屋を狙う。
が。結果は同じ。入れ替わった木を傷つけるのみ。

384 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/23(日) 03:56:46 ID:27J085R00
次も同じ。その次も同じ。
(結構危ないけどね。もし、間髪入れずに俺を狙ってきたら当たるかも。入れ替えの後には、
妙な硬直の気配がある。けどそこは、攻撃と索敵を同時にやらなきゃならない根来さんの辛
い所。場所の確認と、刀を差し向ける動作を切り替えるせいでラグが生じて、硬直時間中に
は届か……)
久世屋はかすかに息を呑んだ。
(待て。当たらないとしても、入れ替えの能力は発動するぞ。大体70cmほど近くに攻撃が来
た、自動で入れ替わるから。というコトは)
シークレットトレイルは。
また久世屋めがけて飛んできた。
(マズい! 木を漠然と狙い撃つのをやめたみたいだ)
そう。入れ替わりによって百雷銃を仕掛けた木が現われる。
ならば、久世屋を攻撃して木を爆破していく方が確実だ。
「だが残念ながら、そうはさせませんよ。一見、根来さんの方が有利そうですが」
右手を一振り。例の、「真の姿」を誇る百雷銃を発現させる。
その間にもシークレットトレイル。うねりをあげて殺到しつつある。
「唯一の決定打さえ捕らえてしまえばこちらのモノ!」
筒が鈴なりになった縄を振りかざす。木々の間を縫うように。
すると。
先端の筒のみがコウモリと化した。
ただし今までと異なるのは…… 縄の通った半円状の板を背中に残している所。
その状態で、シークレットトレイルの周りを飛び回る。
先端から角鍔間際までらせん状にだ。
いきおい、縄は筒をからから鳴らしながら刀身を取り巻き。
一気に締め付けた。
あわれシークレットトレイルは縄に捉えられ、ピタリと静止。
あるいは縄のみであれば逃れる手もあったのだろうが、筒が交互に噛みあっているから脱
出は容易ではない。先端のコウモリもいつの間にか筒に戻って、鍔あたりに巻きついている。
「どうです。あなたを倒してはいませんが、切札さえ封じれば」
「かかったな」
「え?」
筒の隙間に、炎が灯るのが見えた。

385 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/23(日) 03:57:40 ID:27J085R00
刀身のちょうど中央だ。それは青く、小さく、……卍の形をしていた。
(くそ。捉えるのを見越して仕掛けていたのか! マズい。筒の近くで炎はマズい!)
めらめらと静かに燃えていたそれは、いっきに火勢を増す。
青ざめた瞳。見つめる炎。
赤い筒に引火し、10個全て、有無を言わさず爆発した!
久世屋曰く、「4個あれば根来の右足を吹き飛ばせる」爆発の2.5倍だ。
熱気と風の奔流が、辺りを揺るがす。
辺りの木は肌を強烈に抉られて、凄まじい音と共に倒れるものすらあった。
(もしかすると。あの炎は確か根来さんの──)
むろん、例によって難を逃れた久世屋だが。
入れ替えが完了した瞬間。
頭上から舞い降りた影に、首を三回転ほど捻られた。
「がっ!」
猛然ときりもみつつ吹き飛んだのもむべなるかな。
影は逆さに舞い降りて、久世屋の首を基点に倒立しつつ凄まじい回転を加えていた。
全体重を首一点に預けた刹那の三回転。
戦国時代、宇多方という地で暗躍した飛鳥忍者一族にのみ伝わる血祀(ちまつり)殺法だ。
これにはホムンクルスの久世屋といえど、ただ体勢を崩して倒れ伏すのみ。
もし、逆(さかしま)に垂れたマフラーがたなびく様を見れば、誰がやったか位は分かっただろ
う。あるいは、奇麗に着地するその姿を見れば。
シークレットトレイルは影──根来の手へと戻る。
先ほどの真・鶉隠れは、この一瞬のためのもの。
百雷銃の『破壊』ではなく、『それが仕掛けられている』木をある程度判別し、逃走先を絞り込
むのが主目的。要するに、

真・鶉隠れを喰らって傷だけで済む → 百雷銃は仕掛けられてない。
      〃      爆発する    →   〃  は仕掛けられていたが、爆発により消滅。

となり必然的にダメージ痕のある木は、入れ替えの対象とはならない。
逆にいえば、無傷の木、とりわけ久世屋の近くにある木ならば、逃走先の候補となる。
なぜなら、百雷銃が仕掛けられているかどうか未判定だからだ。

386 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/23(日) 03:59:03 ID:27J085R00
よって根来は、シークレットトレイルに火まんじを施しがてら、疑わしい木を張り。
運良く入れ替え場所に当たったので、硬直時間中の久世屋に血祀殺法を見舞ったのだ。
そして根来は。
一足飛びに斬り込んで。
足元から舞い上がった炎にその身を焼かれた。

「気づいた…んですよ」
首をおかしな方向に捻じ向けながら、久世屋は呟いた。
「根来さんが服と一緒に何かの空間に潜れる理由。俺が、筒を俺の体の一部と入れ替えら
れるのと同じような理由だって、ね」
手を首にやって、強引に正面を向かす。軽い呻きが漏れた。
「DNAですね? DNAを基準に、潜れるようになっている」
消火のためか、根来は亜空間にその身を潜らせた。
幸い、炎は稲光と共にかき消えたが……
「だから俺も、あなたのDNAをコウモリに織り交ぜた。忍法・火まんじでしたっけ? あれで
根来さん、血を俺の足にかけましたよね。ずいぶん焦げてしまいましたが、燃えカスが残って
いたので、とっさにコウモリに吸わさせて、潜らせて、向かってくるあなたの足元で一気に爆
発させました…… 数はおおよそ、5体」
息も絶え絶えに説明しつつ、右太ももに手をやり血の燃えカスを指に付ける。
それをピチャピチャと舐めながら、話を続ける。
「俺はチスイコウモリですからね。筒のコウモリだって血を吸えます。吸って、あなたのDNAを
帯びるぐらいの芸当も、ね。フフフ。荒唐無稽だと思うでしょうが、武装錬金もいわば一種の
抽出物。闘争本能や精神に武器の形を伴わせた、抽出物。そしてえてして抽出物というのは
欲望を叶えるために想像を超えた機能を備えるモノ…… あなたのDNAぐらい、コウモリに
混ぜれます。俺が血を吸ったとしても、いや、混ざるよう抽出しますよ。根来さんの使う忍法
に比べたら、まだまだ常識的な範疇でしょうしねぇ……そうそうこの武装」
名前がまだだったと、久世屋はひどく力のない声で呟いた。
全身嫌な感じの脂汗にまみれ、木枯らしのような雑音が呼吸に紛れている。
やや話に筋が通っていないのは、苦痛により意識が定かでないのだろう。

387 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/23(日) 03:59:50 ID:27J085R00
「百雷銃の武装錬金・トイズフェスティバル、という所でしょう。おもちゃのチャチャチャという
歌あるでしょ。アレの3番がモチーフ。きょうはおもちゃのお祭りだ……ってね」
ちなみにおもちゃのチャチャチャの作詞は、蛍の墓や飼ってるシベリアンハスキーが行方不
明になったコトで有名な野坂昭如だったりする。
「おっと。文法が合ってるどーかは突っ込みはなしですよ? もっとも根来さんは英語とか、
ニンジャタートルズとか嫌い……ゲホ!」
青ざめた顔が咳き込んだ。背を丸めたのは、喉から走る激痛への反射だろう。
(ああやっぱり。さっきの攻撃でノドをやられている。説明せず黙ってれば良かった)
気管はおろか、コウモリ操作の要たる声帯すらも断裂している。
例えるならひび割れた笛だ。空気と雑音を漏らすばかりで、まともな音を鳴らさない。
(破れた箇所が多いから、すぐの修復は無理そうだな。けれど)
強引に姿勢を正し、30体ものコウモリを出現させる。
(残弾から考えると結構な量だけど、ためらっちゃいられない。今を逃したらまた逆転の目を
与えるから)
覚悟を決めると、自らのノドに手を当てる。というより締める。
(空気が漏れて音が出ないっていうなら、こうやって漏れなくすればいいだけのコト)
当然、手を当てた所から際限なくひりついた激痛が広がるが、噛み潰す。
彼を支えているのは、これから出逢えるであろう素晴らしい抽出物への希求のみ。
締められた喉の中で、気管や声帯が強引にヒビを埋めた。
指示が、わずかに開いた口から空気を伝播する。
「ゆ……け!!」
覚悟は功というべき超音波を奏し、コウモリたちに動きを与えた。
動かした当人の形相は苦悶に満ちて、どちらが劣勢か分からない。
やがて地面に埋没する真っ赤な群れ。
なお、操作用の音波は亜空間に届く。
音波というのは空気に生じる振動。そして、根来が亜空間で窒息せずにいられる所を見れ
ば、そこに空気があるのは瞭然だ。
軽い爆発音の後、根来が久世屋目がけて飛び出した。
だが速度はほとんど失われている。
起死回生の爆発が一番ダメージを与えたのは、他ならぬ両足だ。

388 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/23(日) 04:00:36 ID:27J085R00
脛から足首辺りの肉がズグズグに抉られ、靴は消し飛び、足裏は水ぶくれまみれ。
再殺部隊の制服も、ボロボロ。焦げ目とほつれと血に塗れている。
動けるのは奇跡だろうが、それへ別段感謝を浮かべる様子もなく、根来は殺到する。
もはやコウモリが亜空間へ侵入できる以上、その創造主たる久世屋を倒すのが賢明だろう。
だが、刀は久世屋にかすりもしない。
入れ替わりの能力は依然、発動中。
シークレットトレイルは木にかすり、爆ぜた。背後からはコウモリの群れ。
やがて根来の周りを覆い尽くすと、最高速で彼めがけて飛び始め。
赤橙の盛大な火花で、跡形もなく吹き飛ばす──…
筈だった。
その時、根来をかっさらう影さえなければ。

電撃的な転瞬が走ったとみるや、根来はそこから10mほど離れた場所にいた。

支えるように寄り添う細い腕の感触に、彼は少しばかり眼を見開いた。
が、すぐさま瞑目し、いつもと変わらぬ調子で呟く。
「戻ってくるなといった筈だ」
「ええ。けど大戦士長から戻るよう指示があったから」
紅蓮の炎の中でコウモリは全て灰燼に帰し、地面へ落ちた。
先ほどの応酬の余波により、辺りの至る所で小さな火がチロチロと燃え盛っている。
「……戻られましたか」
声にならない声、というのは正にこういう物を指すのだろう。
とても掠れた音が、久世屋の口から漏れた。
なぜなら彼の視線の先で、根来を支えていたのは。

楯山千歳その人だったからだ。

389 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/23(日) 04:06:19 ID:oJViEJfb0
暗剣殺と針つばめは「忍びの卍」の虫篭右陣の忍法。
彼はもう一つ、「ぬれ桜」なる忍法も持ってますが、ネゴロで使うのはマズそう。
何せ、施した部分を××××と同じ感度にする代物。千歳に施したらとてもとても。
吸息かまいたちは「小四郎じゃん!」と思われるでしょうが、「海鳴り忍法帖」でも根来忍者が
使っていたので、根来的にはOKだと思われます。
もっとも10人の根来忍者が、技を披露した直後に「面倒じゃ、撃ち殺せ」の一言で全員射殺
されるような作品を参考にするのが根来にとりOKかといえば、甚だ疑問ですが。
この場面の後「伊賀忍法帖」を読むと、7人の根来忍者に丸々1冊使っているのが、面白い
を通り越して物悲しくなります。笛吹丈太郎の苦労って一体。
なお、忍びの卍や海鳴り忍法帖は絶版中。
興味があれば「日本の古本屋」さん等のサイトをお調べ下さい。
血祀殺法は、忍道-IMASHIME-より。忍法勝負は次回からお預けなので好き勝手やったのです。
長く遊べるという点では、このゲームはイチ押し。ネタ要素も充分あります。

>>266さん
根来は、組織人である前に忍者マニアで、相手はおもちゃマニア。元の作風やイラ
ストと相まって、おかしな空気が発生してますね。でも厄介なコトに、それを描くのが楽しく……
>あと、途中サマサさんかとw
正に狙い通り! ありがとうございます。

>>282さん
ありがとうございます。あの図は、天誅・忍凱旋というゲームの開発経緯に少しだけちなんで
います。というのも、開発専用だった「敵との距離が分かるメーター」を「プレイで使えた方が便利!」
と製品版に実装した物でして。それに倣い、卍のような把握ミス防止も兼ねて転用してます。

ふら〜りさん
ありがとうございます。加えて、彼はやけに身の程をわきまえた敵になりつつありますね。普
通、今回のようなモノローグって、弱い主人公が強敵相手にするんじゃと首を傾げるコトしばし。
根来を強くしすぎたのと心情描写がないあおりかも。そんな逆転現象も描いてて楽しいトコロ。

390 :作者の都合により名無しです:2006/07/23(日) 14:09:43 ID:c23mo/Id0
スターダストさんお疲れ様です。
根来、常に久世屋のひとつ上を行ってる感じですね。
戦闘能力は久世屋の方が上の気もしますが、使い方に差があるというか。

しかし根来もピンチにヒロインが駆け寄ってくれるんだなあ。

>ホムンクルスは武装錬金でしか倒せない
こんなルールあったのか。スタンドみたいだなw



391 :ふら〜り:2006/07/23(日) 14:53:14 ID:iEBoJPdp0
う〜。他人の背は押すくせに、自分は自分で「今、レベル高過ぎて自分のなんかハズくて
出せねえっ」とか考えてしまう私。……でもそれでも。まだしばらく先ですが、必ずや。
>>サマサさん
夢ってのは呪いと同じ……とは某オルフェノクの言葉ですが、時々見かけますねこの理論。
しかし狐の場合は、フォロー入れてポジティブな方向に持っていくわけにはいかないのが
困りもの。妙にカッコいいっぽいフェードアウトでしたが、これで消えはしない……かな。

>>かまいたちさん
立て続けに二人も逝きましたか。え〜と、次にすべきは音楽室&バリケードの状態確認か。
それでもまだ外部犯の可能性が消える訳ではないから、となると仲間内での疑心暗鬼には
至らず……でもはじめが「○○だから外部犯には犯行不可能」とか言い出しそうな気が。

>>17〜さん
今更ながら、バトルも世界観描写も超能力とSF(科学兵器)の共存がバランス取れてて
良いですな。で今のところ敵側主人公側、共にガロウズの手の中の模様。いずれラスボス
になりそうな風格が。でもリュミールもじわじわハザードレベル上がってるし、あるいは。

>>邪神? さん
>何でこんなに速く寝れるのよ・・・本物のバカねこいつ。」
わはは。地味に爽やかというか、これもこれでお約束。実に心地よい。おっさんズによる
怪談大会とは一転ですな。と頬を緩ませてたら、次は騎士たちが無言迫力。「勇者」だけ
でなく「一般兵」のこういう描写は大好きなんですが……カマセになりそうな心配も……

>>サナダムシさん
よしっ! 加藤がようやく本格的に意識し始めた! そして井上が否応なく戦いの舞台に
引きずり出された! 今回、一気に私の望んでいた舞台装置が揃ったって感じです。後は
井上のピンチに加藤が駆けつけるのか。それとも独力で切り抜け、むしろ加藤を助けるか。

>>スターダストさん
変な言い方ですが。極度に濃密な理系文系両面の意志の疎通をしつつ思い切りハイレベルな
攻防を繰り広げたこの戦いは、例によって愛想も色気もないお姫様の復帰で幕を引きそう。
ここに至ってようやく冷汗を見せてくれてる久世屋、次回あたり辞世を詠むことになるか?

392 :作者の都合により名無しです:2006/07/23(日) 23:14:38 ID:N5b+/hpM0
スターダストさんは毎回、書き方に凝ってるけど
必ずどこかにウンチクも入れてくれるのが結構楽しみになってる。
おもちゃのチャチャチャとか。

錬金を土台にした忍法合戦は通常より派手ですね。
初めて、千歳にほんの少しだけ反応したネゴロ。
2人の間に変化はあるだろうか?ないだろうなあ。

393 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/24(月) 00:27:43 ID:cT/N1gss0
【移】ワープでループなこのおもい

その頃、錬金戦団日本支部の大戦士長室で、坂口照星はじっと瞑目していた。

先ほど戻ってきた千歳はテープレコーダーの提出がてら、久世屋が核鉄を所持しているコト
と根来に戻らぬよう指示されたコトを報告した。
「なるほど。分かりました。ところで戦士・千歳」
「はい」
「今回の任務は、私がキミと戦士・根来に任せたモノです。彼がどういう指示を下したとして
も、キミには任務を全うする責務があります。だから」
慈悲あふれる神父のような笑みを浮かべて、照星は命令を下した。
「大至急、戦士・根来の元に戻り、彼の手助けをしてあげて下さい。ひょっとしたらもう敵を
倒しているかも知れませんが、戦いに疲れた彼をここへ送るのはあなたにしかできないでし
ょう? けどもし彼が苦戦しているようなら、無茶にならない程度の協力をお願いします」
「……ありがとうございます」
千歳は頷いた。事務的な言葉に、しっとりとした謝意を乗せながら。
そして、ヘルメスドライブで舞い戻った。

「願わくば、二人が無事に任務を完遂できるよう──…」
机の前で拳を組んで、照星は祈るように呟いた。
懸念がある。勝利のために、千歳が犠牲にならないかという。
それは根来・千歳両名の姿勢(スタンス)からはありえるコト。
されど大戦士長というのは様々な局面を思い描いて、対処を考えるコトが多い。
根来が苦境に立たされている場面も想像できる。
その場合、千歳を差し向けねば根来は倒されるだろう。
部下は全てお気に入りと広言してはばからぬ照星としては、根来の命も千歳と同じぐらい大
事な物。
というワケで千歳をワープさせたが、それによる彼女の犠牲の可能性が出てきて。
照星はちょっとしたループ気分だ。

何にせよ、上記の照星のはからいにより根来は窮地を救われた形となる。


394 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/24(月) 00:28:34 ID:cT/N1gss0
「大戦士長の命とあらば、仕方ないな」
彼の頬に、フっと笑みが浮かんだ。
「ええ」
千歳は相変わらずの無表情。愛想もへったくれもないが、妙に貴人めいた美貌を醸し出し
ているから女性というのは不思議である。
下火になりつつある炎が、森に幻想的な影を作っている。
ゆらめく光がキューピー人形みたいな影を根来や千歳の後ろで躍らせたが、多分何かの
見間違いだろう。
そして根来は手短に、久世屋の武装錬金の特性と、彼に核鉄を渡したであろう『第三者』の
存在を一通り説明した。
途中「筒を使うのに百雷銃?」という疑問に、「貴殿もそれをいうか」という嘆息が返ったり
したが、それを除けばスムーズに情報の伝達は終わった。
この中での要点は、根来の血祀殺法により証明された

「自動で入れ替わった後、わずかな硬直時間が生じる」

以上の事実である。常人ならば、これを久世屋攻略の鍵とするだろう。
あくまで、常人ならば。

(2対1か。正直、千歳さんがいなくなった時はすごくホっとしたんだけどなぁ……)
久世屋はブンブンと首を振った。捻った所がズキィ!となって力なくうなだれた。
(あたた。まぁ落ち着くんだ俺。根来さんは結構追い込んでる。千歳さんはどこから出てくる
か分からないけど、あの武器じゃ)
千歳の右手に着装されているのは、ヘルメスドライブという六角形の楯だ。
本来はレーダーの武装錬金だが、楯の部分は非常に硬質。打撃武器としても使用可能。
(ダイヤモンド並みに固かったとしても、千歳さんの腕力じゃ俺を倒せない筈。見た目にそぐ
わぬ怪力とか突拍子もない特技を持ってたりしたら話は別だけど)
基本的に久世屋は、シークレットトレイルの動きにさえ気をつけていればいいだろう。

なお、現在の彼らの場所と、入れ替わりによる避難位置を図に起こすと以下のようになる。


395 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/24(月) 00:29:36 ID:cT/N1gss0
01 最初の避難先 (根来は肝臓を振り払うまで、この近くにいた)
02 次の避難先 
03 天扇弓からの避難先 (チェーンマインを投げた場所。木がないので根来に届いた)
04 不意打ちのシークレットトレイルからの避難先
☆ 真・鶉隠れにより爆破された百雷銃の場所
05〜07 鶉隠れにからの避難先 
△ 火まんじの誘爆からの避難先で、久世屋の現在地。番号は08

 ↑かなり進むと砂利道

05木木木06木木木07木木木木木木
木木木木木木木木木木木木木木木      △ 久世屋 
木木☆木木木☆木木木△木木木木      ○ 根来 
木木木木木木木木木木木木木木木      □ 千歳
04木木 03, ─── 、木木木木木       │
木木木 ィ        ヽ木木木木.        └→(おでんではない)
木木02(   木      )○□木
木木木 ヽ         ィ木木木木
木木木木01 ─── ´木木木木
木木木木木木木木木木木木木木◎      ◎ ?????前

「戦士・千歳」
シークレットトレイルを亜空間に埋没させながら、根来は呟いた。歯切れはやや、悪い。
「助力を乞う」
千歳の顔に少なからぬ驚きが浮かんだのも無理はない。
小難しい言葉を使ってはいるが、要約すると「手助けを頼む」と言われている。
微妙な思惑を察したのか、根来は説明する。
「状況が状況だ」
相手は二人。
一人はいま目の前にいる久世屋。普通に手向かえば攻撃の当たらぬ男。
いま一人は正体不明。どこに潜んでいるかは分からない。

396 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/24(月) 00:30:51 ID:cT/N1gss0
が、久世屋に核鉄を渡した以上、彼への協力意思は有り、近くでこの戦いを見ていると考え
るのが普通。
第三者が乱入すれば、敗北の可能性もある。だが戦うべき相手は久世屋しかこの場にいない。
ならば彼から確実に倒すべきであり、その為の連携や協力はやむなしというのが根来の論理だ。
「そうね」
千歳は首肯を返すが、こちらは論理よりももっと単純な納得ありきだ。
すぐ横にいる根来は、あちこちに手傷を負い、靴すらも燃やし尽くされた裸足状態で、ひどく
小さく見える。
彼は戦士でなければまだ大学生か、新入社員をやっている年齢だ。
千歳から見れば「子ども」とあまり変わらず、他人に頼ってもいい年頃と映る。
第一、おおよそ人と協力しなかった根来が、いまは助力を願っている。
7年前にミスを犯し多くの人命を死に追いやり、そのせいで根来に憧憬を抱く千歳へだ。
彼女の脳裏には儚げな光が灯り、ちろちろと揺らめいていく。
ただしその感情をあるがまま表すには、千歳は重い物を背負いすぎているし、そういう自分
を自覚して気を重くするのは、戦場には相応しくない。
ので千歳はいつものように感情を極力抑えて、無表情を保っている。
内心に色々と漲る物があるが、乙女心は秘めて放たじ。
「協力は惜しまない。元からそのつもりよ」
「ならばこれより、奴の位置を逐一私に伝えて貰う」
ヘルメスドライブの特性は、限定条件下における索敵と瞬間移動。
千歳の見知らぬ人間は探せないが、散々尋問をした久世屋ならどこにいるか把握できる。
文に起こせば長いが、以上のやり取りは2秒程度。
千歳は首肯と同時に、辺りの景色を見た。そして、ここら一帯の地形を全て把握。
一般に女性は立体的な空間把握が苦手とされるが、千歳は例外のようだ。
3DCGを作るような感じで、辺りの地形を記憶した。
木の根の張り具合とか、6メートル先の木と木が何cm離れているとかを、暗闇の中で。
偵察と家事全般が好きなので、造作はない。好きこそ物の上手なれ。
そして地形把握が終わると同時にシークレットトレイルが戛然と地面から飛び出し、久世屋め
がけて飛んでいく。
当然、彼は入れ替わりによって場所を変えたが──

397 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/24(月) 00:31:47 ID:cT/N1gss0
ヘルメスドライブの画面の中では、久世屋が時間の果てまで届けとばかりBooooonとワープ
の真っ最中。例えるなら、ジェットコースターに乗ってる人間の映像を、更に早回したような
感じで動いている。
千歳にとり、その周囲で流れる景色や減速具合から到達場所を予測するのは簡単だった。
(本当はこれ位、きっと誰でもできる筈。だからこそ頑張らないと)
なぜだか千歳の脳内処理速度は凄まじく活性化してる。
俗に言う『嬉しさを集めようカンタンなんだよこ・ん・な・の』でございます。
そして避難先を唱和する。

「04時の方向へ移動中。私たちの真正面、3m地点へ到達予定」

05木木木06木木木07木木木木木木
木木木木木木木木木木木木木木木      △ 久世屋 
木木☆木木木☆木木木08木木木木      ○ 根来 
木木木木木木木木木木木木木木木      □ 千歳
04木木 03, ─── 、木木△木木.      │
木木木 ィ        ヽ木木木木      └→(おでんではない)
木木02(   木      )○□木
木木木 ヽ         ィ木木木木
木木木木01 ─── ´木木木木
木木木木木木木木木木木木木木◎      ◎ ?ン?ル??

「え?」
根来たちが手を伸ばせば届きそうな場所で、久世屋は呻いた。
同時に、背後の木で波紋と稲妻が広がり、シークレットトレイルが飛び出す。
移動後の硬直狙いの一撃ではあったが、流石に千歳の唱和を聞いてからでもラグはある
らしく、久世屋は入れ替わり逃げおおせた。
木をかすめたシークレットトレイルが、風と共に千歳と根来の間を通り過ぎる。
一拍遅れて、すぐ間近の木がバチリと爆ぜる。
だが千歳は上記の事象に怯むコトなく、機械のように淡々と避難先を読み上げる。
「02時の方向へ移動中。5m先に到達予定」 ※10
根来はそれを元に、シークレットトレイルを差し向ける。

398 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/24(月) 00:33:37 ID:CslIapFM0
が、やはり逃げられる。木が爆ぜる。
(残念ですね。俺の位置を把握しても、当たらないモノは当たらない。さぁ、俺も攻撃を)
「11時の方向へ移動中。5m先に到達予定」 ※11
(え? ……ちょ、ちょっと待て! まさかこの二人……)
シークレットトレイルはまた久世屋へ殺到。入れ替わった木を爆発させる。

05木木木06木木木07木木木△木木
木木木木木木木木木木木木木木木      △ 久世屋 番号は11
木木☆木木木☆木木木08木木木10      ○ 根来 
木木木木木木木木木木木木木木木      □ 千歳
04木木 03, ─── 、木木09木木.
木木木 ィ        ヽ木木木木
木木02(   木      )○□木
木木木 ヽ         ィ木木木木
木木木木01 ─── ´木木木木
木木木木木木木木木木木木木木◎      ◎ エ?ゼ?御?

「02時の方向へ移動中。5m先に到達予定」 ※12  
シークレットトレイルはまた久世屋へ殺到以下省略。

(忍者刀を当てるより、もっとマズいコトを考えてるんじゃ!)

「11時の方向へ移動中。5m先に到達予定」 ※13  シークレットトレイルは久以下省略。
「07時の方向へ移動中。5m先に到達予定」 ※14  シークレットトレ以下略。
「11時の方向へ移動中。5m先に到達予定」 ※15  シークレット略。
「07時の方向へ移動中。5m先に到達予定」 ※16  シークry
「11時の方向へ移動中。5m先に到達予定」 ※17  シr


399 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/24(月) 00:34:08 ID:CslIapFM0
図に起こすと。(番号は、文中の「※」の後の数字と対応)

↑ 至・砂利道

木木木木木木木木木木木木木木木
木木木木17木木木15木木木13木木  このような軌跡を久世屋は辿っている。
木木木木木\木/木\木/木\木
木木木木木木16木木木14木木木12
木木木木木木木木木木木木木/木
05木木木06木木木07木木木11木木
木木木木木木木木木木木木木\木
木木☆木木木☆木木木08木木木10

(この辺りを書くと行数を喰う上に分かりにくくなるので省略)

↓ 至・広場

(間違いない! 根来さんと千歳さんはこう考えてる。つまり!)

「奴の武装錬金の特性を逆手に取る。木と入れ替わって攻撃を回避するというのなら、回避
先を間断なく攻め続ければいいだけのコト。入れ替わりを繰り返せば、いずれ仕掛けた百雷
銃は尽きるだろう。そしてこの攻撃に隙はない。貴殿が索敵を引き受けたコトにより、私は攻
撃にのみ専念できるのだ」
根来は心持ち信頼を見せているように見えるが、千歳は気づかず、
(例えるなら、エンターキーを押しっぱなしにしたせいでエクセルのファイルが立ち上がり続け
てリソース不足でフリーズしたパソコンのような感じかしら?)
なんかシュールなコトを考えていた。
で、根来がシークレットトレイルを手元に戻す気配がした。攻撃の最中だというのに一体なぜ?
(……あ。そういう理由ね)
千歳には思い当たるフシがあるらしい。が、口に上らせるのは久世屋の移動先だ。
「07時の方向へ移動。5m先に到達予定」


400 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/24(月) 00:35:06 ID:CslIapFM0
(コウモリを出せない! 試してみたけど回避中には無理! 攻撃する機会がないぞ)

「先ほどのように硬直時間を狙い撃つコトは叶わないが、奴の攻撃は封殺済み。こちらが手
傷を負うコトなく追い詰められるのだ。但し、第三者が介入すれば話は別だが」
根来は冷然と、シークレットトレイルを投げた。
その速度は、なぜか先ほどより上がっていた──
「ところで私は、先ほどの攻撃で耳をやられている」
「え?」
「亜空間の中で、コウモリの爆破を受けた。通常の会話には支障はないが、遠くの音はしば
らく聞けぬ」
「つまり、こちらに第三者が近づいても、あなたは感知できない……?」
口をつきかけた、「大丈夫?」という言葉を押し込めて千歳は問う。
「ああ。よって貴殿の武装錬金を頼りたい所だが、こちらに近づく者を察知するコトは可能か?」
「いえ。残念ながら。私の知っている人間なら可能だけれど」
「ならば継続して久世屋のみに目を配れ。第三者とやらが貴殿の顔見知りである可能性は皆
無だ。周囲の監視は、私が行っておく。どうせ方向転換と充電の瞬間以外は空いた身だ」
という根来だが、しかし、いかにしてシークレットトレイルを操っているのか。
手に触れたのは先ほどの一瞬のみだ。にも関わらず、遠く離れたシークレットトレイルを見事
に操っている。
久世屋の避難先を先読みしているのか? いや、かような芸当が可能ならば、そもそも千歳
の助力を仰ぐ必要はない。
ならばいかにして、千歳の索敵をシークレットトレイルに伝達しているのか。
木が爆ぜる音がして、千歳は到達予定位置を唱和した。
彼女は。
根来の指示に従って、久世屋だけを索敵する。そう。『久世屋だけ』を。

401 :影抜忍者出歯亀ネゴロ:2006/07/24(月) 00:37:07 ID:CslIapFM0
サブタイは以前出てましたが、内容的には今回の方が非常にマッチしているので、バレさんの
ご助力の元、変更とあいなりました。
バレさん、その節はありがとうございました。

ここからはずーっと考えてた場面なので、筆はとても進みます。
ただ難しいのは、筒の配置場所の整合性。文章から図に起こして見たものの、矛盾がない
か怖くて怖くて。やはり推理モノを書ける人はスゴい。
推理モノといえば、ハルヒを推理モノだと思って購入した自分は何なのでしょうかね全く。
そしてハルヒが好きな人なら多分知ってるネタ動画。

ttp://www10.plala.or.jp/MOKUBAZA/todey060715.gif

千歳さんの浮いてること浮いてること。

>>390さん
確かにそうなんですよね。久世屋の方が武装錬金も身体能力も強い筈なんですが、なぜか
「バカ強い根来(人間)に知恵を振り絞って立ち向かう久世屋(ホム)」という構図になってしまいます。
>しかし根来もピンチにヒロインが駆け寄ってくれるんだなあ
なんだかんだで、彼も結構果報者。だから根来はもうちょい、柔らかい言葉を千歳にあげるべきですよね。

ふら〜りさん(お待ちしております。それに、背を押してもらったおかげで頑張れる者もここにいますよ)
すいません。久世屋はもうちょい粘るコトになりそうです。で、その粘りっぷりと、粘りの尽き
果てのバックボーンには、作中の描写のあれやこれやが関わってきます。ただ、ひょっとした
ら読まれてるかな〜……と内心ビクビクしてます。SSは面白いのですが、時々怖いですよね……色んな意味で。

>>392さん
ありがとうございます。また何か雑学知識の本を読み漁って、面白いウンチクを仕入れますよ!
忍法については、そのまま引用だと風太郎先生に申し訳ないので、自分なりのアレンジを加えてます。
おかげで何とか、原作と融和しているかも。二人の変化については、実は切札があったり。

402 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2006/07/24(月) 00:40:47 ID:CslIapFM0
コテを失念。すみません。

できれば毎日更新して一気にラストまで行きたい所。
秋水主役の話も早く描きたい。すごく燃えるアイディアがあるので。

403 :作者の都合により名無しです:2006/07/24(月) 07:23:21 ID:k92UxN3y0
おでんではないについ目がいってしまうw

404 :作者の都合により名無しです:2006/07/24(月) 07:28:51 ID:avBXrCO10
連日投稿お疲れ様ですスターダストさん。
建前は大戦士長の命を受けて、ですけど千歳の心は前向きにここに着たんでしょうね。
そういえば千歳って俺よりずっとお姉さんなんだな。大人の女っぽい雰囲気をたまに醸し出してる。

毎日更新ですか。更新は嬉しいけど、連載が終わってしまうのは寂しいな。
出来れば一気に毎日より、2日に1回位で、倍の長さ楽しませてくれる方が良いかな…


405 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/07/24(月) 08:51:20 ID:wxpc0dmo0
>>367より。

406 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/07/24(月) 08:52:06 ID:wxpc0dmo0
 芸術家を名乗る不敵な男。ただならぬ気配を発している。
 ただでさえ一対二、ましてや男には昨日加藤があれほど苦戦した紙人形がついている。
勝率はゼロに等しい。しかし、やらねばならない。
「……先輩を、倒そうというの?」
「先輩? あぁ、城の入り口で頑張っている戦士(ウォーリア)か。彼はいずれ倒れる。
今日私が用意した粘土人形は、一昨日の約三倍だ。私が手を下す必要もあるまいね」
「さ、三倍……!」
「私は君に用がある」
 芸術家はまるで値踏みするように、井上の全身をまじまじと眺める。
「ふむ……」審査を終了した芸術家が頷く。
「実に高水準だ。君には私のコレクションとなる資格がある!」
「コレクション?」
 首をかしげる井上に、芸術家は筆先を突きつけ仰々しく語る。
「はく製さ。武神には、『標的を仕留めたら、速やかに女は本来の世界へ戻してやれ』と
言われているが関係ない。元々私の所属は武ではなく、美だからね」
 「はく製」という言葉に、総毛立つ井上。博物館によくある光景──動物たちがまるで
生きているのかの如く展示されている様子が思い浮かぶ。そして、あれに自分がなるとい
うのだ。
「ふざけないでっ!」
「ふざけてなどいない。さぁ、始めよう。人形よ、おまえは彼女が飛び降りぬよう、窓で
待機していろ。グチャグチャになったはく製では美しくない」
 自前の絵筆を振りかざし、芸術家が井上に迫る。

407 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/07/24(月) 08:52:56 ID:wxpc0dmo0
 普通ならば、絵筆など武器にならない。まだ徒手の方がマシというものだ。だが、ここ
は甲冑や粘土が人間に襲いかかってくるような世界、彼が手にする絵筆にもどんな能力が
あるか分からない。
 そこで井上が出した結論──絵筆による攻撃は絶対に喰らってはならない。
 とはいえ、それは回避や防御を意味しない。井上が選んだのは、攻撃であった。
「ていっ!」
 孤を描く前蹴りで、絵筆を打つ。正確に放たれた右足は、芸術家が持つ絵筆をいとも簡
単に弾き飛ばした。
「なにィッ!?」
 宙に舞った絵筆に、呆然とする芸術家。が、すぐに我に返り、キャッチしようとする。
「くそっ、まぐれ当たりか!」
「いいえ、まぐれじゃないわよ!」
「えっ」凄みがこもった井上の声に、思わず足を止める芸術家。
 そこへ、正拳が飛び込んできた。鼻にもろに受け、芸術家は背中からダウンする。鼻の
両穴から血を流し、屈辱に打ち震える。
「お、おのれ……女だからといってもう容赦はせん! この手で処刑してやる!」
 怒りに任せて突進する芸術家に対し、井上は冷静に機を掴む。
(あ、チャンスだ)
 軽くとも絶大な効果、空手における必殺技のひとつ、男にとっては最悪の急所。
 ──狙うは金的。
「せりゃあっ!」
 足の甲が、芸術家の股間に鋭くめり込んだ。

408 :やさぐれ獅子 〜十七日目〜:2006/07/24(月) 08:53:31 ID:wxpc0dmo0
「ガッ……」芸術家は打たれた箇所を手で押さえ、前のめりに転倒する。「ガハアアァァ
ァァァッ!」
 想像を絶する激痛。女性とはいえ、神心会で色帯を締める者による金的蹴り。効かない
わけがない。破裂こそ免れたが、声を発することすらままならない。
「……グッ! クウゥッ!」
「あ、あの……」井上も予想をはるかに越えた戦果にかえって戸惑ってしまう。
「グフッ、グググ……よ、く、も……!」床を転げ回りながら、呻く芸術家。
 ようやく声帯が使えるようになったが、万全ではない。股間周辺はまだ痛みによって占
領されている。ようやく立ち上がっても、心なしか足は内股になっている。
 すると芸術家は一瞬意地悪く微笑んでから、窓辺に立っている紙人形へと振り返る。命
令を変更するために。
「人形よ、この女を──」
「せやっ!」
 だが命令よりも、井上のハイキックが彼の口もとを襲撃する方が速かった。
「べふぅッ!」
 芸術家、またもダウン。惨めな姿を晒す創造主に対し、別段変わった様子もなくふわふ
わと立ち尽くす紙人形。もし命令があれば死ぬまで戦うが、逆に、命令がなければ死ぬま
で動かない。人形とはこういうものだ。
 井上が優しく敗北を諭す。
「もう降参してください。あなたに勝ち目はないわ」
「ふっ、ふざけるなァーッ!」
 目を血走らせ、芸術家が走る。
 お世辞にも芸術的とは言えない腕を振り回すだけの乱暴なパンチを、細い腕で全て受け
流す井上。お返しに、捻じ込むような中段突きでみぞおちを抉る。
「うげぇっ!」
 胃酸を吐き出さんばかりに嗚咽し、芸術家は四度目のダウンを喫した。

409 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2006/07/24(月) 08:56:33 ID:wxpc0dmo0
加藤出番ナシ。
実際、どれくらい痛いんですかね>金的蹴り
次回へ続く。

410 :作者の都合により名無しです:2006/07/24(月) 12:37:52 ID:PvXA5HxW0
>スターダストさん
ラストスパート宣言なのかな?俺ももう少し続いてほしいけど。
久世屋を倒すのは千歳の役目か?もしくはコンビで撃破かな?

>サナダムシさん
井上さん普通に強いな。というより芸術家が弱すぎるのか。
でも井上さん、初期の加藤くらいなら普通に倒せそうだw

>実際、どれくらい痛いんですかね>金的蹴り
昔、軟式ボールが股間に命中した。10分ほど息が詰まって悶絶した。
神心会で色帯を締めてなくても、普通の女の子に蹴られると死ねます。
コツカケ習わないとね



411 :バーディーと導きの神〜階層制度〜:2006/07/24(月) 17:28:23 ID:k92UxN3y0
こちらはユウの長屋を出て王城、黒竜城へと急ぐ潜入部隊一行。
しばらくは無言で街の裏路地を選んで走っていたが、ふとザンがずっと疑念に思っていた
ことをモルプに尋ねる。
「ねえモルプ。ユウさんみたいに僕たちの国に勝ってほしいって思ってる人って多いのかい?」
モルプは走りながら愛嬌のある顔をザンに向けると、頭をかきながら話し出した。
「んだなや。なんの力もない下級市民はたいがいそう思ってんでねえがな……」
「なんで?」
ザンは再び問う。
「うちの国はよ、階級でその人間の価値が決まっちまうだ。1等がら9等までの階級があっ
てよ、上流や中流の階級ならともがく、下級のオラみでえな8等市民やら無能の烙印を押
された最下級の9等市民は、一生こぎ使われで死んでいぐしかないんだべ」
モルプの語りは、無言のバーディーとシアンも聞いている。
バーディーは連邦首都オリオテーラでのアルタ人弾圧と1〜3等、無階層の市民階層制度を。
シアンは戦場で、偵察先で知ったこの国の事実を。
それぞれを思いながら聞いていた。
「そんな無体な階級制度を壊してくれる人がいれば、その人たちに勝ってほしいと思って
も不思議はなかっぺよ」
「でもそんなにまでされて、なんで自分たちで階級を壊そうとしないんだい?」
無邪気な子供の論理だ。バーディーとシアンは思った。二人とも、差別というものを知り
すぎていた。被差別の当事者であるモルプもそうだった。
モルプはそんなザンの疑問に対してもきちんと答えてやった。答えてやる必要があったと
いってもいい。
「力の差があんましありすぎるがらよ。みんなあきらめでるんだべ……」
そういう自嘲気味なモルプの答えに、ザンは激しく、しかし正しく反応する。
「でもやってみなくちゃわかんないよ!そんなこと!!」
「そうさ!」
急にかかった声にザンはびっくりしてそちらのほうを見やる。シアンだった。
「やらなきゃわかんねえよな!思いもよらねえところに味方がいるかもしらねえからよ!」
「シアンさん……」
力強いシアンの言葉にザンは感動する。

412 :バーディーと導きの神〜階層制度〜:2006/07/24(月) 17:29:50 ID:k92UxN3y0
「氷牙大臣がそうだったようによ!な!」
シアンは似合わぬウインクさえしてみせた。
ザンの脳裏に優しく包み込んでくれる親方の姿が浮かぶ。
「ついでにそっちの大食い姉ちゃんもな」
「な!誰が大食いよ!」
少し照れたシアンがつけたオチに、バーディーは拳を振り上げ憤慨した。しかし本気では
ない。住んでいた世界は違えど、思いもよらない味方、大切な人はバーディーにもいるし、
いたのだ。育ての親の一人で直接の上司でもあるルー・メギウス警部、幼年期のバーディ
ーに多大な影響を及ぼした豪放な教官スケルツォ・ガ=デール。そして決して忘れられな
い本当の育ての親とも言える人形ヴァイオリン。
そういう人たちと接していたからこそ、ザンの真っ直ぐな感情、シアンの熱い情熱、モル
プの自嘲すべてが分かるのだ。
だからバーディーは本気で怒らなかった。
そんなバーディーの心情を理解してるのかは分からないが、シアンは最後にこう付け加え
た。
「もっとも、そんなに心配はいらねえかもしれねえな。あれだけの地下組織があるんだ。
いつかきっと立ち上がると思うぜ、俺はよ」
「そうだよね、いつかきっと……」
まるで自分の希望のように目を輝かせてつぶやくザンを一人前の男だと認めながら、シア
ンは締めくくった。
「そうとも、ザン」
シアンにはそれだけでザンという人間のことを納得できた。

一方こちらは黒竜城のテラス。
黒竜王は流星の降る星空を見上げながら、部下の報告を聞いていた。
「よく知らせてくれた。急ぎ任務に戻れ」
黒竜王は報告を終えた部下をねぎらい、命を下した。
「はい陛下。引き続き監視します」
部下はそれだけ答えると、転送術で姿を消した。
黒竜王は思いにふける。

413 :バーディーと導きの神〜階層制度〜:2006/07/24(月) 17:31:12 ID:k92UxN3y0
(強大な破壊力を手に入れ、我ら貴族たる竜の民を滅ぼすか、ガロウズ……。それもよかろ
う。その力に取り憑かれなければな。……そして願わくば力なき人間の先頭に立ってワシ
の前に現れてほしいものだ……)
もう一度、黒竜王は流星を見上げる。
(人とは、かく在るべきなのだぞ、ガロウズ。ワシはそれを示す道標にすぎぬ……。そのた
めには憎まれもしようぞ)
黒竜王の名に恥じぬ漆黒の羽根を持った竜人は、心の底からそう願っていたのだった。

その頃、黒竜城の17区画に閉じ込められていたリュミールは、はるか頭上の小さな窓から
時折見え隠れする流星を見て、一人焦りを感じていた。
「『あの時』と同じ……。エルデガインの影響がもう出てる……」
リュミールは文様が浮かび上がった左手のチップを見てつぶやく。
「もう時間があまりないんだわ……」
そしてなにもない空虚な天井を見上げて思案する。
「どうしよう……。エルデガインが動き出してしまう……」
ザンに自分が人間でないことを告げたときに覚悟は決めていた。しかしこの状況をどうに
かしなければ、その目的を達成することはかなわない。
リュミールは決心した。
牢の扉のところまで走り寄り、扉を叩いて大声を上げる。
「誰か来てえ!」
すると扉の覗き窓が開き、律儀に牢番をしていたデアマシュウが顔を出す。
「うるさいぞ、なにごとだ小娘」
「私、こんなところにいるの嫌だわ!頭が変になりそうなの!違うところに移してくれた
ら私の秘密をあなたに話してあげる!だからここから出して!!」
リュミールはここぞとばかりにまくし立てた。
「どういう風の吹き回しだい?怪しいな」
当然デアマシュウは怪しむ。しかしリュミールに選択肢はない。
「あ、怪しくなんかないわ!ここが嫌なだけ!」
「先に教えてくれたら移さんでもないがね」
デアマシュウの提案に、リュミールは大きく被りを振る。

414 :バーディーと導きの神〜階層制度〜:2006/07/24(月) 17:31:56 ID:k92UxN3y0
「だめよ!そんなんじゃ教えたげない!!」
リュミールの必死の表情を見てデアマシュウはほくそ笑む。
(フフフ、俺を騙して逃げるつもりらしいな。かわいいものだ。いいだろう、付き合ってや
ろう。万が一情報が聞ければ儲けものだからな……)
扉の鍵が開いた。喜ぶリュミール。
「さあ、出てきて好きなところを選びな。もっとも、どれも変わらんがね」
ずらりと並んだ牢を指し示しながらデアマシュウは道を譲った。
「さあどうした?どこでもいいんだぞ」
リュミールに対しての絶対的な自信からか、デアマシュウは急かすようなことまで言う。
リュミールは慎重に考える。
「あの……、入る前に私……、街の見えるテラスに出たいわ。……外の空気を吸いたいの。
そこで私の秘密をあなたに全部教えてあげる!」
デアマシュウは考え、承諾する。
「いいだろう。ついてきな。外はちと寒いかもしれねえがな」
「お構いなくっ!」
デアマシュウの余計な気配りに怒りながらリュミールはその後をついていく。
しかし、すぐに暗い表情に戻ると、その思いはザンとバーディーに飛ぶ。
(ザン、バーディーさん、もう一度……、もう一度だけでいい。あなたたちに会いたい……)
リュミールの脳裏には大好きなザンの明るい笑顔、いつも手を差し伸べてくれたバーディ
ーの優しい笑顔がいつまでもこびりついた。

415 :17〜 ◆PQ.AUljWgM :2006/07/24(月) 18:00:06 ID:k92UxN3y0
ザンは知り、バーディーは思いにふけります。リュミールは必死に考えます。

人物設定その13(鉄腕バーディーより)

・ルー・メギウス:連邦特捜課の課長でバーディーの直属の上司。
          バッタとカマキリの中間といった容貌の四本の腕を持つ昆虫人間。
          バーディーの幼少期には、身元引受人の代理も務めていた。
          若いころは皮肉屋の面もあったが、課長職についてからは論理的な
          考えを持つ落ち着いた性格となっている。
          現場にでるよりも指揮を執るほうが向いているとはスケルツォ談。

・ヴァイオリン:ラウナT型と呼ばれる人造人間で、バーディーの世界では『人形』と呼ばれ、
         基本的に人権はない。
         バーディーの幼少期、連邦首都オリオテーラでの養育係に指定され、
         献身的にその務めを果たす。
         ある日オリオテーラの大円環と呼ばれる施設でテロリストによる爆破事件に
         巻き込まれ、同じく巻き込まれたバーディーを助けるため、戦闘用人形と
         戦い、修復不能のダメージを被り機能停止する。
         ヴァイオリンを慕っていたバーディーは、ヴァイオリンの機能停止を『死』と
         思っているフシがあり、今でもその現場に立ち会ってしまったことがトラウマ
         となっている。

アルタ人は連邦から民族差別を受けています。詳しくは本編参照ということで。
>>375さん
モルプの言ったとおりです。
>>376さん
そこが考えどころです。バーディー、読んでみてくださいね。
>>378さん
私もバーディー大好き人間です。
>>ふら〜りさん
ガロウズは本当に邪悪です。でもいい感じのキャラクターですよ。

416 :作者の都合により名無しです:2006/07/24(月) 19:13:51 ID:wNalsHkM0
>影抜忍者出歯亀ネゴロ
ちょっと千歳と雰囲気よくなったと思うんだけど、どこまでいっても
ネゴロは理詰めなんですよね。理系の頭脳と精神を持っている。
そして千歳もクールなんですよね。やっぱりこの2人は合わない気がするw
AB型同士のカップルはほぼ確実に別れるらしいし。そこまでいかないだろうけど。

>やさぐれ獅子
井上、強いなあ。クラシカルな空手と、加藤流のケンカ空手を見事に融合させてる。
空手は柔道と違い、強くなってもあまり美貌に悪影響を与えないから、井上にはぴったりだね。
芸術家は少し見掛け倒しだったけど、井上も立派な戦力として加藤の横にいる権利があるな。

>バーディーと導きの神
人物設定、もう13か。覚えきれないですw これは原作に出てるキャラですか?
一巻だけ読みました。バーディ、SS通りの性格でした。その内全巻読破してみます。
カースト制度に苦しむのはどの世界でも同じですね。それを打ち破るバーディの鉄腕、
楽しみにしてます。

417 :作者の都合により名無しです:2006/07/24(月) 19:50:01 ID:wNalsHkM0
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart41【創作】

元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1151847721/
まとめサイト
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm


418 :テンプレ:2006/07/24(月) 19:51:02 ID:wNalsHkM0
ほぼ連載開始順 ( )内は作者名 リンク先は第一話がほとんど

虹のかなた (ミドリ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/niji/01.htm
オムニバスSSの広場 (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/bare/16.htm
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
上・ドラえもん のび太の超機神大戦 下・ネオ・ヴェネツィアの日々(サマサ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tyo-kisin/00/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/05.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
影抜忍者出歯亀ネゴロ (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/negoro/01.htm
やさぐれ獅子 (サナダムシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/yasagure/1/01.htm


419 :テンプレ:2006/07/24(月) 19:53:58 ID:wNalsHkM0
鬼と人とのワルツ (名無しさん)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/zz-extra/22.htm
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (487氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/487/03-01.htm
シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい (一真氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/silver/01.htm
ドラえもん のび太と魔法少女リリカルなのは (全力全開氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/fullpower/00.htm
戦闘神話 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/ginnan/01.htm
パパカノ (41氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/41/01.htm
バーディと導きの神 (17〜氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/birdy/01.htm
金田一少年の事件簿 殺人鬼『R』 (かまいたち氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/kindaiti/01.htm


420 :テンプレ屋:2006/07/24(月) 19:55:15 ID:wNalsHkM0
現スレペース速すぎる・・。

これも復活したサナダムシさんや新連載のかまいたち様、
そしてすごい記録で更新してくれる17さんや
以前から好調に更新してくれる常連さんたちの賜物ですね。
いつもお疲れ様です。

ちょっとさみしいけど、フルメタルさんが少しお休みという事で
テンプレから外しました。
残念ながら、しぇきさんと地獄少女作者氏も期限切れで。
復帰、もしくはご連絡を心から待ってます。

ところでバレ様、まとめサイトのパート39のログなんですけど、
中身がパート38になっております。
お時間がございましたら、修正の程お願い致します。
どのくらいの期間、皆さんが着てないか確認が出来ないんで・・

421 :テンプレ屋:2006/07/24(月) 20:06:27 ID:wNalsHkM0
ごめんなさい、ミス発見。しかも2つ。

戦闘神話のアドの間違い。正しくは
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/ginnan/1/01.htm
テンプレのやつだと繋がりません。

あと、鬼と人のワルツのアドも間違いです。正しくは
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
テンプレのやつだと違う作品に繋がってしまいます。

ミス連発すみません。
スレ立てされる方、修正願います。
私が立てれれば問題はないのですけど。

422 :作者の都合により名無しです:2006/07/24(月) 22:07:08 ID:+oM0DSkR0
バーディ俺も読んでみた。面白かった。
17さん紹介してくれてありがと。

テンプレ屋さん、毎度乙です。
しぇきさん帰ってくると良いね。

423 :作者の都合により名無しです:2006/07/25(火) 10:23:36 ID:B20dEJv00
>サナダムシさん
金的は死ぬほど痛いです。女子供でもレスラーを悶絶させられる。
井上さん凛々しいですね。加藤を完全に食っちゃったな。

>17さん
バーディって明確な世界観があるんだな。人物説明見て思った。
リュミュールにバーディ・ザンが会えるのを楽しみにしてます。

>テンプレ屋さん
いつも乙です。現スレはあと3本くらいで終わりか?
一ヶ月持たないか。早いなー

424 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2006/07/25(火) 10:46:34 ID:qAihyKo+0
突然ですが、報告。
リアル生活が妙に忙しくなってきたので、しばらく書けないかもしれません。
時間を見つけて書けるかもしれませんが、7月8月は少なくともペースは落ちます。
読んでくださっている方々には大変申し訳ありません。
ではでは。

425 :作者の都合により名無しです:2006/07/25(火) 12:17:37 ID:LScc0inb0
そうか。残念だなあ。
サマサさんも確か就職したんだっけ?
なら仕方ないよね。
9月になったら、またお願いします。

426 :作者の都合により名無しです:2006/07/25(火) 21:20:55 ID:ZGq8nRyD0
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart41【創作】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1153829716/

立てた。残り38KBじゃみんな足踏みするよなあw

>>テンプレ屋さん
いつもありがとうございます。
俺にはテンプレの整理ができないので助かります。

427 :作者の都合により名無しです:2006/09/29(金) 23:41:30 ID:l6hgOSXx0
支援をかねて埋め

428 :作者の都合により名無しです:2006/09/29(金) 23:43:06 ID:l6hgOSXx0
支援をかねて埋め

429 :作者の都合により名無しです:2006/09/29(金) 23:43:59 ID:l6hgOSXx0
支援をかねて埋め

430 :作者の都合により名無しです:2006/11/01(水) 16:05:06 ID:OpcWycRL0
支援をかねて埋め

431 :作者の都合により名無しです:2006/11/01(水) 16:06:04 ID:CQdes0ZP0
支援をかねて埋め

432 :作者の都合により名無しです:2006/11/01(水) 16:06:49 ID:CQdes0ZP0
支援をかねて埋め

433 :作者の都合により名無しです:2006/11/01(水) 16:07:26 ID:CQdes0ZP0
支援をかねて埋め

434 :作者の都合により名無しです:2006/11/01(水) 16:08:12 ID:CQdes0ZP0
支援をかねて埋め

435 :作者の都合により名無しです:2006/11/01(水) 16:08:43 ID:CQdes0ZP0
支援をかねて埋め

436 :作者の都合により名無しです:2006/11/01(水) 16:10:17 ID:izt1vpDy0
支援をかねて埋め

437 :作者の都合により名無しです:2006/11/21(火) 00:56:40 ID:hLHqxjZs0
支援

438 :作者の都合により名無しです:2006/11/21(火) 00:58:53 ID:hLHqxjZs0
支援

439 :作者の都合により名無しです:2006/11/21(火) 01:03:08 ID:hLHqxjZs0
支援

440 :作者の都合により名無しです:2006/11/21(火) 01:05:31 ID:hLHqxjZs0
支援

441 :作者の都合により名無しです:2006/11/21(火) 01:06:28 ID:hLHqxjZs0
支援

442 :作者の都合により名無しです:2006/11/27(月) 22:45:36 ID:V/LeFTE60
ちんちんフェス

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